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検索対象: ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)
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1. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

なっていなければならないのだ。わたしは勝負で儲けなけれ がお前をつれて来なかったからだ。そうだ、そうだ、それな のだ。そのために、わたしもお前のことを考えてくよくよすばならなかったのだ。是が非でも ! わたしは自分の楽しみ のために勝負しているのではない。だって、これが唯一の救 るし、お前もわたしの留守で死なんばかりの思いをしてい る。わたしの天使、くり返していうけれど、わたしはお前をいなのだからね。ところが、こうして計算がまずかったため 貴めているのじゃないよ。わたしのことをそんなに思ってく 何もかもふいにしてしまった。わたしはお前を責めてい れるお前が、なおさらかわいくなったくらいだ。でもね、察るのではなくて、自分を呪っているのだ。どうしてお前をつ れて来なかったのだろう ? 毎日、すこしすっ勝負をしてい してもおくれ。例えば昨日など、どんなふうだったと思う ? 送金の依頼を書いたお前あての手紙を出した後、わたしはルて、勝たないというはすがない、それは確かだ、確かだとも。 レット場へ行った。わたしのポケットには合計二十グルデンわたしには二十回からの経験がある。ところが、それを正確 に承知していながら、負けてホンプルグを立たなければなら しかないのだ ( 万一の場合のためにとっておいたのだ ) 。と 7 もーし しかも、わたしにはよくわかっているのだ、 ころが、わたしは十グルデンだけ冒険を試みた。わたしはまない。 る一時間、冷静を保って計算を守ろうと、ほとんど超自然的わたしにもう四日たけ猶予を与えてくれたら、その四日間に 間違いなく、すっかり取り返しをつけて見せるのだが、しか な努力をした。その結果、金貨で三十フリードリッヒスドル かわい し、もちろん、わたしはもう勝負などしやしない ! 勝ったのだ。つまり三百グルデンというわけだ。わたしはう いアーニヤ、わかっておくれ ( もういちど哀願する ) 、わたし れしくてたまらなくなり、今日にもすぐ何もかも片づけて、 はお前を責めてはいない、責めてなどいはしない。その反対 せめてもう二倍勝ったうえ、さっそくここを出発しようとい う望みが、たまらないほど、気ちがいじみるはど湧き起こつで、お前をつれて来なかった自分を、自分で責めているのだ。 Z ・ Z ・もしどうかして昨日の手紙が紛失するよ て、一息つく暇も、われに返る暇もなく、ルレット台へ飛びか かって、金貨を賭けはじめたのだ。そして、すっかり、それうなことがあったら、万一の場合のために、その内容をここに こそすっかり、最後の一コペイカまで負けてしまった。つま掻いつまんでくり返しておく。わたしは猶予なく、二十イン ペリアールを、銀行為替で送るように頼んだのだ。つまり、銀 り、煙草代の二グルデンだけ残った始末だ。かわいいアーニ 行へいって、ホンプルグのこれこれの宛名へ ( アドレスはな ヤ、わたしの喜び ! どうかわかっておくれ、わたしには借 簡金があって、それを払わなくてはならない、でなければ、わるべく正確に ) 、 poste restante で、だれそれに二十インペ といえば、銀行のほうではどうすれ 丿アール送ってほし、、 たしは卑劣漢よばわりされる。ね、わかっておくれ、わたしは しししか、ちゃんと知っている。なるべく早く、できるだけ引 書カトコフに原稿を書いてやるために、ドレスデンで罐詰めに

2. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

それはすでに量り知れぬほど大きなことです。それから、あした。あの論文が興味ふかく感じられたのは、主として、こ えていわしていただきますが、他人にたいする影響というもれこそまさにドイツ哲学者の今日的な、最近の考え方だとい のは、そう急にできあがるものではありません。わが現代社うことを予感したからです。しかし、どうでしよう、ニコラ 会の不条理が、かえって意味を持っています。つまり、自分イ・ニコラエヴィチ、彼らは貴兄を目して、自分らのほうに の運動の法則を持っています。最後に、貴兄はご自分の論文はもうとうから鉄砲が用いられているのに、依然として弓と が直接に与える利益とか影響とか、または貴兄の論文が「自矢で戦っている時代おくれの老人と見なしますよ。小生はど 分がいわなくっても、同じように考えている人たち」のためうかというと、貴兄の論文を二度も、おまけに喜びをもって のみに書かれているかどうか、などということについては、拝読しました。のみならず、貴兄は論文を書くのに、驚嘆す べき腕を持っておられます。貴兄の文学的用語は、彼らのだ 判断することがおできにならないはずです。これはほんとう れよりもすぐれています。それはなんといわれても、最後に の話です。 とはいうものの、小生の考量するところによると、影響とは認められすにはいません。貴兄が今はやりの哲学の仕方に いうことを判別する若干の尺度はあります。雑誌「ザリヤああした侮辱の態度を示されるのが、実にうれしかったので ー』は主として主義主張の雑誌であり、批評の雑誌でありますが、しかし彼らも貴兄に答えることが、何より望ましく思 す。二、三年さきの読者の数が、大衆の間における影響を示われます。 すでしようし、それと同時に、疑いもなく批評の影響をも表ところで、今の文学ぜんたいは、なんというやくざな調子 示するでしよう。なぜなら、批評こそ『サリャー』の主要なでしよう ! 理想の無秩序と混乱は、もう手がつけられませ 特色、大衆に対するおもな専門的分野だからです。大衆は無ん。それは当然おこることなのですから。しかし、あの調子 意識的ではあっても、いつもそういうふうに自己を露呈するは一般的なものです ! なんというやくざさ加減でしよう、 ものです。 なんという車夫馬丁的な調子でしよう ! しかも、何ひとっ ところで、小生は、貴兄がストルーヴ = ( 現実主義的な 観念論哲学者 ) を称として自分の身についた堅固な思想、せめて何かしら、 思想らしいものがないの 揚されているものと思っていました ! 少なくとも、その善たとえ虚偽なものであっても、 意のために。ト生は哲学のはうではだめな人間ですが ( しかです ! 彼らはいったいなんという哲学者でしよう、なんと 簡し、哲学に対する愛の点ではありません。哲学に対する愛は いう雑文家でしよう ! 完全なやくざです。しかし、そのか 「心霊現象の 強烈です ) 、ストルーヴ = の学位論文 ( ) を注意してわり、個々の存在としては、思索し、かっ、影響力を持 0 た 独立的要素』 書読んだ時、ト / 生自身も心霊の物質性が新しいように思われま人たちもいます。それはいつもあらゆる混乱に伴う現象で

3. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

こくわずかしか聞いた す。ただこれら個々の存在が、大衆の不条理を克服してくれせん。一私人としての彼については、・ ればいいのですが、見てご覧なさい、大衆もついには彼らのことがありません。 調子を受け入れてしまうでしよう。 『ロシャ報知』の小説を懸命に書いていますが、これがいっ ついでに、 「ゴーロス』の社説で、「完全にカトコフたいどうなることやら、想像することができません。小生は 「モスクワ報知」にとどめを刺して、今ではもうだれもカトコフいままで一度もああいうテーマ、ああいうふうのものを取り の文章を読まないようにしてしまった」という、あの若い教上げたことがないのです。今年こそはロシャへの帰還を実現 しようという空想で、、いを悩ましています。あらゆる努力を フスキイ。いったいだれですか ? その幸運な男の名はな んといいます ! お願いですから、少しも早く手紙で知らせ試みるつもりです。ああ、ニコライ・ニコラエヴィチ、小生 てくださいー もうずっと前、二十年以前も昔の話ですが、 は言葉に伝えることができないほど、外国に暮らすのが堪え 英国で「虚栄の市』が初めて出た時、小生はクラエーフスキがたくなりましたー イのところへ寄りました。小生は、そのうちデイケンズが何尊敬してやまぬニコライ・ニコラエヴィチ、貴兄に折り入 か書くかもしれないから、新年号に翻訳して載せたらいいだ ってお願いがあるのです。貴兄を煩わすのは良心が咎めるの ろうといったところ、グラエーフスキイはいきなり小生に向ですが、どうか助けてください。カシュピリョフが毎月十五 かって、「だれですって ? デイケンズ ? デイケンズはと 日に百ループリずつ送ると小生に約東したのは、貴兄もおそ どめを刺されましたよ ! 今あちらではサッカレーが出現しらくごぞんじないことはあるまいと思います ( 彼はそのこと て、いきなりとどめを刺してしまいました。いまどきデイケを正確に書いて、期日まで自分できめたのです ) 。その最初 ンズなんか、だれも読むものはありません ! 」と答えたものの送金は五月十五日 ( 露暦 ) と彼が自分できめたのです。と です。その教授のことは「ザリャー』で読んだのです。「ゴころが、もう五月二十八日になるのに、まだてんで何ひとっ ーロス』は読んでいます。なかなかいい社説がありました。 受け取っていません ! ニコライ・ニコラエヴィチ、貴兄は ニコライ・ニコラエヴィチ、どうかその教授の名を知らせてほんとうになさらないでしようが、こうした事務的態度は小 ください 生のいっさいの仕事と、当地における全生活をぶちこわして そうそう、もう前から、おききしたいと思っていたのですしまいます。小生はあの時そういうふうに予定を立てたの が、貴兄はレフ・トルストイと個人的にお知り合いですか ? で、五百ループリはすっかりなくなってしまいました ( 当地 もしお知り合いでしたら、彼がどういう人間か、どうそお知にも借銭があり、それに買物もしなくてはなりません ) 。あ らせ願います。小生は、彼について何か知りたくてたまりまのとき送ってもらった五百ループリを、小生はかっきり五月

4. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

ヴィス・ ーデン、一八七一年四月二十九日、土曜日 えることを忘れた。あるいは大事なことかもしれない。 かわいいアーニヤ、今日 ( 午前九時 ) ゅうべ夜中に書いたわたしの手紙を家で、つまり Moritz ・ Strasse あてで受け取 手紙を、 Moritz ・ Strasse ( モ ーリツツ街 ) うんぬんの宛名で発ったとしたら、お前は定めし手紙でなく、わたしを待ってい ただろうから、お母さんにはこんなふうにいったらいいだろ 送した。いま出すこの手紙は、前のが届かないか、それとも 冫しつものう ( お母さんはもちろん、お前が待っていたことを知ってる ひょっと遅れるかもしれないという予想のもとこ、、 とおり、局留めにした。そういうわけで、いずれにしても明に相違ない ) 。わたしは発作が起こって、そのために出発が できなかった。緊張した状態で、しかも夜ねむらずに、十七 日の日曜には、わたしの便りが届くことを確信している。 前の手紙にすっかり詳しく書いておいたが、わたしはお前時間も汽車の中で過ごすのは危険だから、発作がぶりかえさ ないために、もう二、三日のこって休養する、とまあこんな のなけなしの三十ループリを耗ってしまった。そこで、もう 一度、これを最後にわたしを助けてもらいたい。つまりもうふうに、わたしの帰りが延びたことを、お母さんには説明し ておくんだね。もしお前がわたしに送金のために、品物を質 三十ループリ送ってもらいたいのだ。 に入れに行くのを知られたら、その場合にも、何やかやいう アーネチカ、わたしは今日、八時に起きた、夜中の四時に ことができる。つまり、わたしはドレスデンへ帰る金がなく 寝たので、四時間しか眠っていない。それから、夜中に書い た手紙を、郵便局へ持って行かなければならなかった。昼間なったし、それにお前の送金を三昼夜待たなければならず、 は、お前のことがいっそう心配になってきた。ああ、お前はその三昼夜が余計なついえになるので、もう十五ターレルで なく、それ以上おくらなくてはならないとね。 どうなるだろう、わたしはなんということを仕出かしたのだ アーニヤ、わたしは始終、お前のことを考えて、、いを悩ま ろう ( 電報を打っことは、お前をびつくりさせてはと思っ している。それから、わたしたちがロシャへ帰ることも考え て、遠慮した。そして、手紙も Moritz ・ Strasse としたほう が正確で、速く着くだろうと思ったわけだ。これは昨日の夜ている。始終カトコフとマイコフの金を当てにしているの だ。わたしたちはなんとか身の振り方がつくよ。カトコフは 中の手紙で、すっかり詳しく説明しておいた ) 。 これから三昼夜、たえがたい苦しみが控えている、もちろ六月より前に送金してくれる ( わたしは手紙を書いて、よく 。しか頼むつもりだ ) 。マイコフには一生懸命に泣きつく。わたし ん、精神的な悩みだ。体のほうはどうやら丈夫らしい 簡し、お前はどうだろう、達者でいるかね ? これがわたしにの胸算用では、それだけの金があれば、何もかも始末をつけ はたまらないのだー て、着物や肌着さえも揃えて、無事に到着できるはずだ。と ころで、べテルプルグへ行ったら、金をつくって見せる。そ 書司祭のところへは行かない。あの手紙には何やかや付け加 うち 413

5. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

家主のアロンキンの名前と父称を、必ず知らせておくれ。 2 兄嫁エミリヤ・フヨードロヴナへ きっとだよ。わたしはあの人に手紙を書くのだから、必要な んだ。もし会ったら、よろしくいっておくれ。そして、わた ジュネーヴ、一八六七年十月一一十三日 ( 十一日 ) しは一文なしになっても、家賃はそれこそ間違いなしに払尊敬してやまぬ善良なるエミリヤ・フヨードロヴナ、お手 う。それはあの人が善良な、賢い、潔白な人間なので、あの紙ほんとうにありがとうございました。これであなた方のこ 人に対して二枚舌を使うようなことをしたくないからだ、ととについて、少なくとも、 いくらかの消息が得られたわけで ゞついってほし、。 す。昨日パーシャに手紙を出して、あなたとフェージャにも ひょっとしたら、エミリヤ・フヨードロヴナは、二、三日やはり昨日、手紙を書こうと思ったのですが、間に合いませ のうちに六十ループリ受け取るかもしれない ( わたしがあのんでした。それに、なにもかもいっしょの封筒に入れるよ ひとのところへ送るように頼んだのだ ) 。そのうち、四十ルり、別々のほうがいいのです。なぜって、手紙が時々なくな ープリはあのひとが取って、二十ループリはお前のものだ、 るからです ( そんなことが一度ありました ) 。そんなわけで、 ただしお前が困っていればだ ( 考え出した困り方でなく、ほ 一つの手紙は紛失して、一つの手紙は届く、ということもあ んとうの困り方だよ ) 。わたしはマイコフにこの二十ループりますから、たとえ、何にしても、便りは便りです。あなた リを、分けてお前に渡すように頼んでおいた。しかし、催促がお達者なそうでけっこうですが、フ、ージャの経済状態が に行ったりなどしてま、ナよ、。 。しレオしというのは、その六十ルー よくないと聞いて、とても心配しています。ところが、どう プリは、送って来ないかもしれないので、そうしたらマイコでしよう。あなたが何かの扶助金をおもらいになった、とい フはそれを受け取らないわけだ。それは大きにありそうなこ うことを当地で聞いて、とてもとてもうれしく思いました。 となんだ。わたしは万一の場合に書いただけだ。今日はお前わたしは文学基金からだと思いました。だって、ほかに出る に手紙を出すが、明日はフェ ジャと、エミリヤ・フョ ところがないじゃありませんか ? ( アンナ・ニコラエヴナか ドロヴナに返事を書く。が、さしあたり、わたしとアンナ・ ら聞いたのじゃありません。 ) わたし自身が無一文なので、 ー丿エヴナが、よろしくと伝えておくれ。 あなた方の境遇を思うたびに、自分でもはんとうに苦しくな ・アンナ・グリゴ ー丿エヴナが、オリヒン速記学 校校長 ) るのです。だから、この便りがどんなにうれしかったか、よ はやはり前と同じ住居にいるか、きいてほしいと頼んで いろしくご判断を願います。ところが、今になって見ると、そ る。 れはみんなうそで、あなたは何もおもらいにならなかったー わたしの状態はこんなふうなのです。わたしはこのジュネ 2

6. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

わたしは一度、この春の終わり頃に、手紙を出して六月か七もわたしたちを不仲にしてもいなければ、そんな考えも持っ 月には家賃を送る、少なくとも半分は送ると、希望を持たすていません。むしろ、正反対です。この言葉を文字どおりに ようなことをいってやったのです。彼がいまわたしに腹を立受け取ってください。 ついふた月半まえにペテルプルグへ てているのは、当然のことと思います。わたしはいま彼に詫 ( それはパーシャあてのもので、直接あなたに関係したもの びの手紙を書いて、せめてもうふた月あなたを置いといてくではありませんが ) 手紙を出して、もうふた月も返事を待ち れと、頼むことにします。しかし、あなたもわかってくださるながら、心配のしどおしでいたのに、思いもよらず、六か月 でしようが、もうこうなったら、あの男の考え一つです。金も手紙をくれないなどと、非難の言葉を聞かされるなんてー も払ってくれず、わたしの帰りもいっかわからないというのもうこうなると、 いったいどう考えたらいいのか、わからな では、あの男も疑いを持つようになります。もう一年半も待くなります。 ってくれたのですから、こんなことは古今未曾有です。わた 健康が衰えているにもかかわらず、わたしは昼も夜も仕事 しは金の入り次第、あの男から払いを始めますが、それにしに忙殺されています。暇がないものですから、 ーシャに手当 ても、今はわたしの手紙もわたしの頼みも、あの男の目から紙を出して、特別あなたに書かなかったことについて、お腹・ 見ると、たいした価値がなさそうに思われます。 立ちのないように願います。もっとも、用事はあなたに関係 この手紙はアロンキンあての手紙に同封して、これをあな したことで、それに、あなたにくれぐれもよろしくと、申し たに渡すように折り入って頼みます。わかってくださることつけたのですが。わたしはそれどころか、みんなが手紙をく と思いますが、いろいろの手紙、ことにわたしにとってきわれなくなった時でさえ、絶え間なく手紙を書いていました。 めて重要な手紙がなくなるとすれば、相当の処置をとらなけ これはくり返して申します。妻がよろしくと申し出ました。 ればなりません。このアロンキンあての手紙を、書留にしまわたしを覚えているすべての人によろしくお伝えを。どうか す。そういうわけで、この手紙は必ずあなたの手に入るに相信じてください、わたしは永久にあなたに忠実な人間で、兄 違ありません。そして、ガヴリーロフのことについて、あなのミーシャの思い出のために、最後のものまであなたと分け たから折り返し返事があるものと思っています。 合おうと思っているのです、もしその最後のものがわたしの エミリヤ・フヨードロヴナ、あなたは手紙の中で、だれか手もとにあったら、です。心からあなたを尊敬している弟 ・ドストエーフスキイ 簡がわたしたちを、つまりわたしとあなたを喧嘩させようとし ているが、それは神様にたいして罪なことだ、と書いておら わたしはここから引っ越そうと思ってはいますが、宛先は 朝れますが、それは間違いです。どうか信じてください、だれやはり同じヴヴェーです。もし引っ越したら、手紙を出しま

7. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

フローレンス、一八六九年一一月二十六日 ( 十四日 ) 何もかもうまくいくようでしたら、少しくらいの仕送りは毎 拝啓、尊敬してやまぬエミリヤ・フヨードロヴナ、八日ほ月するようにします、パ シャにもあなたといっしょに。し ど前にお手紙 ( 一月二十一日付 ) を受け取りました。ところかし、もう一度お願いしますが、これを決定的な約東ととら が、その間にあなたは、一月の二十二日か三日にだしたわた ないでください。 しの手紙を受け取られたはずなので、返事を遅らしたわけで あなたがマイコフから受け取られた四十ループリと、 す。というのは、もう前にだした手紙に、おたずねの件は残シャの受け取った六十ループリは、カトコフから出たもので らず書いてあるからです。しかし、あなたの手紙にはもう一す。小生は仕事を完結できないで、雑誌の発行を遅らしてし つ、今までのようなあやふやな送金のかわりに、毎月きまっ まったので、無心などする権利は毛頭なかったにもかかわら て送ってもらえないか、というおたずねがありました。それず、カトコフに百ループリだけ頼んだのです。彼は実に善良 はもちろん、何よりいいことで、わたしもすでにそのことをな人だものですから、わたしの頼みを聞いてくれて、依頼し 考えていたのですが、それをいったいどうしたらいいのでし たとおり、マイコフにあてて百ループリ送ってくれたわけで よう。わたし自身も一生涯の間、時おりいい金を稼ぐこともす。そのかわり、わたしはもう自分のためには無心するわけ ありましたが、何ひとつ一定のものを持たないできました。 にいかず、そのため目下すこしの収入もなく、つけで生活を そういうわけで、今そうするわナこ、、 し力ないのです。あなた し、とても困っています。そればかりでなく、これから先も の役に立とうと思う念願は時として、初め約東しながら、そ厄介なのです。妻が妊娠して、今もう三か月になります。生 の後になって実行することができないような結果をもたらしみ月は九月になる予定です。ところが、わたしはそのころま ました。ですから、約東すべきではありません。だから、今でに収入がどうなるか、自分がどこにいるか、それさえはっ もわたしは何ひとつはっきりした約東をしません。しかし、 きりわかっていない有様です。一番いいのはロシャへ帰って あなたの書いておられるように、毎月はっきりとお役に立っ いることですが、いまわたしが帰れるかどうか、あなたご自 ようにする、多少の望みがあることを、わたしは隠そうと思身でおわかりのはずです。ところで、ヴァーニヤ・スニート 妻の いません。しかし、これはなにぶん、希望だけなのです。こキン ( 弟がいったように、わたしがここに二年も暮らすよ れがどんなふうに実現するものやら ? しずれにしても、わうになるだろうということは、・ とうか神様のお慈悲でゆるし 簡たしはどんなふうになるかお知らせせずに、長いあいだ打ってもらえることと思います。なんとかもう少し早く解決がっ ~ 、でしよ、つ。 ちゃっておこうとは思いません。諾か否かを、なるべく早く お知らせするように努めます。もし諾であったら、つまり、 あなたがご自分の境遇を書いておられるのを読んで、わた幻

8. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

うに思われました。二十五台分 ( あるいは三十台になるかもすか ? さて今度は、こういうことを想像してみてください。 しれません ) に対して、百二十五ループリずつの稿料を払うばくが自分の望んでいるとおりに、うまく完結するとして、 ことを考えて、ぎよっとしたわけです。要するに、彼の政策ばくは実のところ、こんなふうに空想しているのです。さっ は ( いやはや、ばくのところへ使いをよこしはじめたこと ) 、そく今年中にこの作品を出版者に売りつける、するとまた二 一台分の稿料を減額することですが、ばくのほうは増額する千、いや、それどころか、三千ループリくらい手に入って来ま す。ねえ、これは公職ではできないことでしよう。出版者に ことです。で、われわれの間には暗闘が行なわれています。 と思っている売ることは大丈夫できます。ばくの作品は一つとしてそうし 明らかに、彼らはばくがモスグワへ来ればいい なかったものはないのですから。しかし、ただ一つ困ったこ のです力 。・、、ばくは折を待っています。その目算はこういう とは、ばくはこの長編をだめにしてしまうかもしれません。 のです。もし神の助けがあるならば、この長編は素晴らしい ものになるかもしれません。ばくは三編まで ( つまり全体のそういう予感がするのです。もし債務のために監獄へぶち込 半分 ) 発表してしまったら、読者大衆の間に相当の効果があまれでもしたら、きっとだめにするどころか、完結すること がるに相違ないから、そのときばくはモスグワへ行って、先さえできないでしよう。そうしたら、何もかもおじゃんです。 しかし、あんまり自分のことをしゃべりすぎました。どう 方がはたして減額するというかどうか見てやろうと思いま す。それどころか、かえって増額するかもしれないほどです。か、エゴイズムと思わないでください。それは、あまり長く それは神聖週間のころになるでしよう。そのほか、あちらへ自分の片隅に閉じこもって、黙りこくっている人間には、だ 行っても、前借りをしないように努めます。なるべく緊縮しれでもあることです。お手紙によると、貴兄もご家族一同 も、次々に病気されたそうですね。それはたいへんでした。 て、乞食みたいな生活をします。自分のものは逃げて行きは しないですからね。ところが、もし前借りをすると、いよいよ在外生活は、せめて健康くらいで報いられるのが当然なので 最後的に稿料の話をするとき、もう精神的に自由でなくなっすがねえ ! もし貴兄とご家族が、この冬ペテルプルグで過 こち ごされたら、、 しったいどんなことになったでしよう ! てしまいます。二週間ばかり前冫冫 こくの長編の第一編が 『ロシャ報知』の一月号に載りました。題は「罪と罰』といらはもう恐ろしいばかりでした。しかもこの夏は、コレラで もご入来あそばすことでしよう。ご令閨にばくの心からなる うのです。ばくはもう感激に溢れた評言を、たくさん耳にし 簡ました。そこには大胆な、新しいものがいろいろあります。尊敬の念と、ありとあらゆる幸福の祈願をお伝えください。 しかし、かんじんなことはまず健康からはじまるべきです ! 貴兄にお送りすることができないで、じつに残念です ! 書ったいそちらではだれも「ロシャ報知』を取っていないので貴き友よ、貴兄は少なくとも家庭的に幸福ですが、ばくは人

9. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

寒さにぶるぶるふるえて、フランネルと綿を離さないのですしかし部屋の中で水が凍るのですから、同じことじゃありま ( 風呂というものはまったくありません。この国の人間の不せんか。今度小生は住居を変えました。気のきいた部屋が二 潔に馴れていることは、想像に余ります ) 。冬の服というもつありまして、一つはいつも寒いのですが、もう一つは暖い のです。この暖いほうの部屋では、いまいつも十度か十一度 のをこしらえないで、ほとんど夏と同じ服で飛びまわってい ます ( しかし、そういう冬を過ごすのには、フランネルだけを保 0 ていますから、まあこれで生きていけるというもので ではあまりにも不足です ) 。これらすべてにもかかわらず、す。 こんなにたくさん書きましたが、まだ思うことをほとんど ほんの少しでも住居を改善しようという知恵がないのです ! だから小生は手紙がきらいな 石炭や薪を使う壁炉など、よしんば一日焚いたところで、どなんにもいえませんでしたー のです。何よりかんじんなこととして、貴兄からのお手紙を うしようもありません ! ところが、終日たきつづけると、 一日に二フランかかります。どれだけの森がむだに滅ばさ待っています。お願いですから、少しも早くお便りをくださ ト生に手紙をくださるのは、今のような悩ましい状態に れていくかわかりませんが、しかも暖くはありません。しか も、どうでしよう ? ただ窓を一一重ガラスにさえすれば、壁いるときは、ほとんど善行と同じ意味にまで達します。そう べーチカっ そう、忘れていました。お願いですから、小生の長編につい 炉でも凌いでいけるのです ! ( 煖炉を築くなんてことは、小 生も別に主張しません ) 。そうすれば、あの森も完全に保護て貴兄に書いたことを、ある時期までだれにもお伝えになら ないでください。ひょっと『ロシャ報知』の耳に入ったら困 することができるのです。今の有様では、二十五年も経った ら、森なんかすっかりなくなってしまいます。彼らはまるでるのです。というのは、小生は『ロシャ報知』にうそをつい はんとうの野蛮人と同じような暮らしをしています。しかて、もう草稿ではたくさん書いてある、今はただ浄書して手 し、そのかわり、我慢づよいことは確かです。小生の部屋のを入れているばかりだ、と申してやったからです。それでな 中など、恐ろしいほど薪を焚いて、列氏の + 5 。 ( わすか五度くても、ちゃんと間に合わせます。それに、全体としては相 当いいものになるかもしれないのです。しかし、またあの小 の温みしかないのです ! ) 。外套を着たまますわり込んで、 この寒さの中で送金を待ち、品物を質に入れながら、小説の説の話になって来ました。前にも申し上げたとおり、あの長 プランを考えているのですから、けっこうなものでしよう ? 編でマニヤになってしまいました。 小生の健康はたいへんいいほうです。発作はごくまれで、 舌こ聞くと、フローレンスではこの冬、零下十度まで降った そうですし、モンペリエでは列氏で零下十五度だったそうでそれがもう二月半どころか、三月くらいずっと続いています。 ご両親にくれぐれもよろしく。ストラーホフに、もしお会い 1 書す。このジュネーヴでは零下八度より降りませんでしたが、

10. ドストエーフスキイ全集17 書簡(中)

も日常的な事柄について、自分自身の観点、自分自身の観察もすでに苦しみです。しかし、現実的な生活状況の破綻も、 をつかむことができません ) 。例えば、わたしは一つの長編わたしの苦しみの半面を成しています。例えば、ペテルプル を構想しています ( その成功には確信があります ) 。しかし、グにいないために、わたしは自分のすべきことを打っちゃら 、しにして、わたしに信服している人たちさえ、疎遠にして それをここで書くことは、どうしても決心がっかないので、 先へ延ばしています。今のところ、「ロシャ報知』へ向けた、 しまいました C 白痴』は成功しなかったのですが、それで も二、三の出版社が単行本を出すために、比較的少額ですけ ある特別な仕事と取り組んでいます ( あの社にはまだ借りが れど、それでも大分まとまった金、千五百か二千ループリ出 残っているのです ) 。わが友ソーネチカ、覚えていますか、 、、、まとんど出しまでしたのですが、まとまりかけた あなたはいつだったか、わたしがこちらで書いたある長編のすとしし冫 ことで、どうしてわたしがこんなテーマに期限を切って取り話がみんなふいになってしまいました。それというのも、だ かかるか、不思議に思うと書いてよこされましたね。あなたれも事務をやってくれる人がいないからです ) 。わたしの状 はほんとうにするかどうか知れませんが、いまわたしが「ロ兄は、まあこういったようなものです。アンナがかわいそう シャ報知』のために書いている長編には、もっと困難な問題だなどということは、もういいません。あれは国へ帰りたく が含まれているのです。わたしは、少なくとも五十台分になてしようがないのです。しかし、何もかも書きつくせませ らなければならないものを、二十五台分くらいに押し込んでん。が、それはとにかく、わたしはいよいよ決心しました。 しまうのです。それは期限に間に合わせるためで、それ以外いすれにしても今年じゅうには、ロシャへ帰ります、秋には 帰ります、それは間違いなしです。ただ用事だけのためで には仕方がないのです。というのは、ロシャを離れているも も、すぐさまモスグワへ行かなければならないのは、もちろ のですから、今のところこれより以外、どうにも書きようが ないからです。わたしは「ザリヤ ー』に掲載したある中編にんです、ただしペテルプルグの債権者が、いきなり牢へ入れ 対して同誌から大変な讃辞を呈せられました。新聞雑誌の批なければ、です。いずれにしても、冬のはじめには、なっか 評 (r ゴーロス』、『ペテルプルグ報知』その他 ) も、やはりしい皆さんとお会いできると思っています。 ソーネチカ、あなたの手紙によると、わたしはあなたと疎 わたしに敬意を表してくれました。しかし、あなたは信じて くださるか知りませんが、もう無数の想がちゃんとまとまっ遠になったそうですね。つまり、伯母さんの遺言についてわ たしが間違ったことをしたために、わたしが何か疑いを受け 簡て、頭の中にこびりついているのに、あんな中編を書くのは 実にいやなんです。要するに、自分の思うのと違うものを書た、そのことについてわたしがあなたを疑っている、という 書くということが、です。わが友ソーネチカ、これ一つだけでわけです。しかし、あなたも結論を出すのに、とてもせつか田