何ごとも「態度」で示さないと伝わらないのだ。ではどうやって態度で一小すか。手紙を利用 するのもその一つの方法だ。 自社の商品を買ってくださる客に「心からのお礼の手紙」を出せばよい。そうすると客のほ うも、より協力的な行動を示してくれるようになる。では会社や商店がどれぐらい利用者に手 紙を出す行動をとっているだろうか。そこで私は調査をしてみた。経営者や営業員は自社の商 品を売る立場にある。と同時に、自分も客になる立場にも立っている。家で使用する耐久消費 財を買ったり、日用品を買ったりしているからだ。 す 自分が客のつもりになって採点してみるとわかる。 ①三万円以上のスーツを買われた人で、店のほうから心のこもった手書きのハガキ、また ・ : もらった人三 % もらわなかった人九七 % は、手紙をもらいましたか ? ・ ②一一万円以上の電気製品を買われた人で、電器店から、心のこもった手書きの手紙をもら の もらわなかった人九一一 % : ・もらった人八 % いましたか ? へ 障③三万円以上の家具を買われた人で、心のこもった手書きの手紙をもらいましたか ? : ・もらった人五 % もらわなかった人儿五 % ④一万円以上の靴を買われた人で、心のこもった手書きの手紙をもらいましたか ? ・ : もらった人〇 % もらわなかった人一〇〇 % ⑤生命保険を契約した人で、契約のあと心のこもった手書きの手紙をもらいましたか ?
214 がいると影響は大きい。これに対抗するには不特定の客の中から客を特定化して自分の店の固 定客にするしかない。ときには、こちらから出かけていくのも必要になる。店売りプラス外販 である。外販も広い範囲で行うと弱い力をより弱くするから、特定地域に集中する局地戦にす る。店舗の小売りと相乗効果が発揮できる地域に集中するとそれなりの効果は出る。 小売業者に、労せすして儲かる必殺隠し技はない。利用者の名簿を作って「手紙と電話と訪 問と店売り」の四つの方法を組み合わせて「相乗効果」をねらうしか手はないのである。利用 者の名簿を作り、名前をおばえ、家庭を知り、客に関心を示して接近すれは道は開ける。 過去の〃物余り〃一期と一一期はデラックス化と小型化など、主として物の形で差別化してき しかし物余り一一一期を迎えた現在は、この方法では差別化しにくくなってきた。〇〇様専用、 △△様ピッタリの個人専用の時代に入りつつあるのだ。ということは商品を販売するにあたり 「精神的なサービス」がどの程度加えられているかによって企業差が出る時代になったのであ る。これは一種のねらい撃ち型であるから、物量戦はきかない。接近戦の局地戦型発想しかな い。弱者の戦略を実践するとまだ強者に対抗する余地は残されている。 弱者は、物事の要点に近づくことを心がけれは解決の糸口が見つかるはすである。
皿るのでも手投げ弾を投げるのでもない。大きなもの、あるいはむすかしいものは、近づいてみ ると意外な解決策が出てくるという意味である。大きな目標は遠く離れていると大きさだけが 目について、打つ手がないようにみえる。しかし目標物に近づくと実態がよくわかるようにな る。攻撃は目標物に近づけは、ウデが少し低くともねらい撃ちができる。弱者はすべからく目 標に接近すべきである。 野球のピッチャーの目標はホームペースに向かって投げ、ストライクをねらうことだ。コン トロールが乱れるとフォアポールが出る。草野球では四球の押し出しで逆転というゲームがよ く見られる。コントロールのいい投手はよいピッチャーである。しかしウデが未熟でヘたな投 手でも、べースに三も近づいて投げるとストライクが取れ、四球は出さすにすむだろう。反 いかにコントロールのよいフロでも、セカンドから投げたのではストライクを取るのは 。しカ宀なノ \ 容易ではない。三振を取るのも無理だろう。目標から遠ざかると自分の思いどおりこ ) 、 なり、近づくとやりやすくなるものだ。 経営上目標となる最も重要な要点の一つは、商品を最終的に利用してくださる客だ。客の集 団を単なる市場としてながめると複雑に見えるが、一人一人に近づいてみるとわかる部分が多 くなり、売りやすくなるというわけだ。 一九七一一一年第一次オイルショックの後、生活必需品は一応、ひと通り行き渡り、成熟市場に なった。俗にいう〃物余り〃だ。これはさらに進んでいるが、その過程はざっと三つに区分で
のため、出張旅費の精算や仮払いの精算が遅れる。 細かく考え分析するのがおっくうになり、車で走り回ってさえいれば利益が上がると錯覚す るものだ。この手の輩の楽しみは、日報に「車の走行距離」を書くときだ。今日は一一五〇走 明日は三〇〇に挑戦する第、ー・ーーレ」。こういう人は車の陸送会社に転職したほうが よかろう。車の陸送会社は、走れは走るだけ生産性の上がる仕事であるからだ。しかし企業は 車で走ってさえいれば生産性が上がるというものではない。売り上げに直接結びつくのは客と の「面会」である。客との面接回数の確保が「主たる目的」なのだ。 を 中小企業で営業の敵は、移動時間のロスである。広い地域を受け持つのは、遠隔戦と同しで 販的中率も悪くなり効率が低下する。とにかく遠いところに行くと移動時間によるロスと疲れが 地 ひどくなり、そのわりには儲けが出ない。この敵は直接に攻撃を加えるわけではないから目で 内見えにくいだけに油断大敵である。 時 増改築も局地戦 有 一九七三年の第一次オイルショックでは、物価が急騰した。なかでも一番値上がりしたのは 土地であった。七九年の第一一次オイルショックでまた上がった。七 5 八年で上地代が一〇倍以 第 上になった地域が、あちこちに出てきた。その影響で七四年の住宅着工数は全国的には、三一 % も落ちた。
らない。こういう会社の宿命的弱点は、内部合理化を進めてもメー カーからはそれを上回る値引き要求が出てくるところにある。 大手事務機の仕入課長は一流大学を出ており、頭も切れる。冷暖 社 会 房のきいた室内でゆったりと仕事をしているが、主な仕事は下請け レ を値切ることだ。、、 とうやって新しい口実をつけて値切ろうかと、コ 店 ーヒーを飲みながら考えているのだ。下請けメーカーの社長は工場 で汗を流して一生懸命に長時間働いているから疲れる。疲れすぎる と知恵も回らなくなり、大手メーカーにいつもしてやられているの 者 業 路 である。 虫た③ 作った商品を売るのは大手メーカーの営業員であり、販売店の営 務 事 業員である。この下請けのテープルメーカーの社長は営業しなくて 階 あ段 よい。一応大手メーカーに営業に出かけるが、それは「今月の生産割 を 社 カ り当て」をもらいに行くのである。割り当てと営業は違う。盟り当 用会 メ カ 翦てを営業と錯覚しているところに儲からない真の原因がある。 務の下 事用の儲からなくとも下請け会社の設備や人は増加していく。つまり、 第 2 手義レ 大会カ儲けの蓄積に関係なく、経営規模は大きくなっていくものだ。しか 表 図 ①し、儲からないから自己資本は増加しない。自己資本が増加しない ⑤ テープル利用の 会社やホテル
4 って孫請けの仕事を取るようになると、いよいよ営業ができなくなる。 高度成長時代は「工事七分に営業三分」でよかった。しかし構造的な不況が続いている中で は「営業七分に工事は三分」に変わったのだ。大工さん、中小の工務店にしても経営のポイン ホイントにあたる営業を、自ら努力して開拓せす他人まかせ トは営業活動に移っているのだ。。、 で儲けようとしても儲けられるわけがない 施主から誰がまっ先に金をもらうかによって儲けの構造は決まるのだ。経営の中心をなす営 業を安易に他人に依存している限り、収益のよい会社にはなれない。 下請けテープル会社 下請けで儲からないのは建設業者だけではない。製造業もそうだ。商品供給の中心をなす会 社から最終利用者までの段階が長い商品は、一次下請けでも、うまくいかない。かって、ある 会社と知り合いになった。この会社は会議用のテープルを作っていた。 自社で作ったテープルを利用者に直接売るのではなく、大手事務機メーカーの下請けをして いたのである。直接の下請けならまあまあ利益は出るのではないかと思われるが、そうとは限 らない。なせそうなるのか 自分の会社を一とすると、最終利用者まで五段階と長くなるからだ ( 図表 ) 。卸業者が小売 店を飛はして直販しても四段階になる。これではテープルの下請け業者は客から遠すぎて儲か
73 第 1 条仕事への情熱が願望開発を生む 図表 1 3 。三〇分話したはつかりに、そのあと三日間気分がめいっ な人種とはっきあわないはうがいい たとなげいていた人がいたが、 この手の人種を「精神生悪生伝染病保菌者」という。前を通る ときは回り道して避けて通ることをおすすめしたい。 弱気になっても早く元に戻れるかどうかは、仕掛けづくりを自分のスケジュールに組み込ん でいるかどうかにかかっている。ここが分かれ道だ。朝の早起きやセミナーへの参加、これら は自分で動かないと他人はやってくれない。 地獄の何日セミナーというのがあるが、これは集団の行動訓練、あるいは集団の強制訓練で ある。行動を起こすキッカケをつかみたい人にはそれなりに役立つ。 略発 しかし心構えは一度体験したぐらいでは永久に続くものではない。 熱意と記憶が決定的に違うのはその持続性にある。成功者は熱意を 行彳 保ち続けるための「仕掛けづくりの工夫」が上手な人でもある。「仕 X て これが意外な差となっているものだ ( 図表リ。 掛けつくり」 時す 行動は熱意を形成する 戦意る 熱意は精神作用の一つである。ャル気を持って仕事にあたるのと、 果カ作 ャル気がなく仕事にあたるのとでは差が出る。熱意は行動を促す。 成気に しかし逆もまた成り立つ。初めャル気がなくてもシプシプ行動した 気力、熱意
ハイオリズムが上向き始め、これから調子がよくなるというときに、シミッタレた話を聞か されると、気分がめいって再び気になってしま、つこともある。弱気になるキッカケにはこと 欠かない。仕事上でうまくいかなかったり、クレームが続けて何件も起きると、ペースが乱さ れる。何ごともうまくいくとは限らないとわかっていても、つい思痴が出るものだ。 家庭生活も弱気の大きな発生源だ。家族に病人が出たりして心配事が増えると、弱気に陥り、 消極的になってしまう。不思議なもので、弱気になると本業にも身が入らない。本業の伸びは 止まり、業績が低下していく。そういうときはなぜか仕事以外に興味と関心が向いて、本業に 生無関心になっていくものだ。本業以外にあれこれ手を出したり、他人の商売や別の商品に関心 発が移ったりする経営者は、必すといってよいぐらい本業の調子が悪いものである。 事業への関心が薄らいだから売り上げが伸びなくなったのか、売り上げが伸びないから関心 がはかに向いたのか、おそらく両方が作用するのだろうが、結局、悪循環をたどり、弱気にな 情っていくことには変わりない。中小企業経営者の気は会社の活力を喪失させる。ただでさえ ~ 弱い経営なのに、経営者や幹部が弱気だと、さらに弱くなる。 条熱意と気力を保っために適度な仕掛けづくりをせよ 第 弱気になるのは避けられないにしても、早く元気になれはよい。それには「仕掛けづくり」 がいる。身の回りに仕掛けをつくっておくと、気分が落ち込んでも早く元に戻れる。熱意を保
は生活環境とは別に、誰でも応用して成功できる普遍的なルールが必要だ。ランチェスター法 則はこれに、つってつけであろ、つ。 華僑とユダヤ人 かきょ - っ 華僑とは、外国に出かけて事業を行っている中国人をいう。華僑は見知らぬ外国に行っても 成功する率が高い。それは弱者の戦略が生活の知恵として生まれたからだ。ます強者のいる業 種には手を出さない。中華料理は強者のいない業種だ。軽装備で、徹底した長時間労働でいく。 一日一四時間労働や一五時間労働は当たり前。そして資金をため、徐々に事業を拡大していく。 ユダヤ人もよく似ている。ユダヤ人は戦略ルールを大事に守る。外国に行って成功しても、 その土地の人にねたまれるから不動産は持たない。設備を必要とする工場など、重装備型の経 戦営はしない。もつばら目で見えないやり方を考えていく。金融業とか貴金属などがその好例だ。 華僑とユダヤ人は、弱者の戦略を守り実践するだけではない。これを「宗教化」している点に 大きな特徴がある。事業で成功すると、その人は重要な点を整理し、ルール化し、文章として 残す。子供には、それを毎日読ませて守らせる。これで父の考えが子に伝わる。そして孫に伝 わるのである。ユダヤ人はこれが法則だと信じたら、バカの一つおばえのように守り抜く。だ からこそ、数千年も生き抜いてこれたのである。 日本人にはこれがない。不動産も多く残し、立派な事業も残しているが、ルールは残さない
叩資本回転の悪い業種」には手を出さないことだ。 組織上でも軽装備を重視し、間接部門を少なく、直接部門を多くする。弱者はすべからく、 軽装備の発想を持ち、動きのよさを重視すべきである。 先制攻撃ですぐ実行 大きな軍団は動き出すのに時間がかかる。大軍の攻撃準備が整う前に、先に攻撃を仕掛ける これが先制攻撃だ。 経営での先制攻撃は、先に手がけることだ。強者が出てきたり新規参入者が多くなりすぎた りしたら、さっと手を引く。そのためにも軽装備組織風土にしておかないとやれない。他人の せん 成功を横目で見て、何でもマネしてくるあと追い経営者がいるが、一一番煎し、一一一番煎しではう まみのある経営はできない。よいと思ったらすぐやってみる。悪けれは引っ込めればよい。 このような「実験的な経営」を何度も繰り返していき、よい商品の育成と勝ち方のノウハウ を会得していくのが弱者の戦略。先制攻撃の次の間題は早い納期だ。大会社が三日かかるとこ ろを一一日で、あるいは一日で行えは、客から支持される。早いサービス、早い仕事、これが強 者に勝っための決め手でもある。 隠密行動をとる ゲリラ活動の特色は、隠密性つまり自分の存在を消すことにある。ゲリラはけっして表立っ た活動はしない。弱者もゲリラのように自らの経営方針とやり方を強者に知られないようにし