アイヴァーナ・ガーデンズ 2 イ が付いた住戸を 3 住戸以上横に繋げた長屋形式のものをそう呼びます。当時、 ラスド・ハウス (Terraced h 。 use ) 形式がほとんどでした。各住戸に庭 (Garden) のジョージ王朝時代に建設されたジョージアン・スタイルの集合住宅は、テ この形式は、ヴィクトリア朝時代になって初めて登場したものです。その前 人口急増 になっています。 そこから共用玄関を通って 1 階の共用リフト乗降ロビーにアクセスできるよう して各ユニットに一カ所ずっ真っ白なスタッコ塗りの共用ポーチが設けられ、 ナ・コート、アイヴァーナ・ガーデンズともに 4 ユニット構成です。通りに面 構成一式を最小ユニットとして、通常、数ユニットを連接させます。アイヴァー 施設を設け、それらの共用動線を介し各住戸にアクセスする形式です。この 置し、 2 住戸間の中央にリフト、その乗降ロビー、階段、シャフトなどの共用 ル (Victorian style) の 2 戸 1 型フラツツです。この形式は、各階に 2 住戸を配 トと同じく 19 世紀後半のヴィクトリア朝時代に流行ったヴィクトリアン・スタイ て 4 ~ 5 分のところにあります。アイヴァーナ・ガーデンズもアイヴァーナ・コー イ・ストリートの裏通りに面し、ハイ・ストリート・ケンジントン駅から歩い イヴァーナ・ガーデンズ (1vernaGardens) を紹介します。ケンジントン・ハ 本章では、前章で紹介したアイヴァーナ・コート (lverna court) の隣のア 真っ白なスタッコ塗りのポーチ よリ高密度・高層化が可能なフラツツ形式の集合住宅が求められたのです。 18 世紀、ロンドンの人口が 100 万人から 800 万人に急増しました。
左のアイヴァーナ・ガーデンズと右のアイヴァーナ・コート、 2008 年 12 月。 zp. 98 ② , ① 25 アイヴァーナ・ガーデンズ
0 アイヴァーナ・コート 0 アイヴァーナ・ガーデンズ 0 アビンドン・ヴィラズ 0 アビンドン・コート 0 スカーズディル・ヴィラズ 0 マルローズ・ロードのテラスド・ハウス 0 メルプリー・ロードのセミ・デイタッチド・ハウス 0 バッキンガム・プレイス 0 プリンス・ガーデンズ 0 マウント・ストリートのテラスド・ハウス 0 カドガン・プレイス 0 カドガン・ホテル 0 ペラム・クレセント 0 プロンプトン・スクエア 0 シャーポーン・コート 0 レクサム・ガーデンズ 0 キヤノン・プレイス 0 マルケス・ロード・エステート 0 リリントン・ガーデンズ・エステート 0 モーベス・テラス 0 キャッスル・レーンのタウンハウス 旧 BN978-4-907045-16-6 C3052 Y2700E 定価 : 本体 2 , 700 円 + 税 建築メディア研究所 II ⅧⅢⅡⅡ IIII 川 II II 9 7 8 4 9 0 7 0 4 5 1 6 6 1 9 2 5 0 5 2 0 2 7 0 0 1 0 ハムステッドのセミ・デイタッチド・ハウス 0 ウ工スト・ハムステッドのテラスド・ハウス 0 サウス・ハムステッドのデイタッチド・ハウス 0 ハムステッド・ガーデン・サバープのデイタッチド・ハウス Cadogan Place Cadogan H0tel PeIham Crescent B 「 ompton Square Sherborne Court Lexham Gardens Semi-detached House, Melbury Road Terraced Houses. Marloes Road Scarsdale Villas Abingdon ( ou Abingdon ViIlas lverna Gardens lverna ( ou Royal BO 「 ough of Kensington and CheIsea
アイヴァーナ・ガーデンズ、端部ユニットの外観。 2008 年に月。 イ二・を「 - 工 アイヴァーナ・ガーデンズ
目次 103 102 100 98 94 86 80 74 62 56 50 44 38 34 30 24 18 12 10 ケンジントン周辺地図 マルケス・ロードの猫 アイヴァーナ・コート アイヴァーナ・ガーデンズ スカーズディル・ヴィラズ ロンドンの大火 集合住宅「エステート」開発手法 ハウス & フラツツ なぜテラスド・ハウスというのか ? セミ・デイタッチド・ハウス 郊外住宅の王様セミ・デイタッチド カドガン・ホテル 憧れのジョージアン & ヴィクトリアン タウンハウスの建築様式 ・ハウス ロンドンのタウンハウス : 建築様式の移り変わり ロンドン中心部地図 収録したタウンハウスのリスト あとがき 著者プロフィル .9
この通りは、 1714 年 ~ 1760 年のジョージ I 世及びジョージⅡ世時代に流行っ たアーリー・ジョージアン (EarIy Georgian) のテラスド・ハウス (Terraced house) の家並みが続きます。 このスタイルは、産業革命による商工業の発展と海外植民地の成功でロン ドン市民が小金をもつようになり、それを誇示することにお金を出す余裕が でき始めた頃の様式です。それまでのロンドン産の黄煉瓦をただ積み上げた だけの簡素なデザインの住宅に飽き足らなくなり、少しでも自分の住宅を豪 華に見せようと、黄煉瓦積みの上に、一部 ( 外壁基壇部、パラベット、窓の 化粧額縁など ) にスタッコ塗りの化粧をし、あたかも石造住宅のように見せる ことが流行りました。スカーズディル・ヴィラズはこの様式でまとめられ、ジョー ジアン・タウンと呼んでもよいほどです。前章のアイヴァーナ・ガーデンズ、前々 章のアイヴァーナ・コートがヴィクトリアン・スタイルの「赤い街」であったの とは対照的に、この通りは「黄色い街」です。 通りとタウンハウス このように通りごとに街並みの景観デザインが統一され、タウンハウスの各 住戸の住所に通りの名前が付けられているのは、ロンドンの住宅街が、タウ ンハウスとその前の通りを一つの不動産開発事業者の手で一体開発されて きたことを物語っています。このタウンハウスとその前の通りとの密接な関係 は、市街地マップ ( 29 頁、地図参照 ) でもうかがい知ることができます。 スカーズディル・ヴィラズは、「ヴィラズ」が付くようにテラスド・ハウスの名 前がそのまま通りの名前になっています。アイヴァーナ・コートもアイヴァー @EarIs Court MarIoes Road, Kensington, London W8 6LA マルローズ・ロードのテラスド・ハウス éHigh Street Kensington Kensington, London W8 6PP Scarsdale Villas スカーズディル・ヴィラズ 32
がそれを速やかにまとめていくことができました。そしてできあがったのが、 冒頭の写真のような、街区ごとにその通りに面して統一されたデザインのテラ スド・ハウス (Terraced house) が建ち並ぶ光景です。このかたちが、現在の ロンドンの街の原形になっています。 テラスド・ハウスは、各住戸が地下 1 階地上 3 ~ 4 階建の住戸を横に連結 した長屋形式の集合住宅です。各住戸に、通りから直接住戸に人ることが できる玄関が付いており、通りと反対側にその住戸専用の庭が付いています。 これは、市民の共通の夢である「戸建住宅に住む夢」をできるだけ多くの人 に叶えてもらおうと、ディベロッパーが「エステート」手法を駆使して街づくり をしてきた結果です。本来の夢とは少し異なりますが、それに近いかたちで 結実したものです。 現在では、中心市街地では住宅用地が希少になり、集合住宅開発の主 体は、テラスド・ハウス形式からより集積度が高いフラツツ (Flats) 形式に移っ てきています。その開発も「エステート」手法を用いて街区単位で行われるた め、テラスド・ハウスの特徴である各住戸のエントランス・ポーチが建ち並 ぶ光景から、各フラツツの共用工ントランス・ポーチが建ち並ぶ光景へと変 わったものの、同様にまとまり感のある街並みが壊されずに生き続けています。 ( フラツツが建ち並ぶ光景は「マルケス・ロードの猫」「アイヴァーナ・コート」 「アイヴァーナ・ガーデンズ」の章を参照下さい。 ) 集合住宅「エステート」開発手法
マルローズ・ロードのアーリー・ジョージアンのテラスド・ハウス、 20 に年 2 月。ロンドンの住宅街に路上 駐車が多いのは、本格的なモータリゼーションが始まる前に街が開発され駐車場が設けられていないの と、前面道路がテラスド・ハウス敷地内の構内道路であることに起因していると思われます。 p. 98 ⑥ ナ・ガーデンズもフラツツの名前がそのまま通りの名前になっていて、共にフ ラツツ敷地内の構内道路のような形態をしています。ライツ・レーンからアイ ヴァーナ・コート、アイヴァーナ・ガーデンズを経由して、アヴィントン・ヴィ ラズというやはりテラスド・ハウスの名前の通りに抜けられます。この周辺の 住宅街の通りは、ケンジントン・ハイ・ストリート (Kensington High street) とアールズ・コート・ロード (Earls court Road) 以外、すべての通りがタウ ンハウス敷地内の構内道路のような形態になっていて、それらが相互に繋が ることによってあたかも公共道路のように機能しています。どれが公共道路で、 どれがタウンハウス敷地内の構内道路か見分けがつきません。迷路のように 錯綜しています。 スカーズディル・ヴィラズ
収録したタウンハウスのリスト RoyaI Borough of Kensington and Chelsea ケンジントン & チェルシー王立区 lverna Court Kensington, London W8 6TY High Street Kensington Map ① ⑧レクサム・ガーデンズ Lexham Gardens Kensington, London W8 6JN Earls Court Sherborne Court Cromwell Road, London SW5 Earls Court Map ⑨ ②アイヴァーナ・ガーデンズ lverna Gardens Kensington , London W8 6TN High Street Kensington B rompton Square Brompton Square, London SW3 2AD Knightsbridge, South Kensington Map ー ) ③アビンドン・ヴィラズ Abingdon ViIIas Kensington , London W8 6X B High Street Kensington ⑩ペラム・クレセント Pelham Crescent Pelham Cres, London SW7 2NR South Kensington Abingdon Court Kensington , London W8 6B P High Street Kensington Map 0 ⑩カドガン・ホテル Cadogan H0teI 75 Sloane Street, London SWIX 9SG Knightsbridge ⑤スカーズディル・ヴィラズ Scarsdale Villas Kensington , London W8 6PP High Street Kensington を は Cadogan Place London SWIX 9RS Kn ightsbridge Map ) ⑥マルローズ・ロードのテラ スド・ハウス M Road , Kensington , London W8 6LA Earls Court 誦 ⑦メルプリー・ロードのセミ デイタッチド・ハウス Melbury Road, Kensington, London W14 8LT Kensington ノ 00
00d 5 し タ O 乂 ou っ High Street Kensington Sta 0 「 d Rd. Gd っ 5 ・ EIdon Rd. Kynance Mews 、 Ma 「ー0e5 Rd ・ 75 ・ CornwaII Gdns. Lexham Gdns ・ pennant Mews cromwell Rd. ハイ・ストリート・ケンジントン駅周辺市街地図。 ロンドンの「通り」の名前に使われている言葉一覧 庭 ( にわ ) 道 ( みち ) 公園 通り Street Park 庭園 道路 Gardens Road 中庭 並木道 Avenue Court 広場 道 Square Way 車道 丘 Drive Hill 林 小道 Lane Heath 歩道 森 Wood Walk Grove ( 0 し 0 家 ( いえ ) 郊外の庭付き住宅 Villas 長屋住宅 Terrace 屋敷 Place 三日月状の建屋 Crescent 連棟の馬小屋 Mews 小森 ロンドンの「通り」の名前に使われている主だった言葉を上に挙げてみました。 これを大別すると「道」「庭」「家」の 3 種類。純然たる「道」を意味するものは意外と少なく、多くが「庭」 か「家」を意味するものです。「庭」は「家の庭」を意味しますので、こに挙げた「通り」を意味する言葉 20 のうち 13 に「家」に因んだ名前が付けられています。このなかで最後に挙げた。 Mews ' は、自動車がな い頃の街のかたちを偲ばせてなかなか興味深い名前です。 29 アイヴァーナ・ガーデンズ