広田 - みる会図書館


検索対象: 中央線に乗っていた男
14件見つかりました。

1. 中央線に乗っていた男

「そんな者は、知りませんよ。急用があるんで亀井も、タイヤを射った。 す。どいてくれませんか。 シーマは、それでも、走り続けたが、今度は、 「彼女が、ここへ入るのを、見ているんです。何溝に落ちた。 処ですか ? 」 十津川と亀井は、走った。 と、十津川が、迫った。 シ 1 マの運転席のドアが開いて、広田が、必死 「知らんと、いっているでしよう」 に、抜け出そうとする。 と、広田は、 しし、いきなり、アクセルを、踏亀井が、その腕をつかんだ。 んだ。 「あんたらを、訴えるぞ ! 」 車が、はねるように、急発進する。十津川が、 と、広田が、叫んだ。 はね飛ばされ、前にいた亀井が、あわてて、身を十津川は、それには構わず、 避けた。 「トランクを開けて下さい」 けんじゅう しった。 十津川は、転がったまま、拳銃を取り出し、安 と、広田に、、 全装置を外し、車のタイヤめがけて、引金をひい 「なぜ、開けなきゃいけないんだ ? 」 と、広田が、怒鳴る。 一発、二発、当らない。 「じゃあ、勝手に、開けさせて貰いますよ」 しった。 三発目が、左の後輪に命中した。ハ、 ゾドルを取と、十津川は、 ) られて、電柱に、車体をこすりつける。 運転席から、キーを引き抜き、十津川は、トラ

2. 中央線に乗っていた男

広田の話したことは、ほば、十津川の推理した 通りだった。 かつろう 兄の広田克郎が、社長の時、弟は、一応、副社 長だったが、それは、名前ばかりで、兄の権限ば かり強く、何も決められない副社長だったと、い 兄がいる限り、何も出来ないと思い、いっか、 兄を、社長の椅子から蹴落としてと、考えていた と、広田は、話した。 飯沼善治は、それから二日後に、警察に出頭し 、」 0

3. 中央線に乗っていた男

たんだが、借金の担保になっていました。夫婦が 〈所有者興業〉 亡くなって、生命保険が入りましたが、借金の全 額を払う額がなかった。そこで、信金が、売却し と、書かれていた。 十津川たちは、そこに書かれた住所に、興業たわけです。それを、うちが、買ったというわけ です」 を訪ねてみた。 「それなら、時価より安く入手したわけです 会津若松駅前にある会社である。五階建ビ か ? 」 ルで、ホテルの経営、駐車場の管理、それに、パ チンコ店なども、やっているらしい 「少しはね。しかし、東京にいる娘さんのことも ひろた 十津川たちは、広田という四十代の若い社長にありますからね。彼女にも、まとまったお金を渡 したいというので、奮発させて貰いましたよ。そ 会った。 男 十津川は、彼に、あの焼け跡のことについて、 れで、娘さんにも、かなりの金額が、渡った筈で て 聞いてみた。 すー っ 乗 と、広田は、いった。 「あの土地が、どういうことで、こちらの所有に この発言の真偽が知りたくて、十津川と、亀井線 なったか、それを伺いたいのです」 しった。 と、十聿Ⅱは、、 は、東山信用金庫に廻って、理事長に会って、話中 うなず を聞いた。 広田は、「あの土地ですかーと、肯いて、 さわき 「あそこは、土産物店でしてね。夫婦でやってい 沢木という小柄な理事長は、広田の話につい

4. 中央線に乗っていた男

ンクを開けた。 いう知らせが届いた。 着物姿のめだかが、 身体を曲げて、トランクの 十津川の思った通り、彼女の隣室のクラプホス はやかわ テス、早川あずさ、三十歳が、由美を、自分の部 中に、押し込まれていた。十津川は、手首に触っ てみた。が、 すでに、脈は、消えてしまってい 屋に、監禁していたのである。 る。 西本刑事からの電話によれば、あずさは、突 あと 首のところに、赤黒い内出血の痕が見えた。強然、夜おそく、訪ねてきた男に、隣室の飯沼由美 いカで、のどを絞めて、殺したのだろう。 の監視をたのまれたという。その男は、ポンと、 「あんたが、殺したんだな ? 百万円を、あずさに渡して、指示どおりに動いて と、十津川が、声をかけると、広田は、黙っくれれば、更に、百万、二百万と、支払うといっ て、眼を伏せてしまった。 男 亀井が、電話をかけ、東山警察署から、パトカ うさん臭いと思ったが、バブルが弾けて、店に ー二台が駈けつけた。 来る客も減り、困っていたところなので、相手のて 乗 めだかの死体も、いったん、東山警察署に運ば話にのった。 線 れた。 男は、自分の名前をいわなかったが、彼女のい 央 中 広田は、最初、黙秘をした。が、結局、めだかう顔立ちから、広田と断定して良さそうだった。 の死体を前にして、黙秘も、続かなかった。 この話を伝、んると、広田は、がつくりして、自 それに、東京から、飯沼由美が、見つかったと供のスピードが、速くなった。

5. 中央線に乗っていた男

て、顔を見合せた。 れないだろう。だから、興業の広田という社長 「面白くなってきましたね」 に、もう一度会って、圧力をかけてみる」 と、亀井が、いった。 「その結果、どうなると思われますか ? 」 「ああ、面白くなってきたよー と、亀井が、きいた。 と、十津川も、いった。 「われわれの推理が当っていれば、何らかのアク 今まで、考えてきたストーリイの中で、埋めら ションを起こすと思、つよ」 しった。 と、十聿日は、、 れなかった部分が、これで、埋まったような気が したのだ。 翌日、亀井は、めだかのいる置屋に行き、十津 問題は、それが、犯罪に結びつくかどうかとい 日は、 *-æ会津若松駅前の興業に行き、もう一 うことである。いや、実際に、結びついて、原田度、社長の広田に会った。 という男が殺されているのだから、なぜ、犯罪に 「まだ、何かご用ですか ? 結びついたかという疑問である。 と、広田は、微笑して、きいた。が、前に会っ 「カメさんは、めだかという芸者に当ってみてく た時よりは、緊張しているようだった。 れ」 「東京で殺された原田勝之という男の件ですが と、十津川は、いった。 ねー 「警部は、どうされますか ? 「それは、もう、警察にお話ししましたよ。前 「東山警察に話しても、この段階では、動いてく に、うちで働いていたとい、つことはあるが、九月

6. 中央線に乗っていた男

に辞めた男ですと。つまり、今は、うちとは関係人間だったんですよ。それが、尾を引いて、今 度、原田勝之さんが、殺されたんですー がないんですー 広田は、肩をすくめるよ、つにした。 「そんなバカな。じゃあ、八月に、焼死したの 「実は、あれから、いろいろなことが、わかりまは、誰なんです ? してね。この事件には、何人もの人間が、関係し「あなたのお兄さんですよ。当時、この会社の社 長さんだった」 ているんです。あなたもですー と、十津川は、いった。 と、十津川は、いった。 広田は、眼をむいて、 「私が ? 」 「そうですー 「冗談じゃない。私の兄は、フィリッピンに行っ てますよ。その後、消息がないんで、向うで殺さ 「私が、、、 とう関係しているんですか ? 」 男 れたんじゃないかと、心配しているんです」 広田は、用心深い眼になって、十津川を見た。 「去年の八月に、土産物店『ひがしやま』が焼け「お兄さんは、やり手だが、いろいろと問題があて ました。放火です」 った。わがまま、乱暴、女にだらしがない。芸者乗 「ええ。知っていますよ。あれは、店の主人の飯のパトロンになっていたし、人の奥さんにも、手線 沼善治が、奥さんと無理心中したんですよ。夫婦を出していた。例えば、飯沼良子さんにもです。中 そんなことで、奥さんも愛想をつかして、別れて の間に、何があったのか知りませんがね」 「焼死したのは、飯沼善治さんじゃなくて、別のしまった。八月のあの夜も、お兄さんは、飯沼善

7. 中央線に乗っていた男

したら、広田は、別の人間を、傭うより仕方がな 「私の予測が当っていれば、広田は、めだかを何 かった筈である。 とかしようとする筈だよ。危険な存在になってく だか、東京に、簡単こ、 。し、つことを聞く人 間る筈だからね」 を、置くことは難しい。そこで、ホステスと思わ しった。 と、十津日は、、 れる、由美の隣室の女を、金で、味方につけたの 日が暮れて、そろそろ、芸者が、活躍する時間 にろ、つ である。 今度は、亀井から、電話が、かかってきた。 眼の前の置屋からも、一人、二人と芸者が、自 「今、めだかのいる置屋の傍にいます。彼女には動車で、出かけて行く。 会って、少し、脅しておきました」 「あ、めだかです」 「私も、興業の社長の広田を、脅しておいた と、亀井が、小声で、いった。 よ。彼女は、今、置屋にいるのか ? 彼女が、他の芸者一二人と、マイクロバスで、出 「そ、つです」 かけるところだった。 「私も、すぐ、そこへ行く。場所を教えてくれ」 十津川は、待たせておいたタクシーで、亀井 しった。 と、十津川は、 ) と、そのマイクロバスを、追跡した。 何軒かある置屋の一つに着くと、亀井が、近寄東山温泉のホテルの一つで、三人の芸者がおり って来て、 めだかは、おりなかった。 「彼女は、まだ、中にいます」 彼女だけを乗せて、更に、二百メートルほど走 やと

8. 中央線に乗っていた男

十津川と、亀井は、じっと、待った。一時間少 ったところで、とまった。温泉街から、離れたと ころだった。 しして、急に、ついていた建物の中の電気が、消 えた。 めだかがおり、マイクロバスは、帰って行く。 彼女は、ひとりで、歩き出した。企業の保養所代りに、車庫に明りがっき、車のエンジン音が 聞こ、んてきた。 が集っている地区で、彼女が入っていった建物に プルーのニッサンシーマが、ゆっくりと、出て は、興業の名前が、出ている。 来た。運転しているのは、広田だった。 十津川と、亀井も、タクシーをおりた。車は、 ふさ 帰して、二人は建物に近づいた。 十津川と、亀井が、その前に、立ち塞がった。 広田が、驚いて、プレーキを踏んだ。彼は、運 「広田が、呼んだんだろう」 転席の窓を開けて、 と、十津川は、小声でいった。 男 建物の中は、ひっそりと、静まり返っている。 「何をするんですか ? 危ないじゃありません て 芸者のめだかを呼んだのに、中で、宴会をやっか ! 」 っ 乗 と、怒鳴った。 ている気配はなかった。 線 中に入ることが出来ないので、十津川と、亀井十津川は、傍に近寄って行って、 央 、つ・カカ 中 は、外から、中の様子を窺うより仕方が、ない 「彼女は、どうしましたか ? 」 三十分、四十分とたったが、中から、何の動き「彼女って、何のことですか ? も、聞こえて来なかった。 「芸者のめだかさんですよ」

9. 中央線に乗っていた男

りませんか」 が、わかりました」 十津川は、殺された原田勝之の写真を、署長に 「興業 ? 広田社長の会社ですか ? ー 見せた。 「そうですー 「この男が、何かしたんですか ? 」 「それは、興味がありますね。どうして、興業 と、署長がきく。 を辞めたんですか ? 「東京で殺されました。それに、本籍が、この会 「会社の話では、東京に行って、何かやりたいと 津若松なので、ご存じないかと、思いましてね いうので、惜しい人材だったが、 喜んで、送り出 「ここから、東京に出て行った人間は、多いですしたと、いっていますー からねえ」 「会社を辞めたのは、いっ頃ですか ? と、署長は、 ) : 調べておきましようと、 「去年の九月です」 ってくれた。 「あの火事があった直後ですね , その夜、ホテルにいた十津川に、署長から電話「まあ、そうですが、関係は、ないと思います が入った。 「お預りした、写真の男のことですが」 と、署長は、いった。 と、署長は、いう 十津川と、亀井は、そのあと、ホテルの大浴場 「何かわかりましたか ? に入った。 「あの男は、前 リに、興業で、働いていたこと広い、ゆったりした風呂だった。先客がいた よ ふろ

10. 中央線に乗っていた男

しているところを、背後から、殴り殺されている と、広田はいった。 からです」 「そうです。証拠はありません。しかし、これか ってるのか、わかりませんら、見つけますよ。すぐ、見つかると思っていま 「何を、ごたごた、い ねー す。飯沼善治は生きているし、芸者のめだかも、 「そこで、私は、別の考え方をしました。原田証一言するでしようからね , いった。 は、ずっと、飯沼由美を、見張っていた。あなた と、十津川は、 の命令でね。その間に、皮は、だんだん、彼女に 対して、同情するようになっていったんじゃない かとです。或いは、原田は、若くて、美人の彼女 にれたのかも知れない。そして、あなたに、も十津川は、ホテルに戻ると、東京の西本刑事か う、こんなことは止めたいと、電話した。あわてら電話があったと、伝えられた。 たあなたは、急いで、東京に行き、原田に会っ 部屋に入って、電話をすると、西本が、 た。あなたは、原田に向って、わかったといい、 「さっき、男の声で、電話がありまして、飯沼由 油断させておいて、背後から、スパナか何かで、美が、行方不明だから、捜してくれというので 殴り殺した。そう考えたんですよー す 「バカバカしい。一つとして、証拠がない話じゃ ありませんか」 「はい