のところへも寄ってみようと思い立ったが、ちょうど思いも らどうか、そうすれま示談に し / 一するから、と申し出たわけだ。 わたしは、いやだ、ポリヤコフを待ってみると答えた ( ポリ寄らずあの子は引っ越ししていた。トリーシン一家がこわく ヤコフについては、音も沙汰もない ) 。それはそうと、わたて、だれにもいわず、そっと内証でニコラエフスカヤ街へ越 して行ったのだ。イヴァン・グリゴーリエヴィチの前の住居 しはつい近頃、コ ーリヤがひどく悪いといううわさを聞い のすぐ近くだ。それでも、わたしは昨日やはりさがし当て た。もうジェロームスキイを戸口まで見送りながら、コーリ ーシャは何か食べ過ぎて、わ ヤの健康はどうかとたずねたところ、ああ、ぜんぜん望みがて、一時間ばかり過ごした。パ ありませんという。「なんとおっしやる ? あれはどうした たしのいる前でもどした。概して、わが家の巣の中にいる彼 トリーシンを恐れて家に隠れているところなど のです ? 」「肛門癌 ( 痔疾の最後の段階で、死の直前の状態 ) は滑稽だね。 です。わたしはパルチから聞いたのですが、あの人はつい診は、そっくりヴォードビルだよ。女の子は青い顔をして、と 断書をつくったばかりなのです。九月頃にはきっと死にまてもやせてはいるが、なかなかかわいい子だ ! わたしはか わいそうでたまらなくなった。へとへとに疲れて、九時に家 す」わたしがどんなに仰天したか、よろしく察しておくれー ーリヤのところへ行った。ところへ帰ったが、朝の五時まで頑張って原稿を読んだ。さよな きのう早速 ( 日曜日 ) コ が、いつもよりも元気がいいくらいなのだ。なるほど、最近ら、優しいわたしの天使、お前の手と足に接吻する。わたし がお前を愛しているそのせめて十分の一でも、お前が口先 ひどい病気をして、サーシャの話によると、死ぬのじゃない だけでなくわたしを愛してくれればと田 5 う。さよなら、こん かと、みんな真剣に心配したほどだということだ。しかし、 今は前より元気で、癌などまるでなかったそうだし、そしてな短い手紙だけれど、ひどく疲れてしまった。子供たちに、 ・ハルチが診断書をつくったというのも跡形のない話だ。あのあの小さな天使たちに、わたしの神様たちに接吻してやって とれだけでたらめをいうおくれ。全身お前とあの子たちの ジェロームスキイの碌でなしが、・ ・ドストエーフスキイ か、またいうことができるか、想像に余りがあるだろう。 わたしはコ ーリヤととても仲好く話をした。食事はサーシ 8 妻アンナへ ヤのところでしたが ( あれはひどくすましていて ) 、もう食 事のあとで、やっとお前のことや子供たちのことをたずねるべテルプルグ〈一八七三年〉八月十五日 わたしのかわいいアーニヤ、こちらへ帰ってから、お前の 簡という始末だった ( それなのに、お前はいつも自分のほうか ら先に訪問に行くのだからね ) 。やくざな連中ばかりだ。コ手紙を受け取ったが、お前があまりわたしの健康を気づかっ 書 ーシャているので、ほんとうにびつくりしてしまった。それで、食 1 リヤのほかはみんなやくざな連中だ。ついでに、パ 507
と思われるかもしれません。 ます。わたしはこれから先を書きはじめます。この長編は印 いずれにしても、とにかく希望をもっことはできます。し 刷して四十台分くらいになるのです。ジュネーヴにはやむを かし、待たなくてはなりません。しかも長い間。というの得ない事情で、もう二か月ばかり暮らして、まあ五月頃にど は、あの社はいつもだれにたいしても、とても返事が遅いか こか遠くないところへ越します。どうかあなたの様子を、自 らです。その五百ループリのうち、わたしは三百ループリだ 分でお書きになるなり、フェージャに書かせるなりしてくだ けジュネーヴへ送って、二百ループリをベテルプルグへ、マ さい。わたしは秋の頃には、冬になったら、あなたとフェ イコフの名あてで送るように頼んでやりました。そのこと ジャに、少なくも三百ループリくらいお送りできると、心づ は、万一の用心に、マイコフにも前もって通知しておきまし もりしていたのですが、こんなふうになってしまいました。 た。その二百ループリのうち、百ループリをあなたに、五十 ーシャでさえも、自分の稼ぎで暮らさせています。家主の ループリをパーシャに渡すように、マイコフに頼んでおきまアロンキンには、あした手紙を書いて、もう少し待ってくれ るように頼みます。いずれにしても、わたしの仕事がほんの そういうわけで、その金を送ってくれるかどうか、確、よ カオ少しでも成功したら、あまり長くは待たしません。わたしの ことはわかりません。が、それにしても、送ってくれるもの出す手紙は、なんといっても、一種の証書になりましよう。 と当てにすることはできます。いずれにしても、送金は今すあなたがアロンキンのとこから引っ越しされたのではないか ぐではありません。少なくとも、この手紙が届いてから、一と、とても心配しています。アロンキンがあなたにいやな思 週間くらい経った時分でしよう。ですから、それより前に いをさせたなどとは、考えられません。あれは分別のある立 は、マイコフを訪ねないでください 。もしその百ループリを派な人間ですから。 お受け取りになったら、十ループリをミーシャに手渡してや イヴァーノフの訃幸はイ 匱こ印天しました。かわいそうなヴェ ってください ( あの子には、服だとかそのほかのものを買う ーロチカ、かわいそうな子供たち ! 二、三日のうちに、サ ーシャとコ ために、ずっとたくさんいるのですが ) 、それから十ループ キイの妺ロ弟ス ) に手紙を書いて、娘の生ま リをカーチャに ( 服やその他のものを買うために ) 使って、 れたことを知らせ、なお二こと三こと書いてやろうと思って 八十ループリをご自分で取ってください。 います。ところが、わたしのばかげた健忘症のために、サー 簡ああ、エミリヤ・フヨードロヴナ、どうかわたしの長編がシャのアドレスを正確に覚えていないのです。で、サーシャ 成功するように、遅れないで早く書き上げられるように、祈あての手紙をあなたの気付にして出します。フェージャは元 書ってくたさい。そうしたらまた金をすっとたくさんお送りし気ですか ? お宅の人たちは達者ですか、それに第一あなたお
んりんざい想像することができません。もしそんなことがあパ ーヴル・アレグサンドロヴィチ ( この呼び方は敬意を表すためで 2 れば、、 イ生がその金を全部なくしてしまったより、もっとっ を含めたも ) の駆け引きで、ステローフスキイの上をいくわけ らいに相違ありません。しかし、小生はそれ以上、もっと損にはまいりません。 害を受ける可能性もあったのです。ステローフスキイとの契さて、そこで、小生のお願いというのは、ほかでもありま ーシャを呼び寄せて、この件に関する報告を要求し 約によると、小生は「罪と罰』の印税として、本年中に間違せん。 の 間てください。それも諾か否かを確かめてくださればいい いなく九百ループリばかり受け取るはずになっています。 違いなくというのは、その広告が幾度も新聞に出たからでで、ほかになにもいりません。なおそのほか、小生が彼に送 った委任状を貴兄の手に引き渡すように要求して、お受け取 ーシャの契約に入っ す。今度その金もステローフスキイとパ たかもしれませんから ( その契約の代行権は広範囲なので ) 、りになったら、お手もとへ残しておいてください。 もし。、 ーシャに何か悪いことがあったら、彼はただそれに もしそうだったら、小生は合計して莫大な金をふいにするわ 相応する結果を受けるばかりです。たとえ彼に何ひとっ悪い けです。 ことがないとしても、小生は彼に対してなんらやましい点は しかし、また、ことによったら、ステローフスキイとパ ーシャが小生ありません。小生は自分の手で書いて、正式に証明してもら シャのその件は、ただ破談になっただけで、パ った委任状を彼にあてて当地から発送したのですから、彼に の請求に対して沈黙を守っているのは、ただ無精のせいだけ かもしれません。ステローフスキイは年末に出版するつもり対しては、このうえなく単純無垢な信頼の念を、十分に示し なのですから、もしそうなら、そのころになって契約したらたわけです。彼がその証書を受け取りながら、とっぜんなに もかも打っちゃらかして、音信を絶ったからといって、何も しいはずなので、彼がいま取引しようというのが、小生には 小生の責任ではありません。つまり、そういう委任状を手に そもそもの初めから変に思われていたのです。彼としては、 半年も前から金を払うなんて、いいもの好きですからね。今した以上、彼は自分自身に対するデリカシーのためだけで ーシャとのも、小生に返事をよこす義務があったのです。まして、それ のところ、彼は生来くせものですから、わざとパ 話を引っぱって、売り手がどんな状態にいるか、探ろうとしは彼にとってなんの骨折りでもないのですから、なおさらの ことです。もし彼が委任状の引渡しを拒むようでしたらそう ているのでしよう。つまり、小生が金を持っているかどう 小生はその時やむなく、委任状 いってやってください、 か、何を期待しているかなどということを、嗅ぎだそうとい う腹なのですが、半年さきになったら、小生が、今よりもっ廃棄の広告を新聞に載せることにするが、そうしたら彼の立 と困るということを、きっと探り当てたに相違ありません。場はいっそうわるくなるだろう、と。小生としては、その委
( どうか文字どおりに信じてください ) 、社のはうへ原稿を送なことを書いていないのです。第二に、パ ーシャが小生から る金さえありませんし、工面することもできないのです。原要求している委任状は、やるわけにはいきません。ああいう 稿は大部のもので、五ターレレ、、 ノカカります。そういうわけで形式では、まじめな話が、十万ループリだすといわれても、 すから、次のことを貴兄にお願いしたいのです。本状落掌次承知することができません。たとえ肉親の兄でも父親でも、 第、なるべく早くこれをカシュビリョフに読んで聞かせてくそういう委任状は渡せません。それは不可能です。ステロー ださい ( 第一ページにある Z ・をはぶいて ) 。小生は彼に、 フスキイに関する件のほか、その委任状の中では、小生の件 もしできることなら、五十ループリ送るように依頼します。 について、いっさい例外なく全権をゆだねることが要求さ なにぶんにもほんとうに苦しいのですから。原稿に五ターレれ、なおそのうえに、パ ーシャはこの委任の権利をだれであろ ルいりますが、われわれ自身にも入用なのです。いやはや、 うと無差別に譲渡することができるのです。これは滑檮なば 一古しいこと ! もし五十ループリできなければ、せめて幾らかばかしいことです。パ ーシャの手紙によれば、これはただ でも、二十五ループリでもけっこうです。 ( しかし、できればの形式にすぎないことですが、法律にそんなばかなことが載 五十ループリ ! ) しかし、何より肝要なのは、貴兄が水曜日 っているなどとは、あり得ない話です。椅子か古ズボンを売 にこの手紙を受け取られたら、すぐ翌日、さっそく金を送っるのに、人間の魂に対する全権を与えなくてはならないなど てもらうことです。もしカシュビリョフが金曜日に送った というのは、まったくナンセンスじゃありませんか ! のみ ら ! どうそお願いです、この点に助力してくださいー 金ならず、妻が二年前にここから四百ループリの株券を売る委 を受け取ったらすぐ翌日、社のほうへ原稿を発送します。そ任状をだしましたが、その委任状は普通の紙に、格別の形式 れまでには何もかも、手紙もちゃんと用意しておきます、一もなく、ただ株券のことと事件の本質を書いただけです。そ 刻の遅延もありません。それに、今でもすっかりできあがつれがすべて領事館でしつかり証明されていたので、用事はた ているのです。ただ最後にもう一度、ペンを手にして読み返ちまち足りてしまいました。なぜなら、委任状が完全に条件 したいだけです。そういうわけで、お待ちしていますー をそなえていたからです。もしこの話がまじめなものなら、 今度はステローアスキイのことで、一ふで書きます。これ ーシャのおかげでいたずらに遷延している、 これが小 がまじめな話かどうか、合点がいきません。小生としては、生の意見です。少しでも早く決定したいものですね。もし。ハ もしそれがまじめな話だったら、相談に乗ってもよいと思い シャにお会いになったら、このことをお伝えください 士 6 す。ところが、パ ーシャは書類を一東も送ってよこしなが金は、貴兄が百ループリ送ってくだすったのとまったく同 ら、ステローフスキイがそれに同意なのかどうか、かんじんじように、ロシャ紙幣を書留封筒に入れて送るのがいちばん
してください」と付け加えているだけなのです。 いう事実が、今となってとくに思い返されるのです。彼は貴 兄のことを一口もいっていませんが、彼としてはこの件で貴 小生は即座に承諾の返事をだしてやりました。最初、パー シャはあまりにもきつばりした調子で書いてよこしたので、兄の介入を避けたかったのではないでしようか。彼が何か卑 小生も真剣にこの話を当てにしていましたが、それ以来一行劣なことを企んでいるなどと、そんなことを疑う気はさら さらありませんし、またそんなことを信じもしませんけれ の便りもないのです。最後に、ちょうど十五日前、小生はパ ど、彼が軽はすみであることは、間違いなく承知していま ーシャに手紙をだして、折り返し通知をよこすよう、たった 二行でいいから、諾か否か、ただそれだけ書いてよこすようす。小生は長い間、ステローフスキイ相手のこの話を、まる にと、断固たる態度で要求してやりました。しかし、それでつきり本気にしていなかったのです。とどのつまり、少なく とも不正なことはしないだろうと確信したのと、それから、 もやはりひとことの返事もよこしません。梨のつぶてです。 ーシャも貴兄にご相談するだろうと それに、もう一つこういうことがあるのです。あれは自分のよくせきの場合には、。、 も考えたので委任状を送ることに決心したわけです。しか 手紙の中で、つまり出版権をもう一年だけ延ばすようにとい ってきた手紙、要するに、最後の手紙なのですが、その中でし、彼は軽はずみですから、ことによったら、いわゆる罪の ない目的で、例えば運転して儲けようといったような目的 返事を小生の妹アレグサンドラ・ミイハロヴナの名宛てで、 ーシャのような空 その住居 ( ペテルプルグ区大通六九番 ) へ向けてだすようで、その金を着服したかもしれません。 に、と頼んでいます。しかも、 しま取引所でやっている投機など ーシャはこの頃、アレグサ想癖のつよい頭の持主は、、 ンドラ・ミハイロヴナのところに、一日中いるからと付け加を夢みるというようなことも、大いにありうるだろうと確信 えて、かくべっ念を押すようにして頼んでいるのです。小生しています。またあるいはだれか友だちに、ほんのひと月と いって金を無心されたので、自分ではもう金を受け取ってい としてはどちらでも同じことなので、なんの疑念もなく新し / 生あての手紙では、よけいな心配をするな、な いアドレスで送ってやりました。むしろ、事務的なご依頼でるくせに、ト どと書いてよこしたのかもしれません。小生が気を揉まない 貴兄を煩わせずにすんだのを、心の中で喜んだくらいです。 もっとも、ステローフスキイから金を受け取る期日が来たで、当てにしながら待っているようにと思って、時を稼ごう ら、必ず貴兄にお願いして、立ち会っていただくように、そとしたのかもしれません。 ーヴェル・アレクサンドロヴィ そういうことはすべて、 の返事の中で注意しておきました ( 貴兄のご親切なお約東に もとづいて ) 。 ) として、大きにありうることです。ただ、彼 チ ( ややび方 が計画的な、露骨な悪事をするなどということは、ト / 生もこ 書彼がこの新しいアドレスのことを、ああまで念を押したと 3 〃
へん驚きました。ほかでもありませんが、みんなわたしに手ということを承知しています ( そのうえに、たえず文学の仕 紙を書こうともせず、わたしの手紙に返事もくれないからで事をしている、ということも知っているし ) 。ガヴリーロフ す。わたしは決して無沙汰をしているわけでなく、あなたのは出版方面の仕事をしているわけです。そこでわたしは、少 お手紙に返事を怠ってもいませんが、そのお手紙がずいぶんしも早くあなたの力になりたいと、心から望んだものですか 前から来なかったのです。わたしは去年の冬も今年の春も、 ら、わたしはその時、つまりふた月半まえ、一刻の猶予もな 幾度かパーシャに手紙を出しましたが、返事が来ないのでくパ ーシャに手紙を出して、その中に二百ループリの借用証 . す。やっとふた月半ほど前に、長い手紙が届きました。それ文と、ガヴリーロフあての手紙を封入しました。わたしはそ によると、なんどもなんども手紙を書いたとのことですが、 ーヴェル・ア の手紙で、どうかこの無心を断わらないで、 それだとあれの手紙が届かなかった、ということになりま レクサンドロヴィチ・イサーエフに、二百ループリ渡してく・ す。が、それはみようなことに思われます。その手紙には、 れと頼んだわけです。このガヴリーロフあての手紙と受取証 ミハイル。・・ガヴリーロヴィチ・ガヴリーロフのことが書いてを封入した。、 ーシャへの手紙を、あなたの ( つまり、エ、、 あのです。これはもとプラョッ卸刷所の支配人です、 ( 今でヤ・フヨードロヴナ・ドストエーフスカヤ ) の名あてにした にヴォズネセンスキイ橋のそばの、キネルの建物の中にあのです。その時あなたにあてては何も書きませんでした。た・ ち ( ゴ江ヴァチゴア印所の、やはり支配人です ) 「 ーシャに頼んで、ガヴリ ハ , 、ーツだあなたによろしくいってくれとパ ーロフから受け取った金の一部を、あなたに渡すということ・ ヤあなたのために ( また自分のために ) 、この男から金を 借りることができる、といって来ました。その手紙によりまと、冫 ーこ一部をパーシャ自身が取るということと、さらに一 すとい . あれはもうガヴリーロフとそのことで話をしたので、部はんの少額をわたしの用事にあてることを、 シャに癶女 わたしのほうから、第一、わたしがミハイル・ガヴリーロヴ託した次第です。 イチ・ガヴリーロフから二百ループリ借りて、八か月後にそ そのほかこの手紙の中で、わたしはパ ーシャに一つの重大 れを返済するという受取証と、第二、どうかこの無心を断わな委託をしました。その委託の内容は、ガヴリーロフと別な らないでほしいという意味の手紙を、ここから出してくれと交渉をしてはしいということです ( ただし、取引がすんで、 いうのです。 ガヴリーロフが二百ループリ渡してからです ) 。つまり、あ 簡わたしはガヴリーロフとは、もう幾度となく、何千ループる契約に基づいてわたしが金を受け取ることになっている、 リという大きな取引をして、いつもそれがうまくいっていまその権利を抵当として、ガヴリーロフにずっと大きな借款を 書した。先方でもわたしが間違いのない、ちゃんとした人間だすることができるかどうか、きいてくれということです ( そ
れがぎりぎりのところまで行っているのが、感じられるので ーロフ、きみは金を持っているかね ? 」ときいたところ、 シャをさがしに打 「少しはございます」というので、「千ループリ貸してくれなすから。もちろん、わざわざ別荘からパー ってください、などとお願いするのではありません。あれは いか ? 」というと、「承知しました」といって、その日すぐ 持って来ました。もちろん、小生の手形をかたに取 0 て、利たぶん貴兄のところへ姿をあらわすでしよう。ところで、そ のほかにまだ、こういうことで貴兄の忠言が伺いたいのです。 息もたいしたものでした、幾らか忘れましたが。その千ルー ガヴリーロフは、もし現金を持っていたら、一年の期限で プリは、一昨年すっかり返しました。実際この男は貸してく ーシャの乞いに任せて、小生はその男にまた小生に千ループリばかり貸す気になるというのは、大い れそうなのです。パ ーシャに二百ループリ渡 ーシャには二百ループリの受取りを送ってやにありそうなことです ( つまり、パ 手紙を書き、パ したら、八百ループリの借金です ) 。手形と引替えなのはい りました ( 手取りは百六十ループリなのです。それをパーシ ヤは小生の名前で、自分のために、そして貧と病に迫られてうまでもありません。手形はここからでも書いて送れます。 いる兄嫁のために、その男から借りようとしているのです ) 。なおその上に、一年半た 0 たら ( 契約によって ) 、小生は「罪 と罰』の印税として、ステローフスキイから追加分として六 シャがその金を借りたかどうか 期限は一月の一日です。 シャに 百五十ループリか七百ループリ受け取ることになります ( 彼 知りません。愛する友よ、お願いですから、もしパ 。もしあは契約によって権利を持っていますから、小生の著作集の一 お会いになったら、借りたかどうかきいてください れがまだ小生に返事をだしていなかったら、さっそくだすよ巻として、あの小説をだすにきまっています。ただし、一 うに督促してください、ただしその手紙がなくならないよう七〇年の一月一日以後なので、そのことはもう新聞に広告が に ( あれのだし方が不注意なために、手紙がなくなるのかも出ています。このことはわれわれの契約上、間違いありませ わかりまん ) 。この契約を、というのはつまり、ステローフスキイか しれません。しかし、あるいははかの理由か、 せん ) 。ところで、貴兄にはお願いがあるのです ( 貴兄はきらそれだけの金を受け取る権利を、ガヴリーロフに抵当とし っと小生のように、長く返事をくださらないことはないでして入れたものでしようか、その千ループリを貸そうという気 よう。なぜなら、小生の境遇と仕事の偽りならぬ苦しさを了を起こさせるために、です。これをガヴリーロフに提言した ものでしようか ? 小生にとっては今の八百ループリは実に 解して、小生の怠慢をゆるしてくださるでしようから ) 、 ーシャがガヴリーロフから金を受け取ったかどうか、知らせ救いなのです、たとえ高利であっても。ぜひとも払わなけれ てください というのは、もし受け取らなかったら、あれのばならぬいくつかの借金のはか、ペテルプルグで入質してあ 書身はどうなるか、心配でたまらないからです。なにしろ、ある家具や品物の、利子を入れなければなりません。さもない ~ 75
、。、ーシャがら。ところが、きのう貴兄のお手紙を落掌しましたけれど、 リの無心をしたではありませんか ! ) ところカノ カトコフのところへ、実に多忙をきわめている最中に現われ日付は書いてありませんでしたが、封筒には二月の二十六日 て、滔々としゃべりだしたうえ、ことによったら失礼なことにペテルプルグの本局で受けたスタンプがありました。この ーシャの事件はひとことも書いてありません。 をいうかもしれない、それはもちろん、小生を根限り悪者に手紙には、。、 して見ると、あるいははんとうでないかもしれません。しか しながらです、 こういうことを想像する小生の気持ちは どうでしよう ! 最後に、小生は昨日たった一枚の外套を質し、妻の母ははっきりとそう知らせているのです。そうして に入れましたが、手もとにはたった三十フランしかないので見ると、やつばりほんとうのことで、ただ貴兄がごぞんじな ーシャが事実そうす す。しかも、 garde ・ malade ( 看護人 ) に四十フラン、産婆に いだけかもしれません ( というのは、。、 百フランやらなければなりませんし、部屋代と召使の礼が百る決心をしたとすれば、たしかに貴兄の目にふれるのを避け たに相違ないから、まったく貴兄には知れなかったわけで 二十フラン、それが三月二十日、つまり六日さきに迫ってい るのです ( 今月は臨時の相場なのです ) 、おまけに、入質しす ) 。 てある品物の借りが三百フランあります。かっきり六日たっ いま小生は打ちひしがれ、たたきのめされて呆然とし、ど うしていいやらわからないでいます。今日すぐにもカトコフ たら小生の三十フランはすんでしまって、その時こそは一コ ペイカもないし、質に入れようにもなに一つなく、信用借りのへ手紙をだして、いっさいの事情を明かしたうえ、謝罪しょ 法も冬きてしまいます。小生の希望のいっさいは、カトコフうかと思いました。なぜなら、まったく穴があれば入りた が五百ループリの無心を承知して、貴兄に二百ループリ ( 前いほど、彼に対して恥ずかしく、Ü彼が腹を立てて、金を送 ってくれないかと心配だからです。が、また一方、もしその に書いたとおり ) 、当地の小生へ三百ループリ送ってくれ、 しかもその三百ループリ が、ちょうど三月二十日、つまり六手紙をだして、話が何もかも違っていたらどうでしよう ? シャがカトしかし、だすはうがいいと、いにきめました、明日だすことに 日後につくということです。さて、今度もしバ コフを怒らせて、最後に堪忍袋の緒を切らせ ( なにぶんに します ( カトコフへの手紙を ) 。もし何かの便りが小生の心 も、どんな人だって、事情によっては忍耐を失うことがありを照らしてくれたら ! ところが、どこからも便りがありま ますからね ) 、カトコフが拒絶の返事をよこしたら、どうでせん。待っているのは危険ですし、それに苦しいのです。 簡しよう。その時はまあ、いったいどうなるのでしよう ? まずれにせよ、お願いです愛する友よ、この件を調べて、早速 ったく単に小生が破滅するだけでなく、三重に破滅するのでご報知を願います、小生は悩ましさに死にそうなのですか ーシャはただいっただけ 書す。なぜなら、妻はもうお産をして、病床にあるのですから。もしそれがほんとうでなく、パ
こちらは今まで、烈しい寒さが続いた。パリでは五月の十うにいってください。先日パ ーシャの手紙が届いたので、多 8 二日に、雪が降って、零度下の寒さだったそうだ。ところ少あなた方のことを知ることができました。もしラージンが が、今はもう暑くなってきた。もうずっと前から素晴らし いあとせめて百ループリくれたらいいですね ( それ以上は出し 新緑で、花はもう盛りをすぎた。ここはかなり退屈だが ( 美ません。わたしにいわせれば、当てにしても無駄です。それ 術館を除くと ) 、しかし仕事はできる。そのかわり、空気はだけでも、 ししほうです ) 。 ーシャの手紙によれば、アロン 素晴らしいもので、発作はすっかりなくなった。 キンが住居のことをたずねているそうですね。ところで ( パ さよなら、。、 ーシャ、お前に接吻して、幸福を祈る。ただ ーシャの手紙によると ) 、あれはもうプスコフへ立ったらし 残念なのは、お前が自分で幸福を願わないで、空想ばかりし いですから、あなたに折り入ってお願いします。それをこ一 ) ていることだ。 に書きますが、もしご無理でなかったら、少しも早くしてい 心からお前を愛する・ドストエーフスキイ ただきたいのです。ほかでもありませんが、だれか ( 例え エミリヤ・フヨードロヴナには、特別によろしくいっておば、ミーシャでも ) アロンキンのところへやってください。 くれ。あのひとの体はどうなんだろう ? アンナ・ニコラエ さもなければ、ニコライ ( 弟 ) に頼んでくだす 0 てもいして ヴナ ( 礙の ) にも、くれぐれもよろしく。マリヤ・グリゴー丿 す。第一に、 ) たしからよろしくといって、第二に、 エヴナの ) にも同様。 うことを伝えてもらいたいのです。いま現在のところでは、 ロシャへ帰ってから ( もとの住居、今あなたの住んでいらっ 兄嫁エミリヤ・フ ヨードロヴナへ 3 しやる住居のほか ) 、ジュウの住んでいる隣りの住居を借り るかど、つカ ドレスデン、一八六七年七月っ ゝ、はっきりしたことはどうしてもいえないので き間違い ) 一日 ( 六月十二日 ) 尊敬してやまぬエミリヤ・フョ ードロヴナ。あなたは今パ す。ところで、もとの住居 ( 今あなたの住んでいらっしゃ ーヴロフスクにいらっしやることと思いますので、 ーヴロる ) はどうかというと、ぜひともわたしのものとして確保し フスクあてにしました。この手紙が遅れなけれま、、ま 。しし力と思ておきたいのです。そして、そこにはわたしか、それともあ っています。お元気なそうで、ほんとうにうれしく思いま なたが住むわけです。これは小生にとってきわめて重大なの す。どうかそのほかのことも、すべて無事でありますようで、さっそくアロンキンに伝えてもらいたいのです。 に。フェージャはもう出発しましたか ? もしまだでした ヤはもうプスコフへ行ったことと思いますので、あれに手紙 ら、ヴェーロチカとアレグサンドル・。、 ーヴロヴィチ、とりで委任しないで、あなたにお願いする次第です。ミーシャを わけソーネチカとマーシ = ンカ ( 一一人とも妹 ) によろしくいうよや 0 てくださるのが、一番いいでしよう。
のです。新年までには、たとえ土の下からさがし出しても、 ことを、信じていてもらいたいものです。債権者といえば、 あなたと分け合います。善良な親しいエミリヤ・フヨードロ ほかの連中のことを何かごぞんじありませんか、何かの用で ヴナ、金というものは、いちばん必要な時に、まるでわざとわたしのことをききに来ませんでしたか、それとも何かうわ のようにないものですね。これはどうかわかりませんが、もさをお聞きになりませんでしたか ? もし何かごぞんじでし し神様が健康をめぐんでくだすったら、二年くらい先には、 たら、知らせてください。 二、三人には手紙を出そうと思っ わたしも借金を払って、あなたもお困りにならないようになています。悲しいことには、来年になるまではだれにも、何 るでしよう。その時は、金は債権者の手に入らないで、わたひとっ約東できないのです。ところが、もしわたしが帰った したちのところへ入って来るでしよう。しかし、それはみなら、彼らは猶予などしないで、必す訴訟を起こして取り立て 今のところ夢のような話で、美しい鈴の音は山の向こうに聞ようとするに違いないから、わたしはしばらくの間 ( 長編を こえています。 書き上げるまで ) 、帰国の決心がっかないのです。そのうえ、 わたしは、あなたが前のわたしの住にいらっしやるもの今のところまるつきり旅費がないのです。ところが、わたし 1 ノヤ 1 ー、レ と思って、ス ノヌイ横町のあてにしました。という はペテルプルグにいたはうが、ずっと早く借金返しができる のは、あの住居はいまだにわたしの名義になっていて、あなのです。手紙で談判するのは、実にむずかしいのですから たは家賃をいっさい払わなくていいからです。それはわたしね。この冬はこちらで越すものと思わなければなりません。 と、あの人格者の家主のアロンキンと契約したことです。あこれからまだどれだけジュネーヴにいるかわかりません。こ の人はどうしていますか ? あなたに何か住居のことをいし れはみなその時の事情によります。ジュネーヴの気候は、わ ますか ? そのことを知らせてください。アロンキンには近たしにとっては実にいやです。ドイツでは発作はごくたまに いうち自分で手紙を出します。わたしはあの人に出した手紙しかなかったのに、ジ = ネーヴではあっという間もなく、ほ の正確な内容を、いくらか忘れましたが、バ ーシャが覚えてとんど毎週なのです。それはみな山と、たえず大気中に変動 いないでしようか ? あなたはコビーをお持ちではありませがあるせいです。ここを引き払わなければなりませんが、当 んか ? いずれにしてもミーシャを通してでもかまいません分の間は、もし手紙をくださるのでしたら、ジュネーヴあて から、アロンキンにわたしからよろしくとお伝えください にして ~ 、ださい ( 自分で手紙は書きますが ) 。あの人のように正直で、わたし Suisse, Genéve. A M-r Th Dostoiewsky, poste resta- にたいして潔白な優しい態度をとってくれた人たちには、わ nte. たしがほかのいかなる債権者よりも先に支払いをするという妹のサーシャのこと、その子供たちのこと、わたしの名づ すま