規制 - みる会図書館


検索対象: タックス・ヘイブン : 逃げていく税金
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1. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

る。悪名高いへッジ・ファンドもタックス・ヘイプンを利用して巨額のマネーを動かしている。 タックス・ヘイプンについては最近になってようやく、日本でもいくつかの行政事件や刑事 事件に発展して、メディアで取り上げられるようになってきた。しかし、実際には、それらの 事件は氷山の一角にすぎない。秘密のヴェールに包まれたタックス・ヘイプンの真相を解明し、 タックス・ヘイプンのもたらす害悪に警鐘を鳴らすことが本書のテーマであり、メッセージで のある。 何が行われているのか タックス・ヘイプンには、次の三つの特徴がある。 ①まともな税制がない の②固い秘密保持法制がある ③金融規制やその他の法規制が欠如している 市これら三つの特徴はそれぞれ別個独立にあるわけではなく、三つでワンセットと考える必要 章がある。この三つが束になって、タックス・ヘイプンが悪事の舞台になることを助けているの である。そして、その悪事による弊害がめぐりめぐって、一般市民の生活と経済にのしかかっ

2. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

なお、 ーゼル合意には、じつは強制力があるわけではない。国際的取引を行う銀行が自主 的に守るという建前である。守らなければ村八分にされて国際取引からはじき出されてしまう。 だから守らざるをえないのである。グロー ハルな規制はこのようなものでしかありえないとい うべきか、このようなものでも機能するのだというべきか。その気にさえなればできることは あるのである。 ーゼルⅢでは自己資本規制のほか、流動性規制も導入される。 金融機関の規制 2 ーー証券 証券監督者の国際機構は—onoo ( 証券監督者国際機構 ) である。マドリードに本拠がある。 —ocooo プリンシプルをはじめとして、いくつもの原則や基準を定めている。 ( 国際会計基準 ) が突然世界の注目を浴びることになったのは、二〇〇〇年に *Oco OO がに対する支持を表明してからのことである。それまでのは、民間べー スのアカデミックな作業に過ぎなかった。 ()n との関連では、シャドー ハンクと O O デリバテイプ規制および *-a —を担当してい る。シャドーバンクとは通常の銀行とは別に、実際上は通常の銀行と同じ機能を果たしている のに、銀行規制のかからない形態の金融機関である。とは法的主体の識別番号である。 208

3. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

その後、徐々に規模が拡大していき、ケネディ大統領がドル防衛のために導入した金利平衡税 が取引を阻害し、大量のドルがヨーロッパに滞留したことなどから一気に成長した。 ここでユーロドルとは、アメリカではなくヨーロッパに預けられているドルのことをさす。 その後は、ユーロ円のように「ユーロ何々」という名称はドルだけに限られなくなり、また地 域的にもヨーロッパに滞留している通貨に限られなくなった。現在は、母国以外に滞留してい る通貨はすべて、頭に「ユーロ」が冠される。「それじゃ、ユーロ・ユーロってのはあるのか 力い ? 」とい、つのは、よく聞くジョークである。 ューロドル市場に対しては、アメリカの金融当局の規制が及ばない。ク座敷クを貸している ン英国側でも、イングランド銀行の独自の判断にもとついて、これに規制をかけないことにした。 そうして、オフショア・マーケットとしてのユーロドル市場が誕生することになった。 英国大蔵省は当初、規制をかけないことの問題点に気がっかなかったと言われている。そし て、問題点に気づいたときには、もはや規制をかけられる状况ではなかった。それほどまでに ューロドル市場は急速に発展を遂げ、シティを潤すようになっていたのである。 またカジノの喩えで考えてみよう。ロンドンがオンショア・オフショア一体型であると言わ れるのは、ロンドンでは「カジノーの開設そのものが一般に認められていて、外国からの観光

4. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

丿ュー・アット・リスク ( x) など、当時としては先端的なリスク ト・リスクについて ゼル—があまりにもあらつほい規制だった の計量方法などが取り入れられた。ところが、バー ので改正されることになり、さきに登場したビル・マクドノー Z>* 連銀総裁のもとで、二〇〇 四年、信用リスクに主眼をおいたバーゼルⅡが合意された。 丿ーマン・ショックに際してうまく機能し / / ノ ーゼルⅡは失敗であったともいわれる。 なかったではないか、というのがそのひとつの理由である。 そして、いまはバーゼルⅢの時代である。がうまく機能しなかったことを踏まえて、 新たに期待ショートフォール値 ( ) というリスクの計算手法を取り入れている。この計算手 ーゼルⅢは、 法は名前だけ知っておけばよい。よりは重いリスクの値をはじき出す。、、 二〇一三年から段階的に実施されることになっている。二〇〇九年の幻首脳会議のピッツバ のーグ・サミットにおいて、早く実施してくれという圧力がかけられたためである。 策 ーゼル自己資本規制はそもそもレバレッジの規制である。自己資本規制があると、自己資 抗 対 本の量の何倍かまでしか借入れ ( 商業銀行の場合は預金 ) ができない。そうするとバランスシ 1 ト 章 の総額が頭打ちになり、銀行の貸出規模も制限される。こうすることによって、大きすぎて潰 第 せないという大きな問題点にも縛りがかかることになる。この点は重要である。 207

5. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

キャッシュを陸揚げするということになるだろうか。そこには当然、僣入捜査官もいるし、本 土への陸揚げは銃撃戦覚悟の命がけの作業になる。 巨額投機マネーによる世界経済の大規模な破壊 ファイナンス理論によって新しい金融技術が急速に発展し、一九九〇年代以降、今までには なかった新しい金融商品が次々と開発されるようになった。デリバテイプはその典型である。 そうした金融商品を駆使したマネー・ゲームによって引き起こされた金融危機の実例を挙げ れば、この二〇年だけでも切りがない。くわしくは第 5 章で述べるが、当面ここでの問題は、 金融商品の組成のプロセスのどこかで、必ずタックス・ヘイプンが用いられていることである。 しかも、マネー・ゲームのどこかでは、やはり必すタックス・ヘイプンにある事業体を通過し ているから、資金ルートの全容が見えないようになっている。 金融取引でタックス・ヘイプンが重宝されるのは、規制が著しく緩やかであるか、または実 際には規制がないに等しいからである。金融機関がリスクをとり過ぎて破綻しないように規制 をかけることを「プルーデンシャル・レギュレーション」とい、つ。タックス・ヘイプンを経由 することによって、このようなプルーデンシャル・レギュレーションを免れることが可能にな

6. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

証券業務に関しては、銀証分離の問題がある。アメリカでは長く、グラス・スティーガル法 によって、銀証分離が行われてきた。これは大恐慌直後に、大恐慌の経験を踏まえて設けられ た規制である。日本も戦後の証券取引法六五条によって、これにならった法制を敷いていた。 金証分離の規制は、日米においても、国際化と規制緩和の波にのって次第にゆるめられ、金 ハンクと *•Q-«モルガン・チェイスが、 融機関の総合化が進められた。アメリカでは、シティ・ そのような構想のものとして総合金融機関として成立した。これにともなって、金融監督行政 を行う規制官庁側の統合も進んだ。監督行政の総合化は、英国の、日本の金融庁、ドイ ツの金融監督庁がその典型例である。 日市不と , もに必ず一しも、つまく 日本でもアメリカにならって金融機関の総合化が進められたが、 ノティ・グループは早々に保険を切り離してしまった。ヨーロッパのような 機能していない、、 ンキングの伝統のあるなしの相違であろうか。ボルカー・ルールの導入は、 のユニバーサル・バ 抗銀証分離に対する揺り戻しの方向性である。 対 銀行業務と証券業務をひとつの金融機関で行うことには、本質的な矛盾がある。たとえば、 章 銀行が貸付先の企業経営状況が悪いから貸出債権を回収したいと考えたとする。そのときに、 第 自己の証券部門でその貸出先に証券を発行させてマーケットで売りさばく。そして証券発行 209

7. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

る。言い換えれば、規制の網を逃れて、ハイ・リターンを望める危険な取引が可能になるので ある。 国による規制は、国境を越えて執行できないのが原則である。これを国際法の世界では、 ほ - つ、けん 「公法は水際で止まる (public law stops at the water ・ s edge) 」という法諺で表現する。ところ ヾルヒし、ボーダーレス・エコノミーとなっている。そして、国外に が、経済はいまやグロー のはタックス・ヘイプンが口を開けて待っているというわけである。そうすると、国境の壁に阻 せっしやくわん よまれて規制は空振りに終わることになる。そして当局は切歯扼腕するが、打つ手がない このようなマネー・ゲームの行き着く先は、決まって大規模な金融危機である。そして、破 ら綻した金融機関や企業の救済のために、市民の納めた税金が使われる。一部の投機筋が引き起 こしたマネー・ゲームの尻ぬぐいのために、市民が汗水流して働いて得たお金が、湯水のごと 実く使われていくのである。 市困難な実態解明 の衝撃 章これまでにタックス・ヘイプンの問題点が指摘されなかったわけではない。 9 ・ 11 は、タックス・ヘイプンに対するアメリカの態度を大きく変化させた。以降、先進諸国のマネ

8. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

ヘッジ・ファンドとタックス・ヘイブン 典型的なヘッジ・ファンドは基本的には私募によって資金集めをする。公募の場合には一般 の大衆投資家を保護するための法規制が厳しい。公募の典型例は投資信託であろう。 ヘッジ・ファンドは、タックス・ヘイプンないしオフショア金融センターで設立されている ことが多い。これは、タックス・ヘイプンの重要三要素である、税制、秘密保全、規制監督法 制などを考えての選択である。たとえば、ソロスのクオンタム・ファンドはキュラソーで設立 された。そのほか、デラウェア州法にもとづいて設立されるものもある。 ヘッジ・ファンドの定義が厳密でないため、集まるデータもまちまちである。の報告 書に少し古いデータもあるが、公には姿を現さないへッジ・ファンドもあれば、偽装されたへ ッジ・ファンドもあり、データがどれだけ実態を反映しているかには注意が必要である。した がって、であれ何であれ、入手できるデータは数字の桁数の感覚をつかむというぐらい の意味しかない。 加えて、さきに述べたように、ファンドや投資ファンドと呼ばれるものが行っていることも、 ヘッジ・ファン ヘッジ・ファンドの行っていることと本質的に異なるところはほとんどない ドは保護すべき一般大衆投資家を直接のビジネスの対象としていないから、規制が緩いことぐ 156

9. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

もうひとつの先進国Ⅱタックス・ヘイプンが、アメリカである。なかでも、東部のデラウェ ア州がタックス・ヘイプンとして知られている。デラウェア州のウイルミントンには、フォー ド、、コカコーラ、グーグルなど、世界に名だたる大企業が本社を置いている。日本人に はあまり馴染みのない廾だか、驚くほど多数の大企業がわざわざここに本社を置くのは、デラ ウェア州の法規制が企業に緩やかだからである。実際、現地に行ってみると、どのビルも何の 変哲もない静かな建物で、これらの大会社は単に登記上そこに居を構えているにすぎないこと かわかる。 デラウェア州は国内にあるタックス・ヘイプンであるという意味で「ドメスティック・タッ クス・ヘイプン」と呼ばれている。アメリカで設立されるヘッジファンドの大多数はデラウェ ア籍である。そのほかネバダやワイオミングにも緩い規制や秘密法制があるなど、アメリカ各 州の法制度の中にはとうてい他国を批判できないものがある。 それではウォール・ストリートはど、つであろ、つか。ウォール・ストリートは、コーポレ 1 ト・アメリカの心臓部である。しかし、マンハッタン島自体がタックス・ヘイプンであるとい う言い方は正確ではない。ただ、企業会計上は素晴らしい業績をあげている企業がアメリカ国 内ではほとんど納税していないことは紛れもない事実である。州法べースの緩い規制や秘密保

10. タックス・ヘイブン : 逃げていく税金

戦術に規制をかける ヘッジ・ファンドの三大戦術兵器は、 ( ①レバレッジ ②ショ 1 ト・セリング ( 空売り ) ③デリバテイプ である。ならば、これらの戦術に規制をかければ効き目があるであろう。 必ずしもヘッジ・ファンドに関連するものではないが、たとえば取引については最近、 日本でレバレッジの規制が強化された。 空売り規制はレバレッジ規制のひとつの形態であるということもできる。日本では金融商品 索取引法の改正によって、片仮名の名前のついた証券会社が軒並み金融庁の行政処分を受けてい のる。スペインやイタリアなどでは、ユーロ危機の下で、ほば全面的な空売り規制を敷いた例か 抗ある。ドイツも空売り規制を導入した。金融庁は空売り規制の強化について、アメリカのレギ 対 ュレ 1 ションなど、欧米の規制を参考にして構想を練っているところである。後述するよう 章 6 に、—OCOOO ( 証券監督者国際機構 ) においても空売り規制の検討が進められている。 デリバテイプの規制に関しては、まず oeo という概念を知る必要がある。 oeo とはオー 203