ドストエーフスキイ お前たちの顔を見るということは、やむにやまれぬ要求な ・ついでにいうが、かわいいアーニヤ、今お前がわ のだ。ここにいると、なにを見てもいやなこと、いまわしい たしにとってとても必要なんだよ。なぜかわかる ? ことだらけで、気が狂いそうになってくる。お前たちみんな いわたしを夢に見るというのはほんとうかね ? ひょっとし に接吻する。お前の手紙に、わたしの夢を見たと書いてあっ たら、わたしじゃよ、、 オし力もしれないね。お前の足と、それか たね ( もしうそでないとしたら ) 。わたしはお前の夢をもう 一一度も見た。フ = ージャとリ = ーパに接吻してやっておくらどこもかしこも接吻する。うんと接吻する。お前の ドストエーフスキイ れ。もしわたしが土曜日に行かないからって、リュー・ハが泣 どういうわけか知らないが、わたしは拘引もされないし、 きだしたら、今度はお船が遅れたからで、二日たったら着く といっておくれ、あの子たちを大切にしておくれ、いっそう罰金も取られない。例によってとんでもない時にやってくる 注意して、めんどうを見てやってね、お願いだ。わたしはフのだろうよ。ぐずぐずしてわたしをいら立たせるばかりだ。 工 1 ジカの顔を見たくてたまらない。あの子の誕生日を祝っ 8 ・・ポレーツキイへ てやっておくれ。何かお祭らしいことをしてやるといい たしの送った金は、お前がうまく切り盛りしてくれるものと〈・〈テルプルグ、一八七三年七月十五日ー二十日〉 信じているが、いずれにしても、家の財政ぜんたいを頭にお尊敬してやまぬアレグサンドル・ウスチーノヴィチ、今回 いて、切りつめるようにしてほしい。お前は、お母さんのとは『地方概観』については、ご配慮ご無用に願います。偶然 ころにある自分の品物を、質に入れてくれとか書いているある原稿が飛び込んで、それをぜひ載せなければならぬこと になったのです。そういうわけで、これが今度の号で、貴兄 が、その品物はもうないのだよ。あのときわたしのために入 質してしまって、いっさいで二十五ループリ借りたのだ。九のかわりになることになりました。ただ心配なのは、この手 ループリはお前の品物の利息に入れたし、二十二日にもまた紙が間に合わないで、貴兄の書かれたものが徒労に帰しはし そんなふうのことを、今なしか、ということです。では次号まで。 幾らか入れなくちゃならない、 完全に貴兄の・ドストエーフスキイ 日お母さんがいっていたつけ。さよなら、お前たちみんなを アレグサンドル・ウスチーノヴィチ、最後のページのため 抱擁する。今夜はあのいまいましい原稿を書くので、まいっ に、何かほんのちょっとした余興的なものを見つけていただ てしまわないように、わたしのために祈っておくれ。お前た / に千度も接吻すると、あの子けないでしようか ? ちを抱擁し接吻する。リューく にいっておくれ。フェージャも同様。
うやく葛藤の端緒をこしらえたかどうかです。もっとも、葛貴下にはたくさん借金があることも承知しています。しか 藤は、事件は、突如として展開し、ひろがっていきます。こし、今度の長編で貴社と清算しますから、今回五百ループリ これが非常な多額であることは、 だけ無心させてください れから先の小説的興味は保証いたします。今のようないきか 承知していますが、小生は当地でちょうどそれだけ借金して たのほうが、かえっていいような気がしてきました。 いるのです。貴下の優しいお心に望みを嘱することをお許し しかし、だれもかれもが陰惨な人物ばかりではありません、 ください。なにとそ一刻も早くご返事をくださるよう懇願し 明るい人物も出てきます。概して、小生の力に余ることがた くさんあるのではないかと心配です。例えば、今まであまります。いまドイツでは、どうかすると手紙がなくなるので、 文学によって触れられなかった一連の人物に、初めて接触し心配です。この手紙も紛失しはしないか、そう思っただけ で、気が狂いそうです。小生のアドレスは前と同じです。敬 て見たいと思っているのです。そうした人物の理想として、 チーホン・ザドンスキイを取り上げるつもりです。それは僧白 フヨードル・ドストエーフスキイ 院で行ない澄ましている長老です。この長老と小説の主人公 この手紙を読み返して見て、気がさしてきました。どうか を対照させ、一時ひき合わせようと思っています。とても心 ミハイル・ニキーフォロ 配です。こんな試みは一度もしたことがないのですから。し小生を非難なさらないでください、 ヴィチー かし、この世界のことは、ト / 生も何やかや知っています。 ミハイル・ニキーフォロ 今度は、ほかの間題に移ります。 9 ・ Z ・マイコフへ ヴィチ、小生のことをなんとお考えになろうとご勝手です ドレスデン、一八七〇年十月九日 ( 二十一日 ) 力、小生は極度の貧困に陥ったので、まことに気の咎めるこ とですが、貴下にご無心せすにはいられません ! 小生はま尊敬してやまぬ尊き友アポロン・ニコラエヴィチ、お手 ったく、たっきのしろがなくなってしまいました。しかも、 小生を喜ばせかっ驚かしたお手紙に対して、今まで 小生には妻子があるのです。妻は健康がすぐれないのに、ひお答えしませんでした。というのは、いまいましい仕事をし と月まえ赤ん坊を乳ばなれさせたので、今は一息つくどころていて、是が非でも完結しようと思ったからです。そういう か、毎晩ろくろく眠っていません。小生の宅には保姆はおろわけで、たまっていた二、三の手紙に返事をださなかったば 簡か、女中さえいないのです。これは小生にとって身を切るよかりでなく、その間すっと何ひとっ読まなかったくらいで うな思いです。仕事は時として気を紛らせてくれますが、こす ( もちろん、新聞を除いて ) 。小生のはじめた仕事は、『ロ 書ういう状態では、時につらいこともあります。 シャ報知』へ載せる長編のほんの初めで、少なくともまだ半
が収まらない。 もしお前に何事か起こったので、主婦か医者が、ユダヤ人のように冷静にやる。 がお前に頼まれて、電報を打ったのじゃないか。ロシャ名前 2 妻アンナへ はよく間違えられて、郵便局でもめちやめちゃにされたこと がある、 ああ、もしお前から来たのだったらどうしょサグソン・レ・パ ン、一八六七年十一月十八日、月曜日 なっかしいかけがえのないアーニヤ、わたしはすっかり負 う ? と考えたものだから、また下へ降りて、その電報はど こから来たのか教えてもらえないだろうか ? と頼んだとこけてしまった、すっかり、すっかり ! おお、わたしの天 ろ ( まったくいきなり封を切って - 読みたかったくらいだ ) 、使、どうか悲しまないで、心配しないでおくれ ! どうか信 いお、は . や、、 じておくれ、今度こそいよいよ、わたしがお前の夫として恥 プロシャからだという。やれやれ、助かったー どんなに胆を冷したことやら ! なっかしいアーネチカ、わずかしくない人間になるときが来たのだ。もう卑しい穢らわ たしの悦び ! 始終すっとお前のことを考えてばかりいるだ しい泥棒のように、お前の身を剥ぐようなことはしないー ろう。体を大切にしておくれ ! お願いだ。お前に接吻を送これからは長編が、あの長編だけがわれわれを救ってくれる る。わたしの小鴻、わたしはどんなに後悔しているかしれなのだ。わたしがどんなにこれに望みをかけているか、お前に どうか信じておくれ、わたしは 。さっきわたしはあまり神経質になったので、あんなに腹は想像もっかないだろう ! を立てて、お前をどなりつけなんかした。お前はわたしの天目的を貫徹して、お前の尊敬を獲得して見せる。もうこんり 使だ、わたしがどんなにお前を愛し、崇拝しているかは、おんざい賭けごとはしない。一八六五年もやはりこれと同じた 前も知っていてくれる。ただわたしを愛しておくれ。さよな った。あれ以上破滅に近い状態は考えることもできないはど ら、なっかしいアーニヤ。火曜日までに間違いなく帰る。千 だったが、仕事がわたしを救いだしてくれた。愛と希望をも 万たびもお前を接吻して、永久にお前を崇めつづける。お前 って仕事に取りかかる。二年後にはどうなるか、見ていてお を愛しお前に貞節な くれ。わたしの天使、今度こそ心配しないでおくれ ! わた フヨードル・ドストエーフスキイ しは希望をいだいて、お前のところへ心を馳せているが、し わたしの健康状態は上々だ。まったくこのうえもない気分かし木曜までは動けないのだ。それはこういうわけだ、聞い だ。気持ちのいい旅行がきいたのだ。お前と彼らのことを祈ておくれ。 っている。なっかしいアーニヤ、あまりたいして儲かるなど わたしは指環と冬外套を質に入れて、それをみんなすって しまったのだ。指環と外套に五十フランいるのだが、わたし と当てにしないでおくれ、そんなことを空想しないで。もし かしたら負けてしまうかもしれない。しかし、誓っていう はそれを受け戻す ( どんなふうにしてか、今に説明する ) 。
もちろん、カトコフはうんと渋い顔をするだろうが、よこすら、それで幸福になれる。わたしの友、お前を抱擁する、く よくよしないでおくれ、嘆かないでおくれ、わたしのことは に相違ない。もうあれだけの金をだしたのだから ( 三千ル プリ ) 、今度も断わる気づかいはない。それに、ほとんど断わ心配しないで。ただ、今日お前の手紙が届きさえしたら、わ るわけにはいかないのだ。なぜって、金なしでわたしは、どたしは幸福なのだから。さよなら、近き再会の日まで。お前 うして仕事を完結しようというのだ ? もちろん、いやなこを抱擁する。どうか苦しまないで、くよくよしないで。それ に、これは本質的に見て、決してそれはど重大なことじゃな とには相違ないが、なにしろそれはわずか二十三台分の金な いのだからね。だれだって、どんなに仕合わせな人だって、 んだから、ちゃんと働いて返してやるさ。その返事が来るま では、ドレスデンに尻を据えていよう。その返事は早くもひ長い一生の間には、まだまだこれどころじゃない、ひどい失 と月後でなければ来ないだろう。わたしの天使、お前がこん敗を経験するものだよ。ところが、わたしはあの金でばかげ なわびしい気持ちでドレスデンに縛りつけられていることをた考えから解放されたのだから、かえって安い代価ですんだ 思うと、お前のために苦しくてたまらない。でも、わたしはのかもしれないほどだ。なに、なるようにしかなりはしな 。お前を固く抱擁して、数かぎりなく接吻する。 ペリンスキイ論に着手して、カトコフからの返事を待っ間に 書き上げてしまう。それから先は、スイスへ移って、少し全身ことごとくお前のものであり、お前を崇拝する夫 ・ドストエーフスキイ も早く仕事を始めるのだ。わたしの天使、これはかえってい ・お願いだから、送金を急いでほしい。こだ いことかもしれないほどだ。あのいまいましい考え、賭博な んてモノマニヤが、今度こそわたしの頭からたたきだされる早くここから立ちたいのだ ! 金は poste restante ( 局留 だろう。今度こそおととしと同じように ( 『罪と罰』にかかめ ) で送るように。わたしの天使、すっかりお前をへとへと にしてしまったね。 る前のように ) 、仕事で征服するのだ。なるようにしかなり やしない。ただお前が淋しいだろうと思って、それが恐ろし 〇妻アンナへ お前のこと、ただお前のことばかりが心配だ。わたしの 小鴪、どうかして少しも早く会いたいものだね。この支離滅ホンプルグ、一八六七年五月二十二日、水曜日、午前十時 裂な手紙に腹を立てないでおくれ。わたしは一刻も早く郵便ご機嫌よう、わたしのかわいい天使 ! 昨日お前の手紙が 簡局で自分の運命を知ろうと思って、つまりお前の手紙がある届いて、夢中になるほどうれしかったが、それと同時にぎよ っとした。いったいこれはどうしたというのだ、アーニヤ、 かないか知ろうと思って、根限り急いでいるところだ。いま 書体じゅうがふるえているくらいだ。もし手紙を受け取ったお前はどんなふうなのだね。お前は泣いてばかりいて、夜も
めに、リューポチカのために、自分の健康など容赦しないでは博奕で両手を縛られていたが、これからは仕事のことを考 働く。見ていておくれ、見ていておくれ、一生涯働く。そしえて、これまでのように、夜っぴて博奕のことなど空想しは はか て目的を貫徹する ! お前たちの生活を保証する。 しない。要するに、仕事のほうがいい、ずっと捗がいく、そ もし日曜に送るのが間に合わなかったら、月曜には早めに して神様が祝福してくださる ! アーニヤ、わたしのために 送っておくれ。そうすれば、水曜のひるごろにはお前たちの自分のこころを守って、わたしを憎まないでおくれ、わたし ところへ着ける。もし日曜に送金することができなくても、 に愛想をつかさないで。今度こそわたしは更生したのだか 心配しないでおくれ。わたしのことをあまり考えないでおくら、い っしょに進んで行こう。わたしはお前が幸福になるよ れ。わたしにはまだそれでも足りないのだ。わたしはそうしうにする , ところで、リュー・、 ー・ハは ? おお、わたしはな てもらう値打ちがないー しかし、わたしはどうもなりはしないー しかし、わたしはただお前のこと わたしは粗野とんて卑劣漢だったろう ! しっていいほど辛抱づよいのだから。そればかりでなく、わばかり考えている。この手紙を読んだら、お前はどうなるだ たしは精神的にすっかり更生したようなあんばいなのだ ( ころうと、ただそればかり想像している ! そればかりか、こ れはお前と神様にむかって明言する ) 。もしこの三日間お前の手紙を読む前だって、わたしが帰らないために、どれだけ のことを思う苦しみがなかったら、 お前がどうなるだろ苦しむことやら、どれだけ案じることやら ! この手紙は間 う ? という絶え間のないもの思いがなかったら、わたしは にムロうように配達されるだろうか ? もしなくなったらどう むしろ幸福なくらいだ。アーニヤ、わたしの守護の天使、わしよう ! しかし、このアドレスで電報さえ届いたのだか たしのことを気ちがいだなどと思わないでおくれ ! わたしら、なくなるはずがない。万一の場合のために、もう一通は の身には偉大なことが成就されたのだ、ほとんど十年もわたんの二、三行、局留めで書いてだす。明日のうちにだす。明 しを苦しめていたいまわしい空想は消えてしまった。十年間日お前の手紙が届くかどうかと考えている。きっと届かない ( というより、兄が死んで、とっぜん借金に押しつぶされそだろうな ! お前はあす当のわたしが帰るものと思って、手 うになってから ) 、わたしはたえず博奕で儲けることを空想紙など書かないだろうね ? していたのだ。真剣に、熱病やみのように空想していた。 もし日曜に送金ができなかったら、手紙だけでもだしてお 簡が、今度こそもう何もかもおしまいだ ! あれはまったく最くれ。ほんの二、三行でもお前の手で書いてくれたら、たと 後だった ! アーニヤ、お前。冫 リよまんとうにするかどうか知らえお前に呪われても、わたしはほんとに幸福になるだろう。 書ないが、今度こそわたしの両の手を解かれた思いだ。わたし もし日曜に書く暇がなかったら、月曜にはなるべく早めに金
そうしたら、わたしは千ループリ無心して、九月の中頃か終トコフあての手紙をお前に読んで聞かせる。わたしはそれを わりには、ヴヴェーを立って、イタリア旅行をしよう。わ明日ここで書き上げる。おお、かわいいアーニヤとソーニ たしはお前に見せてやりたいのだ。フローレンス、ナポリ けれど、アーニヤ、わたしの喜び、お前も同意してく ヴェニス、ウィーンを通って、ロシャへ帰ろう ( もしお母されるだろうが、もし今度の忌わしい賭博の負けがなかった んが見えるようなら、スイスも二、三か所まわって見てもい ら、わたしはこの決定を思いっかなかったろう。この決定こ い ) 。ロシャへ着いた時には、もちろん、わたしたちは無一そわたしたちをすべてから救ってくれるのだ、わたしは今こ 文だろうけれど、もしあの長編が成功したら ( その点は、われを正確なものと信じている ! 神様、わたしは今度のこと たし自身にもわかるし、うわさも聞くたろうし、知らせても に対して、あなたにお礼を申し上げなければならないかもし くれるたろう ) 、注文も来るに決まってるし、『白加』を単行れません。これこそいまわたしを一つの望みに、わたしの仕 本に売ることもできる。わたしは債権者たちにはっきりいつ事にしつかりと固定させてくれたのです。わたしの天使、お てやる。「もしきみたちがいまわたしをとっちめてしまうな前の送ってくれる百フランのうち、今のわたしがたとえ一フ らば、つまり今すぐあの長編を強制的に売らせるならば、わランでも勝負で負ける、などと思わないでおくれ ! そう と、つか四か月ば たしは二東三文で売ってしまうことになる。・ だ、たとえわたしが今度また冒険して、いくらかでも勝てる かり待ってくれたまえ、そしたらぜんぶ払いをすますから」 ということが、たしかにわかっているにしても、最後的の決 ロシャへ帰ったら、なんで生きていくか ? ということだ 心をして、新しい希望を持った今となっては、その儲けた金 が、ロシャではわたしは方法を見つける、新しい仕事、新しのために、お前に対しても、自分に対しても、恥すかしい思 い注文を見つける。そういうわけで、いっさいはあの長編の いをするに違いない。 成功と、ヴヴェー行きにかかっているのだ。あるいは、未来わたしは今そのためにとっぜん安心した。そして、明日は ぜんたい、 といっても、 しいかもしれない。先へ行けば行くは 大きな信頼と希望をもって、カトコフに手紙を書くのだ。こ ど、よくなるだろう。もしかしたら三年も先には、すっかりれはもう今までの手紙とは違う。その気持ちがお前にわかっ 生活が安定するかもしれない。 てくれたら ! わたしは今とても元気だ、とても元気な気持 かわいいアーニヤ、お前はどうか知らないが、わたしは今ちだー ただ一つ、たった一つだけ、わたしを苦しめること のこの着想ぜんたいが、 御意に召しているのだ。カトコフは がある。ほかでもない、これからまだどれだけ長い間お前と きっと助けてくれる、わたしは信じている、確信している。 ソーニヤを見ずにいるのか、そう思うとつらくてたまらな わたしは帰ってお前とソーニヤを抱きしめたらさっそく、力いー もしかしたら、火曜日まで会えないかもしれない !
ろう ! アーニヤ、わたしはお前の夫たる資格がない。が、送っておくれー ・でも、後生だから、くよくよしたり、嘆いたりし 今度だけ堪忍しておくれ。わたしは強い希望を持ってお前の ところへ帰って行く。そして誓っていうが、お前のために未ないでおくれ。もしお前が病気したらと思うと、この二、三 日、心臓に血がにじむようだ ! よくもわたしはお前を置い 来の幸福を約東する。ただわたしを愛しておくれ、わたしも お前を限りなく、未来永劫、愛している。今度のわたしのして来られたものだ ! どうして木曜日まで暮らせるか、見当 もっかない。わたしがその五十フランで勝負をするだろうな たことを、お前に対する愛が軽いからだ、重みが足りないか らだ、などと思わないでおくれ。わたし自身がどんなに罰しどとは、どうか考えないでおくれ。ああ、お願いだ、考えな いで ! 早速お前のそばへ飛んで行く。わたしは晩の六時に られたか、どんなに苦しんだかは、神様がご照覧だ。し 加くよ , つにする。とい、つのは、このいまいましいホテルで し、何よりも一番、お前のために苦しんでいる。今お前が一 は、朝の四時に起こしてくれと頼んでも、こんりんざいだめ 人きりで ( 木曜日まで ) 、くよくよしたり、泣いたり、苦し んだりして、体に気をつけないだろうと思うと、心配でたまなのだから。 らない。わたしにとって神聖な天使であるアーニヤ、どうか 2 義母スニートキナへ わかっておくれ。わたしはまじめにいっているのだから。こ ジュネーヴ、一八六七年十二月十八日 ( 六日 ) れからは別な生活がはじまるのだ。お前もいよいよはんとう っさい 尊敬してやまぬなっかしいアンナ・ニコラエヴナ、心から に、仕事をしているわたしを見ることになるのだ。い を回復し、救済する。この前は死んだようになって帰って行命名日のお祝いを申します。わたしもアーニヤも、手紙がち ったが、今度はわたしの胸に希望がある。ただ一つ苦しいのようどその日に届くようにと思いましたが、きっと間に合わ さよなら、わなかったでしよう。どうかわたしたちをお咎めないように。 は、木曜日までどうして暮らしていくかたー たしの天使、お前を抱擁し接吻する ! ああ、なんだってわそれから、わたしがほんのたまにしか手紙を差し上げないこ たしはお前のそばを離れて来たのだろう ! お前の手と足をとも、お咎めないように願いします。最近数か月、仕事がと ても忙しくて、先へ行けば行くほど、忙しくなるのです。期 接吻する。永久にお前を愛する フヨードル・ドストエーフスキイ 限を切った急ぎの仕事なのです。遅くも二週間後には、「ロ ・金は次のようにして送ってもらいたい。五十フシャ報知』に原稿を送らなければならないのですが、わたし ラン札を ( 両替屋で手に入れて ) 、手紙で包み、封筒に入れはまだ少しも清書していないのです。アーニヤは前とおなじ て、 Saxon les Bains. poste restante, recommandéでように手伝ってくれます。それでもこの二、三か月、わたし
9 当ニコライへ ^ ペテルプルグ、一八七三年九月十四日〉 9 ・・フヨードロフへ なっかしいコ ーリヤ、もしナタリヤをよこすのなら、お前 のために十ループリ用意してある、何か困ることがあるか、 ペテルプルグ、一八七三年九月十九日 ーヴロヴィチ。 それとも病気でもした場合のためと思ってね。わたしも病気 がちで、とても忙しい。先週は医者にかかって、家にこもっ あまりにも長い間お返事しなかったこと、なにとぞご寛恕 ていた。熱があったのだ。お前を抱擁する。 を願います。はじめ、貴兄の最初のお手紙を拝見した後、た お前の・ドストエーフスキイ とい少しでも訂正しようという気持ちで、喜劇の原稿にマー グするつもりでいたのですが、やはりとやかくと思案して、 9 ・・アレクサンドロフへ 決断がっきかね、したがってご返事が遅れた次第です。とこ ^ ペテルプルグ、一八七三年九月十五日〉 ろで、今度、貴兄の二度目のお手紙をちょうだいして後、健 アレグサンドロフ君、予定の二百五十行のかわりに、五百康を害して臥床さえもする始末でしたし、しかも、編集上の 行も書いてしまったらし、 し。が、短くすることは断じて不可仕事をもしなければならなかったので、今日までご返事を差 能です。どうしたものだろう ? ぜひとも誌面を見つける必し上げるために、ほとんど寸暇をも持たなかった次第です。 要があるし、それも早く決定しなければなりません。何か一 さて、貴兄にきつばりと次のように申し上げます。小生は っ原稿を抜くことは、、 しつでもできるけれど、例えば、『鉄改訂に着手する決断がっきませんし、また不可能なのです。 道』を抜いて、しかも、それと同時に、前の配列をそのまま自作の小説「伯父様の夢』は十五年間、読み返したことがあ にしておけるかどうか ? りませんでしたが、今回一読して、よくない作品と認めまし もしだめだとすれば、つまり『週間雑報』、『外国の出来 た。あれはあの時シベリヤで、刑期満了後はじめて、ただた 事』、『ペテルプルグ概観』等、その時はわたしの原稿をどこだ文学活動を復活しようという目的で、検閲を恐れて戦々恐 かほかへ移すわナこま、、 恐としながら ( もとの流刑囚として ) 、書いたものでありま 要するに、わたしはどうしても、きみに会わなければならす。そういったわけで、、いにもなくきわめて罪のない、驚く ないのです。辻馬車を雇って来てください、金はわたしが払ばかり暢気千万な中編を書いた次第です。あれを基にしたヴ います。きみはなんと思うか知りませんが、それ以外には仕オードビルぐらいならまだこしらえられるでしようが、喜劇 方がないのです。 ドストエーフスキイ
ドレスデン、一八六九年十二月十六日 ( 二十八日 ) 返事を出さなかったことは、くり返していうが、あやまる。 なっかしい大事な弟アンドレイ・ミハイロヴィチ。九月三 まず第一にいきなり用件にかかろう。 十日付、ただし郵便の消印で見ると十月十二日に出されたお お前の手紙には、「わたしの祝辞に返事をくださらないの 前の手紙は、ここの暦で十一月一日に落掌した、つまり露暦は、恥すかしいことじゃありませんか」と書いてあるが、わ の十月十九日だ。が、それにしてもたいへん長いこと返事をたしはそのお返しにこういおう。「わたしを訴訟好きの強欲 しなかった。それはほかでもない、文字どおり昼も夜も急ぎもののように想像したのは、恥ずかしいことじゃないか」 の仕事にかかっていて、今やっと完結し、発送したばかりだ と。その気持ちはお前の手紙の終わりに書いてある文句で読 からだ。急ぎの仕事をしている時には、だれの手紙にも返事めた。お前はいろんな事実を挙げて、伯母さんの遺言を廃棄 を書くことができない、 そうすると三日くらい調子が乱するのは不利益でもあり、不可能でもあることを証明してい れて、仕事がうまくいかないからだ。 るが、そうすることによって、わたしがそういう希望を持っ お前はわたしの結婚に祝辞を送ったのに、返事をくれなかているかのごとく、想像しているように思われる。つまり、 ったといって、わたしを責めているがそれは不当だ。わたし多くの貧しい遠縁の人々が、伯母さんの遺言でもらおうと期 まさし が返事を出さなかったのは、あの時なにやかやと特別いそが待しているものを、わたしが奪おうとしている、 しいことがあって、一日延ばしに延ばしているうちに、結 ロくこ、ついうふうに想像していることになる。しかし、事のし 局、どこへあてて返事を出したらいいか、わからなくなってきさつを手短に述べるのが、一番いいだろう。 しまったからだ。いずれにしても、これはわたしとしてゆる九月のはじめに、わたしはマイコフから手紙を受け取っ すべからざる行為だったことま、、 冫しさぎよく認める。ただ一た。これはわたしに非常な友誼を示してくれる人で、このう つだけいっておくが、これは間違いない。あのとき返事を出えもなく落ちついた、金棒引きなどには縁のない人物なのだ さなかったとしても、それは薄情なためではない。わたしは が、それには、こんなことが書いてあるのだ ( Z ・彼は 心からお前を愛し、高く買っている。妻などもわたしの話をわれわれの家庭のことも、伯母さんのことも、その他の事情 聞いて、お前のこともお前の家族のことも、もう知っていて、 も、何ひとっ知らなかったのだ ) 。ヴェセローフスキイの親 お前ともお前の奥さんとも、親しく知り合って、ぜひ友だち友であるカシ = ビリョフから、うちの伯母さんが死んだこ 同士になりたいと、心から望んでいるくらいだ。今度の手紙、 と、遺言によって四万ループリが修道院へ行くことになって また前の手紙に対してお礼をいう。お前にたいするわたしの いること、伯母さんの遺言執行人である ( ? ) ヴェセローフ 気持ちは、、 しつでも変わりないことを信じておくれ。しかし スキイがカシュピリョフに、「ドストエーフスキイ一家の中
が出るのではないかと、それに当惑している。もしそうだとのうえもなく歓待してくれたが、まあわたしの立場を察して したら、そのときわたしはまるひと月もお前たちのところへおくれ、ーー・手をつかねて、夫人の涙を見ながら、自分はこの 行けないわけだ ! また一方、たとえ禁足命令が出ないまで人たちに四百ループリの借金があるのだと意識する気持ち。 お前と子供たちに接吻を送る。もしかしたら、やがて会え も、もし土曜日に俸給を受け取れなかったら ( 前便で知らせ た ) 、どうせ出発はできないから、その次の土曜にも行かれるかもしれない。わたしのごちやごちゃした雑用はいちいち ない。というのは、そのころは拘引の期日が迫ってくるから書き立てまい。少しも早くお前たちのところへ行くために は、うんとたくさんの仕事をしなくちゃならない。例えば、 だ。そういうわけで、土曜日には是が非でも、金をだすよう に主張しなくちゃならない。が、うまくいくかどうかわから敢然と四日間職場を離れるためには、今度の号の三分の二を ないのだ。百千のこまごました雑用のほか、一週間ずっと全前もって、ちゃんと編集しておかなくてはならない。昨日、 速力で執筆し、仕事をして、金曜日には全部なにもかも引き外国から帰 0 て来たソロヴィョフ : が家へや 0 て来 た。こうした訪問は、わたしにとってまったく貴苦だ。それ 渡して、立てるようにしなくちゃならない。そういったわけ で、これから三日の間、それこそ懲役のような仕事が控えてから、のつびきならぬ編集上の手紙も。ポリヤコフが訪ねて 来た。七月の初めに、モスクワからトウーラへ行くつもりだ いるのだ。 芝居を見に行ったとのこと、けっこうだった。お金は不足とのこと。ここは息苦しくて、やけに暑い。お前を抱擁し、 しつかりと接吻する。子供たちはまた特別に。わたしのこと ないかね ? わたしのはうは、編集費が恐ろしいはど出てい く。が、自分としては無駄づかいをしない。三日まえにカシを何か話して聞かせておくれ。さよなら。全身すべてお前の 日「ザリャー』 ・ドストエーフスキイ ュビリョフ ) のところへ行 0 た。主人の足はだ の発行者 んだんわるくなる。ところが、ソフィャ夫人はその日どこか ゴスチーヌイ・ドヴォール 7 ・ D ・ポレーツキイへ から、二百二十ループリ借りたところ、それを勧工場で 落としてしまったので、家にはびた一文ない始末だ。これは〈ペテルプルグ、一八七三年六月三十日〉 すっかりほんとうのことだ。その二百二十ループリというの尊敬してやまぬアレグサンドル・ウスチーノヴィチ、小生 は、ある高利貸から借りて、もう三年間も返せないでいる二千はたぶん今夜スターラヤ・ルッサへ、三日ばかりの予定で出 簡ループリの利払いに当てていたので、ソフィャ夫人は金を落発するでしよう。水曜日までには帰りますが、最大限は、木 としたのを残念がって、わたしの前で泣いていたよ。まった曜日です ( 午前八時 ) 。ところが、印刷所は木曜日まできっ 書く、あの人たちの境遇は恐ろしいものだ。二人はわたしをこと忙しいに違いありません。小生は短い原稿を三つ渡します