と、資本繰りが楽になることはわかっていても、一気に自己資本を増やせるものではない。自 己資本が少なくてゆとりのない期間中は、使い方に細心の注意がいる。注意の第一点は固定資 産を増やさないようにすることだ。 不動産を持っと信用が増して安定するように考える経営者は少なくない。が、全額借り入れ で一億円の土地を買うと、表面上は一億円の土地を持っているので信用があるようにみえる。 しかし借金も一億円あるから正味はプラスにはならない。むしろ維持費が必要になるのでマイ ナスだ。 一億円の借り入れに対する利息を支払っても余りある利益が出ればよいが、そうならなかっ たら大きな負担になる。いや、地価の上昇で含み利益が出ると反論が必すあるが、それは力が ついてからの話だ。 力のないときの判定基準は軽装備で考えないといけない。 財務上の軽装備とは、利益を生まないところには資金の配分を避け、利益を生むところにの み重点的に資金を配分するということだ。固定資産勘定でみると土地、建物に次いで金額が多 いのが車両運搬具。車会社の営業マンのおだてに乗って油断すると、一台一一五〇万や三〇〇万 円はすぐかかる。高い車を何台も買うと、車両の勘定科目は水ぶくれしてしまう。車両の金額 も抑えなければならない いかにして軽装備を心がけるかが財務戦略の基本思想である。
い 2 資のプラン時間を省略する人はメモにするのを面倒がるから、忘れ物や忘れ用件が出てくるの である。バタ貧の始まりだ。一一度手間、三度手間の仕事が多くなって効率が落ちる。能率を上 げるには計画が必要である。このために一五分間投資する。むしろ一五分という時間を目標に したはうが実行に結びつく 段取り時間に四五分間 八 5 一〇 % で全体の半分を占めるという法則を八時間労働に当てはめると、三八分から四八 分、平均すると四五分。非常に価値が高い時間だ。計画時間の一五分を差し引くと三〇分にな る。これが段取りの行動時間になる。部下を数人持っている経営者や幹部は、部下の行動計画 の打ち合わせと注意事項に一一一〇分を回すと効果が上がる。 営業の仕事は、外に出るとあとはコントロールがきかない。営業マン自身は重要と思ってい ても、経験を積んだ人間から見るとつまらない仕事である場合が多いから、これを打ち合わせ で教えてやるといい。 ハレートの法則を仕事の種類に置き換えることを「重みづけ」と呼ぶ。打ち合わせという重 ことわざ みづけに三〇分は必要なのである。建設工事業者では「段取り七分」という諺があるが、その 段取りも一定の時間を強制的に先行投資しないと実行できるものではない。この時間も朝型に 集中して切り上げる。 0
先進国の中では日本が一番偏りが少ない。富が一時的に集中しても、累進所得税と高い相続 税で吸い上げられ、富の蓄積がむすかしいからだ。一億総中産階級と思っているのは、富が分 散してるところからきている。こういう国では別に革命を起こす必要もないわけだ。 売上高も偏りを示す。県内の同業者が全員集まり、売り上げの多い順に並んだら、ほば図表 2 のようになる。 八 5 一〇 % の企業数で業界売上高の半分を握ってしまうのだ。一一〇 % の会社で売り上げの七 五 % を支配、さらに六〇 % の会社で売り上げの九五 % を占める。そして残りの四〇 % の企業は 早 業界売り上げの五 % しか上げてないのである。 企業数累計売上高る 時 この法則は、販売先や仕入先、商品についても 中当てはまる。これでわかることは「一一〇 % の数で 全体の七五 % を支配する」という事実だ。それで 五〇 % 社 勤のる はこの法則を時間に応用してみたらどうか。仮に 出トよ 七五 % の 一日八時間働いている人にとってその一一割はおよ 数 ~ 吊レ則 少そ一時間三〇分になる。 。、去 九五 % ャ 仕事内容によっていちがいにはいえないにして 第 2 一〇〇 % 一〇〇 % 上 表 ~ 。も、集中効果が発揮される時間帯はたしかにある。 9 判断業務の場合はよりはっきり出てくる。そこで、 / 0
常識的出勤時間より一時間早く出社 弱者は七時三〇分より仕事を始め 行動計画を立てて効果を高めるべし 社知恵が出るダイヤモンドの時間 出 早第 6 条で長時間労働の必要性を説明してきた。それでは、必勝態勢の一二時間労働を実行する 啣には朝何時から仕事を始めたらよいか ? 答えは朝七時一一一〇分からである。その理由はこうだ。 私は一 , ハ年間企業調査をしてきた。目的の会社に赴いて決算資料などを提供していただき、 企業内容をレポートする仕事だ。業界の平均からみて、内容のよい会社がある。人脈背景もな 時 親の財産もなくて独立、さはど業歴はないのに決算書の内容は業界ではよいはうに入ると 出 いう会社も少なくない。なぜだろう。何度も訪問し、社長の話を聞いたり行動を観察したりし 識 て、ある要点に気づいた。 それは朝の出社が早いということだ。朝六時三〇分から戦闘開始という社長もいるし、七時 出社を一一一〇年続けている社長もいる。業界業界で、その地域を代表するような内容のすぐれた 会社の社長は決まって朝が早いのである。経営者の朝が早いと男子社員の朝も早くなる。する 第 8 条
んを食べてるときはこっちはおかゆしかすすれない。向こうがおかゆを食べ出したら、こっち は指をくわえて見ているだけ。それがいやなら、何か手を打たねばならない 自分の店の存在理由をはっきりさせるには、取扱商品の重点主義を採用する。そして、その 分野で勝っことだ。これが軌道に乗れは利益も出るから、そのあとで店舗を広くできるし、商 品の幅も広げていける。とにかく、重点主義で勝機をつかむことが肝要だ。 重点主義の反対が翦未である。業歴が五年未満、三年未満と浅いのに翦未を始めたら長くは ない。次の電話帳にはのらないだろう。 たとえ業歴は古くとも、近くの同業者と比べて面積が少ない店は、やはり重点主義でいかね ばならない。同一商品を扱い、売り場面積が一一一割以内の差であれば、商品密度を高めたりする 立体的なやり方で対応できる。しかし一一一割以上離れると、同じゃり方では通用しないから、重 点主義をとるしか手はない。 これは小売業と製造業とを問わない。競争相手よりも戦力がない会社が商品の幅を広げる総 花主義をとれは、ジリ貧は間違いない。 独立は一業にしほる 業歴の浅い会社の翦未は成功しない。業歴は浅く、企業の力は何もないのに、何が本業かわ からないような会社の倒産率はきわめて高い。弱者中の弱者の番外弱者があれもこれもとは欲
呼ぶ。いつの世にもその時代その時代に合った業種がある。 世の中は動いている。動きが速くなるとスキ間が生しやすくなる。利用者は、こういう商品 やサービスを受けたいと思っているのに、それを供給する専門の業者がいないと客は不満を感 しるよ、つになる。 利用者のイライラを見て、それではと会社をつくって客の要求に応えようとする人も出る。 これがスキ間商品だ。スキ間の規模が大きくなると産業と呼はれるようになる。クロネコヤマ トの宅急便は、個人の贈り物や荷物を手軽に運ぶ経営を始め、宅配便産業をつくり上げた。 スキ間産業はニュービジネスであり、同時にべンチャーピジネスである。ニュービジネスの 多くは、初めは職業別電話帳や、政府の業種別分類には「その他」として扱われる。しかし市 場規模が大きくなると、やがて社会的に認知され〃〇〇業〃として分類される。だが、そうな ると、ニュービジネスでも、スキ間産業ではなくなる。 サラ金がよい例だ。サラ金業の規模が大きくなると「消費者金融業者」として扱われるよう になった。サラ金も初めは、「業種のスキ間」をねらって小さく始めたのである。今では巨大産 業になっているスー ーも、誕生期ではスキ間産業であった。 経営者が集まると「何か儲かる商売はないかネー」と話が出るものだ。儲かる商売とはスキ 間産業のことである。しかし、スキ間産業が新事業として知られるようになるまでには、数え 切れないほどの失敗者が出ているものだ。
の電話がどんどん。バス停で立っていると、恨みに思う同業者が通りがかりに素知らぬ振りし て足で蹴っていったこともあるそ、つだ。 こういう同業者と知的に話しても〃角〃が立つだけ。また、同業者の経営者とのつきあいも 〃情みに流されるからやめたほうがよい。サイフを持っている「お客様」のみをたえす見ておけ は、方向を誤ることはない。このようにシキタリが強い業界で、差別化に成功すると急成長で きる。 古い産業でもやり方一つで伸びるのである。だが足のむこうずねあたりに黒いアサが一一つ三 つできるくらいの覚悟はいる。弱者は売り方でも業種の選定でも、あるいは活動地域でも、強 す い相手の少ない競争場面を考えたほうがよい。成功する率が高くなる。 今までの要点を要約してみよう。 を : ・今までにない商品、今までにない業種がこれにあたる。商品の ①戦わすして勝っ : と販売活動には苦労する。しかし競争相手がいないために営業に集中できる。あたる 策 と努力はむくわれ、儲けは大きい 合 : ・すでにその商品を売っている業者はいる。しかし弱い会社は ②勝ちやすきに勝っ : 、ヒ ~ 父勺早く強者になれる。 かりで強い相手かいない。ここに戦力を隹木中することにより上自 : ・特別強い相手ではないが自社と戦力が同等にある。戦力を集 ③互角の相手に勝っ : 中させても大幅に有利にはならない。戦闘時間量の増大で一時的に戦力を増やす。それで
商品知識もなく商品イメージもないものを売るわけだから、商品説明と営業には骨が折れ る。リスクが大きく、失敗率も高い。しかし普及率がゼロからのスタートであるため、伸び率 は非常に高くなる。うまくいけば、倍々ゲームで伸びることもできる。 第一次オイルショック以後、急成長している業種がある。—O 関係やロポットのように先端 技術に関係する業種はいうまでもないが、磁気マットで急成長した会社や、栄養食品、健康食 品で伸びてきた会社も少なくない。教育産業の「公文」、そして若者向けの居酒屋チェーン「村 さ来」、これらはいすれも先発に強者がいなかったから伸びたのである。 先発に強者がいない業種への進出は急成長の要素を持っている。その中で成功した会社は、 す経営者が利用者の考えや方向をたえす肌でキャッチしているものだ。意欲と願望が人一倍強く、 こ行動的な人は、今までにない商品を取り扱ったほうが面白味があるのだろう。 工 四〇 % 以上の強者がいる市場には出ない 策 人の可能性は無限だ という意味の本が売られている。何ごとも不可能はない、不可能と 合 思うから不可能で、可能と思えば可能になるという意味の経営セミナーも開かれている。たし 2 かに不可能を可能にすることはないわけではない。しかし可能だからといってこれから車の製 造を手がけ、トヨタや日産を追い抜けるだろうか。 たしかに確率はゼロではなかろうが、限りなくゼロに近いことも間違いない。トヨタがナン
きるようになり、飛行機から爆雷を投下し、潜水艦の動きを封じ込めたのである。 結局、日本の潜水艦は潜水艦としての性能は抜群だったけれども使い方を間違えた。自分よ り強い敵に向かったため、戦果を上げきれないまま終戦を迎えた。この日本人の思考の弱点が よりはっきり出ているのが、真珠湾攻撃だ。奇襲には成功した。しかしアメリカの提督が書い た本を読んでがっかりした。湾の近くの石油タンクは被害ゼロだったのである。この油タンク がやられていたら燃料不足になり、中部太平洋の戦艦群は半年は動けなかっただろう 1 ーレ」書 いてあった。 石油タンクは攻撃力を持たないから、一番攻撃しやすい。目標は大きくしかも動かない。数 個の爆弾を投下するだけでよい。火災で次々とタンクが爆発するだろうことは容易に想像でき る。アメリカの提督ニミツツは、日本軍は、なぜ石油タンクを攻撃せすに放置したのか不思議 でしようがない、と書いているのである。 日本人はどうも村正の妖刀のような「必殺隠し技」を期待する深層心理があるようだ。これ は日本が島国のせいで、一騎打ち型の考えが根強いことによるのかもしれない。集団戦や、確 率戦に勝っための戦略思想が育たなかった。日本人の救いがたい性格である。大きなものをね らう前にます小さなもので勝つ。小さなものは競争相手が少なく勝ちやすいからだ。そしてこ れをいくつもっくる。さらにこれを足がかりとして全体の勝機をつかむ。これが一番損害が少 ない合理的な勝ち方のルールである。
ビジネス上の真の実力であることをすっかり忘れている。一了三回会合を開いてひと通り話が 行き渡るとそれでおしまい。あとは各メンバーのコミュニケーションを深め、お互いの親睦を 図るためにといってゴルフの会がつくられる。ゴルフの会はたぶんアタックとかチャレンジの 会となるだろうが、ゴルフのあとは見聞を広めるためにと理由をつけて東南アジア旅行という のがお定まりのコースだ。事業に明確な目標がなく、将来に対する願望も失われて「サラリー マン化」してしまった経営者といくらっきあってもしようがないのである。 しかし高い願望電圧を持っている人とっきあえは自分のほうも充電でき、徐々に電圧が上が 生っていく。 異業種交流には、積極的で熱心な人とっきあう、という条件がついていることを忘 を 発れてはならない。事業をどう伸ばすか。どうやって経営内容のよい会社にするか、という目標 響を持った経営者との交流を図れは、自分の願望も開発される。 そうするために誰も手は貸してくれない。自分のほうから行動するしかない。これも積極生 を失わない仕掛けづくりの一つにあたる。いすれにせよ、物事の始めは熱意である。条件に恵 の ~ まれる強者も条件に恵まれない弱者も、この熱意に関しては対等であり、税金もかからない。 いつも元気で前向きでいられるよう仕掛けづくりをする。これが覇気だ。 経営にとっても人生にとっても大事なのがこの心意気なのである。この心意気を呼び戻し、 それを持ち続ける「仕掛けづくり」が何にもまして重要だ。このために一カ月当たり一日ない し二日は投資したいものだ。