ニューヨーク・タイムズ - みる会図書館


検索対象: アメリカの鏡・日本
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1. アメリカの鏡・日本

ニューヨーク・タイムズ ( 一九四四年七月十一日 ) の「限りなぎ狂信」という社説に、 アメリカ人の好きな神話がまとめられている。同社説は次のようなサイバンからの電報に ついて論評したものである。 やり 生き残った日本の駐屯部隊一一万の自殺的反撃、機関銃と堅固な砲座に対して手製の槍 てりゅうだん とわすかな手榴弾で攻めかかる日本兵、降伏するより海に飛び込んで死ぬもの : ニューヨーク・タイムズの社説は、日本側の死者がわが方にくらべて異常に多い理由は 集団自決にあると述べ、日本人の集団自決について「日本人は自分の命を軽んじ、戦死を 体 正崇高な運命と考えるように洗脳されている」と解説している。 威しかし、この社説の基になったニ = ーヨーク・タイムズの記事 (< 通信、レンバ 的 ト・ジェイムズ記者 ) には、社説がいうようなことは書かれていない。 界 世 章 日本の駐屯部隊は、一一日間にわたる無益な反撃で壊滅しかけていた。彼らは数千人の 第 民間人とともに島の北端に追い詰められていった。後退をつづけているうちに、部隊と 民間人は混乱と恐慌状態に陥り始めた。戦闘が近づいてきたとき、一カ所でひとかたま りの日本人が海に飛び込んだ。しかし、そこは泳けるような場所ではなく、飛び込んだ

2. アメリカの鏡・日本

1 イデオロギーか貿易か 舳戦争原因を考えるにあたって、私たちは人種的、思想的側面にこだわりすぎ、経済的要 の因を無視している。日本の視点から簡単にいうなら、この戦争はアジア民族がアジアの支 第配勢力として台頭するのを阻止し、米英企業のために日本の貿易競争力を圧殺しようとす 章 る米英の政策が引き起こしたものだった。 第 それが米国政府の意図だったという見方は、アメリカ人なら誰も認めないだろうが、実 際に行なわれた政策と米国政府の公式説明は、まさに日本の解釈を裏づけているといわざ るをえない。 理事は「アメリカは、拡大可能性のほんのひとかけらにしか手をつけていない」と語っ 一九四五年九月一一十六日付ニューヨーク・タイムズ 降伏後も、日本本土の封鎖は継続され、拡大強化されている。 ダグラス・マッカーサー将軍、一九四七年一一月一一十六日

3. アメリカの鏡・日本

戦争において、軍略上最も効果的な武器とされるものは、食糧その他の物資を外部の 補給源に依存している兵力を完全に封鎖することである。日本軍がついに無益な抵抗を 止めざるをえなくなったのは、ほかならぬ : : : この武器によってであった。 ダグラス・マッカーサー将軍、一九四七年一一月一一十日 エドウイン・・ポーリー賠償問題委員長は、日本の戦争能力を完全に粉砕する計画 の一環として、連合国が日本の製鉄、鉄鋼、工作機械の基幹産業をすみやかに四分の三 ー勧告はまた、日本がもっていた商船を一五〇万ト まで削減するよう勧告した。ポーリ ンまで削減して極東貿易に限定するとともに、商業目的の海外旅行はいっさい禁止する、 としている。 一九四六年十一月一一十八日、ワシントン発 <Q 電 もはや脅威ではない「 DØ< 」という名の日本村 一九四六年一月三十一日付ニューヨーク・タイムズの見出し ビジネスの地平は無限に開かれている : : : アメリカ調査研究所のレオ・チャーン専務

4. アメリカの鏡・日本

えば、一九四四年三月十七日のニューヨーク・タイムズの見出しと記事の内容を比較して みよう。 ブーゲンビルの狂信的日本兵 アメリカ撃退の空しい叫び 理性なき狂気 この見出しがついたフランク・»-a ・クラックホーン記者の記事を次に抜粋する。 将校の中には部下たちに、日本兵を一人殺すごとに十セント出そうと面白半分でいう 体 正ものもいる。いまや事態はここまできているのである。捕虜のほうが価値があるから、 威捕虜一人につきスコッチ一本かビール一箱が出る。それでも、この地域は太平洋で最大 的 の激戦地だった。日本の精鋭部隊がしばしば、われわれのニ五キロ・ラインの孤立部隊 界 世 にかなり激しい攻撃を加えていた。何カ所かで彼らは突入してきたが、わが方の火炎放 章 射器、戦車、後方部隊によって撃退された。 第 四一九四四年に入ると、従軍記者の中には、戦闘というより虐殺に似てきた状況に、嫌悪 と哀れみを覚え始めるものもいた。

5. アメリカの鏡・日本

日本の犯罪を研究することは、学間の領域をはるかに超えた問題である。私たちの告発 ーの原因に関する声明も曖昧である。だから日本 は恐ろしく不明確であり、 わいきよく は、私たちの告発は懲罰政策を正当化するために歪曲され、誇張されていると思うだろう。 アメリカの新聞に日常的に現われる何気ない記事もそれを裏づけている。東京裁判の意味 について、ニューヨーク・タイムズの軍事担当記者、ハンソン・・ポールドウインは、 東洋では「面子」が重要であることを強調して、こういうのである。 「有罪だろうが、無罪だろうが、日本人にとって苦痛なのは『面子』を失うことである。 それによって、彼らは歴史に汚名を残すことになるからだ」〔注 5 〕 ( 傍点は著者 ) 大方のアメリカ人が、この記事と同じ考え方をしているのだろうか。私たちは無罪の被 告の「名前を汚す」ことを望んでいるのだろうか。 これは基本的問題だ。たぶん、アメリカ人は ( ポールドウイン記者も含めて ) 無罪のも のを辱めたいとは思っていないだろう。しかし、私たちの感情では日本人は有罪なのだか ら、そういう細かいことはどうでもいいのだ。日本人を「世界で最も好戦的な民族」と呼 んだ戦争中のプロバガンダは、私たちにとって確かな事実だ。そして、私たちが罰しよう としているのは、まさにこの「罪」なのだから、もし国際関係の背後に迫ろうと思うなら、 日本人を「世界で最も好戦的」民族とする証拠の検討から始めなければならないのである。 めんっ

6. アメリカの鏡・日本

132 「個々の日本兵は大東亜共栄圏のために死のうなどという情熱はもっていない。その証 拠はたくさんある」と大佐はいう。「 : : ニュージョージアから帰ったとき、ソロモンで の空中戦について聞かれた。日本軍は九十機程度の飛行機を失ったが、こちらはたった の三機だった。そう、空中戦は何度もこの目で見たな。われわれは自分たちの優位を過 小評価しているよ : : : われわれがソロモンでいちばん苦労しているのは島の地形で、日 本兵じゃない」。 日本側の死傷者数は私たちをはるかに上回っている。新聞は年中そういう数字を載せて いた。たとえば、一九四四年七月一日のルソン北部での戦闘では、十一万五千人の日本兵 が戦死したのに対して、わが方は戦死者三千八百一一十六人、戦傷者一万一千三百五十一人 だったと、ニューヨーク・タイムズは伝えている。そして、日本兵の不屈さなるものを次 のようないい方で表現するのだ。 一千の米軍がロスネグロスのモモテ地域を奪取した。四千の日本軍が猛烈な反攻に転 じてきたが、 わが軍は一一日間ここを守り抜いた。これまでに四千の日本兵全員が戦死し た。米軍側の死傷者は日本兵の十人に対して一人である。日本兵はほとんどが即死だっ た〔注〕。

7. アメリカの鏡・日本

めて悪質な歪曲である。しかし、日本に最初の勝利をもたらしたのは、実にこのプロバガ ンダだったのだ。これから、何千万のアジア人はこうした歴史的経過に照らして、アメリ 力の戦後計画をみきわめていくだろう。山下裁判が始まった直後の一九四五年十月、ニュ ーヨーク・タイムズの社説は「山下司令官のような階級にある軍人が、部下が犯した残虐 行為の責任を問われた例はいまだかってない」と次のように論評している。 これは、一国の将官たちの前で開かれる純粋な軍法会議である。したがって判決の是 策非を審理するのは軍当局でしかない。だとすれば、その判例は、仮に判例たりえたとし の カ ても、連合国が一一ユールンベルクで打ち出そうとしているものほどには重要ではない。 しかしながら、日本人に西洋の考え方を改めて教えこむためには、意味のある判決でな ア ければならない。 見 ら 機 ニューヨーク・タイムズの山下裁判の位置づけは、結果的には間違っていた。というの は、判決は米最高裁で審理されたからである。しかし、日本人を再教育するための判決と 章いう後段の記述は、社説の筆者が考えたほど正しくなかったともいえるし、それ以上に正 第しかったともいえる。正しくなかったというのは、マッカーサー将軍は、山下判決を確定 するにあたって、日本の新聞に対しては厳重な報道管制を敷き、判決の詳細を報道するこ とを禁じたからである。つまり、マッカーサー将軍は、「西洋の考え方 , を示すことが日

8. アメリカの鏡・日本

DCD—CD ( 米文化情報局 ) を通じて日本の報道機関に配られたウォーレス演説のうち、 イギリスの極東政策と英米関係に言及した部分はすべて削除された。 一一ユーヨーク・タイムズ東京発特電、一九四六年九月十六日 残念ながら、日本の歴史に関する私たちの戦争中の記述は、あれは「キャンペーン演 性 略説」だったとか、「戦争プロバガンダ , だったとかいって、葬り去ることはできない。私 魅たちは、誰もがすべてを知り、自分で判断できる歴史の正確な記述に高い価値を置いてい 伝 る、という。私たちは、日本の制度を「戦争願望」を醸成するものとして排斥してきた。 章 その最大の根拠は、神話を史実として取り入れ、偽りの事実をつくり上げて、歴史の国家 四 第 主義的側面と嘘の歴史を教えているということにあった。私たちが日本に来て最初に命令 したのは、私たちの検閲下で虚偽の記述を削除した新しい教科書ができるまでは、歴史、 地理、道徳の授業をいっさい中断することだった。アメリカ本国のアメリカ人はこの決定 連合国軍司令部は今日、日本史、地理、道徳の授業を中止する命令を出した。文部省 、パルプは軍国主義思想を排除した新しい は、教科書、教師の指導教本を回収、焼却し 教科書のためにつかうよう指示された。 バートン・クレーン ( ニューヨーク・タイムズ ) 、東京、一九四五年十一一月三十一

9. アメリカの鏡・日本

米戦略爆撃調査によると、最終的に確定した日本側の死傷者数は、米側より一四パーセ インプレッシプ・ 1 アイスパリティ ント多い。この「見事なまでの不均衡」 ( ニューヨーク・タイムズの表現 ) は、普通、天 皇のために死ぬという日本人のファナティックな覚悟の表われとして説明されている。実 、この点が強調されすぎているのだ。国の父であり、伝統文明の象徴である天皇は日本 国民統合の強大な力だった。しかし、天皇はさまざまな国民感情を統合する象徴にすぎな この感情を煮詰めれば、国家存亡のときにはどこの国の国民もっき動かされる感情であ る。日本の兵士たちは「日本は侵略の危機にさらされている。君たちは祖国の防衛とアジ ア・太平洋の同胞を『解放』するために戦っているのだ」と教えられてきた。日本兵がほ 体 正かの国の兵士より強くこういうプロバガンダに洗脳されたのは、日本が列強諸国とくらべ 威てとくに弱かったからだ。 的それに、日本兵の多くは農村出身者だった。神道には多くの農耕儀礼が含まれている。 世彼らの心に深く根を下ろす郷土愛が、彼らの愛国心をより強いものにしていた。日本兵は 章 彼らは任務を果たし よく訓練され、質素でスパルタ的生活に耐えるよう鍛えられていた。 , 第た。しかし、戦場からの報道を読んでも、日本兵が「戦うのが好きだから」、あるいは 「戦死は崇高な運命、と思っているから、あるいは「天皇のために死にたいというファナ ティックな願望」から、あるいは勝利を確信して、圧倒的に優勢な敵に立ち向かったこと

10. アメリカの鏡・日本

114 機を失った。一九四五年三月一日、日本軍は本土以外の地上軍には補給物資を送らない ことを決定した。引き延ばし作戦は別にして、日本は本土防衛に全力を傾注せざるをえ ない状態であった。 同報告はさらに、一九四五年三月段階での日本の危機的状況を次のように概括している。 : 日本本土に対する直接的な大規模爆撃までに、日本空軍はカミカゼ攻撃隊だけに なっていた。艦隊は沈められるか、無力化されていた。輸送船団の多くが失われ、地上 軍の大半が孤立していた。そして経済は窒息し始めていた〔注〕。 海軍は四月までに、日本の主要都市の「海峡と港湾に機雷を敷設する大規模計画」を作 成していた。まさに全面封鎖だった。日本の侵略的戦争機関は完全に無力化された。 三月の東京爆撃以後、米軍は日本軍相手ではなく、主に一般市民を相手に戦争をしてい た。ニューヨーク・タイムズの軍事専門記者、・・ローレンスは一九四五年八月十四 日、グアム発の記事の中で、三月九日 ( 日本時間、十日未明 ) の東京爆撃はわれわれの戦 争の新局面であり、「大きな賭け」というべきものだ、と書いている。 ローレンス記者は「ルメイ将軍は先例のない低空まで飛行機を送り込もうとしていた : : これは危険な作戦であり、ドイツ相手なら自殺行為だ。アメリカ人の心情からしても、