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検索対象: ドストエーフスキイ全集6 罪と罰
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1. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

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2. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

ると、彼はがつくり首をたれてしまった。 なく奇妙だった。なんだかわかるような気もするけれど、し 2 ・「しかし、どうなのだろう ! いったいどうなの 「ああ、それは違います。それは違います」とソーニヤは悩 ましげに叫んだ。「いったい、そんなことがあっていいものだろう ! おお、神さま ! 』彼女は絶望のあまり両手をもみ 学 / し / ですか : しいえ、それは違います、それは違います ! 」 : でもば 「いや、ソーニヤ、あれは見当ちがいだ ! 」とっぜん新しい 「お前は自分でそんなことはないと思うんだね ! クを受けて、興奮を感じたように、彼は 思考の屈折にショッ くは真剣に話したんだよ、真実を ! 」 「まあ、それがなんの真実なものですか ! おお、神さま ! 」急に頭を上げて、またいいだした。「あれは見当ちがいだ ! 「だって、ばくはただしらみを殺しただけなんだよ、ソーニそれよりいっそ : : : こんなふうに想像してみてくれ ( そう じっさいこのほ、つがし ! ) ばくが自尊心の強いうら ヤ、なんの益もない、けがらわしい、有害なしらみを」 しゅうわん 「まあ、しらみですって ! 」 やましがりやで、いじわるで、卑劣な執念ぶかい人間で : こ、フい、つ田刀 「そりやばくだって、しらみでないことは知ってるさ」と妙そのうえ気ちがいの傾向があるとしてもいし いっさいがっさい だと想像してみておくれ。 ( もう一切合財、一時にひっくる な目つきで彼女を見ながら、彼は答えた。「だが、もっとも、 : ソーニヤ」と・伐よ、、 ばくはでたらめをいってるんだよ : 。ししめてしまえー・発狂とい、つことは ( 劇にも人がいっていたよ。 たした。「ばくはもうずっと前から、でたらめばかりいってばく気がついていた ! ) 今ばくはお前に、大学の学資がつづ けられなかったといったろう。ところがね、ことによった : 、、、こ。じっき、いお ( 劇のし、つ るんだよ : : : あれはみな見当ち力しオ とおりさ。それにはぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜん別な原因ら、つづけられたかもしれないんだよ。大学に納めるだけの があるんだ , : ばくはもう長いこと、だれとも話をしなか ものは、母が送ってくれたろうし、くつだとか、服だとか、 ったもんだからね、ソーニヤ : : : ああ、ばくは今やたらに頭パンだとかを買う金は、ばく自分でかせげたろうと思う。確 かに、かせげたよ ! 家庭教師のロがちょいちょいあって、 ・か ~ 涌い」 彼の目は熱病やみのような火に燃えていた。彼はほとんど一回五十コペイカずつもらえたんだからね。ラズーミヒンだ 。ししになって、働こう 熱に浮かされないばかりであった。不安げな徴笑がそのくちって働いている ! ところがばくま、 : としなかったんだ。そうだ、いじになったんだ ( これはうま びるの上にさまよっていた。興奮した気持ちのかげから、も こ、こ、自分の巣のすみ い言葉だ ! ) ばくはそのときくもみオし冫 う恐ろしい無力が顔をのぞけるのであった。彼がどんなに苦 しんでいるか、ソーニヤにはよくわかっていた。彼女もやは っこへ引っ込んでしまった。お前はばくの部屋へ来たから、 りめはいがしかけていた。それに、彼の話しぶりも、なんと見て知ってるだろう : : : ねえ、ソーニヤ、わかるだろう、低

3. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

ールをあおりたくてたまらなくなった。そのうえ、とっぜん 彼はとうとうロに出して叫んだ。 おそってきた疲労の原因を、空腹のためと解釈したからであ なんというけがらわしいことだろう ! 「ああ、じつに ! る。彼は暗いきたない片すみの、ねばねばするテープルの前 いや、これはナンセンスだ、 しったしいったいおれが : に陣どってピールを命じ、むさばるように最初の一杯を飲み これは愚にもっかぬことだ ! 」と彼はきつばりいいたした。 「まあこんな恐ろしい考えが、よくもおれの頭にうかんだも干した。と、たちまち気持ちがすっかり落ちついて、考えが のだ ! しかし、おれの心は、なんとけがらわしいことを考はっきりしてきた。『こんなことは何もかもばかげてる』と ちに彼はある希望を感じながらひとりごちた。「気にやむことな え出せるようにできていることか ! 何よりもだいい し ! ただからだのぐあいがわるく しんかちっともありやしな、 けがらわしい、きたない、ああ、いやだ、いやだー なってるだけなんだ ! わずか一杯のビールと、乾パンひと かし、おれはまるひと月 : けれど、彼は言葉でも叫びでも、自分の興奮を現わすこと切れでーーもうこのとおり、たちまち頭はたしかになる、意 ができなかった。もう老婆のところへ出かけた時から、そろ識ははっきりする、意志も強固になる ! ちょっ、何もかも けんお こんだく : 』が、こ、つしてばかにしたよ、つ そろ彼の心を圧迫し溷濁させていたたとえようもない嫌悪のじつにばかげてるわい だき 情が、今はものすごく大きな形に成長して、はっきりその正な唾棄の態度をとってはみたものの、彼はなにか恐ろしい重 体を示してきたので、彼は悩ましさに身の置き場もないよう荷から急に解放されたように、急に様子がはればれしてき よいどれ な気がした。彼はまるで酔漢のように、往き来の人に気もった。そして人なっかしげに一座の人々を見まわした。しかし かず、ひとりひとりにぶつかりながら歩道をたどりたどって、彼はこの瞬間でさえ、物事をよいほうに取ろうとするこの感 次の通りまで来たとき、ようやくはじめてわれにかえった。受性も、やはり病的なものだということをかすかに予感して 彼はあたりを見まわして、とある酒場のそばに立っている このとき酒場にはあまり人がいなかった。階段で出会った 自分に気がついた。そこへはいって行くには、歩道から石段 ふうきん よ、どれ をおり、地下室へおりるようになっていた。戸口からは、ちょあのふたりの漢のあとから、女をひとり連れて手風琴をた うどこの時ふたりの酔漢が出て来て、互いにもたれ合ってのずさえた五人組の連中がどやどやと出て行ったので、あとは のしり合いながら通りへ登って来た。長くも思案しないで、静かにゆったりとなった。あとに残ったのはーーービールを前 罰ラスコーリニコフはそこへおりて行った。これまで一度も酒に腰かけているほろ酔いの町人体の男と、シベリヤふうの帽 と場へはいったことはなかったけれど、今はめまいがするうえ子をかぶり、灰色のあごひげをはやした、大柄なふとった連 罪 に、焼けつくようなかわきに悩まされていたので、冷たいビれの男だった。連れの男はひどく酔いがまわって、べンチの 、つ ) 0

4. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

: またあの、 「あれが見えないかし ? になった。すべての状況を知ってみると : ばくの部屋にあかりがついてるじ オしカ ? すき間からさしてるだろう : あの事件が極端にきみをいらいらさして、病気とからみ合わやよ、 きってしまったことを知ってみるとね : : : ところできみ、ば彼らはもう主婦の戸口と並んだ最後の階段の前に立ってい こ。はたして、ラスコ ーリニコフの小部屋にあかりのついて くはいささか酔っ払ってる。しかし、なんだか知らないけれオ : にか、ら、ば / 、ワて , っ いるのが、下からも見えていた。 ど、やつには何か考えがあるらしい 「変だな ! ナスターシャかもしれんそ」とラズーミヒンは うのさーーー・やつは精神病で夢中になっているんだよ。まあき み、つばでもひっかけておくさ : 「いや、いま時分、あれがばくの部屋へ来ることはないん 三十秒ばかりふたりは黙っていた。 だ。それに、あいつはも、つとっくに一授てるよ。しかし : 「おい、ラズーミヒン」とラスコーリニコフはロを切った。 うだっていいや ! じや失敬 ! 」 「ばく、きみに率直にいってしまいたい。ばくはいま死人の ばくはきみを送って来たんじゃないか、 : ばくはそこで「何をいうんた ? そばにいたんだ。ある官吏が死んだんだ。 っしょにはいろ、つよ ! 」 ありったけの金をやってしまった : : : のみならす、そこであ っしょにはいることは知 . っている。だが、ばくは、ここ るひとりのものが、ばくに接吻してくれた。それは、たとい ほくがたれかを殺したとしても、やはり : : : ひと口にいえできみの手を握って、ここできみと告別したいんた。さあ、 ば、ばくはそこでもうひとりの、別の、ある人間を見たんだ手を出したまえ、失敬 ! 」 ばくはでた 「きみ、どうしたんだい、 : 燃えるような羽毛を帽子につけた : 「なんでもないよ : : : じや行こう : : : きみは目撃者になるが らめをしゃべりだした。ばく非常に衰弱してるんだ。ばくを ささえてくれ : : : もうすぐ階段じゃないか : : ど、つしたんだい ? 」とラズーミヒンは 「君どうしたんだ : ふたりは階段を上り始めた。ラズーミヒンの頭には、ひょ っとしたらゾシーモフのい、つことがほんと、フかもしれない、 不安げにたずねた。 「少しめまいがするんだ。しかし、問題はそんなことじゃな という想念がひらめいた。「ちえっ ! おれはあまりしゃべ りすぎて、先生の頭をめちやめちゃにしてしまった ! -J と彼 い。問題はただむやみに気が沈むことなんだ。むやみに気が 沈むんだ ! まるで女の腐ったみたいに : : まったく ! おはひとりごちた。ふたりが戸口に近づいたとき、思いがオ や、あれはなんだ ? 見ろ ! 見ろ ! 」 く、部屋の中に人声が聞こえた。「いったい何事だ ? 」とラ 「なんだ、いったい ? 」 ーリニコフは一ばんにドアに手 ズーミヒンは叫んだ。ラスコ

5. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

だよ。サングト・ペテルプルグの都と、その地面に接吻してうであった : : けれど、もうのつびきならぬ場所にたどり着 いていた : いるんだ」と町人の中でだれか一杯きげんらしいのが、こう 彼はかなり元気よく構内へはいって行った。三階までのば らなければならなかった。「まだのばって行くまがちょっと 「まだなま若い男だぜ ! 」と、もうひとりが口をはさんだ。 「ただの平民じゃないよ ! 」と、だれかがもったいぶった声あるな』と彼は考えた。概して、運命的な瞬間はまだ遠くか でいった。 なたにあって、だいぶ時間が残っている、まだいろいろなこ 「いまどき、だれが平民でだれが士族か、そんな見わけがっとを考えなおすことができる、というような気がしていた。 らせんけい ノ、、も′ル、か」 またしても螺旋形の階段は、依然としてほこりだらけで、 すべてこうした叫びや話し声が、ラスコーリニコフの気持依然として何かのからがごろごろしていた。またしても各ア ちをおさえつけた。もう舌の先まで出かかっていた「わたし ートのドアがあけ放しになってい、またしてもほうばうの は人を殺しました』という言葉も、そのまま消えてしまっ 台所からは、依然たる炭気と臭気がもれてくる。ラスコー た。とはいえ、彼は落ちつきはらって、こうした叫び声を聞 ニコフはあのとき以来、ここへ来るのは初めてだった。彼の まひ : 物がったけれど、そ き流しながら、あたりを見むきもせずに横町を通りぬけ、ま足は麻痺して、がくがくとひざがしらカ っすぐに警察をさして歩きだした。途中、ある一つの幻がちれでも歩きつづけた。彼は身なりを正して、人間らしくはい らと目にうつったが、彼はべつに驚きもしなかった。それは って行くために、ひと息入れようと、わずかのあいだ立ちど オカしったい、なんのためだ ? どういうつもり もうそうなければならぬと、予感していたのである。彼がセまった。『ど ; 、 ンナヤで二度目に地面へ身をかがめた時、ふと左のほうをふだ ? 』自分の動作の意味を考えてみて、とっぜん彼は考え りむいた拍子に、五十歩ばかりへだてたところに、ソーニヤ た。『もうどうせこの杯を飲みほさなくちゃならんとすれば、 オしカ ? 見ぐるしければ見ぐるし の姿を認めたのである。彼女は広場にある木造パラックの陰要するに同じことじゃよ、、 に、彼の目にかからぬよう身をひそめていた。してみると、 いほど、けつきよく、かえっていいのだ』この瞬間、彼の想 彼女はずっとしじゅう、彼の悲しい歩みにしたがっていたの像のうちに、火薬中尉ィリャー・ベトローヴィチの姿がちら である ! ラスコーリニコフはこの瞬間、△フこそソーニヤ : とうつった。「、つこ、、ほんとうにあの男のところへ行っ 新永久に自分を離れることなく、運命がどこへ彼をみちびいてたものだろうか ? ほかの人じゃいけないのか ? ニコジー 行こうと、世界のはてまでも、ついて来るにちがいないと、 ム・フォミッチ ) じゃいけないだろうか ? すぐにひ「返 3 はっきり直感し、了解したのである。彼の心は煮えかえるよ 一て、まっすぐ署長の家へ行こう ? すくなくとも、家庭的

6. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

されたんだぜ。このとおりの言いまわしでさ、ばくはたしかて、やはりわっしたちをおしかりになりました。わっしとミ まあ トレイが道幅いつばいにころがっていたからなんで。わっし に知ってるんだ。正確に聞かしてもらったんだから ! がミトレイの髪の毛をつかんで、引きずり倒してぶんなぐる どうだね、どうだね ? 」 と、ミトレイも下からわっしの髪の毛をつかんで、ぶんなぐ 「そう、だが、 しかし、証拠にはなってるね」 「いや、 ーくがいまいってるのは証拠のことじゃなくて、尋るのでございます。もっとも、ふたりとも本気で怒ったんじ 、もんだから、おもしろ半分にや 問そのもののことだ。彼らがその本質をいかに解釈しているやなくって、つまり仲がいし ミトレイのやつが振りはどいて、 まあ、あんな連中なんかどうでってたんで。そのうちに、 か、それを論じてるんだー もいいや ! : : : 彼らはニコライを責めて、責めて、ぎゅうぎ通りのほうへ逃げ出したので、わっしはまたあとを追っかけ ましたが、 ートへもど 追いつけなかったので、ひとりでアパ ゅういうほど絞めつけたので、とうとう白状してしまった。 ミトレイ一ふ 4 って来ましたー・ーあとかたづけをしなきゃなりませんから 「歩道で拾ったんじゃありません。じつは、 トで見つけましたんで』「どね。わっしはかたづけながら、ミトレイが、今くるかくるか りで壁を塗っていた、あのアパ と待っておるうちに、入口の部屋のドアのそばで、小壁のか んなふうにして見つけた ? 』「へえ、それはこんなふうでご ぎいました。わっしはミトレイとふたりでいちんち八時ごろげの片すみに、ふいとこの箱を踏んづけましたんで。見る まで仕事をして、帰り支度をしておりますと、ミトレイのやと、紙にくるんだものが落っこってる。紙をとって見ると、 こんな小つばけな鉤がついているんで、その鉤をはずして見 つがいきなりわっしの面へ、ペンキをさっとひと刷毛なすり たら、箱の中に耳輪が : : : 』」 つけました。こんなあんばいに、わっしの面へペンキをべた トアの外 「ドアの外かい ? ドアの外にあったのかし ? っとつけて逃げ出しやがったんで、わっしもそのあとを追っ に ? 」ふいにラスコーリニコフは、おびえたよ、つなどんより かけて行きました。追っかけながら、ありたけの大きな声で いきな したまなざしで、ラズーミヒンを見ながら叫んで、片手をつ わめきました。ところが、階段から門へ出るロで きながら、ばっと長いすの上に起き直った。 りはずみで、庭番とだんながたにぶつつかりましたんで。だ 「うん・・ : : だが、どうしたんだい ? きみはいっこ、ど んながたが幾たりいられたか、覚えがございません。する たんだい ? なんだってきみはそんな ? 」 と、庭番がわっしをどなりつけました。もうひとりの庭番も ラズーミヒンも同じく席から身を起こした。 同じようにどなりました。そこへまた庭番のかかあが出て来 : 」とラスコーリニコフは、またまくら て、これもやつばりわっしたちをどなりつけやがるんで。そ「なんでもないー こんところへ、奥さんづれのだんなが門の中へはいって来の上へ身を落として、ふたたび壁のほうへ向きながら、やっ

7. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

明する ? 耳輪を拾ったのをなんと説明するね ? まったく 大問題なんだ ! 少しはわかってくれよ ! 」 「うん、そりやきみが熱くなってるのは、ちゃんとわかって彼が陳述どおり拾ったものとして」 「どう説明するって ? 何も説明することもないじゃないか るよ。だが待てよ、ばくはきくのを忘れてたが、耳輪のはい しんちよく わかりきった話だ ! 少なくとも、事件を進捗さすべき っこ ~ 目がほんとうにばあさんのトラングから出たものだって めいりよう 径路は明瞭で、ちゃんと証明されてるよ。つまり、箱がそれ ことは、なんで証明されたんだね ? 」 まゆ 「それは証明されてるさ」とラズーミヒンは眉をひそめて何を証明したのさ。ほかでもない、真犯人がその耳輪を落とし やら進まぬ調子で答えた。「コッホがそのしろ物に見覚えがて行ったのだ。犯人は、コッホとベストリヤコフがドアをた 、こ、て、せんをさし たいていたときには、四階のあの住まししし あって、質入れ主を教えたのさ。すると、その男がたしかに て息をこらしてたんだ。ところが、コッホがあほうなまねを 自分のだと、きつばり証明したんだ」 コッホとベスト丿ャ して下へおりて行ったので、そのとき犯人はいきなり飛び出 「そりやまずいな。じゃ、もう一つ コフが上って行ったときに、だれかニコライを見たものはなして、同じく下へかけおりたんだ。だって、ほかに逃げ道が ないものね。それからやつは階段の途中で、コッホとベスト かったのか。その点を何かで証明できないのかい ? 」 リヤコフと庭番の目をさけて、あき部屋に隠れたんだ。それ 「そこなんだよ、きみ、だれも見たものがないんだ」とラズ ーミヒンはいまいましそうに答えた。「そいつがまったく困はちょうど、ミトレイとニコライがかけ出して行った時なの るんだ。コッホとベストリヤコフですら、上へのばって行くさ。そこで犯人は、三人が上へ行ってしまう間ドアのかげに とき、ふたりに気がっかなかったんだからね。もっとも、彼立っていてさ、足音の消えるのを待ってゆうゆうと下へおり て行った。それはちょうどミトレイとニコライが通りへかけ らの証言は、この場合大した意義を持ちえないんだがね。 「あの住まいの開いているのは見ました、たしかその中で仕出したあとで、いあわせた人は散ってしまって、門の下には だれもいなかった時なんだ。もっとも、見た人はあったかも 事をしていたのでしよう。が、通りすぎるとき、別に注意し なかったので、職人が中にいたかどうか、覚えがありませしれないが、かくべっ気にもとめなかったろう。人が通るの ん』とこ、つい、フんだ」 は珍しいことじゃないんだからね。箱はそいつがドアのかげ に立っているうちに、ポケットから落としたんだが、落とし 「ふん : : : してみると、弁解の方法といっては、ただお互い たのは気がっかなかったんだ。それどころじゃないんだから 罰 になぐり合って、きやっきやっ笑っていたということだけだ な。つまりその箱こそ、犯人がそこに立ってたことを明白に ね。まあ、かりにそれが有力な証拠だとしよう。しかし : 罪じゃまたきくがね・・ーーきみ自身はこの事実ぜんたいをどう説証明してるじゃないか。そこが手品のなのさ ! 」

8. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

りついた柄を洗いにかかった。それから、台所いつばいに張 でになった。少しも早くここから逃げ出したかった。もし彼 がこの瞬間、より正確に見、かっ判断することができたらり渡したなわに干してある洗たく物で、きれいにふき取った うえ、長いあいだ窓ぎわで注意ぶかくおのを調べてみた。も 目下の状態の困難と、絶望と、醜悪さと、愚劣さを思い 合わすことができたらーーーここを逃れ出てから家へ着くまでう血のあとはのこっていなかった。ただ柄がまだ湿っている ばかりだ。彼は綿密におのを外套の裏の輪にさした。それか には、まだこのうえさまざまな困難にうち勝ち、場合によっ ては、悪事さえ遂行せねばならぬということを想像できたら、うす暗い台所の光の許すかぎり、外套や、ズボンや、 ら、彼は何もかもうっちゃらかして、すぐさま自首に出かけつを調べてみた。ちょっと外から見たくらいでは、どうやら つにしみがついていた。彼は 何もなさそうである。ただ、く たにちがいない。それも自分を案ずる恐れのためではなく、 けんお ただおのれの行為にたいする恐怖と嫌悪のためばかりであばろをしめして、くつをふいた。しかし、彼は自分でよく見 る。わけても嫌悪の念がこみあげてきて、彼の心中に一刻一分けがっかないのを知っていたので、こちらでは気づかない けれど、人の目にはすぐはいるようなものがあるかもしれな 刻成長するのであった。今はもはやどんなことがあっても、 と考えた。彼はもの思いに沈みながら、部屋のまん中に トラングのそばはおろか、奥の部屋へすら引っ返せそうもな あんたん っ ) 0 突っ立った。悩ましく暗澹たる想念が彼の心中にわきあがっ けれど、一種の放心状態というか、もの思いというか、そたーーー・自分は気が狂いかけているので、この瞬間、ものを判 うしたものが、しだいに彼を領していった。ともすれば彼は別することも、自分を守ることもできす、もしかすると、 ま自分のしていることは、まるで見当ちがいかもしれない われを忘れて、というよりは、かんじんなことを忘れて、さ ・『やっ、たいへんだ ! 逃げなきゃならないのだ、逃げ まつなことにかかずらうのであった。しかし、ふと台所をの なきや ! 』と彼はつぶやいて控え室へ飛び出した。が、そこ ぞいて、半分水のはいった・ハケツを腰掛の上に見つけたと き、彼は手とおのを洗うことに気がついた。彼の手は血みどではまた、かって経験したことのないような恐怖が、彼を待 ろになり、ねばねばしていた。彼はおのの刃のほうをいきなち受けていた。 り水へ突っ込んで、小窓の上にのっている欠け皿から、石け彼は棒立ちになって、じっと見つめたが、われとわが目を んのかけらをつかみ出して、じかに・ハケツの中で手を洗いは信ずることができなかった。ドアーー・入口の間から階段へ通 罰じめた。手を洗い終わってから、彼はおのを引き出し、まずずる外側のドアーーーさきほど彼がベルを鳴らしてはいったそ つのドアが、開いたままになっていて、てのひらがゆっくりは 鉄の部分を洗い終わると、長いこと、ものの三分間もかか いるはどのすき間をつくっていた。錠もおろさず、せんもさ 7 罪て、石けんで血痕の有無さえたしかめてみながら、血のこび

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みんなは 「おお神さま。たったひと言聞かせてください : さあ、そこでいよいよ用件にとりかかろ , フ ! もう何もかも知っているのか、それともまだ知らないのか ? 十五ループリあるから、このうち十ループリだけ持ってく よ。二時間もたったら、計算書をこしらえてきみに提出すもし知っていながら、ばくの寝ている間だけ空っとばけて、 しいかげんからかったあげく、いきなりここへやって来て、 る。その間に、ゾシーモフにも知らせてやろう。もっとも、 そうしないでも、あの男、もうとっくに来てなくちゃならんもう何もかもとっくに知れていたんだが、ただちょっと知ら : なんていいだしたらど はずだがな。もう十一時過ぎだもの。ところで、きみ、ナスないようなふりをしていただけだ : うだろう ? いったいこれからどうするんだったつけ ? ひ チェンカ、ばくのるす中せいぜいのぞいて見てやってくれ、 よいと忘れてしまった、まるでわざとねらったように急にど 飲みものとか、そのほかなんでもほしいというものをやるよ 忘れしてしまった。つい今しがたまで覚えていたのに ! 』 シェンカにはばくが自分で必要なことはいっとく から。じゃ、失敬」 彼は部屋のまん中に突っ立って、悩ましい疑惑に包まれな 「お主婦さんのことをパーシェンカだなんて ! なんてあつがら、あたりを見まわした。やがて、戸口へ近寄ってドアを かましい男だろう」とナスターシャは後ろから追っかけるよあけ、じっと耳をすましたが、これも見当ちがいだた。と、 しふいに思い出したように、彼の例の壁紙に穴のあいている片 うにいった。それからドアをあけて耳をすまし始めたが んばうしきれなくなって、自分も下へかけ出した。 すみへ飛んで行き、一生けんめいに調べてみたり、手を突っ 彼女はラズーミヒンが下で主婦さんと何を話してるか、知込んでかきまわしたりしたが、これもやつばりそうではなか りたくてたまらなかったのである。それに全体から見て、彼った。彼はストーヴのはうへ行って、その戸をあけ灰の中を かきまわしてみた。と、ズボンのすその切れつ端や、引きち み ( はど、つやらラズーミヒンにば、つつとなっているらしかっ ぎったポケットのばろばろになったのが、あのとき投げ込ん だままでころがっていた。してみると、だれも見なかったわ 彼女の出たあとのドアがしまるが早いか、病人は毛布をは ね飛ばして、気ちがいのようにべッドからおどり上がった。 けだ ! その時ふと彼は、今しがたラズーミヒンの話したく けいれん っ下のことを思い出した。じっさいそれは長いすの上にかけ 彼は焼けつくような痙攣に近い焦燥の念をいだきながら、一 ふとん た蒲団の下にはいっていたが、あのとき以来もうすっかりも 刻も早くふたりのものが出て行って、そのるすに仕事にかか ョ ートフま れる時がくるのを、今か今かと待ち設けていたのである。しみくたになって、よごれくさっていたので、ザミ かし、それはなんだろう、どんな仕事だろう ? ーー・ー彼はまるむろん、何ひとつ見わけることができなかったに相違ない。 「やっ、ザ でわざとのように、それをど忘れしたのだ。 : ・警察 ! : : : だが、なんのために

10. ドストエーフスキイ全集6 罪と罰

「ああ ! それじや人を手ごめにしようというんだね ! 」こ非常に証明しにくいものですからね、アヴドーチャ・ロマー う叫んだドウーニヤは、死人のように真青になって片すみへノヴナ」 ゥニヤは憤りのささやきをもらした。 飛びのくと 、いきなり手もとにあった小テープルを楯にとつ「悪党 ! 」とドー 「なんとでもおっしゃい。しかし、おことわりしておきます が、わたしはただ仮定の形でいっただけですよ。わたし自身 彼女はもう叫び声こそたてなかったが、くい入るように、 ひたと迫害者を見つめながら、その一挙一動を鋭く見まもつの確信からいえば、たしかにあなたのおっしやるとおりで 、彼女と向す。暴力は卑劣な行為です。ただわたしが申しあげたのは、 ていた。スヴィドリガイロフもその場を動かずに / : たとえもしあなたが、わたしの申し出にし き合ったまま、部屋の反対側につっ立っていた。彼は、自分もしあなたが : を統御するだけの余裕があった、少なくとも、表面だけはそたがって、進んで兄さんを救おうという気におなりになった としても、あなたの良心には、なにもやましいところはない う見えた。が、顔は依然として青ざめていた。あざけるよう という、ただそれだけのことなんです。あなたは単に状況 な徴笑は彼の顔を去らなかった。 ( もしそういわなくちやすまないのなら、暴力といってもよ 「あなたはいま「手ごめ』とおっしゃいましたね、アヴドー くつぶく チャ・ロマーノヴナ。もし暴力だとすると、わたしの処置がろしい ) に屈服なすったというだけの話じゃありませんか。 こういうことを考えてごらんなさいーーー兄さんとお母さんの 当をえているのに、なるほどとお思いになりましよう。ソフ しようちゅう ヤ・セミ ヨーノヴナはるすだし、カベルナウモフの住まい運命は、あなたの掌中に握られてるんですよ。しかも、わ どれい まではずっと遠くて、締めきった部屋が間に五つもありまたしはあなたの奴隸になります : : : 一生涯 : : : わたしはここ す。それから最後に、わたしはあなたより少なくも二倍はカにこうして待っています : : : 」 スヴィドリガイロフは、ドウー ニヤから八歩ばかりへだて が強いです。そのうえ、わたしにはなにも恐れることなんか ありません。なぜって、あなたはあとで訴えるってことがでた長いすに腰をおろした。彼の決心を動かすことができない わた きませんからね。なにぶん、あなたもまさか兄さんを売す気のは、彼女にとって疑う余地もなかった。それに、彼女は、 にはならないでしよう ? それに、だれもあなたを信じる人彼のひととなりを知っていた : けんじゅう はありませんよ。そうじゃありませんか、若い娘さんがひと ふいに彼女はポケットから拳銃を取り出して、引き金をあ 罰りで独身者のところへ、出かけるわけがありませんからね。 げ、拳銃を持った手をテープルの上にのせた。スヴィドリガ イロフは席からおどりあがった。 とだから、もし兄さんを犠牲になすったところで、けつきよく、 罪なにも証拠だてることはできませんよ。手ごめってことは、 「ははあ ! そういうことですか ! 」と彼は驚きながらも、 こ 0 ひとり たて イ 9 ー