新高年者が独立するときは、小さな小さな市場のスキ間を選ぶことが成功の秘訣である。今まで 勤めていた会社は大会社で、しかも大きな市場に関係する仕事をしていたからといって、そん な仕事に手を染めないことだ。 商社を繰り上げ定年で辞めた脱サラ経営者がうまくいかないのは、大きな市場をねらうから だ。サラリーマン時代は強者的な会社に勤めていても、一人になれば弱者中の弱者の番外弱者 である。この切り替えができてないからうまくいかないのだ。身のはど知らすの倒産となりか ねない。 弱者は小さな市場から目をつけ、その中で手堅く勝ちを収める方法がよい 先発が強い業界には入るな あとからその業界に割り込んでいく業者 古くから営業をやっている会社を「先発」といい、 を「後発」と呼ぶ。先発に強い会社が数社いる業界には、後者は新規参入しないことだ。勝ち 目はないし、ひどい目にあわされるに決まっている。 あとから出ていく会社が同し商品を同しやり方で販売してもうまくいくものではない。どう してもその業界で事業をやりたけれは、売り方をガラッと変えるべきだ。売り方で徹底して差 別化しなければ勝ち目はない。先発が店売り中心なら、後発は訪間販売型を選べはチャンスは 出てくる。
これを忘れては先々どうなるか怪しいものだ。 メガネの訪間販売の先発業者は広島の業者である。利用者やメガネに不自由している人への 接近戦で成功した好例である。伸びているとみるとすぐに参入業者が増加して乱戦になる。先々 競争が出るだろうが、メガネの訪間販売が企業として成り立っということを証明したこの会社 の行動力は評価されよう。 小売業の接近戦 商品流通における最末端の位置にいるのが小売業だ。最終利用者に接近している。だが競争 特か激化し、差別化するにはもう一歩の接近が必要になっている。小売業でも売り場面積の広い 。、ーは強者の戦略で営業している。新聞広告やチラシを広い範囲にバラまいて客 百貨店やスー 使を集める。売り場面積の広さと品ぞろえの量が「集客力」の背景にある。集客力を持っている を店舗は、その地域の商圏の中心に位置しているので、「待ちの商売」でも経営は成り立つ。物余 近り時代になり、各店舗ごとの伸び率は低下しているとはいえ、小型商店からみると強者である のは間違いない ところが売り場面積が狭くて品ぞろえも少なく、「集客能力」を持っていないのが中、小、零 第 細な小売業である。集客能力のない弱者が、強者と同じような考え方で待ちの商売をしていて は成り立たなくなってきた。自社の商圏内に強い競争相手がなけれはともかく、強い競争相手
・ワンになるまでの条件に見逃せない要因がある。一つは自動車の普及率が低かったこと。 一一つは「四〇 % 以上の強者」がいなかったことだ。トップの市場占有率が四〇 % 以上で「相対 的な独占」が確立している業界では条件が異なる。内部の経営努力のはかに「強い競争相手と の戦い」という大きな外部要因が加わるからだ。本田技研の経営努力は評価されるが、トヨタ の壁は厚い。 ・ワンの会社が、市場占有率を四〇 % 以上占めている業界の参入は容易 ではない。 一位の市場占有率が二六 % を超えると、新規参入はむすかしくなってくる。ホンダはアメリ 力に小型車の工場を造って順調に伸びている。日本国内でトヨタと正面から競争するより、小 型車で、アメリカの業者と競争したはうが有利だからだ。車全体ではは強者だが、小型車 では弱いからやれたのだ。新規参入、あるいは新事業が成功するかどうかは、自社内の経営努 力のほかに「強い競争相手」があるかないかが大きく作用する。弱者は、量も多く質も高く、 強くてどうしようもないという業者がいる業界からは撤退したほうが身のためだ。 小さな市場とスキ間をねらう 一般的に考えると、市場は大きいほうがよいように田 5 える。ところが市場が大きいとそれだ け強い会社も多い。大手が多角化市場として新規参入してくる危険も高い。市場が大きいと競 争相手も増えるから、弱者の新規参入は考え直したほうがよい。弱者は、大手からみて魅力の
③相対的独占者Ⅱ四一了五五 % 。かつ一一位との比が一対〇・六以上離れている場合。 以上の条件が満たされていれば強者中の強者となる。 ④強者 ( 準相対独占者 ) Ⅱ三一ー四一 % 。自社が一位でかつ一一位との比が一対〇・六以上 離れている場合。 ⑤準強者Ⅱ一一 , ハー一一一〇 % 。自社が一位でかつ一一位との間が一対〇 : ハ以上離れている場合。 ⑥中位者Ⅱ一九 5 一一五 % 。自社が一位でかつ一一位との差が一対〇・六以上離れている場合。 この地位は、売上高は一位であっても、市場支配力はまだ完成されていないから、弱者の戦 略を守る必要がある。以上の条件を満たしていれは、業界のリーダーシップが取れ、競争力を 発揮できる。これ以下なら、一位といえども市場支配力は弱者の地位にある。 ⑦弱者Ⅱ二 5 一八 % 。 分 区⑧弱者Ⅱ七ー一〇 % 。 赭⑨弱者 o Ⅱ三ー ⑩番外弱者Ⅱ三 % 以下。 者 以上は、ランチェスター法則をもとに、故田岡信夫氏が発表された区分である。絶対独占者 章 といえども、市場を一〇〇 % 取ることではない。七四 % 取れは、実質的に一〇〇 % と同しにな 第 る。同業者が何社も入り乱れて競い合っている状態を「複数間競争」というが、その競争で「実 5 質上の独占者」となれるのが、四一一 % の市場占有率を持ったときである。ただし足下の競争相
新高い占有率を持っている例は少ない。そのため占有率の恩恵を受けた経験がないから、ピンと こないのである。 四つは、市場占有率を引き上げるのに長い年月を要することだ。市場が大きけれは大きいほ ど長い年月を必要とするため、長期計画による市場占有率の引き上げをあきらめてしまう。 年商がどれくらいあるかは重要な経営資料である。それは、市場占有率と並列されたときに 初めて真の意味を持つものである。 戦略的でない会社は、以上の理由から市場占有率を無視しているものだ。会議の席や社員の 会話に、市場占有率の話はます出てこない。これがないと経営の方針や目標の置き方がピント はすれになる。戦略的な会社は営業マンでも市場占有率を認識しているし、会議の席で市場占 有率の話は必す出てくる。占有率は同業者との相対的な力の比だ。相対的な戦力比こそ作戦に 欠かせない情報だ。 強者・弱者のランクづけ 強者・弱者の区分は市場占有率で区分するが、それでは、どれだけ市場を占有したときに強 者としての地位を確保できるか。または、どういうときに弱者となるのか。 ①絶対独占者Ⅱ七四 % 以上。 ②準絶対独占者Ⅱ五 , ハー七三 % 。かつ一一位との比が一対〇・六以上離れている場合。
の電話がどんどん。バス停で立っていると、恨みに思う同業者が通りがかりに素知らぬ振りし て足で蹴っていったこともあるそ、つだ。 こういう同業者と知的に話しても〃角〃が立つだけ。また、同業者の経営者とのつきあいも 〃情みに流されるからやめたほうがよい。サイフを持っている「お客様」のみをたえす見ておけ は、方向を誤ることはない。このようにシキタリが強い業界で、差別化に成功すると急成長で きる。 古い産業でもやり方一つで伸びるのである。だが足のむこうずねあたりに黒いアサが一一つ三 つできるくらいの覚悟はいる。弱者は売り方でも業種の選定でも、あるいは活動地域でも、強 す い相手の少ない競争場面を考えたほうがよい。成功する率が高くなる。 今までの要点を要約してみよう。 を : ・今までにない商品、今までにない業種がこれにあたる。商品の ①戦わすして勝っ : と販売活動には苦労する。しかし競争相手がいないために営業に集中できる。あたる 策 と努力はむくわれ、儲けは大きい 合 : ・すでにその商品を売っている業者はいる。しかし弱い会社は ②勝ちやすきに勝っ : 、ヒ ~ 父勺早く強者になれる。 かりで強い相手かいない。ここに戦力を隹木中することにより上自 : ・特別強い相手ではないが自社と戦力が同等にある。戦力を集 ③互角の相手に勝っ : 中させても大幅に有利にはならない。戦闘時間量の増大で一時的に戦力を増やす。それで
ある。客が今何を考え、何を望んでいるかは、遠く離れているとわからないが、近づくと客の 動きが見えてくるものだ。 化粧品業界の市場は限られている。人口の伸び率が鈍化しているためだ。ところが、そんな 中で伸びている化粧品メーカーがある。それは訪問販売で接近戦型をとっているからだ。訪問 販売の業者が増加し、訪販業者と訪販業者との競合が強まった。これは接近戦の強みを知った からにほかならない 弱者は、対象物との距離を縮めるような経営形態を考えることが必要だ。 軽装備に徹する 弱者は動きのよさを失わないようにしなけれはならない。動きやすくする、ということは「軽 の装備」を心がけることである。財務上では、資金の固定化は避けるべきである。つまり、固定 資産が多くなるような事業には手を出すな、ということだ。 自己資本比率の低い会社が自社ビルを建設すると、数年で経営はおかしくなる。 の 自社ビル建設一一一年殺しといって、三年目あたりに危なくなる。金融がゆるみ金利が低下する 者 と、自己資本比率が低い中小企業でもビルの建設ができる。だが、金利と元金の支払いで、三 年目あたりには手一兀資金は底をついて、おかしくなってくるのが普通だろう。外見はすばらし 第 いビルのはとんどが借入金である。これを〃借金コンクリートみと呼ぶ。ホテル、ゴルフ場、 レジャーセンターなども、投下資本が大きいわりに売り上げは少ない。弱者は、こういう「総
214 がいると影響は大きい。これに対抗するには不特定の客の中から客を特定化して自分の店の固 定客にするしかない。ときには、こちらから出かけていくのも必要になる。店売りプラス外販 である。外販も広い範囲で行うと弱い力をより弱くするから、特定地域に集中する局地戦にす る。店舗の小売りと相乗効果が発揮できる地域に集中するとそれなりの効果は出る。 小売業者に、労せすして儲かる必殺隠し技はない。利用者の名簿を作って「手紙と電話と訪 問と店売り」の四つの方法を組み合わせて「相乗効果」をねらうしか手はないのである。利用 者の名簿を作り、名前をおばえ、家庭を知り、客に関心を示して接近すれは道は開ける。 過去の〃物余り〃一期と一一期はデラックス化と小型化など、主として物の形で差別化してき しかし物余り一一一期を迎えた現在は、この方法では差別化しにくくなってきた。〇〇様専用、 △△様ピッタリの個人専用の時代に入りつつあるのだ。ということは商品を販売するにあたり 「精神的なサービス」がどの程度加えられているかによって企業差が出る時代になったのであ る。これは一種のねらい撃ち型であるから、物量戦はきかない。接近戦の局地戦型発想しかな い。弱者の戦略を実践するとまだ強者に対抗する余地は残されている。 弱者は、物事の要点に近づくことを心がけれは解決の糸口が見つかるはすである。
衣科品業界で下着を作っている会社の業績は悪い。特に男性用の下着メーカーは儲かってい ない。メーカー↓卸売業者↓小売店↓消費者 : : : こういう流れで物余り現象がひどくなると、メ ーカーは買いたたかれてしまう。赤字を有価証券売却や不動産売却益でうめているのが実情だ。 売り食いである。 男の下着は流行をつくりにくいから、戦略上の「自由度」が著しく少ない。四五歳以上の男、 ーオジンとも つまりオジンになれば整理ダンスの中には下着はいつばい、五五歳以上のスー なると、下着の山だ。 しかし、神戸に本社があるシャルレは、下着の「訪間販売」で急成長を遂げた。伸びるとな すると同じゃり方で多くの企業が参入してくるから、訪販業者同士の戦いになったが、シャルレ この経営は営業の差別化の成功例としてよく引き合いに出されている。 夫 つまり、先発が強かったり市場が飽和したりしていても、売り方を変えれは成功のチャンス はあるわけだ。先発が強ければ売り方を変えるのが一方法だが、場所を変える方法もある。強 策 い先発の業者が数社いる地域もあれば、先発業者が弱い地域もある。後発業者は地域で差別化 する方法をとればよい。 そうコトは生やさしくないが、先発が弱者で後発がより戦略的であると成功のチャンスはあ る。とにかく、業界そのものが古く、強い同業者がたくさんいる業種への新規参入は見合わせ るのが賢明だ。たとえやるにしても、決定的な「差別化」が見つかるまでは、急がないほうが
2 利益は出ない孫請け企業 商品利用者から遠ざかると利用者の要望がわからなくなる。それはかりか儲からなくなる。 建設業界は一九七四年から不況に入り、八〇年からはさらに悪くなった。市場は大きいが業者 の数がそれにまして多いため、万年過当競争業種となっている。建設業界の中でも孫請け工事 は利益が少ない。一人当たりの月間純利益は一万円前後か、これを切っている。儲からないう えにときどき不渡り手形もっかまされるから倒産が多い 孫請けの仕事は、自分の都合で客単価を上げたり高級品をすすめたりするわけにいか 大手建設業者が受注した仕事は、職種別の業種に分けて下請け業者に発注し、下請け業者はエ 事の一部をさらに下請けに回す。元請けからみると一一次下請けになる。これを孫請けと呼んで いる。中間で一一つの会社が利益を差し引くから、孫請けの会社は儲けを出すのがむすかしい ( 図 第条 他人をあてにせす独自路線を 弱者は安易に人の力に頼らす 独自路線を開発すべし