考え - みる会図書館


検索対象: 夏目漱石全集 6
83件見つかりました。

1. 夏目漱石全集 6

しそく 会的情況の変化に伴れて自我を発展仕損なって死ぬ。物なら必ず無ければならぬというわけではない。前に 初めから自我を縮小しようという念は少しも見えない。挙げた作物でも、泣かぬーー泣けぬというものでも、 要するに一毫の犠牲たも他に対して払わぬ。元来気のしかも立派な作物である。泣く泣かぬで、その優劣を 毒だとか、同情の念に耐えぬとかいうのは、ある意味判ずるのではないが、どんな作物は泣きえないかを考 において自分が損害を受けておらねばならぬのと、おえると、要するに情操に伴わない困窮、読者からいえ よびその損害の受け方が他の道義心を満足させていなば情操を満足せしめない作中の人物の窮迫は、泣きえ あきら くってはならぬ。そうでなければいくら腹を切っても、ないのは明かである。でたとえば、イ。フセンの物 しんじゅう いくら困却しても、首を縊っても、ただ厭な心持ちに総体は見ないがーー、まア泣けない物が多い。情死をし なるばかりだ。断っておくが、こう言ったからとて作たり、怖るべき境遇に陥 0 たりしたものでも、ます涙 まず ちんらっ 物が劣いというのではない。沈鬱な調子にはなるのだ は流さずに読む。イ。フセンは一種の哲学者である。哲 きわみ けれども、可憫な極、泣くというわけにはいかぬとい 学者といってもなにもカントやヘ 1 ゲルを研究はしな うのである。 いが、社会制度についてのうえの哲学者、たとえば、夫 前に挙けた作物のある物や、このあいだうち出た国婦の関係とか、個人の自由はこの点までゆかねばなら ぎだどっま て木田独歩君の『竹の木戸』などもそうである。植木屋ぬとか、約束的道徳は打破して宜いとかいうについて、 かみさん の女房が首を縊 0 て死ぬ。その死ぬのを読んでみると、考えを持 0 ている。その考えが骨子にな 0 て戯曲がで = 世の中が悲惨なものたという感じは起るが、それがたきている。ある解釈からいえば、の作はその社会的 第め可憫だという感じは起らない。 哲学の具体的表現にすぎない。そしてその哲理はなか そこでこの泣かせるということは、あえて上等な作なかに意味がある。またも 0 ともである。あるいは流 あわれ い 4 っ」・つ ( 1 ) りつば 3 し 7

2. 夏目漱石全集 6

思われる。 「金なんぞ : : : 」 二人の会話は双方とも意味を成さないで、途中で切「いっから取か、ったんです」 「ほんとうに取りか、ったのは、ついこのあいだです れた。それなりで、また小半町ほど来た。今度は女か けれども、そのまえから少しずつ描いていたゞいてい ら話し掛けた。 「原口さんの画を御覧になって、どうお思いなすっ たんです , 「そのまえって、いつごろからですか」 答え方がいろ / \ あるので、三四郎は返事をせずに 「あの服装で分るでしよう」 三四郎は突然として、はじめて池の周囲で美子に 少しのあいだ歩いた。 「あんまりでき方が早いのでお驚ろきなさりやしなく浄った暑い昔を思い出した。 しゃ 「そら、あなた、椎の本の下に跼がんでいらしったじ ゃありませんか」 「えゝ」と言ったが、実ははじめて気が付いた。考え ると、原口が広田先生の所へ来て、美子の肖像を描「あなたは団扇を翳して、高い所に立ていた」 「あの画のとおりでしょ ) 」 く意志を洩らしてから、まだ一か月ぐらいにしかなら よい。展覧会で直接に美禰子に依頼していたのは、そ「えゝ。あのとおりです」 のち 二人は顔を見合わした。もう少しで白山の坂の上へ れより後のことである。三四郎は画の道に暗いから、 しあげ あんな大きな額が、どのくらいな速度で仕上られるも出る。 のか、ほとんど想像のほかにあ 0 たが、美子から主向から車が走けて来た。黒い帽子を 0 て、金縁の めがね 意されてみると、あまりはやくできすぎているように眼鏡を掛けて、遠くから見ても色光沢の好い男が乗っ とり 19 し

3. 夏目漱石全集 6

減って形式ばかり残る。それゆえ、なんの益にも立た ぬと同時に、ここに偉い人が在って、今の社会匍度に 応じて未来の道徳を思索的に打ち建てるにしても、そ そな れが情操を具えておらなければ、やはり十分の効果を 文学のうえに収むることはむずかしい。もっともよく 収めた極度は、イプセンにおいてこれを見うる。しか もイプセンは泣きうべき情況を具備しながら泣きえざ る底の戯曲が多いのだ。したがってイプセンはそれだ かれ け損をしている。渠は社会の改革者 ( イプセン自身に 思う ) としての主張を貫徹するために、彼の作物の文 学的の効果を減することをあえてしているといっても よろしい ・一「新小説し ( 明治四一・六

4. 夏目漱石全集 6

郎 会制度の陥欠をもっとも明かに感じたものだ。吾々も「実は今日君に用があると言ったのはね。 おい /. 、あ、なってくる」 それよりまえに、君あの偉大なる暗闇を読んだか。あ 「君はそう思うか」 れを読んでおかないと僕の用事が頭へはいり悪い」 「今日あれから家へ帰って読んだ」 「僕ばかりじゃな、。 具眼の士はみんなそう思ってい 「どうだ」 うち 「先生はなんと言った」 「君の家の先生もそんな考えか」 「うちの先生 ? 先生は解らない」 「先生は読むものかね。まるで知りやしない」 なんだか腹 「そうさな。面白いことは面白いが、 「だって、さっき里見さんを評して、落ち付いていて の足にならない麦酒を飲んだようだね」 乱暴だと言ったじゃないか。それを解釈してみると、 周囲に調和していけるから、落ち付いていられるので、 「それでたくさんだ。読んで景気が付きさえすれば可 どこかに不足があるから、底のほうが乱暴だという意 い。たから匿名にしてある。どうせ今は準備時代だ。 味じゃないのか」 こうしておいて、ちょうど宜い時分に、本名を名乗っ て出る。 それはそれとして、さっきの用事を話し 「なるほど。ーー先生は偉いところがあるよ。あゝ、 ておこう」 うところへゆくとやつばり偉い」 , ー・ー今夜の会 と与次郎は急に広田先生を賞めだした。三四郎は美藩 与次郎の用事というのはこうである。 子の性格についてもう少し議論の歩を進めたかったので自分たちの科の不振の事をしきりに慨嘆するから、 だが、与次郎のこの一言でまったくはぐらかされてし三四郎もいっしょに慨嘆しなくってはいけないんだそ まった。すると与次郎が言った。 うだ。不振は事実であるからほかのものも慨嘆するに る」 ( 1 ) 109

5. 夏目漱石全集 6

中にあるのが期せずして同じように現れたのだろう。 は種々あるが、それらの所作を読んで気の毒とか可 それは四月に見た物についていうのだが、おそらく近とかいう心はちっとも起らぬ。一歩進めていえば泣き託 わがくに うることができない。それはなぜたろうか。つまり悲 来ーー現時我邦における小説はそういう傾向のものが 多くはないかと、こういうことに気が注いた。で、作劇の条件を具えておって悲劇のように涙を溢すことが 家諸君はむろん、自分はどういう物を書いておって、 でぎないのは、考えてみるとその編中の人間が、ごく 調子を出そうということは、心得ておられる狭い意味においての現代精神を発揮しているからであ に相違はない。けれども読者がそれに対して泣くか泣る。ここにいう狭い意味の現代精神というのは、自我 かないかということは、その念頭にさえなかったので発展の傾向をいうのである。すなわち他に対する道徳 しないかと思う。泣かせてやろうという考えはむろんでなく、自己に対する道徳に勝ったもの、換言すれば、 ない。さればといって泣かせるようなものは書くまい人に対する道徳がほとんど中に無いものを描いたの という決心も普通ない話であるから、要するに泣きえが多い。もう一つ言い直すと、写された人間がなんら ないものであるということは、作り上げて気が付いたの韈牲を払っていない。社会のためにも、親のために のではあるまいか。なぜ私が泣くとか泣かぬとかいうも、他のためにも、ますまア自己の損失をあえてする ことをいうかというのは、これらの作物の大部分のシ点が無い。有るかもしれぬが作には見あたらぬ。それ そな チュエーションからいうと、泣きうべき条件を具えてゆえ、窮するとか、困るとか、苦しむとかいうのが、 いたように思う。たとえば、首を縊って死ぬとか、あ他のために窮したり、困ったり、苦しんでするのでは あばらや るいは老爺さんが家財道具もなにもない一軒の荒屋か なく、たとえ ~ 目を縊って死んでも、まあ義理人情で死 ら追出されるということ、その他にもこれに類した事ぬんではなく、世の中の圧迫で仕方なく死ぬとか、社 こぼ かわいそう

6. 夏目漱石全集 6

四郎 てあて の受験生の答案調を引き受けた時の手当が六十円この 「野々宮さんは ごろになってようやく受け取れた。それでようやく義「むろん、まだ知らない , 理を済ますことになって、与次郎がその使いを言い付「金はいっ受取ったのか」 っこ 0 「金はこの月始りだから、今日でちょうど二週間ほど になる」 「その金を失くなしたんだから済ない」と与次郎が言 っている。実際済まないような顏付でもある。どこへ 「馬券を買ったのは」 ( 1 ) ばけん 落したんだと聞くと、なに落したんじゃない。馬券を「受取った明る日た」 「それから今日までそのまにしておいたのか」 何枚とか買って、みんな無くなしてしまったのだと言 あき う。三四郎もこれには呆れ返った。あまり無分別の度「いろ / \ 奔走したができないんたから仕方がない。 すえ を通り越しているので意見をする気にもならない。そやむをえなければ今月末までこのま、にしておこう」 ( 2 ) しようぜん はっち のうえ本人が悄然としている。これを常の活発地「今月末になればできる見込みでもあるのか」 ふたり と比べると与次郎なるものが二人いるとしか思われな「文芸時評社から、どうかなるだろう」 はげ ひきだしあ きのう 。その対照が烈しすぎる。だから可笑いのと気の毒 三四郎は立って、机の抽出を開けた。昨日母から来 なのとがいっしょになって三四郎を襲ってきた。三四たばいりの手紙の中を覗いて、 郎は笑いだした。すると与次郎も笑いだした。 「金はこ、にある。今月は国から早く送ってきた」と 「まあ可や、どうかなるだろう」と言う。 言った。与次郎は、 ありがた 「先生はまだ知らないのか」と聞くと、 「難有い。親愛なる小川君」と急に元気の好い声で落 「まだ知らない」 語家のようなことを言った。 しらべ すま おかし

7. 夏目漱石全集 6

・ほかになんらの研究も公けにしない。しかも泰然と取をいまだかって先生に聞いたことがない。今夜は一つ のんき 聞いてみようかしらと、心を動かした。 り澄ましている。そこに、この暢気の源は伏在してい るのだろうと思う。三四郎は近ごろ女に囚れた。恋人「野々宮さんは下宿なすったそうですね」 おもしろ 「え \ 下宿したそうです」 に囚われたのなら、かえって面白いが、惚れられてい もっ こわ るんだか、馬鹿にされているんだか、怖がって可いん「家を持たものが、また下宿をしたら不便だろうと思 さげす いますが、野々宮さんはよく : : : 」 だか、蔑んで可いんだか、すべきだか、続けべきだ むとんじゃく 「え \ そんな事にはいっこう無頓着なほうでね。あ かわけの分らない囚われ方である。三四郎は忌々しく なった。そ ういう時は広田さんにかぎる。三十分ほどの服装を見ても分る。家庭的な人じゃない。その代り ( 1 ) ゅうよう 先生と相対していると心持が悠揚になる。女の一人や学問にかけると非常に神経質だ」 二人どうなってもかまわないと思う。実をいうと、三「当分あゝ遣てお出のつもりなんでしようか」 もっ 「分らない。また突然家を持かもしれない」 四郎が今夜出掛けてきたのは七分方この意味である。 訪間理由の第一一一はだいぶ矛盾している。自分は美「奥さんでもお貰になるお考えはないんでしようか」 そば 「あるかもしれない。佳いのを周旋して遣りたまえ」 子に苦しんでいる。美子の傍に野々宮さんを置くと なお苦しんでくる。その野々宮さんにもっとも近いも三四郎は苦笑をして、よけいな事を言ったと思った。 のはこの先生である。だから先生の所へ来ると、野々すると広田さんが、 宮さんと美子との関係がおのずから明瞭になってく「君はどうです」と聞いた。 るだろうと思う。これが明瞭になりさえすれば、自分「私は : : : 」 の態度も判然極めることができる。そのくせ二人の事「まだ早いですね。今から細君を持っちゃあたいへん ぶがた とらわ やっ にがわらい 128

8. 夏目漱石全集 6

四郎 が広くなる。大きな建物が所々に黒く立っている。そ 三四郎は即答ができなかった。 おびたゞ の屋根が判然尽きる所から明かな空になる。星が夥し 「女は恐ろしいものだよ」と与次郎が言った。 くタし 「恐ろしいものだ、僕も知っているーと三四郎も言っ 「うつくしい空だ」と三四郎が言った。与次郎も空をた。すると与次郎が大きな声で笑いだした。静かな夜 見ながら、一間ばかり歩いた。突然、 の中でたいへん高く聞える。 「おい、君」と三四郎を呼んだ。三四郎はまたさっき「知りもしないくせに。知りもしないくせに」 の話の続きかと思って「なんだ」と答えた。 三四郎は憮然としていた。 しあわ きれい 「君、こういう空を見てどんな感じを起す」 「明日も好い天気だ。運動会は仕合せだ。奇麗な女が 与次郎に似合わぬことを言った。無限とか永久とか たくさん来る。ぜひ見にくるがい、」 う持ち合せの答えはいくらでもあるが、そんなこと 暗いなかを二人は学生集会所の前まで来た。中には を言うと与次郎に笑われると思って三四郎は黙ってい 電燈が輝いている。 こ 0 木造の廊下を回って、部屋へはいると、そう / \ 来 「つまらんなあ我々は。あしたから、こんな運動をすたものは、もう塊まっている。その塊りが大いのと小 そなえつけ るのはもう已めにしようかしら。偉大なる暗闇を書い さいのと合せて三つほどある。なかには無言で備付の てもなんの役にも立ちそうにもない」 雑誌や新聞を見ながら、わざと列を離れているのもあ 「なぜ急にそんな事を言いだしたのか」 る。話は方々に聞える。話の数は塊まりの数より多い 「この空を見ると、そ ういう考えになる。 君、女ように思われる。しかし割合に落付いて静かである。 にれたことがあるかー 煙草の烟のほうが猛烈に立ち上る。 ふん かた

9. 夏目漱石全集 6

四郎 藩子に接触する機会を利用して、先方の様子から、好己惚てみたが、たちまち、 い加減に最後の判決を自分に与えてしまうだけである。 「やつばり愚弄じゃないか」と考えだして、急に赤く なった。もし、ある人があって、その女はなんのため 明日の会見はこの判決に欠くべからざる材料である。 だから、いろ / \ に向を想像してみる。しかし、どう に君を愚弄するのかと聞いたら、三四郎はおそらく答 想像しても、自分につごうの好い光景ばかり出てくる。ええなかったろう。しいて考えてみろと言われたら、 それでいて、実際ははなはだ疑わしい。ちょうど汚な三四郎は愚弄そのものに興味を有っている女だからと きれい い所を奇麗な写真にとって眺めているような気がする。までは答えたかもしれない。自分の己惚を罰するため 三四郎 写真は写真としてどこまでも本当に違ないが、実物のとはまったく考ええなかったに違いない。 汚ないことも争われないと一般で、同じでなければな は美藩子のために己惚しめられたんだと信じている。 ひる らぬはずの二つが決して一致しない。 翌日はさいわい教師が二人欠席して、午からの授業 最後に嬉しいことを思い付いた。美子は与次郎に が休みになった。下宿へ帰るのも面倒たから、途中で こしら ( 1 ) いっぴん 金を貸すと言った。けれども与次郎には渡さないと言一品料理の腹を拵えて、美蒲子の家へ行った。前を なんべん った。実際与次郎は金銭のうえにおいては、信用し悪通ったことは何遍でもある。けれどもはいるのははし かわらぶき い男かもしれない。しかしその意味で美子が渡さなめてである。瓦葺の門の柱に里見恭助という標札が出 いのか、どうだか疑わしい。もしその意味でないとすている。三四郎はこ、を通るたびに、里見恭助という たのも ると、自分にははなはだ頼母しいことになる。たゞ金人はどんな男だろうと思う。まだ逢ったことがない。 を貸してくれるだけでも十分の好意である。自分に逢 門は締っている。潜りからはいると玄関までの距離は みかいし って手渡しにしたいというのはーー三四郎はこ、まで存外短い。長方形の御影石が飛び / 、に敷いてある。 おのほれ めんどう 145

10. 夏目漱石全集 6

四郎 ありさま る。三四郎はだいぶ動かされた。 ろう。今の思想界の中心にいて、その動揺のはげしい 「そういう精神でやっているのか。では君は原稿料な 有様を目撃しながら、考えのあるものが知らん顔をし こんにち ていられるものか。実際今日の文権はまったく吾々青んか、どうでもかまわんのだったな」 ごん 「いや、原稿料は取るよ。取れるだけ取る。しかし雑 年の手にあるんだから、一言でも半句でも進んで言え 誌が売れないからなか / \ 寄こさない。どうかして、 るだけ言わなけりゃ損じゃないか。文壇は急転直下の めざま もう少し売れる工夫をしないと不可ない。何か好い趣 勢で目覚しい革命を受けている。すべてがことん \ く 揺いて、新気運に向 0 てゆくんだから、取り残されち向はないだろうか」と今度は三四郎に相談をかけた。 やたいへんだ。進んで自分からこの気運を拵え上げな話が急に実際問題に落ちてしま 0 た。三四郎は妙な心 持がする。与次郎は平気である。号鐘が烈しく鳴りだ くちゃ、生きてる甲跫はない。文学々々って安っぽい した。 ようにいうが、そりや大学なんかで聞く文学の事だ。 新しい吾々のいわゆる文学は、人生そのものの大反射「ともかくこの雑誌を一部君にやるから読んでみてく だ。文学の新気運は日本全社会の活動に影響しなけれれ。偉大なる暗闇という題が面白いだろう。この題な ばならない。また現にしつ、ある。彼らが昼寐をしてら人が驚ろくに極 0 ている。ーー驚ろかせないと読ま ないから駄目だ」 しつか影響しつゝある。恐ろしい 夢を見ているまに、、 二人は玄関を上って、教室へはいって、机に着いた。 ものだ。・ 三四郎は黙 0 て聞いていた。少し汝螺のような気がやがて先生が来る。二人とも筆記を始めた。三四郎は する。しかし法螺でも与次郎はなか / \ 熱心に吹いて「偉大なる暗闇」が気にか、るので、帳面の傍に文芸時 いる。すくなくとも当人だけは至極真面目らしくみえ評を開けたまミ筆記のあいま / 、に先生に知れない こしら 103