税負担 - みる会図書館


検索対象: タックス・ヘイブン : 逃げていく税金
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1. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

いてないような規定が平気で並んでいるのには驚くべきものがある。法務省民事局は、委任立 法の憲法的縛りということはあまり気にかけないようである。 さて、話を戻すと、タックス・ヘイプン対策税制の基本的な考え方は、タックス・ヘイプン 子会社に留保されている所得のうちの一部を、本国の親会社の所得にカウントして課税すると いうものである。こうすれば、取引が図 3 ー 1 の上図のケースであっても下図のケースであっ ても、本国の親会社はほば同じ税負担を負うことになる。アメリカでは、合算対象になるタッ クス・ヘイプン子会社の留保利益のことをサプパートインカムと呼んでいる。内国歳入法典 のサプパ 1 ト条項に規定されていることから、この呼び名がある。 なお、日本では慣用的に「タックス・ヘイプン対策税制ーと呼ばれているが、この呼び名は 必ずしも適切ではない。諸外国のように「税制」と呼ぶ方がよいし、その方が各国に説 企明する際にも話が早い。とは、英語の Controlled Foreign Company の頭文字である。 す タックス・ヘイプン対策税制は、必ずしもタックス・ヘイプンに限らず、税負担の低い外国 、刀 逃 に子会社を置くことを通じた租税回避に対して目を光らせる税制なのである。したがって、名 章 称としては、税制と呼ぶ方が適切である。 第 105

2. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

護法制と節税スキームを利用した低い税負担の組合せをもって、「じつはマンハッタンもタッ クス・ヘイプンであるーとい、つのであれば、それはあながち間違いではないといわなければな らない。 一方、国ごと全部がタックス・ヘイプンとなっている国もある。スイス、ルクセンプルク、 ベルギー、オ 1 ストリアなどの欧州諸国である。これら諸国の最大の特色は秘密保護法制であ る。スイスの銀行秘密保護法は著名であって日本でもよく知られているが、じつは他の三カ国 かも同じような秘密保護法制を持っている。これら四カ国は、国際的圧力によって、二〇〇九年 はにその態度を改めることを公約させられた。その公約が実行されるかどうかは、まだこれから と一 ンのことである。 イ へ なぜあるのか ? ス ク ッ タックス・ヘイプンは、税という望ましくない負担から免れたいという人間の本質的な欲求 タ から生じたものである。国家は近代に入ってその役割を増す一方、国民の税負担は重くなって 章 いった。とくに、戦争が大がかりなものとなるに従って、それはますます重くなっていった。 第 これは経済史のデータが端的に示す しかも、戦争が終わってもその負担は減るわけではない。

3. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

うな仕組みをとると、この取引に関して日本企業は所得がないわけだから、課税されないです しかも、親会 む。子会社の方も、タックス・ヘイプンに税制がないことから租税負担がない。 社から子会社への出資は資本取引に当たるから、この場合、日本企業は課税されない。 結局、上図と下図は、実質的には同じ経済取引であるにもかかわらす、タックス・ヘイプン を利用すると日本企業は租税負担をゼロにできる。あるいは少なくとも、タックス・ヘイプン 子会社から配当を受け取るまでは、税金の支払いを遅らせることができる。このように税金の 支払いを遅らせる節税法を、とくに「課税繰延べズタックス・デファーラル ) と呼んでいる。 なお、日本では配当を受け取らないで、租税負担の少ない別の国・地域でのビジネス展開に 使うことも可能なわけで、その場合、日本国の課税権はなかば永久に失われる。 業 タックス・ヘイブン対策税制の発明 企 す このような租税回避の方法が発明されたのはアメリカである。第二次大戦後の国際貿易の発 1 刀 逃 展にともなって、アメリカではこのような租税回避が横行しはじめ、財政収入の観点から無視 3 しがたくなってきた。違法ではないとしても、実質的には節税の範囲を超える租税回避であっ 第 て、税負担の公平という見地からも明らかに問題がある。そこで、タックス・ヘイプン対策税 103

4. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

グラフを再掲しよう ( 図 2 ー 3 ) 。所得総額が一億円 家 ーー 0 になるのを境に、負担が急激に落ちていくのがは 専 会 つきりと見て取れる。 査 や億 調 主意すべきは、この租税負 序章でも述べたが、、冫 . 担率はあくまで、国税庁が把握している限りでの , 億年政 所得にもとづいていることである。実際には、把 客成幻 握できていない所得が相当な額に上ると考えられ 金平月 日訐 ている。したがって、この曲線は現実には、もっ 一尸衵一生 . 一カ = = ロ負 2 と大きく急激に落ち込んでいると考えなくてはな 合税 2 等成 后平らない の さきほど示したジニ係数が実態を反映していな 税出 納・料いと考えるべきであるのは、このように、本来な 告掲資 万申再出らば日本の国庫に入るべき莫大な額の所得税が、 の提 っ LO ョ会どこか別のところへ逃げていってしまっているか に 0 0 LO 0 0 0 広 0 0 ~ っ 0 っ 0 っ廴っ 2 序員 図図委 所得税負担率 ( % ) らである。税負担の公平性を損なう行為によって 28.3 22.9 10.6 13.5

5. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

1 国境を越えた租税回避の問題 租税回避 節税・租税回避・脱税の区分とは何かについてはさきに述べた。節税は非難されるところが ない納税者の工夫である。脱税は悪質なもので、課税当局による処分の対象となるし、場合に よっては刑事処罰の対象となる。租税回避は節税と脱税の間にある税金逃れのスキームである が、節税と租税回避の境界は微妙なものがあって、法律で明確に定めておかないと課税当局の 判断だけでは結論を出せないものである。 直接税の痛税感 さて、納税するときにはキャッシュの支払いがあるわけだから、そのときに感じる負担感を 痛みととらえて「痛税感」と表現する。直接税とは、納税者が自分で直接納税して、その税額 は自分で負担する租税をいう。所得税や法人税などは直接税である。直接税は自分で納税する

6. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

つ と で あ る 35 30 所 25 得 税 20 負 0 ~ 250 万 に税 、図 れ知 っ制 、正 、な 、あ 政少 表府 て題 は制 。実 、通 ばで しあ 税料 ばる 、者 い指 る摘 務所 1000 万 10.6 28.3 1 億 22.9 10 億 13.5 100 億 合計所得金額 ( 円 ) 図序ー 1 申告納税者の所得税負担率 ( 平成 22 年度 ) えられる . 出典 : 平成 22 年 10 月 21 日政府税制調査会専門家委 慮すると , 負担率の低下は実質的にもっと著しいものになると考 このグラフには表れていないが , 租税回避と脱税の実態までを考 所得額が 1 億円を超えると所得税負担率は急激に下がっていく 員会提出資料 っ い っ 負 担 ) 玄く、 は も っ と イ氏 な つ て い る と は 裏 ば 正 し く 申 て い な け れ ば い っ を負所 返担得 呶 に る と い っ で あ る れ ー金 を 申 し た べ ス で は っ 署得が 負 担 と な ・つ い る てっ ま り 税 の グ フ フ の 。申査 納 の の 出 血 は 調 資 で あ る 論現既 て い な い 隠 れ た 、匕 月巳 ま で 意 識 し て 議 し て る は な い の 実 で る の グ フ フ に し た が て 日 の た税事 じ オこ 人 な ら ば れ 税 案 だ制項会る に も な っ て っ し 改たそ 不 の公効 平果 は 国 で し 低 下 は の に よ も の 3

7. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

2 タックス・ヘイプン事件簿その一 武富士事件 国際取引が可能で、かっ海の向こうにタックス・ヘイプンが待ち受けている限り、租税負担 は逆進的になる、ということはさきに述べた。高額所得者になれば経済的な余裕も生まれるか ら、専門の税理士や会計士、弁護士をチームで雇って税負担を減らすことができる。その典型 が、武富士事件である。この事件は、高額所得者であればタックス・ヘイプンを利用して課税 を免れうることを示す実例である。 相続税と贈与税は必ずセットになっている。もし仮に相続税はあるのに贈与税がなければ、 富相続税の納付を逃れようと、財産をすべて生前贈与してしまう者が出てくるだろう。そのよう げなことを防ぐために、相続税には必す贈与税がセットになって付いている。ただし、カナダや シンガポールなど、相続税そのものがない国・地域もある。 いまでは改正されてふさがれているが、日本の相続税法にはかって、大きなループ・ホール があった。国外に保有する資産を日本の非居住者に贈与する場合、たとえ相手が日本国籍をも

8. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

日本の税制は公平か 最初に、この図序ー 1 を見てほしい。これは日本の納税者の税負担率を所得金額別に表した グラフである。このグラフは、日本の所得税制度には見過ごすことのできない不公平があるこ とを示している。見るとわかるように、日本の所得税負担率は、所得総額が一億円を超えると 低下していくのである。 これはどういうことであろうか。日本の所得税制は累進課税を採用している。ならば、この グラフは、所得額の増加にともない右肩上がりになるはずである。ところが、実際にはそうで はない。一億円の二八・三 % をピークにした山型のグラフになっているのである。これは、所 得金額が一億円を超えると、日本の所得税は「逆進的、なものに変わることを示している。一 〇〇億円にいたっては一三・五 % にまで下がる。 年間の所得金額が一〇〇億円とは、普通の市民の感覚からすれば、およそ想像を絶する額で ある。しかし、現実にそういう高額所得者が日本にも存在する。多くは株式の売却による所得 だが、現在の日本の税制によれば、そうした所得に対しては特別措置が適用される。グラフの

9. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

によって初めて理解できるのである。 大陸のタックス・ヘイブン ちょっと英国の説明が長くなった。次に、スイスなど、大陸の先進国のタックス・ヘイプン について簡単に述べておく。 タックス・ヘイプンとしてのスイスの特徴は二つある。ひとつは、税負担の低さである。ス かイスは二 , ハのカントン ( 州 ) からなっていて、それぞれ自治権が強い。ウィリアム・テルの昔に も遡る伝統である。チュ ーリッヒの南隣のツークやシュヴィーツなどのいくつかのカントンで ンは税負担がかなり低い。このあと第 2 章で述べるハリボタ事件は、そこに着目した節税策のケ ィー ースであった。 へ もうひとつの特徴は、、 しわゆる「スイスの秘密口座」で知られる銀行秘密保護法である。ス ス ツイスの銀行業は、この法律を根拠に預金者の情報を一切開示してこなかった。こうした秘密性 タ によって諸外国の富裕層が多額の資産をスイスの銀行に隠したり、さまざまな黒い資金が集ま 章 って脱税やマネー・ロンダリングの温床となっていた。 第 しかしながら、そのスイスも近年はさまざまな圧力を受けている。ナチス・ドイツの犠牲と

10. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

発動させないために金融政策に負担を負わせすぎた。たんに景気を刺激するための金融緩和で あったから、過剰流動性問題を引き起こしてバブルとなった。これはますいと思って引き締め にかかると、今度は後先を顧みずに引き締め過ぎたからバブルは破裂して、その後約二〇年に 及ぶ長期の停滞を招いた。これを政策の失敗と言わずしてなんと言おうか。 金融規制行政当局は何とか軟着陸 ( ソフト・ランディング ) を試みようとしたが、危機の真っ只 中にそんなことかうまく行くはずもない 「日本の金融危機が、世界金融危機の引き金になるのではないか ? 」 機 危戦々恐々の面持ちで見つめる各国の視線を浴びて、日本国政府も荒療治に乗り出さざるをえ 金なくなった。六〇兆円の公的資金を用意して、これを投入することを決意した。しかし、眼前 すの危機を処理しなければならない局面に、軟着陸シナリオで対処しようとするところが官僚の 襲 愚かなところである。結局、マーケットによって日本長期信用銀行 ( 日長銀 ) が引きずり倒され て ード・ランディング ) 路線を取らざるをえなくなった。日本債券信用銀行 続てしまい、強行着陸 ( ハ ( 日債銀 ) は政府主導で破綻させられた。 章 筆者が傷んだ銀行の国有化という強行着陸シナリオを説明に行くと、当時の小渕恵三総理と 3 第 野中広務官房長官はあっさりとゴーサインを出してくれた。それによって強襲揚陸作戦に出る