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検索対象: 中央線に乗っていた男
225件見つかりました。

1. 中央線に乗っていた男

「小林に、恋人がいたことは、ご存じですか ? と思いました ? ・ 十津川は、山下弁護士にも、例の似顔絵を見せ「そうですねえ。美人だと思いましたよ。正直に いって、彼にはもったいないなと思いましたね 「ああ。一度、紹介されたことがありますよ。そ「だが、二人は、仲良さそうに見えたんじゃあり の後も、一回会ったかな」 ませんか ? ことわざ 「彼女も、死にました。われわれは、殺されたと「ええ。そうなんです。あの諺を思い出しました 思っています よ。何といいましたかね たでく 十津川が、いうと、今度は、さすがに、驚いた「蓼喰う虫も好きずき ? 顔になって、 「ああ、それです。今様にいえば、あの二人は、 「どうして、彼女まで ? 」 波長が合っていたんじゃありませんかねー 「わかりません。内村かおりと名乗っていたんで と、山下は、笑った。 すが、どうも、偽名だったような気がするんで 「坪井真一郎という人をご存じですか ? 」 す。小林が、彼女のことを、何と呼んでいたか、 十津川が、話題を変えた。山下は、戸惑いの色 わかりませんか ? を見せて、 「いや、わかりません。確か、友だちだと紹介し「坪井ーーですか ? て、名前は、いわなかったと覚えていますー 「そうです。坪井観光の社長ですー 「彼女のことを、どう思いました ? どんな女だ「ああ、名前は、知っていますが、お会いしたこ 116

2. 中央線に乗っていた男

「私は、名刺に、そんなことを書いたことはあり 「バカバカしい。私には、そんな弱みは、ありま ません。妙なことに利用されるかも知れませんかせんよ」 らね。今、その名刺を、お持ちですか ? 「しかしーー」 「いや、持っていません。ホテル Z のフロント係と、なおも、亀井が、質問しようとするのを、 は、見ているんですが、見つからないのですー 十津川が、さえぎった。 「困りましたね。ここにあれば、私の筆跡でない 「坪井さんは、覚えがないと、いわれているん ことを、証明してみせられるんですがねえ」 だ。この辺で失礼しようじゃないか 「何か、坪井さんの周辺で、問題は起きていませ十津川は、そういって、腰を上げた。 んか ? 」 亀井は、不満そうだったが、十津川は、さっさ と、亀井が、きいた。 と、坪井に、あいさっして、茶室を出た。 「この不景気で、国内も、海外も、お客が減っ外に出て、パトカーに乗り込むと、亀井が、 て、困っていますがねえ」 「どうして、止めたんです ? もう少し、聞きたよ の 「そういうことではなく、坪井さんのプライベイかったのに」 る す トな面でですー と、不満を口にした。 達 配 「ど、つい、つことを、おっしやってるのかな ? 「坪井は、明らかに、嘘をついている。それが、 「例えば、誰かに、脅迫されているようなことはわかったから、もう十分だと思ったんだよ ありませんか ? と、十津川は、笑った。

3. 中央線に乗っていた男

っているんだ。だから、見せろと、平気な顔で、 「嘘をついていますか ? 」 いったんだと思う」 「ああ。嘘をついている」 「もし、警部のいう通りなら、あの男は、とんだ 「なぜ、わかります ? 「普通なら、自分の名刺を、おかしなことに使わタヌキですねえ」 「わざわざ、茶室で、われわれに会ったのだっ れたんだ。使った小林や、その女について、知り 月林にて、計算したことかも知れないな。本当は、生臭 たいと思う筈だよ。それなのに、坪井は、、 い人間なのに、枯れた、無欲な人間に見せようと ついて、何も聞こうとしなかった。何処の誰かと いうことも、死んだかどうかということもね。捜する計算だ」 と、十津川は、いった。 査一課の刑事が、来たというのにだ」 亀井が、車をスタートさせた時、十津川の携帯 「そういえば、小林についても、女についても、 電話が、鳴った。 何も質問しませんでしたね」 受信のボタンを押すと、西本刑事の声で、 月林たちについて、よく知っ 「つまり、坪井は、、 ているということを示していると、私は、思った「事件です ! 」 よ。小林たちが、すでに、死んでいることも、知「何があったんだ ? 「配達屋の森和行が、襲われました ! 」 っているんじゃないかと思うね」 ( やはりな ) 「名刺の件については、どう思われました ? 」 「名刺を、われわれが、持っていないことも、知と、十津川は、唇を噛んだ。 120

4. 中央線に乗っていた男

「そうだと思っています。彼は、今のぜいたくな思ったみたいだな ? 生活を守るために、ホテル Z で、小林を殺して、 「間違いないと思います。 死体を、地下駐車場のアメリカ車のトランクに放「しかし、内容は、わからなかったんだろう ? り込み、伊東にいる水谷あきを、毒殺したんで「それでも、坪井の応対を見ていて、だいたいの 想像は、つきました。三宅は、いつまで、逃げ廻 っていたらいいのか、隠れていたらいいのか、電 しった。 と、十聿Ⅱは、ゝ 「そのあとで、唯一の目撃者の森も、殺したの話で、坪井に聞いてきたんだと思います。それに いったん か ? 」 対して、三月一杯は、姿を見せるなと、 「二人殺して、度胸がすわっていたんじゃありまですー せんかね , 「まだ、二月だろう。あと、一カ月は、姿を見せ るなと、いったわけかね」 「しかし、三宅は、今、何処にいるんだ ? 」 死 三上が、きいた。 「そうです。坪井にしてみれば、三宅が、今、姿 「残念ながら、わかりません。坪井が、しばらくを現わしたら、致命傷になりかねませんから、必る 姿を隠しているように、三宅こ、ゝ 。しったんだと思死に、あと一カ月、姿を隠していてくれと頼んだ達 配 んだと思います」 います」 「今日、君と亀井刑事が、会っているとき、坪井「それで、これから、どうしたらいいと、君は、 思っているんだ ? にかかってきた電話だが、君は、三宅からだと、

5. 中央線に乗っていた男

い、犯人の飯沼は、姿を消した。しかし、やはし、企業コンサルタントを始めている。ところ り、東京にいる娘に会いたいと思い、東京に出てが、彼の事務所を見たところ、コンサルタントの にこ、スケッ仕事が、はやっていたとは、とても思えない」 それを、たまたま、新見警立ロし 来たが、 「そうですね。仕事らしい仕事といえば、飯沼由 チされてしまったんです」 しった。 美の監視くらいみたいでしたね」 と、亀井は、ゝ 「それに、なぜ、誰が、彼女の監視を頼んだんだ 「なかなか、面白いよ ろ、つ ? ・ 「ストーリイとしては、面白いでしよう ? 「ああ。ただ、そのストーリイでは、なぜ、原田「それは、彼女が、八月の火事で死んだのは、父 勝之が、飯沼由美を尾行し、監視していたのか、親ではないと、思っていたからでしよう ? 」 それに、なぜ、殺されたのかの説明がっかないん「だがね、カメさん。彼女が、違うと思っていた 男 って、ここの警察は、もう、夫婦で死んだと結論 じゃないかね ? 」 て してしまっていたんだ。新聞も、そう書いてい いった。 と、十津川は、 っ る。彼女は、違うとわかったって、誰も、耳を傾乗 「確かに、そうですね。原田は、誰に頼まれて、 線 けない。そんな彼女を、何のために、監視してい 飯沼由美を、見張ってたんでしようか ? 」 央 中 たんだろう ? 「原田は、八月まで、興業に勤めていた」 と、十津川は、自問の感じで、いった。 「あの若い社長のところですねー 「例のスケッチに、彼女が気付いて、騒ぎ出した 「そして、すぐ、そのあと、会社を辞めて、上京

6. 中央線に乗っていた男

て、顔を見合せた。 れないだろう。だから、興業の広田という社長 「面白くなってきましたね」 に、もう一度会って、圧力をかけてみる」 と、亀井が、いった。 「その結果、どうなると思われますか ? 」 「ああ、面白くなってきたよー と、亀井が、きいた。 と、十津川も、いった。 「われわれの推理が当っていれば、何らかのアク 今まで、考えてきたストーリイの中で、埋めら ションを起こすと思、つよ」 しった。 と、十聿日は、、 れなかった部分が、これで、埋まったような気が したのだ。 翌日、亀井は、めだかのいる置屋に行き、十津 問題は、それが、犯罪に結びつくかどうかとい 日は、 *-æ会津若松駅前の興業に行き、もう一 うことである。いや、実際に、結びついて、原田度、社長の広田に会った。 という男が殺されているのだから、なぜ、犯罪に 「まだ、何かご用ですか ? 結びついたかという疑問である。 と、広田は、微笑して、きいた。が、前に会っ 「カメさんは、めだかという芸者に当ってみてく た時よりは、緊張しているようだった。 れ」 「東京で殺された原田勝之という男の件ですが と、十津川は、いった。 ねー 「警部は、どうされますか ? 「それは、もう、警察にお話ししましたよ。前 「東山警察に話しても、この段階では、動いてく に、うちで働いていたとい、つことはあるが、九月

7. 中央線に乗っていた男

ンコ店や、娯楽センターを持ってる男だ。風間 あがれないもの」 が、君に惣れてたのに、君は入江社長に走った、 「奥さんには野口という弟がいるね。彼を、どう そういうことは、なかったかね ? 」 思、つね ? 」 と、 , 卞・津川は、きいた。、もし、そ、つい、つことが 「もちろん、あの男だって、あたしを憎んでる わ あったのなら、風間が奈津子を犯人にするため に、警察に偽証したということも考えられたのだ 「社長に対しては、どうなんだろう ? が、どうやら、この推理は外れたらしい 「社長を ? わからないけど、奥さんとは仲のい い姉弟で通ってるし、社長は浮気してたんだか「もう一つ。あの店の近くに、 e という木造二階 ら、よくは思ってなかったんじゃないの、 建のレストランがあるねー と、奈津子は、いった。 「知ってるわ。コーヒーを飲みに行ったことがあ 「もう一つ、君は、風間順という男を知っているるわ。あの店が、どうかしたの ? かね ? 「 e の従業員は、土地の人間かね ? 「支配人は、間違いなく、土地の人よ」 「カザマ ? 誰なの ? それ」 「じゃあ、君のことを、よく思ってないのか 「東京の、風間興業という会社の社長だよ」 な ? 」 「東京なら、関係ないわー 「君は、東京で、お店をやってたんだろう。そこ 「そうね。ここでは、あたしは、悪い女で通って パチるもの」 へ風間が、客で来たことはなかったのか ? 190

8. 中央線に乗っていた男

と、十津川が、ロを挟んだ。 いたのが、わかりませんでしたね 「それらしい品物が、全く、部屋にないんです「なるほど」 よ。普通なら、プランド製品が、段ボールにでも「他にも、パイプが、何本もあったんです。もち 詰って、並べてあってもおかしくはないのに、何ろん、ハッパも。しかし、三宅は、パイプは、吸 もないんです。調度品なんかは、高価なものでしわないんです。煙草は吸いますが、セプンスター たが、それを、売っているわけでもないし でした。私と会ってる間、ずっと、セプンスター 「他には、何か、おかしなところはありませんでを吸ってたんです」 したか ? 「パイプは、趣味で、集めているんじゃありませ 「そうですねえ。ガラスケースに飾ってある物でんか ? ハラバラでしたね 「パイプの何本かは、使った形跡がありました 「バラハラとい、つと ? 」 よ。吸口に、カーポンがついていました」 こっと、つ 「私は、前 リに、骨董を扱う店のコンサルタントを「しつかり見ていますね やっていましてね。自然に、骨董を見る眼が、出「部屋を見ている中に、だんだん、気になって来 来たんですよ。彼の部屋には、明らかに、ニセモたんですー ノと思われるものが、一杯ありました。例えば、 「それで、あなたの結論を聞かせてくれません と、つさんさい 唐三彩なんかは、全てニセモノでした。抜け目のか ? 世田谷の豪華マンションに対して、どう結 ないあの男が、ニセモノを、あんなに買わされて論を、出したんですか ? 130

9. 中央線に乗っていた男

れてしまうんじゃありませんかね。もっともらし「それで、話をしたのか ? 」 「向うから、声をかけてきたんです。多分、眥の いことを、ロにしますからね」 仲間に、自漫話をしたかったんじゃありません 「そういう才能ですかー 「カのある人間に、取り入るのも、上手かったでか。それで、彼の部屋に案内されました。バブル が弾けたというのに、ぜいたくな部屋でしたね。 ーの経営者に、経営コンサルタント すよ。スー とうしんすい 驚きました。壁に、伊東深水の大きな美人画が、 と思わせて信頼させるのに成功しましたからね。 あのあとも、結構上手く、立ち廻ってるんじゃあかかっていましたが、あれだけでも、二千万はす ると思いますよ」 りませんかねー 立花が話していると、聞いていた社員の一人「ホンモノだったか ? 「まぎれもなく、ホンモノです。女優が、楽屋で 休んでいる絵でした、 「三宅なら、一カ月くらい前に、見ましたよ 死 「どこで、どうやって、三宅は、儲けたんだ ? と、声をかけてきた。 の ホラ話で、金持ちから、欺し取ったのか ? る 「どうしていた ? 立花が、きく。 「プランド製品の安売りで、儲けたといっていま達 配 「世田谷のリサイクルショップへ経営指導に行っした。それにしては、ちょっと、おかしかったで て、その帰りに、あの近くの豪華マンションからすね 「どう、おかしかったんです ? 」 出てくるのに会ったんですよ」

10. 中央線に乗っていた男

たことを、まず、静岡県警の戸浦警部に、報告し冷静な感じを受けるのだ。 静岡県警への電話をすませると、三宅信彦とい う男について、調べることに、全力をあげると、 「内村かおりが、本名かどうかは、まだ、わかり ませんが、問題のマンションの三宅信彦という男刑事たちに告げた。 東京陸運局に、協力して貰って、三宅の車、べ と、何らかの関係があったと、考えていますー 「男と、女の関係ということですか ? もし、そンツのクーベタイプについて、そのナンバーを、 うだとすると、また、三角関係のもつれの殺人と調べることにした。 いうことになってしまいますね。若い彼女に、若その一方で、同業の経営コンサルタントの何人 い男が出来たのに、嫉妬して、その三宅という男かに会って、三宅信彦のことを、聞くことにし が、二人を殺してしまったという」 戸浦が、いう。 だが、誰に会っても、三宅信彦という経営コン 「そうかも知れませんが、私は単なる三角関係とサルタントなど知らないという返事しか、返っては の 来なかった。 は思っていません」 る と、十津川は、自分の考えを、いった。 「なんでも、コンサルタントといえば、 いと思達 単なる三角関係で、嫉妬にかられての殺人な ってるんじゃありませんか」 ら、もっと、単純で、激しいものを感じる筈だと と、同業者の一人は、十津川に、笑ってみせ 思うのだ。それなのに、今回の事件からは、妙に