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検索対象: タックス・ヘイブン : 逃げていく税金
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1. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

ルムに投資をするという節税スキームが考案された。当然ながら、映画フィルムに投資をする と一年目には大きな償却損が出る。それを自分の所得にぶつけることで、所得税を大幅に減ら すとい、つカラクリである。 この事件で最高裁は、二〇〇六年、所得税法上の減価償却の規定には「事業の用に供するた め」という文言があることに着目して、映画フィルムの投資スキームは節税目的であって「事 業の用に供するため」ではないとした。言葉の綾のようなところをとらえての文一言解釈で課税 庁側を勝たせたのである。 航空機リース事件も似たようなスキームであって、こちらの投資の対象は航空機であった。 この事件は、高裁の段階で敗訴した国側が上告せず、納税者勝訴が確定している。国側が上告 しなかった理由についてはいろいろな憶測が流れているが定説はない。通産省 ( 当時 ) の国策関 係説がある。フィルム ・丿ース事件は課税処分で終わり、航空機リース事件は課税処分がなさ れないままに終わった。節税と租税回避の境界線を引くことには、 かくも難しいものがある。 これら二つの事件に共通しているのは、節税商品を考案して売りに出すと、それを買って所 得税負担を減らそうとする高額所得者がいて、たくさん売れるという事実である。筆者もいく つかの事例に鑑定人や代理人として関与したのでよく知っているが、守秘義務があるため述べ

2. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

題であったが、一方で O—< が QOO—を利用していたという裏面もあった。レーガン政権下 のイラン・コントラ事件などでは、を裏資金の資金繰りに使用していたことはほほ公 知の事実であった。 O*<< といえども口を封じて闇に葬り去ることはできなかったという事件 である。もっとも O*< はあまり情報の取扱いはうまくないから、ピッグス湾事件などのミス を犯しては記録に残され公開されてしまう。 諜報機関といえども、金融機関を利用することなしに仕事はできない。これは逆に言うと、 金融機関を見るときにはそういう目で見る必要もあるということである。どこかの政府が合理 的な説明のつかない、訳のわからない行動をとったときには、それなりに裏の事情がある。 置のようなマネー・ロンダリング対策の国際機関の公式会議においてさえそうであること 浄はすでに見た。 金 CQO(--)* の財務内容が腐っており自己資本が枯渇している状況は、やがて誰の目にも明らか 資 となった。ついには破綻して、一九九一年に閉鎖の憂き目に遭った。国際政治経済を震撼させ た一大スキャンダルであった。 章 第 133

3. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

ルしなければならない。その実例を示したかったということなのであろう。 ただし、スイスの法制では、差し押さえた口座の額のうち約半分はスイスの国庫に入ること になっている。当然、そのメリットも織り込み済みということである。日本に返されてきたの は残りの半分であった。法務省は本件限りとなる特別法を作って、二〇〇八年、戻ってきた二 九億円を被害者に返還する作業を行った。 O O ー事件 犯罪と密接にからんだ銀行で最も著名な銀行は CQOO—である。はバンク・オプ・ クレディット・アンド・コマース・インターナショナルの頭文字である。ルクセンプルクで設 立された銀行で、全世界に支店網をもつ事実上の多国籍銀行であった。 CQOO—には、規制をかけるべき監督当局が事実上なかった。とくにアメリカでは広く支店 網を展開して、コロンビアの麻薬カルテルの資金洗浄を引き受けていた。カリプのタックス・ ヘイプンに現金を運び込んで預託して、そこから貸付けを受けるという古典的な手口なども見 られ、目に余るものがあった。 コロンビアからの麻薬流入に神経をとがらせているアメリカにとって noo—の存在は大問 132

4. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

三億円であった。この処分に対して旺文社が不服を申し立てたために法廷闘争となり、最終的 には最高裁まで上がった。二〇〇六年、最高裁の藤田宙靖裁判長 ( 学者出身 ) は、法人税法二二 条二項による無償の資産の譲渡の規定の適用を認めて、破棄差戻し判決で納税者を敗訴させた。 このような租税回避が可能となるのは、企業が国際取引を利用して租税法の裏をかくからで ある。課税当局は、法廷闘争とは別に、 今後はこのような形での租税回避が行われないように 法人税法五一条を廃止するという一大法改正を行った。この法改正は要するに、企業が持っ何 らかの含み益が海外に移転されて、日本の課税当局の課税権限が及ばなくなることを防ぐとい う趣旨である。これに限らず、この事件以降は、何らかの含み益が海外に出て課税当局の課税 権限が及ばなくなる事態を起こさない形で法改正を行う方針が定着している。 外国税額控除余裕枠事件 旧大和銀行と旧三和銀行ほか一行の外国税額控除余裕枠事件を説明するには、あらかじめ外 国税額控除制度についての若干の説明がいる。日本の居住者や内国法人が外国に出て行ってお 金を稼ぐと、日本の税法では、そうした国外源泉所得に対しても課税することになっている。 これを「全世界所得課税方式」という。日米英がとる方式である。一方、これとは反対に、国

5. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

ある。デリバテイプについては、商品先物取引委員会 ( ) の管轄である。保険行政はそ もそも連邦レベルのものはなく、 州政府の所管であるから五〇もの監督当局がある。 このように規制機関が乱立気味だからといって、規制や監督が効率的でないとまでは言わな い。ただ、そのお膝元で、 O 、スタンダード・チャータードなどのマネー・ロンダリン グ事件が多発しているのは事実である。もっとも、当局に調査する能力があるからこそ、そう した事件が明るみに出ているともいえる。なにしろ、麻薬カルテルとテロ組織は、アメリカ国 内で旺盛に活動しているのである。 9 11 のあとでアメリカは、情報機関の分立と連携の悪さが非常に問題であると考えた。 このため、多数の法執行機関が統合されてホームランド・セキュリティ省 ( 国土安全保障省 ) が 作られた。金融行政当局もやがて統一されることになるかも知れない。 ウォール・ストリートは政治力が強いことも考慮しなければならない。その資金力を駆使し て、連邦政府、連邦議会に政治的影響力を行使する。クリントン政権のルービン財務長官はゴ ールドマン・サックスから政権入りして、退任して民間に戻るときにはシティ・グループに入 った。 世界貿易センター ・ビルは、ウォール・ストリートとは何プロックも離れていなかったから、 186

6. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

説明している。 憲法第八四条は租税法律主義を定める。租税法律主義とは、国は法律の定めるところを超え 、という立憲史上においても極めて重要な地位を占める定めである。 て税を課すことができない この租税法律主義の考え方からすると、いかに具体的妥当性がないことに田 5 われても、このよ うな判決しか下せなかったのである。 租税法律主義による限り、タックス・ヘイプンを利用する租税回避の防止という見地からは、 法制度の整備の問題として処理すべきである。実際、相続税法はその後改正され、武富士事件 の舞台となったループ・ホールはふさがれている。 フィルム ・リース事件ほか 層 富武富士事件は贈与税をめぐる事件であったが、所得税に関する租税回避事件もある。フィル ・丿ース事件、航空機リース事件、ハリボタ事件などである。 げム 逃 フィルム ・丿ース事件とは、映画会社で制作された映画フィルムが二年間という超短期の償 章 却期間で償却されることを利用した事件である。償却期間が二年であるから、一年目には巨額 第 の償却損が発生することになる。この点を利用して、組合を作り、外国で制作された映画フィ

7. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

そのどちらかである。 いずれにしても、麻薬をアメリカ国内に持ち込むのは命がけのオペレーションである。税関 当局も、上空のヘリコプターから高性能の強力ライフル銃でスピードボートの船外機を撃つな どという信じられないことまでして制圧にかかっている。麻薬カルテルの側も潛水艦さえ建造 しているのだから、これはもう戦争以外の何物でもない。映画の『トラフィック』や『今そこ にある危機』の世界である。 このような事態が日本で起きたら大変なことになる。筆者が東京税関長だったときには、 『トラフィック』のフィルムを映画会社から借りてきて、全職員に鑑賞を義務づけた。絵空事 置でもなければ、他人事でもないのである。 の疑惑については、他にもいろいろとある。北陸銀行が関与したとされるロシア人 金の資金洗浄事件もある。とりわけ、北朝鮮のマネー・ロンダリングにも関与したとされて追及 資 を受けている。このあたりになってくると、のマネー・ロンダリング対策がテロ資金 を前提犯罪として取り入れている理由が見えてくる。アメリカが血眼になるのも頷ける。 章 第 139

8. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

出国税 出国税という租税が、先進国において導入されるようになっている。出国税と聞くと、空港 税のことを思い起こすかも知れないが、それとは異なる。出国税とは、非居住者や国籍離脱者 の租税回避を防止するための租税である。国籍離脱は、国際結婚の増加にともなって増えてき ている事態である。 出国税では、出国する際に未実現利益課税をする。未実現利益課税とは、含み益について課 税することである。 アメリカではシティズンシップ課税方式をとっているか、さらに元シティズンに対する特別 の課税方式も設けている。また、国籍離脱者に対する「みなし譲渡益課税。も導入している。 カナダ、オーストラリアでは一般的な出国税を設けており、ドイツでは制限的な出国税を設け 模 ている。その現状については国際会議で報告されている。日本では細かい規定で出国税に該当 の 抗するものがあるほか、原則論として、オウブンシャ・ホールディング事件以後、未実現利益を 対 国外に持ち出すことを防止する立法政策をとっている。 章 第 219

9. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

シティズンシップ課税 日本で国外財産調書制度が導入されたことはすでに述べた。この制度の導入に際しては、ア メリカの < e O ( 外国口座税務コンプライアンス法 ) が参照されている。 そもそもアメリカの個人所得税制は、シティズンシップ課税をとっており、日本における居 住者課税のシステムとは大きく異なる。シティズンシップ課税とは、アメリカ国籍を有する者 はアメリカ国内に居住するか国外に居住するかを問わずに、その全世界所得に対して課税され るという仕組みのことである。 他の先進国は、日本を含めて、居住者課税原則である。日本でいえば、日本国籍をもつ者で あっても、非居住者であれば所得課税はされない。、 ノリボタ事件で見たのはこのことである。 ノ ーマネント・トラベラーの問題もある。税金を納めることを避けるために、どこの国 の居住者にもならないように、転々と住居を変更していく者たちである。 グロー バル化の進展にともない、税を取り巻く状況も大きく変化してきている。日本の個人 所得税制を立て直したいのであれば、シティズンシップ課税を検討することは必須条件であろ 0 、つ 218

10. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

2 タックス・ヘイプン事件簿その二 オウブンシャ・ホールディング事件 オウブンシャ・ホールディング事件は、出版社の旺文社 ( 現オウブンシャ・ホールディング ) が オランダに一〇〇 % 子会社のアトランティック社を設立したことに端を発した事件である。 旺文社からアトランティック社への出資の内容は、巨額の含み益のあるテレビ朝日等の株式 であった。含み益とは株式が値上がりして最初の値段を超えている増加した価値の部分である。 株式の譲渡などの取引がなされれば、それをきっかけとして含み益に課税がなされるというの が法人税法の仕組みである。 さて、この出資によって、旺文社が持っテレビ朝日等の株式は、「旺文社が持つアトランテ ィック社の株式」に振り替わったわけである。出資を受けたアトランティック社は、引き続い て新株発行を決議して同じくオランダにある旺文社の関連会社であるアスカファンド社に異 リ曽資を行った。これによって、日本の課税当局は前記の株式の含み益に 常に有利な第三者害当士 対する課税の機会を失う結果となり、旺文社は多額の法人税の納付を免れることになった。