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1. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

プ。という。アメリカの内国歳入庁 ( ) は、二〇〇一年のタックス・ギャップを三四五〇 億ドルと推計して、このうち二九〇〇億ドルが徴収できなかったと議会に報告している。日本 でも国外へ逃げていった税金は莫大な額にのばると考えられる。しかし、驚くべきことに、日 本の課税当局はタックス・ギャップの額を推計しようとさえしていない。 マネー・ロンダリング ロンダリング 犯罪の収益を「洗浄」して、きれいな金に見せかける悪事をマネー・ロンダリングという。 麻薬の密売やその他の犯罪によって得られた収益は、そのまま手元にあると、はなはだ始末 に困るものである。そもそも大金というものは、ただそこにあるだけでも税務署などに出どこ ろを追及されるし、何かに使えば使ったで、また資金の出どころを追及されることになる。そ こで、出どころを追及されないように、きれいな説明のつくマネーとして表に出せるようなエ 作をする。 マネー・ロンダリングは、ほば必す、タックス・ヘイプンを舞台に行われる。それには当然 の理由がある。さきほど挙げた特徴の②、タックス・ヘイプンでは情報の秘密が厳格に守られ るからである。

2. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

マネーの脅威 暴走するマネー 二〇〇八年に起きたリーマン・ショックは、一九二九年の大恐慌以来のスケールの災厄で、 「一〇〇年に一度の大危機 . などと言われている。北大西洋金融危機と呼ばれることもあるが、 やはり世界規模の危機である。その影響はいまもまだ続いており、すぐには収まりそうもない。 一九九〇年代に入って以降の世界経済を振り返ってみると、経済危機の連続であった。この 相次ぐ経済危機は、金融システムが震源であるという点で、それまでの経済危機とはかなり異 なる様相を呈している。その意味で経済危機というよりは、金融危機と呼ぶべきである。 その背後には暴走する過剰なマネーがある。そして、そうした暴走するマネーが作り出され る過程では、ほば必ず何らかのかたちでタックス・ヘイプンが絡んでいる。ここでいうタック ス・ヘイプンとは、ケイマン諸島のような地域ばかりでなく、ロンドンのシティなど、先進国 のオフショア・センターも含んでいる。 148

3. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

3 ヘッジ・ファンド退払に 人間の強欲 大きなリターンを求め、国境を越えて無秩序に動き回り、その結果として無辜の一般市民に 一九九〇年代以降の災厄の数々は、すでに 被害をもたらす投機マネーは、有害きわまりない。 見たとおり、いずれも過剰なマネーの奔流が引き金になっている。これを制圧しないかぎり、 危機は何度でも繰り返すであろう。 こうした人間の強欲 ( グリード ) に突き動かされた有害なマネーを正当化したい立場の人びと しわゆる新自由主義の経済理論である。 にとって、一番もっともらしい理論づけになるのは、、 模 その新自由主義の下、人間の強欲は、マネー・ゲ 1 ムによって収益率を飛躍的に高められるこ の 抗とに気がついた。 対 一九九〇年代以降の相次ぐ金融危機は、人間の強欲がもたらした惨禍の典型である。その原 章 因ははっきりしており、また対処策も見当はついている。原因も対処策もはっきりしているの 9 第 に、それを正す手段がないなどということがあろうか。もはや、なすべきことをなすのみであ

4. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

<*h 事件のもうひとつの教訓は、経済的に苦しくなると、ついハイ・リターンに目が行く こよ必す裏がある。堅い話であれば、とんでもないリターン という人間、い理である。うまい話しー がついてくるはすがない。普通なら危ないとわかって避けることに、つい目が行ってしまうの である。 さらに悪いのは、たとえ苦しくなくてもハイ・リターンに目が向くという人間心理である。 この心理は、ヘッジ・ファンドがうごめくマネー・ゲームでの大きな特色である。大きなリタ ーンを追い求めるから、堅実な実物生産の投資になど目もくれす、投機的マネー・ゲームにひ た走るわけである。その結果として、頻繁に金融危機が起きる。その巻き添えで倒産する会社 が大量に出る。それを救済するために中央銀行がマネーを大量に供給する。そうしてますます マネー・ゲームに走る資金が潤沢になる : : : という悪循環が途切れることなく続くのである。 途上国全体が被害を受けるケースも出る。一九九七年のアジア通貨危機などはその典型例で す ある。タイ、インドネシア、韓国と、繁栄を謳歌していた諸国が次々との管理下に入っ 逃 章 第

5. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

筆者が本書によって読者に伝えなければならないと考えている最大の問題意識は、不必要な 金融危機を幾度も招き寄せるマネーの暴走であり、そして、ヘッジ・ファンドなどにマネー ゲームの舞台を提供しているタックス・ヘイプン ( 先進国のオフショア・センターを含む ) の害悪で ある。 金融危機のメカニズム 暴走する過剰なマネーが、なぜ、どのように世界経済を危機に陥れるのか。そのメカニズム 機 危は、じつはそれほど難しいものではない。 金まず「なぜ」だが、高度に技術的な金融商品が、次々と発明されてはマネー・ゲームに供せ すられ、しかもそれが非常に高い成長率で増えていくことが大きい 襲 具体例をあげるとすれば、デリバテイプ取引の拡大がきわめて大きな要因となっている。デ て ーレ リバテイプについては— c•o ( 国際決済銀行 ) の統計が二系列あり、これらは日銀のホームペー ~ 理 ジを通して見ることができる。ただし、統計の開始が一九九〇年代末であるし、リーマ 5 ョックにおいて重要な役割を果たした 0 Q oo ( クレディット・デフォールト・スワップ ) について足 し合わせることができないなどの問題がある。そのため、正確な統計的数字としてわかりやす 149

6. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

世界経済は、一九九〇年代以来、今日に至るまで、連続的な金融・通貨危機に襲われつづけ ている。これら危機の多くは、タックス・ヘイプンを舞台に、非生産的なマネー・ゲ 1 ムに狂 奔するヘッジ・ファンドその他の投機マネーが引き起こしたものである。その淵源をさかのば れば、新自由主義の下で規制から解き放たれた人間の強欲 ( グリード ) がある。 自由主義市場経済といえども、決められた土俵の上で決められたルールにもとづいて運営さ れなくてはならない 、金融は経済の血液である。何ら生産的な要素のないマネー・ゲ ームの狂騒によって、金融システムに致命的なダメージが与えられるようなことがあってはな らない。金融システムの破壊は、それが起きてから修復するのでは時間とコストがかかり過ぎ のる。そもそも修復が可能である保証もないのである。 のしかし、マネーは容易に国境を越え、その先にはタックス・ヘイプンが口を開けて待ってい バル・エコノミー る。これでは、事前規制の実はほとんど期待できない。今日のようなグロ 1 誰 の下では、金融に対する事前的な規制は、もはや一国のみでは達成されず、のような国 税際的枠組によらさるを、んなくなっている。 章 終 タックス・ヘイプンは、富裕層や大企業が課税から逃れて負担すべき税金を負担しないこと 225

7. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

LL < }— LL 国際的なマネー・ロンダリング対策はかなり遅いことで、一九八八年の国連麻薬条約に始ま る。翌八九年には、アルシュ・サミットの共同宣言にもとづき、 << e ( ファイナンシャル・ アクション・タスク・フォース。日本では金融活動作業部会と呼ばれる ) が設立された。二〇一二年現 在、三四の国・地域、二の地域的国際機関が参加する、マネー・ロンダリング対策の国際機関 である。年に三回の本会議が開かれる。 O(-IÄOQ が事務局を務めるが、 OVx20Q の部局という わけではない。 e は一九九〇年に、「四〇の勧告」と呼ばれるマネー・ロンダリング対策の国際基準 を出した。この最初のバ ージョンは、対麻薬カルテルという性格が強かったものである。資金 洗浄を犯罪として刑事罰の対象とすること、金融機関を対象として匿名口座の禁止や疑わしい これらは、もっとも初歩的かっ典型的な手口にすぎないのであって、現在は国境をまたにか けた、きわめて巧妙かっ悪質な手口が発達している。手口は日々進化するので、その全貌を解 明し摘発するのは容易なことではない。ただし、確実に指摘できるのは、マネー・ロンダリン グにはほば必ず、タックス・ヘイプンが絡んでいるとい、つことである。 124

8. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

う。記録が残ると、当局の追及があったときには悪事がすぐにばれてしまう。しかも、証拠ま で残る。そもそも大金というものは、ただそこにあるだけで税務署などに出どころを追及され るし、何かに使えば使ったで問い質される。査察を指揮して実際に現場に乗り込んだ経験から の実感であるが、現金や金目の物を隠すというのは、なかなか骨の折れることなのである。 そこで、出どころの怪しい後ろ暗い現金を、素性のきれいなマネーに変えてしまえれば、金 融機関にも何食わぬ顔で預けておけるし、出し入れにも困らすにすむ。マネー・ロンダリング は、そういう悪事をはたらく人間たちの要求から生まれた犯罪行為である。 マネ 1 ・ロンダリングは、暴力団など犯罪組織だけの専売特許ではない。近年では、アル・ 置カイーダなどの国際テロ組織も手を染めている。そのときの方法は、犯罪組織のマネー・ロン 浄ダリングと同じものである。したがって、マネ 1 ・ロンダリングを取り扱うときは、テロ資金 金の移送や隠匿の問題も含めなくては重要な一面を見逃すことになる。 資 また、マネー・ロンダリングには、各国の諜報機関も関与していると考えられる。しかし、 この問題に対する壁は高く分厚い。その内実を知ることは、きわめて難しいと言わねばならな 章 。本書では、そのあたりはマネロン対策の第一線に立ったことのある筆者の皮膚感覚をお伝 第 えできるのみである。 121

9. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

犯罪資金を追え マネー・ロンダリングとは何か マネー・ロンダリングとは、犯罪などで上げた違法な収益を、出どころが追及されないよう、 きれいな説明のつくマネーに見せかけて表に出す行為のことである。日本語では資金洗浄とい い、当局の人間は「マネロン」と略して呼んだりする。 麻薬密売、詐欺、横領、収賄、脱税、現金強奪、その他の犯罪によって得られた現金は、そ のまま手元にあると、はなはだ始末に困るものである。現金はかさばるから隠し場所に困るし、 盗難のおそれもある。水害や火事、地震などに見舞われることもある。また、紙幣にはモデ ル・チェンジがある。現金の形で持っているのは決して得策ではない このようなことである から、政治家が四億円もの大金を何年も現金のまま持っていたなどという主張は、およそ信じ がたいことなのである。 しかしながら、現金は困るからといって金融機関に預け入れれば、取引記録が残されてしま 120

10. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

その手口とは ? マネー・ロンダリングは当局に知られないように秘密に行われるものであるから、その手口 を解明することは容易ではない。たとえ解明できたとしても、解明した当局は手口を明らかに しない。真似をされたら困るからである。マネー・ロンダリングの手口を詳しく解説した文献 かないのは、このような理由による。 ところで、秘密の資金移動ということになれば、秘密保護法制のあるタックス・ヘイプンが 大いに活用されることになる。いったんタックス・ヘイプンに入ってしまえば、そこから先の 資金の移動先は追跡が非常に難しくなる。 9 ・ 11 テロのあとでタックス・ヘイプン対策が一 気に強化されたのはこのためである。 マネー・ロンダリングの最も古典的な手口は、たとえばスイスやカリブ海の島にある銀行な ど、タックス・ヘイプンの金融機関にキャッシュを持ち込んで預け、そこから貸し付けを受け た形にするというものである。ただし、いまではどこの国も出入国の際に持ち出せるキャッシ ュの総額には制限があって、それを超えるときは税関に申告しなければならない。日本であれ ば、一〇〇万円以上を持ち出す場合は税関に届け出る必要がある。 122