3 第 12 条他人をあてにせす独自路線を 図表 31 ④ ③ ① ② お客施主大手の建設会社 孫請け会社 孫請け会社 孫請け会社 下請け会社 下請け会社 下請け会社 施主が支払ったお金は大手建設業者の金庫にいったん入る。 しかし、これが下請け会社に支払われるときは、一万円札の端 が一篇はかりハサミで切られている。この金が下請け会社の金 庫から再び出て孫請け業者に渡るときは、また一篇ばかり切ら れている。 孫請け会社が金を手にするときは半分近くになっているもの だ。その中であれこれ経営努力をしても限界がある。経営努力 の幅の広さを「戦略自由度」としし孑言 ( 、 ) 、系青ナ業者の自由度はき わめて小さい。工事売上高のうち半分かそれ以上が孫請け工事 なら、企業内容がよくなる見込みはますない 下請けや孫請けの仕事で年商七億円上げるより、元請けで年 商一一億円上げたはうが強い体力を持っているとみてよかろう。 儲からないとわかっていてなせ孫請けの仕事をするのか。それ は営業が簡単であるからだ。 一兀請けで客から直接仕事を取ってくるには、何度も何度も足 を運ばなくてはならない。営業の苦労はある。そのかわり受注 が決まると努力により利益を出す余地が大きい。これを面倒が
2 利益は出ない孫請け企業 商品利用者から遠ざかると利用者の要望がわからなくなる。それはかりか儲からなくなる。 建設業界は一九七四年から不況に入り、八〇年からはさらに悪くなった。市場は大きいが業者 の数がそれにまして多いため、万年過当競争業種となっている。建設業界の中でも孫請け工事 は利益が少ない。一人当たりの月間純利益は一万円前後か、これを切っている。儲からないう えにときどき不渡り手形もっかまされるから倒産が多い 孫請けの仕事は、自分の都合で客単価を上げたり高級品をすすめたりするわけにいか 大手建設業者が受注した仕事は、職種別の業種に分けて下請け業者に発注し、下請け業者はエ 事の一部をさらに下請けに回す。元請けからみると一一次下請けになる。これを孫請けと呼んで いる。中間で一一つの会社が利益を差し引くから、孫請けの会社は儲けを出すのがむすかしい ( 図 第条 他人をあてにせす独自路線を 弱者は安易に人の力に頼らす 独自路線を開発すべし
13. 会社や身の回りの備品は節約していますか 備品や身の回りの物は徹底して節約している ( 5 ) 備品や身の回りの物はかなり節約している ( 4 ) 備品や身の回りの物はまあ普通程度と思う ( 3 ) 備品や身の回りの物はやや金をかけている ( 2 ) 備品や身の回りの物はかなり金をかけている ( 1 ) 14. あなたの営業活動内容は 局地戦を重視して遠方の活動は避けている ( 5 ) 局地戦型になるように心がけている ( 移重加間 40 % ) ( 4 ) 活動内容はます普通 ( 移重加間 50 % ) ( 3 ) やや遠方にまで足を延はしている ( 移重加芋間 60 % ) ( 2 ) かなり遠方にまで足を延はしている ( 移重加間 70 % ) ( 1 ) 15. 営業内容は接近型か間接型か ( 下請的活動 ) 最終利用者との取引が 8 割以 - ヒはある ( 10 ) 最終利用者との取引は 6 割、 4 割は間接 ( ード請け ) ( 8 ) 最終利用者との取引は 5 割、 5 割は間接 ( 下請け ) ( 卸売り ) ( 6 ) 最終利用者との取引は 4 割、 6 割は間接 ( 下請け ) ( 4 ) 最終利用者との取引は 3 割、 7 割は間接 ( 下請け ) ( 3 ) 取引の全部が孫請けとなっている ( 2 ) 16. 客に心をこめた手書きのハガキは出すか 平均して 1 日 5 通のハガキは出している ( 10 ) 平均して 1 日 3 通のハガキは出している ( 8 ) 平均して 1 日 2 通のハガキは出している ( 6 ) 平均して 1 日 1 通のハガキは出している ( 4 ) 手書きの手紙を出すことはめったにない ( 2 )
4 って孫請けの仕事を取るようになると、いよいよ営業ができなくなる。 高度成長時代は「工事七分に営業三分」でよかった。しかし構造的な不況が続いている中で は「営業七分に工事は三分」に変わったのだ。大工さん、中小の工務店にしても経営のポイン ホイントにあたる営業を、自ら努力して開拓せす他人まかせ トは営業活動に移っているのだ。。、 で儲けようとしても儲けられるわけがない 施主から誰がまっ先に金をもらうかによって儲けの構造は決まるのだ。経営の中心をなす営 業を安易に他人に依存している限り、収益のよい会社にはなれない。 下請けテープル会社 下請けで儲からないのは建設業者だけではない。製造業もそうだ。商品供給の中心をなす会 社から最終利用者までの段階が長い商品は、一次下請けでも、うまくいかない。かって、ある 会社と知り合いになった。この会社は会議用のテープルを作っていた。 自社で作ったテープルを利用者に直接売るのではなく、大手事務機メーカーの下請けをして いたのである。直接の下請けならまあまあ利益は出るのではないかと思われるが、そうとは限 らない。なせそうなるのか 自分の会社を一とすると、最終利用者まで五段階と長くなるからだ ( 図表 ) 。卸業者が小売 店を飛はして直販しても四段階になる。これではテープルの下請け業者は客から遠すぎて儲か
零細な印刷会社は下請けや孫請けが多い。下請けや孫請けではどんなに頑張っても利益は出 ない構造になっている。食べるのが精いつばいだ。そうとわかっていながら、直接注文を取り に行く営業を嫌う人が多いのはどういうわけか。近いところから小口の仕事でもよいから受け ていく。そして第一段階は取引先の数を増加させる。そのあと第一一段階として取引金額が増え そうな会社を重点的に訪問し、受注額をアップしていく一一段構えをとればいい。 文具関係の会社も一人として私の事務所にやってこない。同し町内にいれば営業がしやすい のにだ。この店周対策、つまり局地戦は経営規模が小さい会社はど重視すべきなのである。 売テレビスポット 小売業やサーピス業者のテレビスポットをよく見かける。ある日テレピを見ていたら、寿司 店がスポットを流していた。この寿司店は福岡市内に一一店舗持っていて一年間に五〇〇万円を 珊上回るスポット広告を流したそうだ。福岡市の商圏人口は一四〇万人から一五〇万。距離では 一一〇ー一一一〇一〇も離れた先の人がテレビスポットを見たからといって車を飛はして食べ に来るだろうか 、 0 士ロ なかには物好きもいるかもしれないが、スポット広告代をまかなう金額には、ほど遠し辛 局この寿司店は倒産して、店主は夜逃げしてしまった。テレビスポットを流して福岡市内から 网ゴッソリと客を集めよう、という「欲の深い考え」を持ったために失敗したのだ。
第条他人をあてにせす独自路線を 弱者は安易に人の力に頼らす 独自路線を開発すべし 利益は出ない孫請け企業 下請けテープル会社 他人の力をあてにするな 2 第条有効な時間内の局地戦販売を重視 弱者は移動時間の多い広域戦を避け 局地戦販売を重視すべし 弱者は地域を重視せよ 2 時間は経費なり明 見えざる敵は移動時間 増改築も局地戦明 店周重視の小企業 テレビスポット 第条接近戦を駆使し客を特定化 弱者は問接戦を避けて客を特定化し 最終利用者に接近すべし 円 4 2 田 2
133 第 6 条長時間労働が決め手 図表 18 業種と仕事密度の関係 1 . 咼密度産業・・・・・・資本集約型、ハイテク、ロポット使用 企業、電子機器、超精密機器企業 2 . 中高密度産業・・・・・・自動化の進んだ工場、ハイテクの下請 け企業、電子機器の下請け企業、軽工業 3 . 中密度産業・・・・・・大型卸売企業、大型百貨店、大型スー 中高密度の下請け企業 4 . 中低密度産業・・・・・・労働集約型、建設業、中小小売業、中 小販売業、サーヒ、ス業 ( すべての営業 職を含む ) 5 . 低密度産業・・・・・・労働集約型、農業、林業、漁業 ( 天候 左右大 ) 中密度以下の業種は能率を上げて競争に勝つのはむすか しくなる。 なしに計画どおりに , る。ロポットはトイレにも 行かないし、コーヒーも飲まなけれはタバコを吸 う時間もいらない。強者の企業は資金力を背景に ロポットの導入に力を入れた。その結果、日本は 世界一のロポット国家になったのである。ロポッ トを多く使っている企業は、まさに能率を上げて 競争できる。 中高密度産業 : : : 自動化が進んでいる工場 高性能のロポットを導入して自動化が進んでい る工場は中高密度型に入る。軽工業とか、一般機 械の製造や組み立てを主とする業種だ。 中密度産業・ : ・ : 大型卸売業、大型百貨店、大 型スー 大手の卸売業者は商品流通のシステムの中に入 っており、能率をある程度上げて成果を出すこと はできよう。また独自のカで集客力を持っている ーも、産業全体でみると中 大手の百貨店やスー
らない。こういう会社の宿命的弱点は、内部合理化を進めてもメー カーからはそれを上回る値引き要求が出てくるところにある。 大手事務機の仕入課長は一流大学を出ており、頭も切れる。冷暖 社 会 房のきいた室内でゆったりと仕事をしているが、主な仕事は下請け レ を値切ることだ。、、 とうやって新しい口実をつけて値切ろうかと、コ 店 ーヒーを飲みながら考えているのだ。下請けメーカーの社長は工場 で汗を流して一生懸命に長時間働いているから疲れる。疲れすぎる と知恵も回らなくなり、大手メーカーにいつもしてやられているの 者 業 路 である。 虫た③ 作った商品を売るのは大手メーカーの営業員であり、販売店の営 務 事 業員である。この下請けのテープルメーカーの社長は営業しなくて 階 あ段 よい。一応大手メーカーに営業に出かけるが、それは「今月の生産割 を 社 カ り当て」をもらいに行くのである。割り当てと営業は違う。盟り当 用会 メ カ 翦てを営業と錯覚しているところに儲からない真の原因がある。 務の下 事用の儲からなくとも下請け会社の設備や人は増加していく。つまり、 第 2 手義レ 大会カ儲けの蓄積に関係なく、経営規模は大きくなっていくものだ。しか 表 図 ①し、儲からないから自己資本は増加しない。自己資本が増加しない ⑤ テープル利用の 会社やホテル
6 のに経営規模だけ大きくなると、体質が弱くなっていくのは当然である。したがってこういう 会社は経営規模が大きくなることがむしろ危ないのである。 経営規模が大きくなると、さらに悪くなる要素がもう一つある。それは営業力だ。営業力は 経営規模に応して必要になるのに、親会社からの割り当て仕事だから生産量は増えても営業は 増やさなくてすむ。つまり、少数の会社に依存した経営では、営業力はむしろ弱体化していく のである。企業にとって、営業力の弱体化は命取りとなる大きな要因だ。 商品の供給が需要を上回ると、作り三分に売り七分に変えていかねばならない。 経営戦略上の要点の七割は営業間題にある。営業をすべて他人まかせにしておくと、一時期 は楽でもそのツケは必す回ってくる。〇〇会社という大手の下請けとなると、その会社と運命 共同体のようにみえる。名刺や看板に〇〇大手会社強力工場と書くと、素人は「よい会社です ねー」といってくれるだろう。しかしこれは危ない。運命共同体だなどというのは、こっちが 勝手に信しているだけで、向こうはそう思ってないものだ。 需要が減少し始めると、いずれ整理される運命にある。今までもらっていた割り当ての量が 減ると人手が余る。人員を整理するのは容易ではない。でもまた仕事が増えるのではないかと 勝手に考え、整理の決断が遅れ、大きな赤字が吹き出してくる。こうなって親会社に援助を申 し出るが、相手にしてくれない。そこで、ダマされたとか、裁判するぞと騒ぎまわるがほどな く倒産する。
私は一六年間、興信所でこういう例をいくつも見てきた。このような倒産は、これからもま だまだ起こるだろう。一番大事な経営の要点を他人まかせにしていくら大きくなろうとも、内 容が伴わなかったならば、いっかは必す行き詰まるのである。 大手の下請けをやっているあいだに態勢を整え、独自路線の開発を行わない限り将来はない。 他人の力をあてにするな 他人の力をあてにしていてうまくいかないのが、友人知人との共同事業だ。独立して会社を を つくると誰でも不安になる。そこで、つい他人と組みたくなる。友人知人といっしょに事業を 線 路 すると安心できるからだ。自分のはうは「相手の努力と金」をアテにしている。万一のときは すあいつがなんとかするだろう、と。相手は相手で同じように考えていて、厳しさが不足する。 サラリ ーマン時代に持っている人脈は、いざとなると 独立して五年未満は経営基盤は弱い。 あ四分の一か五分の一ぐらいに減るものだ。何度も足を連んで取引に成功した得意先は自分の得 人意先のように思っているが、これはあくまでも前の会社の経費と人件費を投入して行われてい たのである。ところが、これをつい「自分の実力」と錯覚してしまう。 以前あれだけ熱心に行ったのだから注文をくれるだろうと安易に考え、いざ独立してみると ( ( ( し力ないのである。新規 そうは問屋か卸さない。客のはうも、そう簡単に切り替えるわすこま ) 、 独立から一一一年はすべて自力で新しい客とルートを開拓して初めて、将来に光がさすのである。