長編 - みる会図書館


検索対象: ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)
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1. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

体じゅうすっかり、くたくたになってしまった。発作はなでおります。シベリヤで取りつかれたものです。この病気が いけれど、やってきそうで心配だ、もうそのころだからね。次第しだいに小生から人の顔や、事件にたいする記憶力を奪 って、はては自分の書いた小説の主題やデテールさえ、忘れ 0 妻アンナへ るはどに立ち到りました ( 文字どおりに ) 。というのは、発 表以来、重版にならない作品もあるので、それらは文字どお モスグワ、一八七八年七月一日 かわいいアーニヤ、例の金の中から八百ループリ送る。そり、小生にとって未知の誾に取り残されているわけです。そ ういうわけで、小生と貴兄が相識であった時代の状態も、い の金が着く時には、おそらくわたし自身がもう家へ帰ってい つお会いしたかということも、忘れつくしているからといっ るだろう。 て、お腹立ちにならないように願います。そういうことは他 完全にお前の・ドストエーフスキイ の人々についても、小生にはよくあるのです。以前われわれ ーリエフへ が相識であった時代やそのときの状況を、いっか何かの機会 に思い起こさせてくださるよう、お願いいたします。 スターラヤ・ルッサ、一八七八年七月十一日 さて小生の長編の件ですが、貴兄のご親切なお申し出に対 尊敬するセルゲイ・アンドレエヴィチ ! 一昨七月九日お 手紙を落掌しました。小生が貴兄を知り尊敬しはじめたのするお答えとして、事実をありのまま申し上げます。小生は は、貴兄の編集のもとに『べセーダ』誌が刊行された時からある長編をはじめて、目下執筆中ですけれど、完結までには 『カラマーゾ 0 、 ) る生の場・ です。その頃から、貴兄が小生のことを好意をも 0 てうわさ前途遼遠で、や「と始めたばかりです ( アの兄弟」 していてくださるということを、二、三の人から聞きまし合は、いつも次のような具合になります (Z ・小生の長 . 小生はじきじき貴兄と相識になることを、心から喜ばし編の形式は、印刷して四十ないし四十五台です ) 。夏の中頃 くぞんじています。お手紙の中に、「お互いにもはや長くおから長い小説を書きはじめて、翌年の中頃まで執筆をつづけ るのですが、どの雑誌にしても、たいてい一月号から第一編 会いはしませんが」貴兄に関する小生の意見は変わりない、 という一節がありましたが、しかし小生と貴兄は、はたしてが載るのです。それから、多少の断絶はありながらも、一年 間ずっと十二月号まで、その雑誌に掲載されます。こういう いっかお会いして、じきじきお近づきになったのでしよう か ? 貴兄はご信用なさらないでしようが、小生は人からそわけで、いつも掲載をはじめた年に完了するようにしていま ういう言葉を聞くと、実に苦しい気持ちになるのです。ほかす。今までのところ、一つの長編の連載が翌年にまで延びた 旧川、唄】間ア」コ し悪霊』イ

2. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

父親のほうが子供以上にニヒリストなのですから。わが国のす ( スターラヤ・ルッサへ移転の準備と移転そのもののため ~ に、ひどく遅れてしまったのです ) 。すると、校正を送って 地下に潜っている悪党どもには、それでも何か、忌わしい情 もらうことができなくなるので、これは小生にとってあまり 熱がありますが、父親のほうと来たら感情は同じでも、シニ ズムとインディファレンチズムがずっと陋劣なのです。でにも重大です。第二に、この第五編は小生の見るところによ は、さようなら、固くお手を握ります。妻がくれぐれもよろれば、長編の頂点なので、とくべっ細心に仕上げなければな しく申しております。小生はエムスへ行くかどうかわかりまりません。そこに盛られた思想は、すでにお送りした原稿で せん。もし出かけるとしたら、七月の下旬です。貴兄の新しもおわかりになりますように、現代のロシャで、現実から脱 い住所をリュビーモフに知らせます。ご返事にいろいろたく離した青年の間における極端な漬神論と、破壊思想の胚子を さん書きたかったのですが、もう時間がありません。どうぞ描写したものです。しかし、漬神論と無政府主義に並んで、 お許しください。また書きます。貴兄を愛していることを信その反撃があるのですが、それは長編中の一人物であるゾシ マ長老の臨終の言葉として、いま準備中なのです。小生の企 じてください ・ドストエーフスキイ 図はあまりにも困難なものなので、貴兄ももちろんご賢察く ださることと思いますが、小生としてはこの頂点となるべき 3 Z ・・リュビーモフへ 章を、性急な仕事で傷つけるよりは、一一号に分けるほうが得 策であると考えた次第です。全体として、この章には動が充 スターラヤ・ルッサ、一八七九年五月十日 尊敬してやまぬニコライ・アレグセエヴィチ、本日、貴兄満しています。今度お送りした原稿では、長編の中の最も重 の名あてで「ロシャ報知』社へ「カラマーゾフの兄弟』の原要な一人物の性格を描いただけでして、彼はそこで自分の根 稿二台半 ( マグシマム ) をお送りしました。『ロシャ報知』本的信念を表白しているわけです。この信念こそは、小生が 現代ロシャの無政府主義の総合と見なすものであります。そ の来たる五月号に掲載の分です。 これは第五編でして、 rpro と c 。 n ( ra 」と題されていますれは神の否定ではなくて、その意義の否定なのです。社会主 しかし全部ではなくて、半分に過ぎません。この第五編義は全体として、歴史的現実の否定から出発して、破壊と無 の後半は六月号にお送りします ( ちゃんと間に合うように ) 。政府主義のプログラムに到達したのです。根本的な無政府主 長さは三台分くらいになりましよう。小生が長編の第五編を義者たちは、多くの場合、真剣な確信を有する人々でした。 ′生にいわせれば、否応のないテーマ、す 「ロシャ報知』の二冊分にわけたのは、第一、もし全力を緊小生の主人公は、ト 張させても、やっと五月の終わりにしか完結できないからでなわち小児の苦痛の無意義ということを取り上げて、そこか

3. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

なったのですから。 なお章節の分け方も、原稿どおりに守ってくださるよう、 小生の依頼をお聞き届けくだすって、妻の名あてで金をス いってみれば 切にお願いします。そこではこの長編の中へ、 他人の原稿が挿入される形になっています ( アレグセイ・カターラヤ・ルッサへお送りくだすったとのこと、厚くお礼を ラマーゾフの手記 ) 。で、申すまでもなく、この手記はアレ申し上げます。もう妻から通知がありました。なお一つの件 グセイ・カラマーゾフによって、自己流に分節されているわについて、取り急ぎあらかじめお願いします。『ロシャ報知』一 けです。ここへ不平的 z ・を入れます。六月号では「大審の八月号は、時期を失せず、スターラヤ・ルッサへ発送する 問官』の章のところで、小生の指定した段落が、守られなかよう、お手配を忘れないでください。小生はちょうどその発 行日ごろに帰国します。 ったばかりでなく、十ページぶつ続けに行がわりさえなしに 敬具 印刷されました。これは小生として実につらいことでした。 常に貴兄の・ドストエーフスキイ このことについて、小生の心からなる訴えを申し出ます。 今お送りする第六編は「ロシャの僧侶』で、便箋五十三枚 次の第七編は『グルーシェンカ』という題で、それでもっ て『カラマーゾフ』の第二部は本年中に終わります。これはです。 九月の十日までに間違いなく、スターラヤ・ルッサからお送 5 ・・ポペドノースツェフへ りします。この第七編は『ロシャ報知』の九月号と十月号 エムス、一八七九年八月九日 ( 二十一日 ) と、二回に分載する予定です。第七編の量は、全体で約四台 分ですから、九月号の分はやっと二台分にしかなりません尊敬してやまぬコンスタンチン・ベトローヴィチ、スター ラヤ・ルッサへ送ってくださいました貴下の素晴らしいお手 が、仕方がありません。この第七編には別々のエビソードが 紙に、今までご返事いたしませんでしたが、エムスへの途 二つありまして、二つの独立した物語の形をなしています。 その代わり、この第二部の完結とともに、長編の精神と意義上、たとえ寸時なりとも、親しくお目にかかりたいとそんじ た次第です。で、貴邸 ( フィンランド教会の建物内 ) をお訪 がはっきりと打ち出されます。もしそれが成功しなかった ら、それは芸術家としての小生の貴任です。長編の第三部はねしたわけですが、あいにくとお留守だったのです。玄関番 ( 印刷台数からいって、第一部以上にはなりません ) 、もうの言葉によりますと、貴下はたびたびお見えになるとのこと 簡前に申しましたように、来年まで延期いたします。健康、健ですが、とにかく非常に残念にそんじました。と申しますの は、貴下からはいつも生きた言葉、人に勇気をつけるような 康が邪魔をしたのです ! 右の次第で、第二部は均衡を失し 。、、、こし方がありません、そんなふうに言葉を承わっていたからです。小生にははかならぬ勇気をつ銘 書て長くなる形です力しオ

4. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

スターラヤ・ルッサ、一八七五年三月一日 して、たとえ少しずつでも返すように努力しなさい。あの心 のやさしい善良無比な婦人の親切を利用して、それほどまで 拝啓小生の健忘症のために、貴下の名前と父称を省略す の大金を借りるのはよろしくない。それこ、、 っこ、どうしることを、おゆるしください だから、もしほん て返すつもりなのか、合点がいかなしー 貴下の文集に参加することは、喜んで承知しますが、はた とうに月給をもらっているのなら、借金で生活するのをやめして間に合うでしようか ? 小生は目下『祖国雑誌』に掲載 なさい。それだけの月給があったら、生活できる。いしか中の大きな小説の仕事に忙殺されていて、それがずっとこの ね、 ーシャ、わたしのためにそれくらいのことはしておく秋まで続くのです。もし間に合ったら、必ず何かお送りしま れ。これは非常に重大なことなのだ。お前はいたるところですが、いずれにしてもずっと後のことで、八月より早くはで きません。 借金をつくって、それを払わないんだからね。エレーナ・ 】ヴロヴナも、やはりそれと同じ目にあうのかね。わかって 二台分お送りすることも、やはり到底不可能です。おそら おくれ、もしお前が職について、その職を大事にして、いっ く一台分くらいの短編で、それより幾らか長いか短いかでし よ、フ もの悪いで、鼻の先でせせら笑ったり、おつばり出したり しなければ、ちゃんと生活していくことができ、借金もしな 貴下が条件について書いておられることは、よく理解でき いですむはずだ。お前にいちばん好意を持っていた、あの高ませんでした。三百五十ループリ、ないし四百ループリとい 潔無比なポルフィーリイ・イヴァーノヴィチ・ラマンスキイ うのは、一台分に対してですか、それとも作品ぜんたいに対 は、亡くなってしまった。お前はそれを知っているかね ? してでしようか ? 貴兄は二、三台分と書いておられます お前のためにあらゆる幸福を願う。そして、かんじんなこが、もし作品全体とすると、つまり一台分百五十ループリと とは、もうそろそろいい人間になることだ。 評価されたわけです。もしそうだとすると、承諾いたしかね お前の・ドストエーフスキイ ます。四十台分の長編をネクラーソフのために書いています ・お前の健康が相変わらずすぐれないのは、困った が、一台についてずっと二百五十ループリずつもらっていま ものだね。回復に努めなさい。とくに熱病的な発作がなくなす。右の次第で、一台三百五十ループリ以下では、お引き受 るように。もしお前の数々の失敗に、病気まで重なったら、 けいたしかねます。 その時はいったいどうなるのだろう ? 貴下の文集には論文 ( 一年間の文学概観 ) が載るのでしょ うか ? それがあったら、貴下の出版は非常に有利になるで 田・・コズロフ〈 3 しよう、もし論文がよかったら、なおさらです。今の文学で

5. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

いっている。子供たちはありがたいことに達者だ。お前も健 尊敬してやまぬコンスタンチン・ニコラエヴィチ、たった いま受け取った『カラマーゾフ』の校正刷をお送りします。康でいるように。昨日のつびきならぬ用事で外出したのだ 。心からお前の健康を祈っ / 生が、どうやら風邪を引いたらしい はじめから六百五ページまで朗読いたします。ただし、ト 闘外にしるしを付けたところは、朗読の際ぬくことにしまて、強く握手する。キリストはよみがえりたまえり ! お前の兄・ドストエーフスキイ す。 お目にかかれなくて実に残念でした。 0 Z ・・リュビーモフへ 完全に貴兄の・ドストエーフスキイ ペテルプルグ、一八八〇年四月二十九日 9 弟ニコライへ 尊敬してやまぬニコライ・アレクセエヴィチ、衷心から申 し上げるのですが、この手紙を書くのは小生にとって、まこ 〈ペテルプルグ〉一八八〇年四月二十一日 とにつらいのです。小生はずいぶん苦心したのですが、「ロ なっかしい弟ニコライ・ミハイロヴィチ、手紙をありがと シャ報知』の五月号 ( 来月号 ) に、またしても何ひとつお送 う ( 今日やっと受け取った ) 。別れてからもう一年になる。 これはいったいどういうことかしら。お前がそういうシステりできないのです。しかし、一週間後には、家族をともなっ ムを取っているのか、それともほかに理由があるのかね。して、スターラヤ・ルッサへ移りますから、三か月後には長編 かし、われわれの人生も終わりに近づいているのだから、ど全部を完了します。右の次第で、続編の掲載は六月号から始 んなに立派なシステムでも、実践に移す暇がないのだよ。わめて ( ご異存なければ ) 、第四部は八月号で終わり、それか たしはいつもお前が兄弟だということはおばえているけれら九月号には、さらにエビローグをお送りします。印刷して ど、しかし人間というものは、多くの点で理解することをご 一台半くらいです ( 登場人物のその後の運命について数言を 費やし、それから、まったく別な場面が続きます。それはイ 辞退申し上げる。 リューシャの葬式と、その墓前におけるアリヨーシャ・カラ 神聖週間がすんだら、たぶん近いうちにどこかへ行くだろ う。それに、仕事をしなくてはならないのだが、ここの生活マーゾフの少年たちに対する別辞なのです。この中にある程 は実にあわただしくて、その中から抜け出すことができな度、この長編全体の意味が反映するのです ) 。五月号のため 、執筆することができなかったのは、ここでは文字どお 簡い、仕事をすることさえできないくらいだ。わたしの健康は り、みんなが書かしてくれないからです。で、少しも早くべ あまりかんばしくない。アンナもやはり体の具合がよくな お前によろしくと申し出て、お祝いの言葉ありがとうとテルプルグから逃げ出さなくてはなりません。その責任者は

6. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

冬じゅうに、自分の作品は全部読みつくしたので、自分の古ること、あれほど非実際的なことはあり得ないほどです ! いものを読み返すのは、いやになってしまいました。小生は 印刷二台の分量で出ている週刊新聞が、はたして十二台もあ シリーズ的な朗読というプランを主張するものですが、どうる長編の掲載をはじめるでしようか ? それは半年もたっ もわれわれの間では、何ひとつまとまらないらしいです。なて、やっと完結することになります。よしんばだれかの折り お付け加えますが、小生は目下のところ、仕事の山を背負い紙つきの傑作が送られたにせよ、もし小生がそういう新聞の 1 ュロ 込んでいるどころか、それに圧しつぶされそうなのです。常編集者だったら、決して掲載しないで、まあ、付録の形で読 に貴兄を尊敬し信服せる 者に配布したでしよう。小生がこんなことをアクサーコフ フヨードル・ドストエーフスキイ に書いてやらなかったのは、申すまでもありません。今とな っては、彼の決定どおりになるばかりです。あなたの住所も 4 ・・グーセヴァへ 知らせておきました。 : 、 力あなたはいっそ落ちついて仕事に べテルプルグ、一八八〇年十一月三日 かかって、何か一台分くらいのいいものをお書きになって、 尊敬してやまぬペラゲーヤ・エゴーロヴナ、ほんの二、三 「ルーシ』へ至急お送りになったらいいと思います。そのほ 行ですましてしまうことを、どうかおゆるしください。多忙うがいいです。小生はあなたのことをアグサーコフに、、、 を極めているのです。校正も返さなければならないし、『カ人だと書いてやりました。ほんの数行しか書かなかったこと ラマーゾフしの最後の原稿も書かなければならず、うるさいを、おゆるしください。 小生はあなたに信服して、心からし 訪問客は、ひっきりなしです。あなたの『継母』は『オゴニみじみとあなたのことを回想しています。そのことはどうか ヨーグ』から引き上げて、冂ルーシ ( ロシャ ) 』へまわしまし信じてください。さようなら、固くお手を握りしめます。 完全にあなたの・ドストエーフスキイ た。イヴァン・セルゲエヴィチ ( げにもご希望のとおり手 紙を書いて、あなたの手紙に書いてあったチェコの詩に関連 4 ・Ø・アクサーコフへ して、アグサーコフはあなたを知っているべきはずだ、と付け 加えておきました。ところで、「オゴニョーグ』に行っていた ペテルプルグ、一八八〇年十一月四日 あなたの詩の手帳は、とっくに編集部で焼かれてしまったそ尊敬してやまぬイヴァン・セルゲエヴィチ ! 簡うです。それはあの社の規則で、詩の原稿がたまると、いっ 一昨日、小生は『ルーシ』の編集部へ、「継母』と題する もそうなることになっているのです。なお、自分の意見とし中編、もしくは長編の原稿を発送しました。それは次のよう 書て申し添えますが、あなたの「継母』を「ルーシ』へ転送すなことです。もはや前からものを書いている夫人で ( とても

7. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

、刀 した」ロ したら、ト生は八月の二十五日までこのスターラヤ・ルッサ 「未成年』を、ネクラーソフの勧めによって、『祖国雑誌』に におります。 掲載したとき ( この長編は『ロシャ報知』が当てにしていた 0 のですが ) 、小生はカトコフに向かって、自分はなんといっ ・・ヤズイコフへ 7 ても主として『ロシャ報知』の協力者であると自認して、 る、と申しました。右の次第で、目下執筆中の長編についてスターラヤ・ルッサ、一八七八年七月十四日 も、すでにカトコフと交渉を開始して、同社から前借金を二 尊敬してやまぬ善良なミハイル・アレクサンドロヴィチ、 千ループリ取ったほどです ( 小生はいつも前借りで金をもら貴兄に折り入ってお願いがあるのです。これについてはあら っていました ) 。にもかかわらず、小生はこの長編について、かじめ貴兄のおゆるしを乞います。ほかでもありませんが、 カトコフと最後的の決定をしていません。それにはいろいろアルフィーモフなる人物のことなのです。彼は現在ベルミ県 理由があるのですが、その詳細は手紙に書き切れません。し第一区第一地方の税務副監督として勤務しており、まだかな かし、それは本質的にいって、長編の文学的内容に関係のな り若い男です ( 教育は第一級工業学校で受けました ) 。せつば い外面的事情にすぎないのですが、しかしその障害は起こりつまった必要に迫られて、転勤を望んでいますが、それは職 うる可能性があるので、この一八七八年の九月か十月になら務そのものを変えることでなく、勤務地を変えることであり なければ、はっきりしないのです。 まして、ペテルプルグか、またはペテルプルグに近い県の一 右の事情で、ト / 生の長編を『ルースカヤ・ドウマ ( ロシャ っへ移りたいのです。小生は個人的には彼を知らないのです の思想 ) 』に掲載するという、貴兄のご提言にたいして、ほんが、事情をうち明けて申しますと、彼は昨年冬の初めに、グ とうに正確なご返事をすることができません。ただ十月あた ラフィーラ・ミハイロヴナ・アンドレエヴァと申す女性と結 りになって、もし貴兄がその頃までモスクワにご滞在でした婚したのです。このアンドレエヴァは、ペテルプルグで「あ ら、小生の長編がどこに掲載されるかが 、は 0 きりすることる省の」 ( 套「の中言し課長を勤め、数年前に死んだ官吏の娘 と思います。 の一人なのです。彼は大勢の家族をかかえていたので、年給 「ルースカヤ・ドウマ』創刊の報は、心からの深い同感をも 八千ループリもらってはいましたが、死んだ時には、家族は ま己意こ残っているから 簡って迎えました。『べセーダ』のことカ言冫 ほとんど無財産で取り残され、おおむね自分の労働で生活し です。いつでも力のおよぶかぎりお役に立っことを、光栄とているのです。グラフィーラ・ミハイロヴナも、その姉妹は ・書ぞんじています。 とんどすべても、小生の妻の幼な馴染で、後には女学校の同

8. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

いる。今度はわたしもここにあまり長くは滞在しないつもりさんだ、未来が証明してくれるだろう。わたしはいささかも だ、したがって住居も早く借りることになるだろう。つま未来への精力を失いはしないのだ。ただわたしの助手である り、まだ七月の前半になるに違いない。わたしは一日も早くお前だけは達者でいておくれ。二人でなんとか切り抜けてい : っ 0 お前たちのそばへ行きたいと念じている。少なくとも、お前 ここのわたしは依然として一人ばっちだ。ロシャ人はかな たちを目の前に見ていたら、こんなに心配することだけはな り押しかけて来ているけれども、みんな aus Reval ( レーヴ いわけだからね。それに、お前たちといっしょになったら、 エリ出 ) か aus Livland ( リフランド出 ) といった連中で、苗 わたし自身も生きかえる。第一、何よりなのは、アーニヤ、 字もシュトルフだの、ポルフなどというのばかり、たまたま この苦しい時にお前が目の前にいてくれるということだ、こ 、 / チ シュコフだとかノ、 ロシャらしい姓を持っていれば、 こにいると、たえず何かの偶発事件を恐れなければならない。 ュリゼーフだとかいうのだ。みんな知らない連中ばかり。し しかし、長編がいっ書き上げられるか、ということが、わた かし奇妙なことには、みんなはわたしを知っているらしい しをすっかりとはうに暮れさせてしまう。期日を遅らすわけ よ、し、金も必要だし、 この冬はわれわれの生さきほども鉱泉のそばである紳士にドイツ語で、ごくありふ 活はど、つなるだろ、フ、アーニヤ、、 しったいどんなことになるれた問いを持ちかけたところ、相手はすぐさまロシャ語で返 のだろう。とにかく、文学界ではまったくだれもかれもがわ事をした。ところが、こっちは相手がロシャ人だということ たしに背中を向けてしまった。 : 、 カわたしは彼らの後になんは知らなかったのだ。して見ると、先方ではもうわたしのこ Journal de St petersbourg までとを知っていたわけだ。なぜなら、わたしがロシャ人だって かついて行きはしよ、。 オし力もっとも、わたしは : 、初めちょっと『未成年』を賞めかけたけれども、おそらことを察しよう道理がないじゃよ、、。 くだれかが悪口しろと指金をしたのだろう、今度の最近号ですべての人を避けるようにしている。ここの生活は虫唾が走 る、やりきれない。かみさんはコーヒーも abendbrod( 晩食 ) は第二編の終わりがすっかりだれて、《 etil n'yariendesai ・ まず もひどい不味いものを作ってくれる。ただ食事だけはほかの llent» ( 何も図抜けた所がない ) と書いている。要するに、は、 のことならなんとでもいうがいい。効果が多すぎるといってホテルから取っているが ( 前のホテルはもうやめにしてしま サイヤン った ) 、前の H0tel Goedeke に較べると、文字どおりに二 非難するのさえかまわないけれども、図抜けたところがない イしいものを持ってきてくれる。「グラジダニン』は一号 簡ということだけはできないはずだ。それにしてもあの長編が嗇も、 失敗したのは目に見えている。ありとあらゆる礼儀を冬くし送ってくれたきりで、急にぶつつり切れてしまったが、送っ 書ながら、一同の軽蔑のもとに葬り去るに違いない。が、たくてくれと催促してやる値打ちもない。鉱泉のそばで、かなりル

9. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

については、その場合にも自信がありません。彼らは小生 ので ( 少なくとも、小生にと 0 ては ) 、貴兄の事件を詳細 に、きわめて好意ある態度を見せておりますが、昨年すでに 承知しない小生は、少なくとも現在のところ、貴兄ご自身判 一度、小生はある人の作品を推薦し、同社へ送付さえしたと 断しておられるのと、同様な見方をしておる次第です。 ころ、拒絶の返事をもらいました。封さえも切らずに突き返 貴兄は、小生の長編に関する意見を述べておられます。こ したのですが、その理由というのは、ああいう人の作品は、 れについては、小生として、貴兄と論することなど、何もな たといどんなものであろうとも、何ひとっ載せるわけに、、 いわけですが、しかし貴兄が就中、もっと優れたものとし て、『白痴』を挙げておられるのが、小生の気に入りましない、われわれの雑誌は自分たちの旗幟を守っているのだか ・ : ・ : 小生もそのまま手を弓いた次第で た。想像がおできになるかどうか知りませんが、小生はこうら、ということでした いう意見をすでに五十回、あるいはそれ以上も耳にしましす。しかし、貴兄のことはそれでも話して見るつもりです。 その理由は、ほかでもありません。もしこれが亡兄の雑誌 た。あの本は毎年売れております。むしろ、年々増加してい 『ヴレーミャ』が発行されている時分であったら、貴兄の喜 るほどです。いま小生が冂白痴』のことを、このように、、 だしたのは、あの長編を小生の作品中もっとも優れたもので劇もしくは中編は、たとい少しでも雑誌の傾向に適合したも あるというすべての人が、その頭脳の組織に何か特別なものであれば、必す掲載されたに相違ないからです。かりに貴 の 、に小生を驚かせ、かつ小生の気に入るような、あるも兄が入獄しておられたにしても。 z ・お手紙の中で、貴兄が銀行で働かれた行為にたい のを蔵しているからです。もし貴兄もそのような頭脳の組織 して、いささかもだ後 , 1 毎の念を感じないと書いておられる、あ を有しておられるならば、小生としてはうれしく思います。 もちろん、もし貴兄が誠実な気持ちでいわれるならば、での二行だけは小生の胸にしつくりきません。この世には、理 知の論証や、ありとあらゆる特殊事情にも優る高貴な何物か す。しかし、たとえ誠実でないとしても : があって、いかなる人といえどもそれに従わないわけにいき この問題はこのくらいにしておきましよう。小生は貴兄が 意気沮喪されないことを望みます。貴兄が文学に従事されません ( つまり、これもやはり一種の旗幟といったようなも 月生の注意が露骨で、おせつか るようになったのは、よい兆候です。作品をどこかへ載せてのです ) 。おそらく貴兄は、、 いの性質を帯びているのに、腹をお立てにならないだけの、 ほしいとのことですが、それに対して、小生はなんとお答え 生としては、「祖国雑誌』のネ聡明さを持ち合わせておられることと思います。第一 , していいかわかりません。小 / クラーソフか、あるいはサルトウイコフに話をして見ること生自身、貴兄に比べて、まただれに比べても、一段すぐれた人 間ではありません。 ( これは決してこしらえものの謙遜では 。原稿を拝読する以前に必ず話をしますが、成否 ノ 94

10. ドストエーフスキイ全集18 書簡(下)

扞復取り急ぎご返事を差し上げますが、貴校で催される尊敬してやまぬニコライ・アレグセエヴィチ、明一月三十 困窮学生のための音楽と文学のタベに、どうしても出席する一日、小生の長編 ( カラマーゾフ ) の続稿、第三編 ( 全部 ) ことができないのを、心から遺憾にぞんじます。まるでわざをお送りします。この第三編で、長編の第一部が全部完結し と狙ったように、医師がまた数日間、外出を厳禁したのでます。右の次第で、第一部は三編から成るということになり す。当日の名誉会員券を送ってくだすった学生諸君に、遺憾ます。全体は三部にわかれ、各部は幾つかの編にわかれ、編 の意を伝えてくださるようにお願いします。小生が諸君のごは章にわかれます。この第三編は小生の原稿紙で八十八枚、 『ロシャ報知』の組でいえば、ちょうど五台半に当たります。 好意を心からありがたく思っていることを、お疑いにならな そういうわけで、あの長編の第一部は「ロシャ報知』の十三 いようにと、衷心より望む次第であります。敬具 諸君の・ドストエーフスキイ 台から十四台分になるはずです。 それと同時に、尊敬してやまぬニコライ・アレグセエヴィ チ、あらかじめお断わりしておきますが、「ロシャ報知』の 一八七九年 三月号には、原稿をお送りすることができません ( その力が ないのです ) 。そういうわけで、第二部の掲載は、『ロシャ報 知』の第四号、つまり四月号から始まります。この第二部も 2 弟ニコライへ 最後まで、中断なしに掲載したいと思っています。 〈・ヘテルプルグ〉一八七九年一月一日 第二部 ( 「豐は「ぎを意味すしの校正を貴社から送「てく なっかしい弟、新年のお祝いの言葉とともに、できるだけ ださるのを、鷁首して待っています。これから校正はすべ のものを送る。わたし自身も困っているのだ。では、さようて、書留でお送りします (Z ・長編の第三部も、今後こ なら。達者でいるように。わたし自身もユダヤ人のように咳の手紙同様、書留にしてお送りします ) 。宛名はこれでよろ をしている。 しいのでしよ、フか、宛名にストラストノイ・プルヴァールよ・ 完全にお前の・ドストエーフスキイ どと、あまり詳しく書きましたが、これでいいのでしよう 七ループリ同封する。 第一部の校正が全部そちらへ届いたかどうか、とても心配 2 Z ・・リュビーモフへ でなりません。小生は校正の最後の分だけ、貴兄の電報をち 鸛ペテルプルグ、一八七九年一月三十日 ようだいして、書留で送ったのです。はじめの三回分は普通