戦略とは「合理的な勝ち方のルール」 よい会社にするためには、何を強くするか、その目標を明確に立てなけれはならない。これ ・ワンをつくるための第一条件である。スタートは目標だ。そして、この目標を達 がナンバ はんらん 成する方法が「戦略」なのである。戦略という一一一口葉は氾濫している。軍事や経営に限らす受験や 趣味においても。それでは戦略とは、と聞くと、満足のいく説明は得られない 戦略とは「合理的な勝ち方のルール」のことである。経営目標を合理的に早く達成する方法 が経営戦略なのである。では、合理的なルールとはどういうものか。ルールとは「重要な要点 で構成されたもの」をいう。ルールの構成、これを「概念」とも呼ぶ。流行語でいえは、「コン セフト」である。 しかし経営者やビジネスマンの中には、コンセプトの意味を明らかに間違って使っている例 がみられる。「概念」とは、『広辞苑』 ( 第四版 ) にはこう書かれている。 「事物の本質をとらえる思考の形式。事物の本質的な特徴とそれらの連関が概念の内容 ( 内包 ) 。 : 概念は言語に表現され、その意味として存在する。概念の成立については、 : : : 経験される 多くの事物に共通の内容をとりだし ( 抽象 ) 、個々の事物にのみ属する偶然的な性質をすてる ( 捨 象 ) ・ これに対立するものが経験から独立した概念 ( 先天的概念 ) を認める立場」 言い換えると企業戦略の概念とは、多くの企業間競争を分析し、この中から成功と失敗の要
因をより分け、これを一一一口語でルール化したものとなる。ルール化が成功の第一条件なのだ。ル ール化されていない抽象的な一言語は、耳に心地よいが実行に結びつかない。 ルール化すると応用しやすくなり、社内組織に定着しやすい。つまり実践的になる。戦略的 な経営者は、多くの経営事例を分析して、本質的なものを法則化している特徴がある。戦略の ない経営者は、たまたま起きた一つの事例だけで法則を作ってしまう。また、それに固守して 他人の意見をまったく聞かない。とにかくひとりよがりになる。世間では、これを「バカの一 つおばえ」と呼んでいる。もっとひどいのは、こういうダメな人から話を聞いて、事実を確か 既めもしないで短絡的に信し込んでいる経営者だ。先入観が強く、やる前から結論を出してしま 戦う。ガンコでひとりよがりの経営者には戦略も概念も役に立たない。「思考停止型人間」だ。 日本ではこの先天的概念派が、けっこう幅をきかしている。戦国武将の〃〇〇戦略みという 法 一やつだ。戦国乱世という時代背景と武将の超個生的な人物像は、読みものとしてはたしかに面 ス白い。しかし経営の「置き換え」という点では一般性に欠ける。応用がきくものであれは、世 チ の中、信長、秀吉、家康だらけになっているはすだ。たまに光秀型もいるかもしれないが。 ン 戦国武将の個生は強烈に描かれる。そのように描かれたエネルギッシュなパーソナリティー 章 から派生するもろもろを、誰でも応用できると考えるところに誤りがある。 第 、わかり・にノ -7 い 90 のは、、わかり・ このように、戦略コンセプトはわかったようでわかりにく : やすくしなければならない。そうでなければ応用と実行ができないからだ。
243 偉業であった。数多くの独創的な研究により経営戦略として確立されたのは日本経済にとって も大きな貢献であった。 日本的経営といえば、「労使協調」とか「・小集団活動」が脚光を浴びてきたが、しか し、よく考えてみると、それは組織体制や労働意欲の間題であったり、生産管理上の問題であ ったりで、真に経営にとって重要な営業活動と競合対策とは別の問題である。 いま、 " 物余り〃の時代となり、いかに市場をつかむか、の経営のやり方が問われている。振 り返れは、日本的経営の大きな柱として「ランチェスター法則」の貢献もこれに加えなくては ならない。同時に、日本はランチェスター法則に第一一次大戦においては敗れたが、敗戦後、そ の苦杯を産業面・経営面において逆に生かして、日本的経営の中に結実させていったともいえ るであろう。 最後になったが、本書は日本の経営戦略の分野で先導的役割を果たされた田岡先生が開発さ れた原理に基づいている。本書を田岡信夫先生に心からささげたい。
・弱者の戦路・ ・ワンづくりの行動目標 ナン八 条件に恵まれない会社が、条件に恵まれた強者の会社と同じゃり方で経営を進めるのは賢明 でない。弱者は強者と違ったやり方で「差別化」しなくてはならない。戦力には限りがある。 戦いの範囲を細分化して検討し、「特定の場面」に集中的に力を投入すると勝機がっかめる。そ の範囲に限れば物量戦になるからだ。 そのためには戦略的にみて重要な分野で優位に立てる競争場面をつくる必要がある。この場 面設定が「戦略課題」であり、「戦略目標」だ。そしてこの目標を達成するための具体的行動計 の画を立てる。 これが「戦術課題」であり「戦術目標」だ。 戦略上の目標にそって毎日の繰り返し作未の段階まで計画が立てられたときに初めて目標が 達成できるのである。 ・ワンを一つつくることだ。そしてこれを定着させ , 人には、小さ / 、ともよいから、ナンハ る。そのあと次のナンバ ・ワンづくりに着手していく。このように一つ一つの積み上げ方式 ・ワンを目ざす。これが弱者が勝ち進むため ・ワンをつくっていき、総合ナンバ ・ワンっくりに着手していけ の段階的な成功方法である。では、どのような考え方でナンバ
きる。 物余り第一期 : : : 七四 5 八〇年Ⅱこの間は大型化、デラックス化が主流となっていた。 物余り第ニ期 : : : 八〇ー八五年Ⅱ軽薄短小に代表されるように電子化および小型化が主流と なる。 物余り第三期 : : : 八五年以降Ⅱ商品の高級化をはじめ、軽薄短小の傾向は続いている。これに 加えて商品を利用する人の人生や生活信条を重視した精神的サービスが加わらないと売れ ない時代となった。つまり今は精神的サービスの時代だ。そしてこれは宗教的サービスへ と変化していくだろう。 個人個人の好みには当然バラッキがある。好みをつかむためには商品を利用する人、サイフ を持った人に近づく必要がある。客への接近戦だ。戦争における戦いは、直接相手を攻撃する 使ことだ。相手をいかにして倒すかだ。経営も競争であるが、戦争と違うところはライバル会社 を直接たたくのではなく、「利用者のサイフや金庫」を通して「間接的」に攻撃していくことに 近ある。サイフ所有者の支持が得られなかったら、ライバル会社との競争は負けなのである。競 争目標はライバル会社であっても行動目標は客である。 商品利用者がどのようなものを欲しているかは、遠いところにいたのではわからない。商品 利用者との面会、あるいは会話など接触が少なくなったら客の動きが読めなくなってしまう。 取引先を回らなくなって事務所にいる時間が長くなると、利用者とのズレが大きくなっていく。
新高い占有率を持っている例は少ない。そのため占有率の恩恵を受けた経験がないから、ピンと こないのである。 四つは、市場占有率を引き上げるのに長い年月を要することだ。市場が大きけれは大きいほ ど長い年月を必要とするため、長期計画による市場占有率の引き上げをあきらめてしまう。 年商がどれくらいあるかは重要な経営資料である。それは、市場占有率と並列されたときに 初めて真の意味を持つものである。 戦略的でない会社は、以上の理由から市場占有率を無視しているものだ。会議の席や社員の 会話に、市場占有率の話はます出てこない。これがないと経営の方針や目標の置き方がピント はすれになる。戦略的な会社は営業マンでも市場占有率を認識しているし、会議の席で市場占 有率の話は必す出てくる。占有率は同業者との相対的な力の比だ。相対的な戦力比こそ作戦に 欠かせない情報だ。 強者・弱者のランクづけ 強者・弱者の区分は市場占有率で区分するが、それでは、どれだけ市場を占有したときに強 者としての地位を確保できるか。または、どういうときに弱者となるのか。 ①絶対独占者Ⅱ七四 % 以上。 ②準絶対独占者Ⅱ五 , ハー七三 % 。かつ一一位との比が一対〇・六以上離れている場合。
1 . 2 . 3 . 4 . 5 . 6 . 7 . 85 点以上 採点結果の内容 免許皆伝型の戦略経営者およびビジネスマン 弱者の戦略を実践し十分に体得、自分の業界 だけにとどまらす、他業種にも十分応用がで きる実力経営者。業績はトップクラス。 80 点 ~ 84 点完全な戦略的経営者・ビジネスマン 弱者の戦略を実践し成果も上がり、経営内容 は業界で上位にある。仕入先や銀行の信用も 厚く、今からさらに伸びる可能性もある。 75 点 ~ 79 点かなり戦略的経営者・ビジネスマン 弱者の戦略を理解し実践している。しかし自 社の業界に限られ、他の業界に応用するまで には至っていない。他業種の研究を継続する とさらに伸びる。 70 点 ~ 74 点やや戦略的経営者・ビジネスマン 戦略発想は一応合格点。さらによい点を伸は し、研究を続けていくとよい。 65 点 ~ 69 点平均的経営者・ビジネスマン 平均的な業績は出しているが、今一つガンバ リ不足の感あり。弱者の戦略に徹し、これを 2 ~ 3 年続けて自らをきたえること。 60 点 ~ 64 点やや苦戦の経営者・ビジネスマン 弱者の戦略を研究し、毎日の仕事に応用し実 践していかないと経営はいすれジリ貧になる 恐れあり。月間 1 人当たり純利益 1 万円は実 質ゼロメートルにあり、企業発展への先行投 資はできなくなる。早めに決意を行う。日中の 会議は中止。 55 点 ~ 59 点かなり苦戦の経営者・ビジネスマン 中小企業で廃業が多くなるのが月間 1 人純利 益が 5000 円から。実質上赤字が出ている内容 にある。経営は非常事態宣言を行い、本業に徹 底集中していかないと危なくなる恐れもある。 お客様を全社員で回り直し早急に対策を立て る。
弱気になりやすい経済環境 世の中は不景気な話が多いため、になりやすい。新聞の記事やテレピのニュースは、そ の情報のほとんどが悲観的な情報で占められている。こういう悲観的な情報洪水の中で生活し ていると、その情報が自分に直接関係なくても、弱気になるキッカケになり、憂うつになって しま、つ。 体の不調も一定の周期でやってくる。体が軽く気分ハッラツのときもあれば、気分がなえる ときもある。気分がよいと、体も軽く行動的になる。しかしつい調子に乗って動きすぎると、 細胞の中に蓄えられている予備のエネルギーを使ってしまうため、赤信号がともって、行動が 抑えられる。しかしエネルギーをあまり使わないと、細胞内にエネルギーの在庫が増え、再び 活発になる。人はそれぞれこのような周期性を持っているものだ。これは、バイオリズムとい われているが、人には三カ月サイクルのリズムがある。 第 1 条 仕事への情熱が願望開発を生む 弱者は自分の仕事に情熱を持ち 熱意に満ちて行動すべし
あとに熱意が出ることもある。つまり「行動は熱意を生み出す」のだ。精神面の充実はより行 動的となり、それなりに成果を生み出す。それなのにどうしても熱意が湧いてこない。むしろ このはうが多い。精神的な充実を待っていてはいつまでも実績が出なくなる。 半ネ ( 行動によって作用を受ける。気が進まなくとも朝早く会社に行き、大きな声であいさ つをかわし、さも熱意があるかのようにふるまっていると、気分があとからついていき、熱意 が出てくるものである。このように精神面を活発にしたあとで行動に移る場合と、行動してい るうちに精神面が活発になる場合とがある。 これは双方に作用し合っているわけだが、気分がすぐれなくとも、朝起きる時間と仕事にか かる時間を一定にして、これを守り通していると、熱意が早く回復するのは後者の作用だ。そ れでも今一つ気分が出ない。そういうときはどうすればよいか。 イ重的な訓練を受けてみるのも悪くない。これも「仕掛け」である。行動的な訓練を安く請 け負ってくれるのが自衛隊体験入隊。行動中心の研修で頼むとやってくれる。朝六時から行動 開始。一泊一一日、一一泊三日とこちらの要望に合わせてくれたうえ、お国の服を借り、お国のべ ッドを使用させてくれる。一人当たりの研修費はとにかく安い 従業員数が少なく、参加人数がまとまらなかったらほかの会社と合同で受ける手もある。手 続きは多少面倒だが安上がりなのが中小企業向けだ。行動的な環境に身を置くと、そのムード になる。自衛隊はそんな条件に合っている。熱意を持って仕事にあたるのに越したことはない
経営システムには形がなく色もなく、自分の会社の経営システムがうまくつくられているか そうでないか、まったくわからない。経営システムがどのようになっているか、間接的ではあ るが唯一確かめることのできる方法、それが利益をみることである。 利益性のよしあしをみる方法は何通りもあるが、その中でも一番わかりやすいのが従業員一 人当たりの純利益である ( ただしパートやアルバイトは〇・五人として計算する ) 。 中小企業で、ここ数年を平均した一人当たりの年間純利益は四〇万円になっている。従業員 が二〇人いる場合、八〇〇万円の純利益が出ていれば平均的で、三〇人いる場合は一一一〇〇万 円の純利益が出ていれは平均的といえる。 一日当たりでは一五〇〇円になり、一時間 一カ月当たりにすると約一二万三三〇〇円になり、 当たりでは一一〇〇円になる。 一日当たりの純利益を時間に換算すると純利益時間が出るが、これはおよそ一一〇分になる。 タバコを吸う人は一本当たり六分ほどかけているので、仕事中に手を休めてうまそうに四本吸 われたら利益は煙と消えてしまう。 ま、んが」