三国 - みる会図書館


検索対象: 三国志読本
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1. 三国志読本

四年三八〇年 ) に呉が滅ぶまでの六十年間が、魏、呉、蜀の三国がそれぞれ皇帝 を立て、霸を競った三国時代にほかなりません。 そうそう そうひ この三国時代の幕を開けた魏の文帝は曹操の子、曹丕です。この時点で、すでに 曹操はこの世の人ではありません。したがって、正確に三国時代に限定して『三国 そんけんそんさくえんしよう 志』を書きますと、曹操もでてこない、孫堅も孫策も袁紹もでないという『三国 志』になってしまう。私たちがみてゆこうとしている「三国志」の時代、曹操や袁 りゅうび 紹、劉備や孫策といった人々が若々しく活躍をする時代は、後漢王朝の衰亡とそれ にともなう乱世の時代にあたります。 だから、「三国志」の世界を理解するためには、後漢時代を知る必要があります。 ごかんじよ それには『後漢書』、そして『三国志』といった正史を読むのが一番です。その他、 お勧めしたい本については表をつくってきましたので、ご覧ください ( 四五六頁 ) 。 かって私たちが親しんできた三国志物語のほとんどは、『三国志演義』をもとに みん していました。この『演義』は明の中期に完成した一種の小説と考えればよいでし よう。しかし、『演義』をいくら読んでも、「三国志」の世界のもっとも重要なとこ ろがよくわからない。なぜなら、『演義』が劉備中心に書かれているからです。「三 ふかん 国志」の時代を俯瞰したとき、劉備という人はじつは時代の主流にはいなかった人 しよく

2. 三国志読本

「三国志」の世界は、知れば知るほど広大で、小説でも書ききれないほどの興味深 い人物が次々に登場します。そこで、今日は小説とは少し違った角度から、「三国 志」についてお話ししてゆきたいと思います。 ごかん 世まず、はじめに申し上げたいのは、後漢と三国という時代についてです。私たち 志はなんとなく「三国志」は三国時代を描いている、と思い込みがちですが、実際に 三は相当のズレがあります。 劉後漢時代が終わり、三国時代が始まる日付ははっきりとわかっています。延康元 年十月庚午、西暦でいうと一三〇年十月二十八日に、後漢の最後の皇帝である献帝 しんぶ が、魏の文帝に位を譲ります。この日から、晋の武帝の太康元年、呉の暦では天紀 曹操と劉備、三国志の世界 正史からみえてくる英雄たちの素顔 特別講義 ぎぶん 平成十六三〇〇四 ) 年「文藝春秋」十一月号 えんこう てんき

3. 三国志読本

からです。それは『三国演義』 ( 『三国志演義』ともいいます ) でした。 『三国志』は、日本で最も有名で、最も愛されてきた中国の物語のひとつでしよう。 吉川英治、柴田錬三郎をはじめ、何度となく小説やマンガなどになり、そのたびに みん 日本人を興奮させてきました。その源となっているのが、明の初期に完成したとさ らかんちゅう れる通俗小説の『三国演義』です。作者を羅貫中といいますが、かれひとりでそれ を作ったというより、すでに民衆が智慧をだしあってきた話を巧妙にまとめたとい ったほ、つかよいでしよ、つ。 とうえん ちょうひ りゅうびかんう 劉備、関羽、張飛が義兄弟の契りを結ぶ「桃園の誓い」の場面から始まるのも民 衆的です。主従の誓いではないことに留意すべきです。さらに、神秘的ともいえる しよかっこうめい 智謀の持ち主、諸葛孔明を得て、三国相争う壮大なドラマが展開されます。超人的 そうそう な豪傑、英雄が一騎打ちを繰り広げるアクション、曹操が皇帝を操る悪役で、善玉 である劉備たちが戦う勧善懲悪の構図など、エンターティンメントとしての魅力が ふんだんに詰め込まれています。私は、面白い物語をつくりたいという人がいれば、 『三国演義』を徹底的に勉強することをお勧めします。 私自身、『三国演義』の熱烈な愛読者でした。岩波文庫版は、八回くらい読み返 しているでしようか。そのなかで、何度読んでも感動する、一番好きなエピソード

4. 三国志読本

354 宮城谷中国の古典をやりながら、面白いヒントがあると感じたことがひとつあ ります。どういう話かというと、ある大国が南の大国と黄河を挟んで対決したんで す。そのときに戦うべきか戦、つべきでないか、軍議で諮った。戦うことを主張した 武将が十一人中八人、反対者が三人だった。元帥はそれを聞いて、戦争を回避して 国に帰ると言ったんです。 戦争賛成の八人のなかの一人が元帥に、 「待て、多数決では八対三でわれわれが 多かったじゃないか。なぜそれを無視するのか」と言う。すると元帥は、「多数決 とは、良い意見が多い場合に多数決と言うのだ。戦争を回避したほうが国の利益に なるという判断は非常に正しくて優れている。その意見が三票も入ったのだから、 これはやめるべきだ」と言ったんです。 つまり、取るに足らない意見は決に入れない。だから八対三じゃないんだ、とい う。これは多数決の考え方としては非常に面白い。単なる数合わせじゃないんです ね。 平岩偉いですね。今の経営でもそういう考え方がわりに行なわれていると思い ますよ。 宮城谷そうですか。

5. 三国志読本

とにかく、一巻目から三巻目くらいまでは、書いていて辛くて、辛くて仕方がな かった。これでいいのだろうかと迷いながらも、はじめてしまったからには、書く しかないという気持ちでした。 あらゆるものを捨てた劉備 書きながらもいろいろなことを勉強し、書いていく、っちにわかってきたことか、 たくさんあります。曹操については最初から、自分の中に予想があって、調べてい とうしても、最初はわからなかったのが劉備です。 くとその通りでしたが、。 しゅんじゅうさしでん 三国時代というのは、紙の普及もあって、『春秋左氏伝』という春秋時代の歴史 書が、大ベストセラーでした。この歴史書は儒教的な匂いはしないし、教訓めいた 物語でもなく、ふつうに読み物としておもしろい。三国時代の人たちは、よく『春 秋左氏伝』に出てくる人の生き方や、考え方を模倣したりしています。私がそれを 読んだのも、諸葛孔明が、重耳などの話を引用していたからでした。 私は『重耳』をはじめ、春秋時代を書いてきたからよくわかるのですが、彼らと 三国時代の人たちは、ある部分で呼応しているところがあります。いろいろな行動 ちょうじ

6. 三国志読本

しかし、自分が面白いと思ったことを書くしかない。そのように自身を奮い立た かんがん せ、冒頭の書き出しも思いきって、曹操の祖父の時代の後漢中期としました。宦官 だった曹操の祖父がどういう生き方をして、それが孫の曹操にどうつながっていく のかーーー最初から私の関心はそこにあり、必然的に書き出しもそこではじまりまし 『三国志』であるにもかかわらず、三国よりもかなり以前の時代、後漢中期の人物 たちが動き出す、私の最初の原稿に、文藝春秋の編集者は、「これは、本当に三国 志なんだろうか ? 」と、とまどったそうです ( 笑 ) 。その心配は想像できますが、 後漢の末期、宦官と外戚の政治的抗争がどのようなものであったかを、理解できな いと、三国時代の出現は意義を持ちません。 日本でも皇后の身内にあたる父や兄、要するに外戚が、政治に参入して強大な権 性力を持っことは、過去をみると多々あることです。しかし、宦官という存在はいな 可かった。外戚と宦官の戦いがどれほど凄まじかったのか、日本人は経験していませ 、こ曽まれ、最後に全滅させられた血 ん。皇帝を操り、権力を握った宦官たちがい力し + 志 三みどろの経緯を、解明していくという指針をあえて課しましたが、これもやはり、 8 一三ロ 売者にわかってもらえるのか、心配だったところです。

7. 三国志読本

380 そもそも英語が得意な人ばかりを企業が採用するようになると、人材が限定され るので、価値観が偏って固まってしまいます。言葉というものは、話されている国 の文化や価値観と切り離すことはできません。例えば戦前の日本の陸軍は、中枢が ドイツに留学していた人に偏っていた。そのことが、三国同盟を成立させるなど日 本を破滅に追いやった一因と言われています。海軍の方は留学先が色々の国に分か れていたため、考えがリべラルで、米英を敵にすることになる三国同盟には強烈に 反対しました。 今マスコミに出ているよ、つなエコノミストは、アメリカ帰りばかりでしよ、つ。い まや日本の経済はすっかりアメリカ的な価値観に支配され、まったくうまくいかな くなりました。 宮城谷なるほど、言語は価値観を規定してゆく。 英語と経済力は関係ゼロ 藤原まあ、近いうちにどの会社も英語公用語をやめると言いだすと私は予想し ています。企業活動にプラスに働くはずがない。ですから逆に、徹底的にやっても

8. 三国志読本

臣になった、そう考えればいいです。 でも、こ、つした大きな決断には両刃の剣みたいなところがあるものですよね。そ かんがん 、つした改革が、結局は皇帝を取り巻く宦官と、抜擢された秀才官僚たちとの対立の 構造をつくってしまうんですね。それ以前の宦官たちには官僚との対立は構図とし ていしゅう てないんですよ。当時もっとも名の知られた宦官に鄭衆という男がいます。この男 は、四代の和帝が外戚を誅殺するのに功あって、宦官として初めて列侯に名を連ね たのですが、この男たちの時代には官僚と敵対することもなかった。ところが鄧氏 が抜擢した秀才たちが正義派官僚という流れをつくり、これと宦官とのきわだった 対立という構図が三国時代の幕開けまで続いて、王朝を混乱させていく結果となる のです。 そういう意味で、三国時代の扉を開いたのは、私は楊震だと昔から思っているん む ですよ。『三国志』の時代を予感させたり、あるいは到来させる本当のきっかけを 沃つくったのが彼だと。だから楊震を書かずに『三国志』は書けない。 志 国

9. 三国志読本

456 『く史伝〉諸葛孔明』章映閣徳間書店 『諸葛孔明』渡辺精一東京書籍 諸葛孔明について最も入手しやすく、わかりやすい一冊。 『諸葛孔明』立間祥介岩波新書 『曹操一三国志の真の主人公』堀敏一刀水書房 『三国志の英傑曹操伝』守屋洋総合法令出版 『真説三国志』坂口和澄小学館 客観的かっ正確な曹操伝。 『曹操ー魏の武帝』石井仁新人物往来社 古典的名著。 『三国志実録』吉川幸次郎ちくま学芸文庫 地図はいすれも中国で発行されたもの。 三国時代の各地方の地図が掲載されている。 『中国歴史地図集三国・西晋時期』地図出版社 戦」などの合戦地図が非常に便利。 中国古代に関する歴史地図集。「官渡之戦形勢」「赤壁之 『中国史稿地図集上冊』郭沫若編中国地図出版社 正史『三国志』に登場する人物 3734 人が網羅。 『三国志全人名事典』 ( 『正史三国志英傑伝』別巻 ) 徳間書店 事典・地図 後漢、三国時代の東アジアの全体像が非常によくわかる。 『中国古代国家と東アジア世界』西嶋定生東京大学出版会

10. 三国志読本

459 唐 前秦 漢 後漢 戦国時代四七五年晋、三国 ( 魏、趙、韓 ) に分裂する。 『孟嘗君』 ( 一九九八年 / 講談社文庫 ) 『楽毅』 ( 二〇〇二年 / 新潮文庫 ) 三一八年楚、趙、魏、韓、燕の五国、秦を攻撃。『戦国名臣列伝』 ( 二〇〇八年 / 文春文庫 ) 一一六〇年長平の戦い。秦軍、趙兵四十万人を殺す。『青雲はるかに』 ( 二〇〇七年 / 新潮文庫 ) 二四九年秦、周を滅ばし、呂不韋、宰相となる。 『奇貨居くべし』 ( 二〇〇一一年 / 中公文庫 ) 二二一年秦の始皇帝、中国全土を制霸。 『香乱記』 ( 二〇〇六年 / 新潮文庫 ) 一一〇六年項羽と劉邦、秦王朝を滅ほす。 『長城のかげ』 ( 一九九九年 / 文春文庫 ) 項羽、楚の霸王を称す。 『楚漢名臣列伝』 ( 二〇一三年 / 文春文庫 ) 二〇二年垓下の戦い。劉邦、皇帝となる。 一五四年呉楚七国乱おこる。 『花の歳月』 ( 一九九六年 / 講談社文庫 ) 紀元後 一一五年光武帝、後漢の初代皇帝に即位。 『草原の風』 ( 二〇一三年 / 中公文庫 ) 一四六年質帝、梁冀に毒殺される。桓帝即位。 『三国志』三〇〇八年、・一五年 / 文春文庫 ) 一八四年黄巾の乱おこる。 二〇八年赤壁の戦いおこる。 一三〇年ごろ三国 ( 魏、蜀、呉 ) 時代おこる。 二六三年蜀、滅びる。 二八〇年呉、滅びる。 六一八年唐建国。 『玉人』 ( 一九九九年 / 新潮文庫 )