痛風の原因は血液中の尿酸値が ーしかし、尿酸値が高いと必ず痛風になるわけで 酸は誰のからだの中でもつくられます。 尿 尿酸はからだの中のエネルギーの燃えかすであり、すべての人 の体内でつくられる物質です。また食物中のプリン体からもつ くられますが、プリン体は日常の食物にはそれほど多く含まれ ていません。できた尿酸は、主として腎臓から尿の中に捨てら れます。 酸値は血液検査で調べます。 尿酸は体内では血液に溶けているので、血液中の濃度 ( 血清尿 酸値 ) が体内の尿酸量の指標です。血清尿酸値が 7.0mg / dL を 超えると尿酸は血液に溶けにくくなり「高尿酸血症」と呼ばれます。 つまり「高尿酸血症」は尿酸が結品になって痛風になりやすい状 態なのです。 なお女性の血清尿酸値は男 性より低い傾向にあり、閉経 後には少し高くなります。 尿 9
正しく対処すれば、 痛風発作や他の症状は予防できます。 痛風発作も腎臓の障害も体内に尿酸が多過ぎることが原因です から、これを正常範囲にコントロールし続ければ、発作も他の症 状も予防できます。 しかし何度も痛風発作のあった患者さんは、からだの中に相当尿 酸がたまっているので、この沈着した尿酸をとり除くには、食生活 の注意だけではなく薬の力を借りなければいけません。つまり痛風 治療は体内の尿酸量を正常範囲に維持し続けることですから、 痛風発作のときだけでなく相当長期間にわたり続ける必要がある のです。 痛風は残念なことに治りにくい病気ですが、幸運なことに完全に コントロールできる病気です。 4
どちらの薬が適当かは、あなたのからだの中の尿酸の動き、 腎結石や高血圧などの合併症の有無などから総合的に決めら れます。 合併症を予防する健康管理 痛風患者さんは、肥満、高血圧、脂質異常症などを合併する ことが多く、メタポリックシンドロームとして動脈硬化が進みやすい 体質になっています。しかも薬をのんで血清尿酸値をコントロール しても、これらの合併症は防げません。体重制限を初めとする セルフケアや、場合によっては、降圧剤、脂質異常症治療剤などを 第 3 段階 使って、重大な合併 症の発病を予防しま しよう。 健康管理 原因療浩 対症療浩 2
痛風は、からた全体の病気です。 足の関節炎は 痛風の一症状にすきません。 痛風は足の指が腫れてひどく痛む病気として有名です。しかし、 この関節炎ー痛風発作ーは、痛風のいろんな症状の一部にすぎ ません。痛風は、からだの中に " 尿酸 " という物質が異常にたまる、 からだ全体の病気なのです。尿酸が体内に異常にたまっている 状態が何年も続くと、尿酸はからだの中に沈着し、害を及ばします。 関節に沈着すると最初に述べたような痛風発作をおこしますが、 もっと恐ろしいのは腎臓に沈着しておこる障害です。 痛風発作の痛みは相当なものですから、「痛みがなくなったから 痛風が治った」と思っているうちに次第に内臓もむしばまれていく、 3 症 これが痛風の怖さです。
水を十分に飲む 尿酸は、腎臓から尿の中に捨てられますから、水分を十分に とって尿の量を多くすれば尿酸もたくさん尿中にでていきます。 お茶、水などを十分にとって、尿量を多くしましよう。 軽い運動をする 1 日 20 分間の早足歩き、軽いジョギングなどの楽な運動は、有 酸素運動で尿酸値を上げません。また、肥満や高血圧にも良 い影響があります。ただし、運動不足の患者さんがいきなり能力 以上の激しい運動をすると、無酸素運動となって、体内に酸素 が不足して血清尿酸値が一時的に上がりますから要注意です。 精神的ストレスを発散させる 痛風の患者さんは、積極的、行動的ですが、反面、攻撃的で 協調性に欠けるといわれます。精神的ストレスは血清尿酸値を 上げるので、ストレスを適宜発散するよう工夫しましよう。
はじめに もともと血清尿酸値が高い人で、あるとき突然関節に激痛が 走る。これを痛風発作といいます。痛風患者さんの典型的な初発 症状はこのようにおきます。しかし、痛風の問題は関節の痛みに とどまりません。ほうっておけば腎臓が悪くなったり、そのほか の合併症をおこすこともあります。痛風の原因は尿酸が体内に 蓄積することです。そのため、痛風発作がおきる前に高尿酸血症 という状態が続くのが普通です。これは、血液検査をして初めて わかります。 痛風は以前は重症の病気でした。しかし、良い薬ができたため、 現在では正しい治療をすることにより完全にコントロールできる 病気です。しかし、正しい治療法があったとしても、独りよがりの 自己管理では、問題があります。 痛風と高尿酸血症の治療は生活習慣の改善と薬物が中心 です。アルコールや食事など、生活習慣はどの程度までやる必要 があるのか、どのような場合に薬による治療を始めるべきか、 このあたりが最も重要な点です。我々、痛風を専門とする医師は、 学会等で何回も討論して治療ガイドラインをつくっています。 この手帳は、ご自分の高尿酸血症、痛風とうまく付き合って いくために、患者さんにいつも携帯していただきたい手帳です。 公益財団法人痛風財団理事長 鎌谷直之 1
食品中のプリン体含有量とカロリー 1 人前あたりの量 分類 食品名と 1 人前の分量 プリン体 (mg) カロリ—(kcal) プリン体の多い 牛焼肉レバー 120g 263.7 158 アンキモ ( 酒蒸し ) 日常食品 50g 199.6 223 牛肉ヒレステーキ 200g 196.7 豚ロースステーキ 200g 181.8 656 カツオ切身 80g 169.1 91 ~ 132 クルマエビ 80g 1562 78 ~ 99 マアジの十物 60g 147.5 132 サンマ切身 1 切れ 80g 123.9 239 タコ 80g 109.9 61 ~ 79 ヒラメ切身 1 切れ 80g 106.7 82 ~ 99 プリン体の比較的 干し椎茸 5 個 10g 38.0 4 乾燥大豆 少ない日常食品 20g 34.5 83 ~ 90 板かまばこ 80g 21.1 72 ~ 82 白米 65g 16.8 231 ウインナーソーセージ 30g 13.6 96 数の子 60g 13.1 53 チーズ 25g 1.4 85 アルコール飲料中のプリン体およびアルコー丿レ含有量とカロリー プリン体およびアルコール含有量※ アルコール飲料名と分量 カロリ—(kcal) プリン体 ( mg ) アルコール ( g ) ヒ、一ル大瓶 1 本 633m1 27.5 ~ 43.4 24 ~ 38 255 ~ 407 日本酒 1 合 180ml 185 ~ 196 ワインハーフポトル 1 本 375m1 273 ~ 289 ウイスキー 1 杯 80m1 25 焼酎 ( 25 % ) 100m1 0.03 20 ※プリン体、アルコールは体内の尿酸値を上昇させることが知られている ( 参考 : 女子栄養大学出版部発行 , 五訂増補食品成分表より ) 266 ~ 446 22 ワ 3 一 .0 1 亠 ワ、 1 -0 一 32 ~ 35 181 141
日常注意する 5 項目があります。 痛風・高尿酸血症の患者さんが日常生活において血清尿酸値 を下げるためのセルフケアとして、食事のほかに次の 5 項目を あげておきます。これらは血清尿酸値を下げ、さらに、痛風 患者さんに多い高血圧、脂質異常症などにも効果があるはす です。 肥満を解消する 血清尿酸値は体重が急に増えると上がり、体重が減ると下 がります。 肥満のない患者さんも、食べ過ぎは要注意。適正カロリー を守りましよう。 アルコールを控える一特にビール どんな種類のアルコールも血清尿酸値を上げます。中でもビー ルは多くのプリン体を含んでおり、尿酸値を上げます。アルコー ル飲料、特にビールはできるだけ制限しましよう。 17
尿酸を下げる薬の服用中に注意 酸を下げる薬をのみ始めてしばらくは、 フ逆に発作がおこることがあります。 これは、からだにたまった尿酸が少しすっ溶けるためです。治療 を始めてから 3 カ月以内によくおこり、長く治療をしなかった患者さ んほどおこりやすいようです。痛風治療ではどうしても通らなけれ ばならない関門なので、医師の◇ 指示をよく守り、治療をやめない ようにしましよう。 定期的に通院し、 血清尿酸値を測定しましよう。 いただきましよう。 合併症のチェックと管理をして 高血圧、脂質異常症などの を調節していただくとともに 調べてもらい、必要な薬の量 医師に定期的に血清尿酸値を 13
れます。 痛風発作を放置すると内臓もおかされます。 〇腎障害 腎臓には尿酸がたまりやすく、尿酸がいつばいたまった腎臓は その機能を次第に失い、ついには腎不全になります。 尿酸をコントロールする薬がな かった昔は、痛風患者さんの多 くは腎不全で亡くなりました。 現在ではアロプリノールのような 優れた薬があるので、きちんと 治療を受ければ腎不全に至るこ とはないでしよう。 6 痛風患者さんは心筋梗塞、脳管障害 痛風患者さんは、肥満、高血圧、脂質異常症などを合併する ことが多く、メタポリックシンドロームとして動脈硬化が進みやすい 体質になっています。尿酸値をコントロールするとともにこれらの 治療にも努めましよう。 8