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検索対象: ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)
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1. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

なっかしい友アーニヤ、お前を抱きしめて接吻する。子供思って、最後まで待とうともしないで、郵便局から帰ってし , たちも同様。あの子たちのことを思うと、心が痛む。お前たまったそうだ。だから、受けつけてもらえなかったことを、 今ごろ知らないでいるのだ。しかし、製本屋の息子の話によ ちと離れてここにいるのはとても淋しい 今日やっと雑誌が出た。もう土曜日の晩にできていたのだると、その時まだ四時になっていなかったので、ほかの郵便 から、日曜日には出せたはずなのだけれど、日曜日にはだれ物は受けつけていたそうだ。今晩、製本屋の娘が帯封を全部 も働かない。それに、できたのはたった三千部だけだったの仕上げてしまったし、ばあやが自分の娘と二人で、小包みのは うはちゃんと拵えてしまった。あとは明日の朝、マリヤ・ニ で、月曜まで延ばしたわけだ。どうも、何もかもうまくなか った。第一に、広告は『ノーヴォエ・ヴレーミャ』紙にしかコラエヴナが点検するばかりなのだが、今日などのやり方を 見ても、はなはだ無器用なのだ。例えば今日も、変更になっ 間に合わなかった。もっとも、それだけでたくさんだ、とい た住所を書きかえていたが、とても手間がかかるのだ。こん うことがわかった。というのは、ペテルプルグではみんな が、今度の号の出るのを待っていたような具合だからだ。どなことなど、彼女として前にしておくべきだったのだ。それ から、小包みに青い紙を貼りつけるのに、長い間ぐずぐずして の書店へも、読者がのべつききに米たし、うちへもこの四、 いた。すっかり貼り上げたのま、、 : 、 ーししカちゃんといかないの 五日、かなりしよっちゅうべルを鳴らして来て、いつ出るか とたすねたものだ。製本屋の娘はもう昨日の晩から来ているで、自分でも明日またやり直すといっている。それにして が、昨日と今日で五百部だけしか封ができなかったので、三も、明日十二日には、すっかり一部のこらず発送してしま 時にその五百部だけを運んで行った ( 市内売りの分は、朝のおう、それも三時よりはずっと早めに、と思っている。マリ うちに出したのはいうまでもない ) 。市内の分も二十二包み、ヤ・ニコラエヴナは一生懸命に働くのだが、とてもぐずだ。 それから郵便で送る分は、五部とか、四部とか、二部とかい もっとも、わたしたちは口論などしたことはなく、仲よくや うふうに、包みにして出した。小包みの大部分は、三時前に包っている。ついでながら、樫の戸棚に入っている帯封のこと ・装を終わって発送し、切手も局で貼った。ところが、どうだを、お前はわたしにひとこともいわなかったね。それに、注 ろう、しまい頃には局員が受付を拒否したのだ ! 「もう遅意書きの中にもひとことも書いてない ( アラビャ数字で続き 一、それに小包みが多すぎる」というのだ。それで、仕方な番号を打った分 ) 。わたしはやっと偶然にさがし出したが、何 しにまた持って帰った。製本屋の息子が行ったのだ。その話百といってあったよ ! 晩おそくコ ーリヤがやって来た。イ によると、マリヤ・ = コラエヴナは、帯封の分は五百部わたサーコフ ( しのところへ行 0 たりして、少し手伝ってくれた。 したけれど、小包みのはうは、製本屋の息子が一人でできると 今度の号も小売のほうが取ってくれたが、前のようではな

2. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

またま祭日だったのか ( わたしのはかにまだ二人の女客と、特別に、そして子供たちも特別に。またお前の夢を見た。さ よならわたしの天使。全身すべてお前の もう一人アルヒーポフという大学教授が食卓についた ) ・ドストエーフスキイ ろいろの前菜、各種の酒、五品の料理、その中にはモスグワ リュビーモフは校正をベテルプルグへ送ると、自分のほう ふうに、生きた蝶鮫を柔らかく煮込んだのがあった。もし毎 から、申し出た。マルケーヴィチのところへ送るのだ。お前 日こうだったら、きっといい暮らしをしているに違いない。 食事は非常に賑やかで、リュビーモフはカトコフの家では決を強く接吻する。 ・本屋はみんな新しい雑誌リ ーリナの思いっき』 して招待宴なんかないと力説した。食事も会話も活気が漲っ ドストエーフスキイの作品のいろいろな部分を子供向きに ていた。 ) と新しい雑誌 編集して毎月だす予定だったが、これは実現されなかった ーヴロヴナの にうちょうてんになって、委託販売を希望、たいへんな成功 それから、もう七時になって、エレーナ・ ーヴロヴナのだろうと予言している。両著者と発行者によろしくいって、 ところへ行ったが、留守だった。エレーナ・ 子供たちから聞いたのだが、 マーシェンカ ( イヴァーノフ家わたしのかわりに接吻しておくれ。 の ) はモスグワにいるそうだから、今日はぜひ行こうと思っ ノ妻アンナへ ている。その住所は、きようわたしのホテルへ寄ったヴァー リヤから聞いた。これが今までのところ、わたしの行動の全モスクワ、一八七八年十一月十日 部だ。ひょっとしたら、明日またお前に手紙を書くかもしれ かわいいわたしの大事なアーニヤ、昨日の晩六時に、お前 よ、。しかし、今はもう二時なのに、お前の手紙が届かなのなっかしい手紙が届いた。とてもうれしかったし、それに 本屋のラッソーヒンのとこへは、今日ゆくつもりだが、安心した。お前たちが達者だとのこと、ありがたい。子供た ちに接吻して、 ーリチカに手紙のお礼をいっておくれ。そ 明日になるかもしれない。晩はいつも新聞をかかえ込んで、 して、フェージャには勉強して感心だ、といってね。ナヴロ いろんな裁判事件を熱心に読んでいる。明日は小劇場劇 ーツキイに関する知らせは、あの『ルースカヤ・レーチ』の に対して小劇場に呼ばれてるが、相当 0 大劇 ) へ行くつもりだ。 お前たちのことが心配だ。わたしのかわいい アーニヤ、お連中が、わたしを公然と罵倒しないだろう、ということを一不 前はどうしている、子供たちはどうしている ? 一刻も早くしているだけだ。シェール訪問のことだが、わたしはおそら お前の手紙が読みたい。土曜日にここから立てるかどうか知く彼のところへは行かないだろう。だって、あの男はペテル らないが ( おそらくだめだろう ) 、日曜より遅くなることはプルグへ来ても、自分ではわたしを訪問しなかったんだもの あるまいと思う。お前たちみんなを抱擁し接吻する。お前をね。もっとも、どうするかわからない。まるで暇がないので 0

3. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

さいの望みをかけています 、ずれにしても、貴兄に、 うか遅れないように、できるだけ、ひたすら急いでくださ 6 妻アンナへ それにしても、どうか校正をしつかり頼みます ! 小生 ペテルプルグ、一八七七年七月六日、水曜日 の原稿は消しが多いですが、とにかくわかりいいはずですー なっかしい友アーニヤ、お前を抱きしめて接吻する。子供 お願いです、みつともない誤植がないように気をつけてくだ たちもみんな一人のこらず。お前の旅行はどうだったね ? さようなら、固くお手を握りしめます。 お前の手紙を頸を長くして待っている。ただお前たちのこと 完全に貴下の・ドストエーフスキイ ばかり思われるのだよ。 6 ・・アレクサンドロフへ わたしは昨日ここへ着いたが、道中ですっかり、くたくた になった。詳しいことは書かない。仕事が山ほどあって、雑 マールイ・プリコ 一八七七年六月二十九日 尊敬するミハイル・アレグサンドロヴィチ、第三章 ( 未用もうんと溜まっているので、気ちがいのように急がなけれ 完 ) をお送りします。半ペラ十四ページです。これで印刷しばならないからだ。汽車は朝の十一時に着いた。家へ着いて て九ないし十ページになると思います。残りの分は当地からみると、プローホロヴナはそのちょっと前に帰って行ったそ 送るか、自分で持って行くかします。全体で三台になるはずうだ。昨日からずっとわたしを待っていたのだ。わたしは迎 です。当地出発は七月二日と考えていますから、ペテルプル えに人をや。た。 ( ←薹町 グ着は四日か五日になるでしよう。今お送りした分をすぐ組着くとすぐ、プローホロヴナが来るのを待たないで ( 庭番 。もし万事とどこおりなく、検を迎えにやったのだ ) 、印刷所へ出かけた。アレグサンドロ んで、検閲へまわしてください 閲も通過したら、印刷してくだすってもいいでしよう ( そちらフの話では、組むことはすっかり組んだけれど、印刷のはう というのは、検閲官がいないからだ は少しもやっていない へはもう二台分よりずっとよけい行ってるでしよう ) 。しか ノ県へ行った し、その万事がとどこおりないかどうか、検閲官が居合わせてそうだ。ラトウインスキイが休暇で、オリヨーレ、 からだ。アレグサンドロフはブツイコーヴィチのところへも くれるか、等々、心配です。もし紙がなかったら、ペチャ トキンい請求してください ( 印刷所では、いつもどこで取 0 て行ったし ( 彼に委員会へ行ってもらって、わたしの検閲官を 簡いるか、わかっています ) 。では、さようなら、ペテルプルグ指定するよう運動してもらうためだ ) 、自分でも委員会へ行 ったそうだ。秘書は取り次ごうともしないで、話を聞き終わ でお会いする時は、どんなふうでしよう。どうか校正のはう ると、ドストエーフスキイ氏は検閲義務の期間を終わったの 小生を破滅させないように ! ・書は十分気をつけてください ! 3 材

4. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

アン・セルゲエヴィチではなさそうだ。多分もう一人のニヒちものにする、その名残りだ。旅行中、わたしの胃はとても リストのほうだろう。いまアクサーコフというのがたくさんよくな 0 た。不思議なことに、わたしの胃は旅行するとよく いるからね。タチャーロフも知らないそうだ。そういうわけなるのだ。昨日はじめてシャルメルの服を着てみたが、なん だか恥ずかしくなった。とっぜん流行服の広告絵みたいにな で、わたしはここで完全な孤独生活をしている。やりきれな ったので、びつくりしてしまった。まったくほんとうなのだ いほど退屈することは、今から見え透いている。 ただ少しも早くお前の手紙が届けば、と思 0 ている。様子よ。申し分のない仕立だ。帽子はぜんぜん別の型のを買「た が、素晴らしくよく似合うような気がする。こんなふうにい がわからないということは、どんなにつらいものか、やりき うと、お前はわたしのことを、どんな伊達男のように思うだ れないほどだ。子供たちはどうしているだろう ? できるだ け詳しく、あの子たちのことを書いておくれ。昨日はお前のろうね。かわいいわたしの天使、お前の目、そしてお前の仆 じゅうに接吻する。お前はこの世で、わたしにとって、何よ こと、お前の体のことを、苦しいほど思い続けて、一晩じゅ う何も手がっかなか 0 た。かわいいアー = ヤ、元気でいておりも大切なものだ。お前のような妻はほかにありやしない。 相違もっとも、これはもうお前にいったことだが、わたしがこの くれ。神様はお慈悲ぶかいから、何もかもうまくいくに 心からお前を抱擁する。子供たちのことをたえず考えことをしょ「ちゅう感じている「てことは、お前も知らない だろう。何よりも、まず元気でいておくれ。それから、手紙・ ている。リーリヤを一遍でも余計に接吻しておくれ。それか きれいな鞍を置いもなまけずに書くように。みんなによろしく。子供たちに千・ らフェージャにはそういっておくれ、 た小さなかわいい馬 ( 驢馬や騾馬 ) が橋のたもとにいて、若遍も接吻してやる。わたしは旅の疲れでくたくたにな 0 たよ うな気がする。昨日は眠りかけては、恐ろしく身ぶるいした い娘や、男の子や女の子がそれを借りて乗るのだ。わたしは が、こんなことは最近めったにないことだ。クレンヘンを飲 一度、どうしてフェージャをつれて来なかったのだと、人に きかれたことがある。で、わたしは、来年の夏にはき 0 とつみはじめた最初の一週間は、いつもいやな夢を見たり、要夢、 れて来る、とい 0 たわけだ。あの子たちに、必ずお土産を持にうなされたり、恐ろしいほどいらいらしたり、肝臓が悪 0 て帰るから、とい 0 ておくれ。アー = ヤ、お前がどんなふか 0 たりするのだが、それが一週間も、それ以上も続くの うに時を過ごしているか、できるだけ詳しく書いておくれ。 ここでは金がどんどん出て行く。旅費も安くないが、ここ皇帝は今日ここを発たれるはずだ。わたしはとうとう拝顔 の生活費も同様だ。昨日いち ) 」と桜んばを買 0 た。こんなもの機会を得なか「た。ヴィル〈ルム皇帝が到着された。昨日 、書のはみんな医者から止められているので、これからずっと断はまる一日、皇帝の窓の下で、楽隊が演奏していた。公園は鱒

5. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

ぬ、そう思って、気休めにしている次第だ。中には三週間して行ってくれたらよかったのだ。子供たちだって喜劇くらい か療養しない人もあるからね。去年の冬がひどい天候だった見てもいい時分だ。いや、これからはそんなふうにはさせな ので、そのせいか、一昨年より具合がよくない。それに、鉱 わたしが帰ったら、この冬はお前に見物や訪問の楽しみ 泉の飲用がひどく作用するような気がする、つまり今年のこを断念させやしないから。わたしはそうしてもらいたいの とだ。療養の前半期は、たいてい神経が弱って、悪夢にうな た、しいかね。さもないと、わたしが不幸になるのだから。 されたりなどする。これは鉱泉がひどく作用している証拠な こちらのわたしの生活は何もかも相変わらずだ。短い手紙 のだ。今度ほど神経が弱って悪夢にうなされたことはかっての走り書に腹を立てないでおくれ。まったく忙しくて寸暇も ないくらいだ。つまり、鉱泉の効果があったということにな ない。それにまた近いうちに会うのだからね、その時はいろ る。今ではもう神経も健康で、食欲もあるし、体力も増し いろうんと話し合おうね ( お願いだから、それまでに守を雇 た、等々。しかし、このことはもう前に書いたね。 っておくれ。ただし、急がないで、なるべくいいのを ) 。子 お前の送ってくれた手紙 ( 読者の ) は、まるで封も切って供たち一人一人に接吻して、わたしがまもなく帰ることを話 ない、暇がないのだ。日がな一日仕事に没頭して、書いたりしてやっておくれ。十二日に着く予定だから、馬のほうを手 浄書したりしているが、進行は実に遅々として、これまでつ配してもらいたい。お前を抱きしめる日を、一日千秋の思い いぞなかったほどだ。ペテルプルグへ着いたら、印刷にまわで待っている。お前というものなしで、長いこと暮らしたも すが、計算して見たところ、一台分と四ページくらいしかなのだ ( わたしはあのことだけの意味でいっているのではな つまり、半分以上はスターラヤ・ルッサで仕上げなくて 魂が憧れぬいているのだ。どうかするととっぜん、お前 はならない。内容はもういわぬが花だろう、よくないのだ。 たちの身に何か起こりはしよ、つこ、 オカオカと、急激な恐怖に襲わ その点で、わたしはおそろしく不機嫌なのだ。もっとも、会れることがある ) 。それにお前と胸を打ち割って話がした ってから話そう。スターラヤ・ルッサでは、もし発作が起こ あまり長く孤独の生活をしたから、それに、あの点でも らなければ、最小限十日は仕事のために取れると思う。 わたしたちは会っていい時分だ ( まったくいい時分だ ! ) ア ニカ、わたしの天使、お前はわたしのいっさいだ、 どうしてお前はスラヴャンスキイ ( 歌手、合唱 団主宰者 ) の音楽会へも、 ヴェインベルグの会へも、そして芝居へも行かなかったのだ、でオメガだ ! ああ、それではお前はわたしを夢に見て、「目 わたしはとてもお前に腹を立てているよ。もし出かけて行っ がさめると、わたしがいないので悩ましい気がする」んだっ てくれたら、言葉に尽くせぬほど、わたしを喜ばすことになって ? それは実になんと、 しいことだろう、わたしはうれし どころ でも収・つ

6. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

に飲んだほうがもっとききめがあると、いよいよはっきり感るのだと、何やらうれしそうな様子で説明して聞かせたっ田 け。わたしの療養の話はまずこんなものだ。ここの生活の退 じるようになった ( それにほかの病人たちもしきりにそうい 、し、空咳にもいい。それに、わたしに屈なことといったら、やり切れたものではない。仕事ははじ うのだ ) 。胃にもいし はコップ三杯じや足りない。朝、三杯飲んだ後、七時から午めたのだけれど ( しかし、悲しいかな、まだプランにか、 ただけで、それもうまくいかない ) 、ふさぎの虫で身の置き - 後の四時まで体が楽だが、四時から夜にかけてずっと苦しく なる。そこでわたしは医者のところへ行って、グレンヘンをどころも知らぬくらいだ。何やかや読んではいるが、そんな ことでは追っつかない。それはさておき、ここは何もかも物 牢乳といっしょに飲むことと、それからほかの病人の例にな らって午後の四時にまた一回服用することを許してほしい価がむやみに高くて、金のいること。あまり人に会わない。 と、膝詰めの談判をしようと決心した。この目的で昨日医者うわさによると、シャリコヴ , 公爵令嬢 ( がもう一週間 の家へ行ったところ、とどのつまり牛乳も、晩のコップ二杯も前からわたしをさがして、しきりに会いたがっているとい うことだ。礼儀知らずと思われたくないので、こちらから訪 も許可してくれた。右の次第で、結局コシュラコフがいった のと同じことになったわけだ。ォルトのやっ、わたしが二週ねて行ったところ、不在だったから名刺を置いてきた。昨日 . 間前にグレンヘンを牛乳といっしょに飲めというコシュラコの朝、とうとう自分でわたしのところへ訪ねて来た。ひどく フの指図を話したばかりに、クレンヘンをケッセルプルーネ年が寄って、頭が白くなって ( 見たところ五十くらいらし ンに変え、牛乳を差し止めたのだ、要するに、自尊心から出い ) 、病身で咳をごほんごほんしているが、気立てのいい優 しい老嬢だ。わたしのとこに一時間ばかりいたが、だれかし たことだ。しかし、やつらはみんなそうしたものだ、いかさ ま連中ばかりだよ。わたしはおかげで、まるまる二週間の療ら自分の知人といっしょにラインのシュトルツェンフェルス 養をふいにしてしまわないまでも、かなり効果を弱めたわけ城へ行って見ようと誘った ( 汽車で十五分のところだ ) 。出 だ。もしかしたら、ここに一週間だけ余分の滞在をしなけれかけるかどうかわからない。目下当地はなかなか暑いが、風 ばならぬかもしれないと思っている。というのは、グレンへと雨が多かった、今でもかわりばんこにやってくる。日陰で も二十五度の日があるかと思えば、その翌る日は十五度しか ンがわたしにききめがあるのではないかという望みを ( しか ないというふうで、朝霧がかなり頻繁に襲ってくる。さあ、 も根強い望みを ) 依然としていだいているからだ。ォルト は、わたしが肝臓にやや痛みを覚え、時どき舌が黄色くなるこれがわたしの公式報告だ。内面の本質的なことは書き立て という話を聞いて、それこそまさしく鉱泉が効果を示しはじないことにしよう。なっかしいアーニヤ、そんなことはよけ いらしいから。 めた第一の兆候だ、その兆候はいつも肝臓の痛みからはじま

7. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

くした ( いいほうではないらしい ) 。それをやっと昨日、気ところが、わたしはそれを知らなかったのだ。行って、きい てみたら、すぐに失くなった傘を返してくれた。もう大分ま がついた。ところで、そいつを盗まれたのは、まだホテル・ ド・フランスにいたころに相違ない。しかし、今さら行ってえに片づけてあったのだ。なんていまいましいことだ ! わ たしは卑劣な店の親爺に、二マルグやるから、傘を受け取っ も遅蒔きだ。ホテル・ド・フランスからダルジェーへ移った て、十二マルグ返してくれと申し込んだが、承知しなかっ 翌日、ド・フランスにズボンを残してきたことを、ふと思い た。まったく災難で、金ばかり出ていく。 だした。行ってみると、ポーイはもじもじしている。聞け ば、やつばりもうどこか遠いところにある自分のトランクの 第三の出米事は、ホテル・ダルジェーの隣室にいるジュウ 中へ片づけたそうだ。わたしはズボンを受け取って、持ってどものことだ。わたしは扉ごしに二人 ( 母親と息子 ) の話 帰ったが、ズボンといっしょにワイシャツも残っていたのを、四昼夜もじっと我慢して聞いていた。まるでページでも は、も、つい、つまでもない。しかし、このホテル・ダルジェ めくっていくような話し方で、数巻にわたる会話だ。ひっき では、だれも盗むものはない。 もう一つの出来事は、わたし りなく、のべっ幕なし。何よりたまらないのは、わめくとい が傘を買ったことだ。一昨日の土曜日の午後、喉をがらがらうのでなく、金切り声を上げるのだ。まるでユダヤ長老会 この家にいるの しようと思って、順番に立った。それはがらがらをする人のか、自分たちの礼拝堂にでもいるみたいに、 は自分たちばかりではないとい , っことこ、、 ために、五つの場所がこしらえてある部屋なのだ。わたしは しささかの注意も 片隅に立てかけたのに、それを忘れて出てしまったのだ。十払わないのだ。この二人はロシャの ( 裕福な ) ユダヤ人た 五分ほどして気がついたので、引っ返してみたが、もうあり が、どこかしら西部のコヴノあたりから米ている。もう十時 やしない。持っていかれたのだ。その日は夜なかから翌日ので、寝る時刻になっていたものだから、・〈ッドい入りなが 午前中へかけて、雨が降った。そのあくる日は、日曜で、店ら、「ええ、いまいましいジュウめ、いつになったら寝さし はしまる。もしあくる日も雨だったらどうしよう。そこで出てくれるのだろう ! 」とどなってやった。その翌日、かみさ かけて買ったわけだが、どうもひどいものらしい 。もちろんのマダム・ 、 / カわたしの部屋へ入って来た。そして、 いうことには、「ユダヤ人母子がわたしを呼びつけて、自分 ん、絹張りで、十四マルグ ( ロシャなら六ループリ ) した。 それを売っておきながら、店の親爺は ( いまいましいジュウたちは隣りの客に侮辱された。あの人にジュウといわれた、 だからここから越していくとおっしやるのです」。わたしは 簡め ) わたしにこういうのだ。「あなたは失くなった傘のこと かみさんにこう返事してやったーーわたしも越して行こうと を、警察でおたずねになりましたか ? 」「療養集会所のいった 思っていたのだ。というのは、ジュウどもに悩まされて、本を いどこに警察があるのだ ? 」「あすこには別室がありますよ」 3 〃

8. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

究をしながら、それと並行して、多くの印象が消えてしまわ同情を寄せたものばかりです。中にはきわめて興味のある、田 奇抜な書き方をしたのもあります。なおその上に、現に存在 ないために、「作家の日記』をだしていくわけです。 これらすべて、いうまでもなく、理想です ! 例えば、あしているありとあらゆる思想傾向が、そこに網羅されている なたは信じてくださらないかもしれませんが、小生はまだ自のです。このありとあらゆる思想傾向が、小生に対する好意 分でも『日記』の形式をはっきりさせることができないのでに溶け合ったということについて、小生は一文を、草したか ったのです。そして、ほかならぬこれらの手紙の印象につい す。また、いっかそれに成功するかどうかさえ、わからない 始末です。右の次第で、『日記』はだいたい二年くらい続くて語ったうえ ( 名前を発表しないで ) 、つづいて最も小生の 心を捕えた感想、「われわれの共通点ははたしてどこにある でしようが、みんな失敗した作品ばかりになると思います。 例えば、小生は机に向かって筆をとると十も十五もテーマがのか、種々さまざまな思想傾向を有するわれわれが、すべて 浮かんでくるのです ( それ以下ではありません ) 。しかし、自一つになることのできる合流点は、はたしてどこにあるの 分のいちばん好きなテーマは、自然とあとまわしになるのでか ? 」という問題を追及したかったのです。しかし、すでに す。あまり誌面を取りすぎるし、あまりに多くの情熱を奪わその文章を構想してから、誠心誠意をもって書くことは絶対 れるからです ( 例えば、クロネベルグの事件など ) 。それでに不可能であるということを、忽然として見きわめたので はその号ぜんたいが損われてしまいます。変化がなく、文章す。ところで、もし誠意が伴わなかったら、いったい書く値打 の項目が少なくなるからです。そこで、書こうと思ったのとちがあるでしようか ? それに、熱い感情もないでしよう。 とっぜん、一昨日の朝のことでしたが、二人の娘さんが小 違うものを書くことになります。また一方、小生はこれがほ んとうの「日記』になるものと、あまりナイーヴに考えてい生の家へ、やって米ました。どちらも二十くらいの年恰好で オカ入って米るといきなり、「わたしたちはもう大斎期 たのです。ところが、ほんとうの「日記』はほとんど不可能しこ ; 、 で、ただ読書大衆への見せかけに過ぎません。小生はさまざの時分から、あなたとお近づきになりたいど思っていたので まな事実に遭遇して、おびただしい印象を受け、それで頭がすが、みんなはわたしたちのことを笑って、会ってなんかも しつ。いになるのですが、しかし、中にはどう書いていいカらえやしない。よしんば会ってもらえたとしても、なんにも わからないことがあります。時として頭から不可能な場合が話なんかしてもらえないだろう、というんですの。でも、わた あります。例えば、ト生はもうこれで三か月というもの、あしたちはひとっ運だめしをすることにきめて、こうしてお邪 りとあらゆる方面から、実におびただしい手紙をもらってい魔にあがりました。これこれというものです」。はじめ妻が ます。署名したのもあれば無名のもありますが、ことごとく面接したのですが、あとから小生も出て見ました。二人の話

9. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

を出しても、テー・フルの上に載ったまま、忘れられてしまうす。ところが、いくら待っても、これでもうちょうど十日た だろうと思うからです。必要な事柄については、『ロシャ報つのですが、うんともすんとも便りがありません。しかも、 知』の編集をしているリュビーモフと手紙の往復をしていまこちらからは困るといってやってあるのですからね。昨日も す。なおそのうえに、小生は自分の長編の中で、若干の思想また催促の手紙を出しましたが、そんなわけで、当然自分の を表現しようとしたのですが、それが彼らのお気に召さない もらうべきものを請求するのではなくて、前借りでも頼むよ のではないかと、心配なのです。というのは、長編が完結すうな形になるのです。これが彼らのやり口なのです。もちろ るまでは、それらの思想や主張を逆にとられる恐れがあるかん、決して何もふいになるということはありません。それは らです。ところが、はたせるかな、小生の心配は事実となつ小生も知っていますが、その放漫、そのだらしなさ、お話に て現われました。そろそろ絡んで来はじめました。リュビー なりません ! ト生は、それに腹も立てません、あすこは モフは校正を送ってくる時、欄外にしるしをつけたり、疑問もうそんなふうなやり方になってしまって、だれに対しても 符をくつつけたりするのです。今まではどうやらこうやら、 そうなのですから。そういうわけで、貴兄としてはもちろん 彼らを納得させましたが、昨日送った六月号の原稿はとてもつらいでしようが、せめてしばらくの間でも我慢して、あの 心配なのです。もしかしたら、彼らはかんかんになって、こ連中に失礼な手紙を書かないようになさい。第一、それは貴 んなものを載せるわけに、ゝ といい出すかもしれませ兄として大変まずいことになります。なぜといって、彼らは ん。そういうわけで、自然と戦術を使うようになります。も たとえ今でなくても、後で貴兄に助力してくれるかもしれま っとも、六月号が無月。、 ' トこ通過したら、それから先は何も心配せんからね。おまけに、彼らは時として、急に考え方が変わ することはありません。それから、こういうこともありまるのです。そうなると、やり方まで反対の極端に変わってし す。小生の原稿料は現在、二千ループリ以上たまっているのまいます。早い話が、貴兄の『グラジダニン』の創刊号が成 です。二週間まえ、この二千ループリを送ってくれるよう功して、彼らの気に入ったとしたら ( もしそれが発行された に、リュビーモフに頼んでやったのですが、その返事にし としたら ) 、彼らは貴兄に愛情さえいだくようになるかもし ま冂ロシャ報知』の会計がちょっとめんどうなことになってれません。そうなったら、貴兄を援助するでしよう。それは いるので、その二千ループリはこの夏じゅう、秋までに送る大いにあり得ることです。そういうわけで、小生はカトコフ とのことです。 (Z ・秋までにはまた二千ループリくらに貴兄のことを書いてやりませんでした。というのは、自分 いの原稿を書くことになります ! ) しかし、さしあたり、さのことさえ書きませんでしたし、それににしかったのです。 っそく千ループリ送るということなので、それもけっこうでしかし、昨日五日付のお手紙をちょうだいしたところ、自分

10. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

ね。でも、もしかしたら、オリガ・フヨードロヴナ・シェールワへ出て来て、マーシェンカのところへ落ちついたそうだ が、あれもやはり留守だった。晩にまた来るといい残して、 これは全然、別問題だから。 のところへは行くかもしれない。 ーヴロヴ が、それにしても暇がない。昨日、晩の六時にリュビーモフホテルへ帰り、食事をしてから、まずエレーナ・ が訪ねて来た。訪問返しのためでもあるが、何やかや話もあナのところへ行った。あのひとにはまだ会っていなかったの ったのだ。彼の話によると、金のことはすっかり決まったそだ。三十分ばかり話してから、ヴェーロチカの家へ出かけ うだ。カトコフは原稿をぜんぶ読む暇がなくて、リュビーモた。あすこではみんな揃っていて、夜中頃まで話し込んでし フに渡したので、彼 ( リュビーモフ ) は全体をざっとめくつまった。ヴェーロチカは実に善良な、やさしい女だ、あれは て見て、三分の一ばかり読んだそうだが、全体として非常にアリヨーシャの死んだことを知らずにいたのだ。さて、これ 独創的なものだといってくれオオオ こ。こごし、金の支払いが全部でわたしの知らせることは全部おわりだ。昨夜は芝居の切符 会計係のシュ ] リマンによって左右されているので、こいつなんか買って、ばかなことをした。ある慈善興行で、オスト ローフスキイの喜劇の初演があったのだ。わたしのかわいい が面白くない。彼は万事について采配を振っていて、カトコ フでさえ金の支払いのことでは、だいたいあの男に押えられ天使、そういうわけで、明日の土曜日に立ちたいのだが、た ているのだ。あの男が、「金庫に金がありません」といったぶん日曜日になるだろう。お前に強く接吻する。もう手紙は ら、もうどうにも仕方がないわけだよ。でも、千ループリく 書かないほうがいいよ。リ ーリヤとフェージャに接吻する。 らいはあるだろう。わたしはこのうえぐずぐずしたくないのみんなを抱きしめる。ところでお前には、ほかのいっさいの で、もし明日の土曜がだめなら、日曜にはもうぜひ立ちたい 理由以上に、かくべっ少しも早く会いたい。いずれにして と思っている。その時リュビーモフが、カトコフは病気しても、ここはわびしい もういちど接吻する。どんなふうに暮 いる、といったつけ。いま午後の一時だが、これからすぐ訪らしているね ? わたしの天使、体は丈夫かね。 ねて行って、いよいよきつばり話をつけようと思っている。 永久にお前の・ドストエーフスキイ それから、ラッソーヒンのところへ寄る、昨日ゆく暇がなか 2 妻アンナへ ったから。その次はヴァーリヤのところだ、よんでくれたの でね。昨日ヴァーリヤからマーシェンカ・イヴァーノヴァのモスグワ、一八七八年十一月十一日、上曜日 簡住所を聞いたので、訪ねて行ったところ、留守だった。二人なっかしい友アーニヤ、用事はすっかり引っかかってしま の子供、オーリヤとナターシャから聞いたのだが、ヴェーロ って、どうもうまくいきそうもない。ほかでもない、カトコ ーリヤと、つしょこ、 禽チカもユ 三日の予定で田舎からモスクフがほんとうに病気で寝込んでしまったらしいのだ。昨日は