話し - みる会図書館


検索対象: マスカレード・ホテル
157件見つかりました。

1. マスカレード・ホテル

気を抜かす任務に当たるように」 「わかっています。ではこれで失礼しますー一礼し、新田はドアに向かった。山岸尚美 も後からついてきた。 部屋を出て少し歩いたところで、「あの件は、もう上の方に話されたのですか」と山 岸尚美が低い声で尋ねてきた。 「あの件というと ? 」 「昨夜の件です。私が浮気旅行をカムフラージュする方法をお話ししたところ、新田さ んは何か閃かれた御様子でした」 「あれですか。あれについては、俺からは話していません。新田は歩きながら答えた。 「どうしてですか。とても重要なことにお気づきになったように感じましたけど 」新田は足を止め、彼女のほう 「俺なりにいろいろと考えがあるんです。それより 冖に向き直った。「あなたには本当に申し訳ないと思っています」 ホ 「突然、どうしたんですか」 「なせあなたが昨夜ゆっくりと眠れなかったのかを考えてみたんです。答えはすぐに思 スいっきました。昨日、あなたらしからぬミスをしたのと同じ原因だ。俺との約東が引っ マ 掛かっているんですね」 山岸尚美は目を伏せた。肯定と受け取ってよさそうだった。

2. マスカレード・ホテル

414 の推論というやつを聞かせてもらわねばなりませんな」 新田は頷き、話しだそうとして口を閉じた。ウェイタ 1 がオレンジジュースを運んで きたからだ。それに気づいたらしく、能勢は自分で立っていって、オレンジジュースと 伝票をトレイから取って戻ってきた。だが伝票を一瞥し、瞬きした。 「おお : : : ジュース一杯がこんなにするとは」 「フレッシュオレンジジュースですからね。実際にオレンジを搾って作るんですー 「さすがは一流ホテルのバーですな」能勢はストロ 1 で飲み、驚きの顔になった。「な るほど。紙パックに入ってるジュースとは、ものが違います . ハンカチでロをぬぐい、 身を乗り出してきた。「どうぞ、話してください 新田はグラスの水を飲み、唇を濡らした。 「の計画で、一つだけどうしても納得できないことがあったんです。それは、なぜ 犯行手段を統一しておかなかったのか、ということですー 「ははあ : : : 犯行手段」 やくさっ 「第一の事件は絞殺で第二の事件は扼殺です。この二つは似通ってなくもないが、第三 の事件で被害者は後頭部を鈍器で殴られて死亡しています。すべてを同一犯による連続 殺人事件に見せかけたいのなら、殺害方法も揃えたほうがいいと考えるのではないでし

3. マスカレード・ホテル

に」手嶋は表情の乏しい顔で首を振った。 新田は、事件について何か心当たりはないかとか、最近の岡部の様子はどうだったか といった質問を続けながら、手嶋と岡部の関係を探りだそうとした。 だが手嶋の受け答えは一貫していた。岡部とは会社以外での付き合いはないし、仕事 も完全に分業していたから、不正についても全く気づかなかった、プライベートなこと というのだった。 も殆ど知らない、 「僕も社交的なほうじゃないか、彳 皮も人付き合いはよくなかったですね。仲のよかった 人間なんていないんじゃないかな」手嶋はばそばそとした口調でいった。 新田はアリバイを確かめることにした。十月四日の夜はどこにいたのかと訊いた。 自宅にいた、というのが手嶋の答えだった。それを証明できるかと訊いたところ、最 ひと 初は、独り暮らしだから無理だといった。だが少ししてから急に思い出したように、電 話がかかってきたといいだした。しかも携帯電話ではなく、固定電話にだ。 ホ 「かけてきたのは、昔付き合ってた女性です。大した用じゃなかったんですけどね。っ 一いでに少し話しました。五分ほどだったかな」 それが八時頃のことだという。 ス マ 電話はファクスとの兼用機だった。 「元カノと付き合ってた頃は、このあたり電波の状態が悪くて、なかなかケータイが繋

4. マスカレード・ホテル

の訛 ホあ岡新 ル : 哲 の者せ者 で 。ん のそ いは 任、 う真 ~ 斉 . . し っ男 の 刑だ 事ら っ動 と 目能 の勢 田し、 で 頭 被は カゞ 生ば の命 い 者ち にす う署 でば のが おが つ ろ第 ば すち ら面 だ瞬 せ白 茶り 田別 で 色ま はれ見象 ん手 のす 個 私た 々 バ能 てた の 事 う擱 すた がは つ鞄 いを つ た引 しす て 帳寄 だせ っ東 が 薄 く な り ルせ ーー 1 ァあ部 っ し ( こ 、け 力、 し ) 田 ら 間 の ロロ て 人 ん さ ・晴問 ネ皮 生 と い と て ま ん っ 先 さ ん 知 し て お と 田 い ま て し 報 も 司 上 だ ま で ん 、た、 ん を・ 報 情 い で て っ 係 関 ↑生 。女 の 哇 : い被用 て き た ド フ マ の が 使 い そ カ 手 ち ろ 用 が ん ぐ に き 中 か ら 帳 を 出 も合あ能潜 た 県ほ葉 や る き と く さ あ だ ん な と ろ で し、 る や な と ま す 、が に褒査 め いかを重る に払か し、 べけが る よ つ がに男 た新と を る振た じな勢入が鈍新 言気て カゞ のた作 の ら と け よ と し、 た り の捜混そ田 じ っ し、 も 、少 し く て し、 々 。だす葉 る はこ端 と っ多北 たか関 たを てホ起 ァ 。で っ な、 お さ 。ん組 と い っ 、印た だ ′つ の 々 。想 さ る 98 際 は の と 、む よ つ に じ ら れ

5. マスカレード・ホテル

彼女は目をそらさずに答えた。「決まっています。総支配人室です 「今の話をするつもりですか」 「もちろんです。道を空けていただけませんか」 「み、、つい、つ、わ亠ノこよ、、 し ( ( し力ない。いいですか、あなただから話したんだ。捜査上の秘密を 口外するような人じゃないと思ったから、すべて打ち明けたんです」 「見損なったとおっしやりたいならそれでも結構です。いつもなら私だって、捜査上の 秘密を軽々に漏らしたりはしません。でもその秘密がお客様や従業員を危険に晒すとな れば話は別です。 新田は唇を噛み、そばに置いてあったワゴンを拳で叩いた。山岸尚美は眉をひそめた。 「乱暴なことはやめてください 「どうしてもだめですか」 「こればっかりは」山岸尚美は新田の脇を通り抜けようとした。彼が立ちはだかると、 虚しさの漂う視線を向けてきた。「通してください。それとも大声で人を呼びましよう か。そんなことになって困るのは新田さんのほうでしよ」 どうやら彼女の決意は固いようだ。新田は諦めて身体をすらした。ありがとう ) 」ざい ます、と会釈してから彼女は歩きだした。その後ろ姿に向かって、「自分たちさえよけ ればいいのかーと彼はいった。彼女の足が止まった。

6. マスカレード・ホテル

395 マスカレド・ホテル どこの誰を守るんですか。もしたった今、ロビ 1 に拳銃を持った人物が現れたとします。 あなた方は誰を守るんですかー 「仮に銃を持っていたとしても、は人前で無闇に発砲はしない 「そんなこと、わからないじゃないですかっ 激しい語気に、新田は一瞬たじろいだ。山岸尚美がこれほど大きな声で、しかも鋭い 口調で話すのを聞いたのは初めてだった。 感情的になったことを悔いたのか、彼女は額に手を当て、辛そうな顔で首を振った。 すみません、と小声で呟いた。 こちらこそ、と新田はいった。「あなたの気持ちはよくわかります。犯行を防ぐ決定 的な方法があるのにそれを使わない、というのは理不尽ですよね。でもわかってくださ これはもう捜査方針として決まったことなんです」 「そんなもの、いくらでも変更できるじゃないですかー 「 *< を逮捕するには、これしか方法がないんです」 一「そんなこと、当ホテルには関係ございません」山岸尚美は毅然としていい放ち、出口 に向かってつかっかと歩きだした。 「待ってください」新田は急いで彼女を追い抜き、行く手を阻んだ。「どこへ行くんで すか ,

7. マスカレード・ホテル

エレベータホールに向かって歩きだしていた。小柄なベルボ 1 イがあわてた様子で追い 、かけ・てい 尚美は小さくかぶりを振った。隣では、新田が訝しげな目を、エレベ 1 タホ 1 ルのほ うに向けていた。 何か、と彼女は訊いた。 「いや、ちょっと気になる話だと思いましてね。あの女性客の態度はふつうじゃない 「そうでしようか。さほど珍しい話ではないと思いますけど 新田は意外そうに身体を少し後ろへ反らせた。 「客が写真まで用意して、この男を自分に近づけるなって命令してくるのが、珍しいこ とじゃないというんですか」 「たしかに写真まで用意するお客様は少ないです。でも、訪ねてきた方を追い返してく れと頼まれることはしよっちゅうあります。そうしたことも、私どもの仕事の一つで テ ホ 「へええ、そいつは大変だ」 「何度もいうようですが、ホテルにはいろいろなお客様がお見えになるのですー ス マ 尚美は若手の川本を呼び、安野絵里子からいわれた内容を伝えた。 「久我さんたちにも話しておいて。引き継ぎの時も忘れないようにね」 いぶか

8. マスカレード・ホテル

214 「それもそうかー新田は顔をしかめた。「とにかく警戒は必要です。俺は警備員室に行 ってきます。館林の部屋は十五階でしたね。防犯カメラを見張っている刑事に、注意す るよういっておきます 新田は後ろのドアから出ていった。それを見送った後、尚美は、自分はどうしようか と思った。あの様子では、新田はまだまだ引き上げないだろう。それどころか、徹夜で 見張るといいだすかもしれない。 「山岸さん、大丈夫ですよ。お帰りになってください。ここは僕たちだけで大丈夫です。 何かあったとしても、警察の人に任せるしかないわけですし」彼女の迷いを察知したら しく、小野がそういってくれた。 「でも新田さんは、まだここにいるみたいよ 「この時間ですから、あの方がお客様と接することはないでしよう。それより山岸さん が無理をして、身体を壊すことのほうが心配です」 後輩のいうことには一理あった。 「そう ? じゃあ、そうさせてもらおうかな。新田さんに一言いってくる」 尚美は裏に回り、従業員用のエレベータに乗った。警備員室は地下一階にある。 警備員室のドアは開け放たれていた。立っている新田の背中が見える。中にいる人間 と何か話しているようだ。

9. マスカレード・ホテル

197 マスカレド・ホテル ら、何があっても教えません。仮にそうではなくても、一応お客様に、教えてもいいか どうかを電話で確認します。今は大抵の方が携帯電話をお持ちです。親しい方なら、そ の番号を知っているはすですから、御本人に尋ねればいいのです。それをしない、ある いはできないということは、何か事情があると考えるべきです。もちろん、 問い合わせ ていることを相手の人物には気づかれないように用心します」 しいだしたら ? 「相手が、部屋番号を教えてくれるまでここを動かない、とでも、 「頭を下げ続けるしかありません。もしその方が暴力的な言動に出た場合には、それな りの担当者を呼ぶことになりますが」 よど 山岸尚美の回答には淀みがない。単に教育されたことではなく、実際の経験から学ん だことを話しているからだろ、つ。 「でもホテル側の対応がそういうものだとわかっている人間なら、もっと別の手段を選 ぶかもしれませんね。怪しまれないための、何かうまい手をー 新田が訊くと、山岸尚美は少し視線を遠くに向け、首をゆっくりと縦に動かした。 一「そうですね。いろいろと知恵を絞る方はいます」 「何か印象的な経験でも ? 」 「いくつかありますけど : 少し間を置いてから彼女は再び口を開いた。「一年ほど 前、一人の女性がやってきて、あるお客様の部屋番号をお尋ねになりました。その女性

10. マスカレード・ホテル

340 能勢は黙って頷き、腰を上げた。 会議室を後にし、ホテルの本館に向かった。能勢は少し遅れてついてくる。通用口か ら本館に入ったところで新田は足を止め、振り返った。 「あなたも知っていたんですね。それぞれの犯人が別々だってことを」 能勢は申し訳なさそうに身をすくませた。 「課長から、ほかの事件とは切り離して捜査をするよう指示されたって、新田さんにお 話ししましたよね。あれから間もなく課長に呼ばれましてね、先程の、 ** だのだ のって話を聞きました。ただし当面は極秘だから、ほかの捜査員にも話さないようにと 釘を刺されていたんですー 「それで俺にも話さなかったと ? これまで一緒にやってきた俺にさえも ? 能勢は、頭髪が薄くなった頭を下げた。 「隠しているのは心苦しかったです。でも、新田さんには今の仕事に集中してもらわな きゃならんとい、つ話。 ( こよ、同意せざるをえませんでした。尾崎管理官のおっしやる通り です。今の新田さんのお仕事は、新田さんにしかできません」 「あなたにそんなことをいってもらっても、嬉しくも何ともありませんねー 「そりゃあそ、つでしようけど : 「それで ? 俺に隠していたのは、それだけですか。違うでしよう ? 俺とのこれまで