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検索対象: タックス・ヘイブン : 逃げていく税金
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1. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

題であったが、一方で O—< が QOO—を利用していたという裏面もあった。レーガン政権下 のイラン・コントラ事件などでは、を裏資金の資金繰りに使用していたことはほほ公 知の事実であった。 O*<< といえども口を封じて闇に葬り去ることはできなかったという事件 である。もっとも O*< はあまり情報の取扱いはうまくないから、ピッグス湾事件などのミス を犯しては記録に残され公開されてしまう。 諜報機関といえども、金融機関を利用することなしに仕事はできない。これは逆に言うと、 金融機関を見るときにはそういう目で見る必要もあるということである。どこかの政府が合理 的な説明のつかない、訳のわからない行動をとったときには、それなりに裏の事情がある。 置のようなマネー・ロンダリング対策の国際機関の公式会議においてさえそうであること 浄はすでに見た。 金 CQO(--)* の財務内容が腐っており自己資本が枯渇している状況は、やがて誰の目にも明らか 資 となった。ついには破綻して、一九九一年に閉鎖の憂き目に遭った。国際政治経済を震撼させ た一大スキャンダルであった。 章 第 133

2. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

説明している。 憲法第八四条は租税法律主義を定める。租税法律主義とは、国は法律の定めるところを超え 、という立憲史上においても極めて重要な地位を占める定めである。 て税を課すことができない この租税法律主義の考え方からすると、いかに具体的妥当性がないことに田 5 われても、このよ うな判決しか下せなかったのである。 租税法律主義による限り、タックス・ヘイプンを利用する租税回避の防止という見地からは、 法制度の整備の問題として処理すべきである。実際、相続税法はその後改正され、武富士事件 の舞台となったループ・ホールはふさがれている。 フィルム ・リース事件ほか 層 富武富士事件は贈与税をめぐる事件であったが、所得税に関する租税回避事件もある。フィル ・丿ース事件、航空機リース事件、ハリボタ事件などである。 げム 逃 フィルム ・丿ース事件とは、映画会社で制作された映画フィルムが二年間という超短期の償 章 却期間で償却されることを利用した事件である。償却期間が二年であるから、一年目には巨額 第 の償却損が発生することになる。この点を利用して、組合を作り、外国で制作された映画フィ

3. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

とする会社も多い。そういう多国籍企業に対して、出資と貸付金のバランスが一対三を超えた 場合には貸付金利子の損金算入を認めないとするものが、過少資本税制である。この税制が十 分に機能しないので、二〇一二年度において過大支払利子税制が創設された。 過少資本税制はともかくとして、タックス・ヘイプン対策税制と移転価格税制の二つは重要 である。なぜなら、多国籍企業による合法的な租税回避という見過ごせない実態があり、かっ その適用による課税処分が巨額にのばる可能性があるからである。ここからは、この二つの制 度について解説する。 タックス・ヘイブンを利用する租税負担ゼロのからくり 図 3 ー 1 はタックス・ヘイプン対策税制とは何かを説明するための図である。 業 タックス・ヘイプンを利用しない取引が上図である。日本企業が < 国企業に一〇〇万円の貸 企 す カ付けをして、二〇万円の利子を得たとする。この場合、日本企業は所得が二〇万円あることに 逃 なって、仮に実効税率を四〇 % とすれば、八万円の法人税を国庫に納付することになる。 章 一方、タックス・ヘイプンを利用する取引が下図である。図の下側には、タックス・ヘイプ 第 ンに設立した日本企業の子会社がある。出資金は一〇〇万円であるとする。ここで、日本企業 101

4. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

っている。企業がタックス・ヘイプンを利用して金を稼ぐとは、このように複雑なスキームな のである。 さて、これを考案した人間もなかなか知恵をこらしているので、課税当局も感嘆したようで ある。結局、最高裁もこのスキームに関して課税すべき法律の規定を見つけられなかった。そ こで最高裁は二〇〇五年、日本の銀行がしたことは外国税額控除制度の濫用であるとして課税 処分を認める判決を下した。多額の国費 ( 国民の税金 ) を投入して救済された日本の金融機関が、 とし 手数料稼ぎのために国庫に納付すべき税金を他国に納付するなど許されるべきではない、 うのが判決の真の理由であったらしい。租税法律主義には違反する判決であると考えるべきで ある。 ただ、武富士事件の判決などとは正反対の結論になっていて、最高裁が本当のところ租税法 企律主義について何をどう考えているのかは疑問が残ってしまう。国際的租税回避とはかくも複 す カ雑で、最高裁といえども判断には迷いに迷って一貫していないということであろう。なお、国 逃 は、法人税法六九条一項かっこ書きの追加等の法改正によって、このような余裕枠を利用する 3 道をふさいでいる。 第 また、余談になるが、平成二一年度三〇〇九年度 ) の税制改正によって、外国子会社配当益

5. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

でビジネスを成り立たせていかなければ経済が成り立たないのである。その点、同じ資源小国 である日本はまだ余裕があるのかもしれない。 ケイマン諸島については、もはやほとんど説明を要さないであろう。近年では、オリンパス 事件や事件にも顔を出している。ケイマン諸島を間に挟む国際的租税回避には、「ケイ マン・サンドイッチ」というニック・ネームがある。節税 ( ときには脱税 ) の仕組みを考える場 合には、ますケイマン諸島を利用するのが一種の基本となっている。 ただしさきにも述べたように、世界的に見るとケイマン諸島の人気は一時ほどではない。し かし、国際的なビジネス交渉が必すしも得意でない日本人にとっては、ケイマンは慣れ親しん だ相手で利用しやすい。そこでケイマンは今でも上位三位に入ってくるのである。 帰ってこない所得 最近の国際収支統計の発表を見ると、ケイマンの位置づけはむしろ上がっているようにも見 える。日本の経常収支の黒字を支えているのは所得収支である。貿易収支が赤字になっている 日本経済にとって、経常収支の黒字を支える所得収支はとくに重要である。その所得収支のう ちの証券投資収益では、債券利子が大きなウェイトを占めている。今はとりわけケイマンから

6. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

利子 20 日本企業 所得 20 法人税 8 A 国企業 タックス・ヘイブンを利用しない取引 日本企業 所得 0 法人税 0 A 国企業 貸付金 100 出資金 100 利子 20 タックス・ヘイフン子会社 所得 20 タックス・ヘイブンを利用した取引 図 3 ー 1 タックス・ヘイブン対策税制の仕組み 財務省ホームページの図をもとに一部改変して作成 . 単位万円 留 保 し お く よ わ業万付 でそ れ生 っ付万子 け業 。接が利 貸受 、子 0 イ吏 ッ社 の会 貸そ 企〇 ッ ク ス へ イ プ ン 子 社 そ し て の 〇 万 円 を タ 会 社 カゞ 又 け る の で あ る た タ ツ ク ス へ イ プ 子 け は な い し ン付取 け は を 直 け る 円 発 る 日 本 け に よ て が れ を 貸 し け る の 〇 ( 0 卩」 を つ て へ イ プ ン 社 の 出 資 の で く タ ク ス 円 の は貸国 な付企 を・ 自 で す る は の 〇 〇 万 102

7. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

( 情報技術 ) は新しい成長要因として期待が高まった。とくに、二〇〇〇年の問題 で中央銀行が大量に資金供給をしたことが貢献して、関係の株式が高騰した。いわゆる— e バブルである。しかしながら、—e が巷間もてはやされるほどの企業利益効果を生まないと わかると、潮は瞬く間に引いて行って、バブルは崩壊した。 バブル崩壊の最中にエンロンの不正経理問題が露見した。アメリカの会計基準 ( ) は、 きわめて細部まで厳格に定めてあるがゆえに、かえってその裏をかきやすい面がある。エンロ ンはこれを利用し、デリバテイプ取引などを利用して粉飾を行っていた。ケイマンはその重要 機 危な舞台であった。エンロンは最終的に、二〇〇一年にチャプター ・イレプンを申請した。チャ 金プター・イレプンとは、日本の会社更生法に該当する規定である。 す この不正会計操作に加担していたアーサー・アンダーセンも解散のやむなきに至った。アー 来 てサー・アンダーセンは世界のビッグ 4 ないしビッグ 5 の一角を占める名門会計事務所であった 続にもかかわらず、解散の憂き目に追い込まれたのである。 この騒動の教訓は、会計基準の透明性がないかぎりは正確なデータが得られないから、どの 5 ような処方箋も無意味であるということである。 169

8. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

ただ、ケイマン投資信託の場合、所得収支として債券利子の流入が把握されている分、まだ しも救いはある。問題は、どこか税負担の少ない場所で信託などを利用して滞留し、日本に帰 ってこない所得である。ケイマンに投資した資金や証券投資した資金は、ケイマンに留まって いるわけではない。ケイマンを経由してどこかの先進国に流れて行って、そこで投資され、利 子や配当を生んでいるはずである。そうして新たに生み出された所得は、どこかの先進国のタ ックス・ヘイプンで、信託などを利用して無税で滞留しているであろう。 対策がまったくないわけではない。平成二四年度三〇一二年度 ) の税制改正によって、国外 財産調書制度というものが導入された。これは所得税と相続税に関して国外財産の申告漏れが 増えているので、国外財産の保有者に「国外財産調書」というものを提出してもらおうという 制度である。暦年末日で国外財産の価額の合計が五〇〇〇万円を超える個人が対象になる。加 算税についてのアメとムチの特例があるほかに、一年以下の懲役または五〇万円以下の罰金と いう罰則までついている。ただし、抜け穴だらけの制度である。 また、国際租税の領域で唯一の多国間条約である「税務行政執行共助条約」というものがあ る。これは、情報交換、徴収共助、文書の送達などについての国際協力を約束する条約である。 条約の略称から読み取れるとおりである。

9. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

それはさておき、この外国税額控除制度は仕組みが複雑なため、ある程度の概算にもとづき 控除限度額を設定し、税額控除の頭打ちをする。この限度額は概算に過ぎないから、場合によ っては税額控除の枠に余裕が出ることがある。三銀行のうちの一行の例をとると、その余裕枠 を利用して、シンガポール支店を使った節税スキームを作った。 このからくりも複雑であるが、要するに、ニュージーランドの旧属領であるクック諸島とい うタックス・ヘイプンにある貸付金利子に対する一五 % の源泉税を免れるためのスキームであ る。ここでは、同じくタックス・ヘイプンであるシンガポールに源泉税がないことを利用する。 第三国間の取引の間に自行のシンガポール支店を割り込ませて、自行の外国税額控除の余裕枠 でクック諸島の源泉税の肩代わりをしてやって、取引相手の税負担を減らすのである。 この事件で銀行は、自分が納めるべき税金の総額を減らしたわけではない。 タックス・ヘイ プンを舞台に税金を操作して、本来なら日本の国庫に納付するはずの税金 ( この銀行の場合では 一五億円ほど ) を、クック諸島に納付しただけのことである。ただ、その過程で他国の納税者の 納税義務を免れさせて、自分はその手数料としていくばくかを稼いだとされている。 当然、銀行は利益を上げているわけだが、本来であれば日本の国庫に入ってくるはずの税金 一五億円が外国税額控除として使われているから、日本の国庫から見れば法人税額は減収とな

10. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

また個人の場合、遊びで身を持ち崩して金を使い果たし、自己破産してしまうと、もはや貸 金業者から借りることさえできない。そこまで追い詰められると、次は、ヤミ金融が口を開け て待っている。ヤミ金融の側も鼻がきくらしく、ヤミ金融に手を出すタイプを見分けることが できるようである。自己破産した直後に、頼みもしないのにヤミ金融から数万円のキャッシュ が振り込まれてくる事例がある。 ーリッヒ州 ( カントン ) にある銀行に口座を開設して、ヤミ金融 五菱会の場合、スイスのチュ で稼いだ収益約五〇億円を隠匿していた。このとき、五菱会が利用したのが割引債である。割 引債の本人確認は一九九〇年からのことである。まだ本人確認が要求されていなかった時代の 置ことで、割引債を利用してスタンダード・チャータード銀行からクレディ・スイス香港を経由 浄してスイスに移送したとの裁判記録がある。 ーリッヒ州がその口座を差し押さえたことであった。スイスは、 金発覚の発端は、スイスのチュ 資 自国の銀行秘密保護法が悪評ふんぶんであるから、対外的に非常に気を使っている。過去には、 黒 ナチス・ドイツによるホロコーストで犠牲になったユダヤ人の口座に残留している資金をその とが 4 まま懐に入れていたのをアメリカに激しく咎められ、返還処理せざるをえなかった非常に苦い 1 第 経験もある。そこで折にふれて、「自分たちはテロや犯罪には加担しないのである」とアピー