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検索対象: 夏目漱石全集 2
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1. 夏目漱石全集 2

よいとくつりん ( 6 ) 徳没倫道徳に逆らいそむき、倫理を無視する三七六 ( 1 ) 賢哲が女性観賢者哲人の女性観。 ( 2 ) アリストー Arist0teIe ( 384 ー 322 B. C. ) きゅうぜん 三セ四 ( 1 ) 翕然一致するさま。集合するさま。 ギリシアの哲学者。アリストテレス。 ( 2 ) ホーマー Homer 西暦前九世紀ごろのギリシア ( 3 ) ダイオジニス Diogenes ギリシアの哲学者。 の詩人と伝えられ、叙事詩『イリアス』『オデュッセイ ディオゲネス、粗衣粗食し大樽の中でくらした。アレキ ア』の作者とされる。 サンダー大王との有名な問答など奇行奇言が多い。 ( 4 ) ビサゴラス Pythagoras ( 582 7 ー 493 7 B. C. ) ( 3 ) チ = ヴィ・チェーズ Chevy Ch000 イギリス ギリシアの哲学者・数学者。。ヒタゴラス。 とスコットランドとの国境にある丘陵で、その地方の豪 族の不和にからまる民謡「チ = ヴィ狩猟」。 ( 5 ) ソクラチス sok 「 ates ( 470 ~ ー 399 B. c. ) ギ リシアの哲学者。ソクラテス。 豪族の不和にからまる民謡「チエヴィ狩猟」。 こうし ( 6 ) デモスセニス Demosthenes ( 383 ー 322 B. c. ) 三七五 ( 1 ) 孔子 ( 前五五一一ー四七九 ) 。中国春秋時代の思想 家。 古代ギリシアの弁論家 ( ) デモステネス。 こんばい 「蕩々乎たり、民よく名づ ( 2 ) 王者の民蕩々たり ( 7 ) 困憊くるしみ疲れること。 くるなし」 ( 『論語』泰伯篇 ) によるか。「蕩々」は、き ( 8 ) セネカ seneca ( 55B. C. ~ ー 45 ~ ) スペインの騎 わめて広く深い、の意。 士の家の出で、ローマで雄弁術を学んだ、修辞学者。 ( 9 ) マーカス・オーレリアス Marcus Aure1ius ( 3 ) 無為にして化す「聖人云ふ、我は無為にして 民自から化すと」 ( 『老子』第五七章 ) 。 ( 三ー 0 ) ローマ皇帝。ストア学派の哲学者としても知 られる。 ( 4 ) タマス・ナッシ Thomas Nashe ( 一 567 ー一 60 一 ) イ ( 川 ) 。フロータス Titus Maccius P1autus 西暦一一、 ギリスの風刺作家。この本は『愚行の分析』 (The An 三世紀ごろの、ローマの喜劇作家。 atomy 0 『 Absurdities, 1589 ) で、その最初の部分に ろうさ ~ ・ このような女性観がのべられている。 (ä) 陋策いやしくみにくい計略。 こと。

2. 夏目漱石全集 2

うに主人に説きたした。 ぜ、 心細いね」 爨ころ けんか 「あまり合わない背広を無理にきるとびる。喧嘩を「びん助やきしやごが何を言ったって知らん顏をして したり、自殺をしたり騒動が起るんだね。しかし君なおればいゝじゃないか。どうせ下らんのだから。中学 んかたゞ面白くないというだけで自殺は無論しやせす、の生徒なんか構う価値があるものか。なに妨害になる。 だって談判しても、喧嘩をしてもその妨害はとれんの 喧嘩だって遣ったことはあるまい。まあ / 、い、方だ じゃないか。僕はそういう点になると西洋人より昔の よ」 「ところが毎日喧嘩ばかりしているさ。相手が出て来日本人の方がよほどえらいと思う。西洋人のやり方は 積極的積極的といってちかごろだいぶ流行るが、あれ なくっても怒っておれば喧嘩たろう」 「なるほど一人喧嘩た。面白いや、いくらでもやるがは大なる欠点を持っているよ。第一積極的といったっ て際限がない話だ。いつまで積極的にやり通したって、 満足という域とか完全という境にいけるものじゃない。 「それがいやになった」 めざわ ひのき 向に檜があるだろう。あれが目障りになるから取り払 「そんならよすさ」 「君の前だが自分の心がそんなに自由になるものじゃう。とその向うの下宿屋がまた邪置になる。下宿屋を 退去させると、その次の家が績に触る。どこまでいっ ない」 ても際限のない話さ。西洋人の遣り口はみんなこれさ。 「まあ全体何がそんなに不平なんだい」 ( 2 ) ( 1 ) あ主人はこ、において落雲館真件を始めとして、今戸ナポレオンでも、アレキサングーでも勝 0 て満足した 猫焼の狸から、びん助、きしやごそのほかあらゆる不平ものは一人もないんたよ。人が気に喰わん、喧嘩をす ( 3 ) 心を挙けて滔々と哲学者の前に述べ立てた。哲学者先生る、先方が閉ロしない、法庭へ訴える、法庭で勝つ、 はだまって聞いていたが、ようやく口を開いて、かよそれで落着と思うのは間違さ。心の落着は死ぬまで焦 2 イ 9

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( 2 ) 恃むあてにする。信用する。 一 = 三 ( 1 ) この証券自己信頼の確証をさす。 ( 2 ) 柔術使柔道のことを当時柔術とも言った。 ( 3 ) 奥山東京の浅草公園観音堂裏の俗称。そこに 「花屋敷」という娯楽場があり、その中に動物園もあっ ちくいち ( 4 ) 逐一びとつずつ順をおって。 ちょうせいそん 一三三 ( 1 ) 張世尊当時日本にいた中国人奇術師。張世存。 どんしゅう ( 2 ) 呑舟の魚舟を呑むような大魚。 ( 3 ) 速定手ばやく決定する。速断と断定とを結合し て作ったような語である。 ゅ・つト ( ′、 ( 4 ) 遊弋軍艦が海上を往復して警戒すること。 一三四 ( 1 ) 年命いそがしく走りまわること。 ( 2 ) ゲーレン Galen ( 一 29 ~ 1199 ) ローマ宮廷に仕え た、マルクス・アウレリウス帝の侍医。 パラセルサス Paracelsus ( 1493 ー一 54D ドイツ の自然哲学者。 へんじゃく ( 2 ) 扁鵠中国戦国時代の名医。 ( 3 ) 交番焼打ポーツマス条約 ( 日露戦争の講和条約 ) に抗議するため、明治三十八年九月五日、東京日比谷公 園で講和反対国民大会が開催されたが、解妝命令が出た こ 0 たの ため国民の怒りは、各所の交番焼き打ち、全市にわたる デモとなって爆発、暴動化したので、東京に戒厳令がし かれた。 ( 4 ) 傷寒論古代中国の医学書。後漢時代に成った。 傷寒はチフスの類に当る熱病の名で、それを例として病 気の治療法を解説した書。 しやもん 一定の居所を定めず放浪して ( 5 ) 一所不住の沙門 いるあんぎや僧。沙門は僧の別称。 のうそう ( 6 ) 雲水行脚の衲僧行雲流水のようにゆくえ定め のうえ ぬ遍歴の僧。衲僧とは衲衣 ( 人の捨てる布切れを集めて 作った衣服 ) を着た僧のこと。 ( 7 ) 六祖慧能 ( 六三八ー七一三 ) 。禅宗の始祖、達 磨大師から数えて六代目の人。師に仕えていたあいだは、 米つきの労働に従事させられていた。ただし「樹下石上 の難行苦行」は釈迦によって創始されたものである。 inspirqtion ( 英 ) 。あた 一三六 ( 1 ) インス。ヒレーション かも神霊を得たように精神活動が異常にたかまること。 まんちゃく ( 2 ) 瞞着するだます。人をあざむく。 ( 3 ) プレートー し一 a ( 0 〔 427 ー 347 B. C. ) ギリシア の哲学者。。フラトン (P1aton) の英語読み。 ( 4 ) 蒲鉾の種「種」は材料のこと。かまぼこは、ふ イ 72

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で嘘のようである。しかし来たに相違ない。しかも珍 を撫でていると、だん / / 、目が重たくなるでしよう」 と聞いた。主人は「なるほど重くなりますな」と答え客が来た。吾輩がこの珍客のことを一言でも記述する る。先生はなお同じように撫でおろし、撫でおろしのは単に珍客であるがためではない。吾輩は先刻申す とおり大事件の余瀾を描きっゝある。しかしてこの珍 「だん / 、、、重くなりますよ、ようござんすか」と言う。 あた 主人もその気になったものか、なんとも言わずに黙っ客はこの余瀾を描くに方って逸すべからざる材料であ ている。同じ摩擦法はまた三四分繰り返される。最後る。なんという名前か知らん、ただ顔の長い上に、山 に甘木先生は「さあもう開きませんぜ」と言われた。羊のような髯を生やしている四十前後の男といえばよ 可哀想に主人の目はとう / 、潰れてしまった。「もう かろう。迷亭の美学者たるに対して、吾輩はこの男を 開かんのですか」「え、もうあきません」主人は黙然哲学者と呼ぶつもりである。なぜ哲学者というと、な めくら にも迷亭のように自分で振り散らすからではない、た として目を眠っている。吾輩は主人がもう盲目になっ だ主人と対話する時の様子を拝見していると、いかに たものと思い込んでしまった。しばらくして先生は ( 1 ) 「あけるなら開いてごらんなさい。とうていあけない も哲学者らしく思われるからである。これも昔の同窓 とみえて両人とも応対振りは至極打ち解けた有様だ。 からーと言われる。「そうですか」と言うがはやいか 「うん迷亭か、あれは池に浮いてる金魚のようにふ 主人は普通のとおり両眼を開いていた。主人はにやに や笑いながら「懸かりませんな」と言うと甘木先生もわふわしているね。先だって友人を連れて一面識もな い華族の門前を通行した時、ちょっと寄って茶でも飲 あ同じく笑いながら「えゝ、懸りません」と言う。催眠 んで行こうと言って引っ張り込んだそうだが、ずいふ 猫術はついに不成功に了る。甘木先生も帰る。 その次に来たのがーーー主人のうちへこのくらい客のん呑気たね、 「それでどうしたい」 来たことはない。交際の少ない主人の家にしてはまる 2 イ 7

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更」は午後十一時から午前一時ごろまでの時間、「無何」 ( 5 ) 出世間的世間の俗見を超越していること。 は自然のままの理想郷。ここでは「おのれ」のことを論三査 ( 1 ) 錬金術卑金属 ( 鉄・銅など ) を貴金属 ( 金。銀 じている関係から「無我」と当てたのであろう。 など ) に変化させ、また、不老・不死の万能薬を製出し ようと試みた原始的化学技術。エジ・フト古代から、近代 ( 5 ) かいている失っている。 ( 6 ) ナイス nice ( 英 ) りつばな。親切な。 化学以前まで行なわれた。 finger-bowl ( 英 ) 西洋 ( 7 ) フィンガー ( 2 ) 自殺クラ・フスティーヴンソン ( 前出 ) の怪奇 料理の食後、果物を食べた指を洗うために出す水を入れ 短編集『新アラビアンナイト』中の一編。 ざんしん た容器。 ( 3 ) 嶄新ふつう「斬新」と書く。 ・ンヨーノズ Henry Arthur Jones ( 8 ) 嫻わぬ変物不慣れな変わり者。 ( 4 ) アーサー コン Francis Bacon ( 1561 ー 1626 ) イギリス ( 1851 ー 1929 ) イギリスの劇作家。 ぼくしゅ の哲学者〔 ) 三六六 ( 1 ) 墨守墨子 ( 中国周代の思想家 ) が城をよく守っ べンツ ( 2 ) べてん中国語「胼子」のなまり。いつわりだま た故事により、固く守ること。 ノラルセカレスコト 亠丿こ—\JO 「己所レ不 / 欲、勿 / 施一一人こ ( 2 ) 己れの好む : ( 『論語』顔淵及び衛霊公 ) による。 三六四 ( 1 ) 因業頑固で非情なこと。 そとばこまち にうまつむげん ( 2 ) 卒塔婆小町謡曲「卒都婆小町」、その女主人公 三六七 ( 1 ) 泡沫の夢幻あわやしぶきのようにはかない の名。老い衰えてこじきとなった小野小町が狂乱のすえ えんじゃく 悟りの境地にはいる話っ ( 2 ) 燕雀小人物には英雄の心がわからない、の意。 おうむしよじゅうにしょ・ごしん 、」うこ。く 「燕雀いづくんそ鴻鵠の志を知らんや」 ( 『史記』陳渉世 ( 3 ) 応無所住而生其心禅語で、所有・所得の邪心 を捨てた正心になれ、の意。「金剛般若経」にある語で、 家 ) 。 沢菴和尚の『不動智神妙録』に詳説されている。 ( 3 ) コルドヴァ cordova スペイン南部の都市。中 ゴんか 世カリフ朝の首都として繁栄した。メリメ作『カルメ ( 4 ) 言下に道破する聞くと同時に言いきる。 ー、ん′こう

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当時の漱石はまた創作をもって立とうとの自覚をも同じくらいな学者だ」 ( 「猫」四 ) という自信をもって づに至らす、本業を英文学者、大学教師と考えていた。 いる。もしかすると、これはたんなる中学教師苦沙弥 創作はいわば彼の慰さみであり、余戯であった。それの放言ではなく、東京大学講師夏目金之助の胸中を不 故に気軽に舞文、放談し、好んで戯作風の筆致をもて用意にもらした発言たったかも知れない。そしてこう あそぶことができた。だから自作の中でも「猫」はもした見識と学力を誇る彼自身を、一段も二段も低い中 っとも早く書けた ( 「文学談」 ) のであって、漱石の全学教師に託したのは、江戸戯作者の一特色たる「やっ 作品の中で、これほど自由奔放に筆の走っている感じし」だったのではないか。 のものは少ない。 もちろん中学教師苦沙弥はそっくり 江戸作者の中でも学者気どりの馬琴などは、尋常の よみ 漱石自身ではない。 この時分の中学校の先生はのちの戯作者と同じに見られまいとして、さかんに自作の読 中学、今日の高校教師よりははるかに高級な職業であ本のなかで、和漢にわたる博識をふり廻している。そ った。というと語弊があるが、世間からの尊敬にしてれは「猫」における登場人物の、ギリシア・ラテン以 くらべものにならなかった。何分中学の数も少なけ来の西洋文化、文学に対する博識の誇示と似ていない れば、当然中学の先生の数も少なかった。そして生活ことはない。「やっし」とはそういう高邁な知見を内 程度といえば、「猫」のように女中を使い、相当の御に臓して、敢えて市井の俗生活の内に伍することであ る。石川淳氏の筆法にしたがえば「俗情を去って俗物 馳走を常食として、門戸張っていられたのである。 だが漱石自身は、苦沙弥のような中学教師より社会を避けざること」が「やっし」である。しかしここで うそれはいささか意味をことにする。創作の場合に 通念では一段も、二段も上の、大学と高等学校の講師 であった。苦沙弥先生は「たかがリードルの先生」で限れば自己をモデルにしつつも、真実の自己より意識 ・はあるが、それでも「サント・ブーヴたって俺たって的に卑小化し、戯画化して見せることであるとともに、

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horret vacum•の訳。漱石は「野分」のなかでも「自 『衣裳の発達とその影響』という著書があり、この評論 然は真空を忌み愛は孤立を嫌う」と使っている。 はそれを紹介するという虚構で書かれている。 もくあみ Bath イギリスのプリストル市に近い、温 ( 6 ) ・ハス ( 4 ) 元の杢阿弥再びもとの状態にもどることのたと 泉で有名な都市。 ( 5 ) 衆目環視多くの人がとりまいて見ること。 ( 7 ) ポー・ナッシ Beau (Richard) Nash ( 一 674 ー 1762 ) 漱石はこのことを「文学評論」第二編七に書いている。 ( 6 ) 一般一部分。ふつう「一斑 [ と書く。 えいてつ こめつき 一一 0 一 ( 1 ) 米舂玄米をついて精白する人。根気さえあれば一一 0 五 ( 1 ) 瑩徹玉のように透きとおっていること。 てんすいおけ 馬鹿でもできた。 ( 2 ) 天水桶防火用などとして雨水をたくわえておく 桶。 ( 3 ) 裸で道中がなるものか裸のままで外出ができ かんぜん るものか。何も持たないでは旅ができないことのたとえ。 ( 3 ) 間然するところなきまでかれこれ言うすき かるわざし まのないまで。まったく。 一一 0 一一 ( 1 ) 軽術師ふつう「軽業師」と書く。 せんき 一一 0 三 ( 1 ) デカルト René Descartes 0596 ー一 650 ) フラン ( 4 ) 疝気漢方 ( 中国伝来の医学 ) で腸や腰のあたり スの哲学者。「余は思考す、故に余は存在す」 ( 」 e て ense の痛む病気をいう。 donc お suis. ) は、一アカルトの思想的自叙伝といわれる ( 5 ) やきが回っちゃ衰えて鈍くなっては。 うし・こめまがりふち はたもと 『方法序説』にある文句で、この書はラテン語訳が出版 ( 6 ) 牛込に曲淵という旗本未詳。牛込は、もと東 されてから有名となった。この文句のラテン語訳は 京市の区名。現在の新宿区の一部。旗本は、江戸時代の おめみえ Cogito, ergo sum. 武士の階級で、家禄一万石未満、御目見以上で、将軍に こと 拝謁する格式のあった者。「曲淵」という人については 一一 0 四 ( 1 ) 異を衒い異っていることを誇り見せびらかす。 きけいえんびふく つばめ よくわからないが、漱石は幼時から牛込に住んでいたの ( 2 ) 燕の尾にかたどった畸形燕尾服のこと。洋装 の男子礼服の一種。 で、巷談として聞いていたのであろう。 ( 3 ) 自然は真空を忌む . ラテン語の成句 Natura ab ・ 十六、七世紀ごろの伝説的豪傑。 一一 0 六 ( 1 ) 岩見重太郎 468

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釈 注 十年一高野球部が結成されてからは、学生野球熱が中等 学校にもひろがった。 一一三五 ( 1 ) 照準弾丸が目標に命中するよう銃砲の射角・向 きなどを調節する操作。 lsaac Newton ( 1642 ー 1727 ) イギリ ( 2 ) ニュートン スの科学者。力学体系を作りあげ、引力の原理、徴積分 法、その他近代科学の其礎をきすいた。ニュートンカ学 の基本をなす運動の三法則とは、一、慣性の原理、二、 運動方程式、三、作用反作用の原理。 ( 3 ) 一フィプニツツ Gottfried Wi 】 helm Leibniz 0646 ー一 7 一 6 ) ドイツの哲学者・数学者。「空間は出来得べき同 在現象の秩序」の原文は l'ordre des coexistences pos ・ sibles ( 可能なる同時存在の秩序 ) 。ライプニツツが・ヘ ールの批評に答えた文中にある語。 ひっきよう 一一三六 ( 1 ) 必竟ずるにつまりは。結局。ふつう「畢竟」と 書く ばくぜん ( 2 ) 驀然まっしぐらに突進するさま。 ( 3 ) つらまってはつかまえられては。 ( 4 ) あらばこそありようもなく。 ほもめん 一一三七 ( 1 ) 帆木綿帆に用いる厚く丈夫な木綿。 ( 2 ) 一騎当千一人で千人の敵を相手に戦えるほどの、 0 非常な勇猛さ。 たんば 笹山は兵庫県多紀郡 ( 3 ) 丹波の国は笹山から : の地名。山奥から都へやってきた者のことをさしていう 慣用的表現。 えちごじし ( 4 ) 越後獅子越後国 ( 新潟県 ) 西蒲原郡から出る獅 子舞で、子どもが獅子頭をかぶり、芸をしながらこじき して歩くもの。 ちんにゆう ( 5 ) 闖入突然入りこむこと。 あにはか 一一三〈 ( 1 ) 豈計らんや思いがけず。意外にも。 きらよしなかてい ( 2 ) 忠臣蔵赤穂藩の四十七士が、吉良義央邸に討ち 入り、主君のかたきを討った事件に取材した芝居の総称。 きようどばっせい 一一一元 ( 1 ) 強弩の末勢強い大弓で射た矢も、末は力が弱 ってしま一つこと。 一一四 0 ( 1 ) 未だ稚気を免かれず大町桂月が「雑言録」 ( 一一 一六ページ注 1 を見よ ) で「詩趣ある代りに、穉気ある を免れず」と批評したのを取りあげた。 よらん ( 2 ) 余瀾余波。事件が後に残した影響。 ( 3 ) 層々かさなるさま。 さだんせんわ ( 4 ) 瑣談繊話とるにたらない話。 ( 5 ) 法語祖師や高僧が仏教の真理をわかりやすく説 いた語録。 さ、やま イ 75

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注 ( 3 ) 街鉄東京市街鉄道株式会社の略称。明治四十四 thurWeIles!ey Welling 〔 on ( 】 769 ー 52 ) エルべ島脱出 年 ( 一九一一 ) に市営となる前の東京市内の電車を経営 のナポレオンをワーテルローで破ったイギリスの将軍。 していた会社。同種のものに、東京電車鉄道及び東京電 一〈 ( 1 ) ・ ( スカル Blaise Pascal 0623 ー 62 ) フランス 気鉄道の一一つの株式会社があった。 の哲学者・数学者。 しるこ パスカルの瞑三三 ( 1 ) 汁粉を食いに出た漱石が予備門入学当時下宿 ( 2 ) もしクレオパトラの鼻が をともにしていて、毎晩下宿の寺の前に売りに来る汁粉 想録『パンセ』 (Pensées) 中の言葉。 をいっしょに食べに出たのは橋本左五郎 ( 東北帝国大学、 ( 3 ) 茶々を入れて話に邪魔を入れて。 いちる 北海道帝国大学の農学部教授を勤めた ) とであった。米 一一九 ( 1 ) 一縷の一筋の糸のようにわずかの。 しやり 山保三郎にそれが応用されている。 ( 2 ) 這裏このうち、ここなどの意。禅のことばで、 らんとうば ( 2 ) 卵塔婆墓場のことで、正しくは「卵墸場」。 「這裡」とも書く かなきん ( 3 ) 金巾堅くよった糸で目を堅く細く薄地に織った ( 3 ) 円転滑脱相手の出かたにより自由自在に変化し 広巾の綿布。 てその場をうまく処理すること。 = 一四 ( 1 ) ゴシック趣味なゴシック (gothic) はヨーロ 三 0 ( 1 ) 疳づいたふつう「勘づく」あるいは「感づく」 ッパ中世に流行した建築樣式。先のとがったアーチを用 と書く。 ほうかん い、素・ほく堅実な味がある。そのような趣のある、の意。 三一 ( 1 ) 狎客元来は幇間のこと。ここでは、なじみの客 きほう の意に使ってある。 ( 2 ) 機鋒気のむくところ。 ふじむら ( 2 ) 藤村本郷五丁目にあった和菓子店。ことによう一一一五 ( 1 ) 金と太鼓で金は鉦の当て字。一生懸命に。 かんが有名。 三六 ( 1 ) 御見やげ当て字。ふつうはお土産と当てて書く。 ぎようこう ストラム・シャン一アー "Tristram ShandY" ( 2 ) トリ 一一三 ( 1 ) 僥倖まぐれあたりのさいわい。 スターンが一七六〇年から一七六七年にかけて発表した ( 2 ) 電気鉄道電車の始運転がはじめて行なわれたの 小説。明治三十年三月「江湖文学」に漱石は「トリスト は、明治三十六年 ( 一九〇一一 D 、品川・新橋間であった。 かね

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「いえそれほどでもありません」 「君が直覚的にそう思われなければ、僕は曲覚的にそ 「今でさえそれほどでなければ、人文の発達した未来う思うまでさ」 すなわち例の一大哲学者が出て非結婚論を主張する時「曲覚的かもしれないが、と今度は独仙君が口を出す。 分には誰もよみ手はなくなるぜ。いや君のだから読ま「とにかく人間に個性の自由を許せば許すほどお互の ないのじゃない。人々個々おの / 、特別の個性をもっ 間が窮屈になるに相違ないよ。ニーチェが超人なんか てるから、人の作った詩文などはいっこう面白くない 担ぎ出すのもまったくこの窮屈のやりどころがなくな のさ。現に今でも英国などではこの傾向がちゃんとあって仕方なしにあんな哲学に変形したものたね。ちょ らわれている。現今英国の小説家中でもっとも個性の っと見るとあれがあの男の理想のように見えるが、あ いちじるしい作品にあらわれた、メレジスを見たまえ、りや理想じゃない、不平さ。個性の発展した十九世紀 ジェ 1 ムスを見たまえ。読み手はきわめて少ないじゃ にすくんで、隣りの人には心おきなくめったに寝返り ないか。少ないわけさ。あんな作品はあんな個性のあも打てないから、大将少しやけになってあんな乱暴を み、うかい る人でなければ読んで面白くないんだから仕方がない。 かき散らしたのだね。あれを読むと壮快というよりむ しようじん この傾向がだん / 、発達して婚姻が不道徳になる時分しろ気の毒になる。あの声は勇猛精進の声じゃない、 えんこん には芸術もまったく減亡さ。そうだろう君のかいたも どうしても怨恨痛憤の音だ。それもそのはずさ昔は一 ( 1 ) きゅうん のは僕にわからなくなる、僕のかいたものは君にわか人えらい人があれば天下翕然としてその旗下にあつま くそ らなくなったひにや、君と僕の間には芸術も糞もないるのだから、愉快なものさ。こんな愉快が事実に出て じゃないか」 くれば、何もニーチェみたように筆と紙のカでこれを ( 2 ) 「そりやそうですけれども、私はどうも直覚的にそう 書物の上にあらわす必要がない。だからホーマーでも 思われないんです」 チエヴィ・チェーズでも同しく超人的な性格を写して