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検索対象: 中央線に乗っていた男
55件見つかりました。

1. 中央線に乗っていた男

写真を、撮ることにしているんです [ 「それは、ニュー宮崎観光ホテルです。五月三日 「九州旅行では、このプルートレインの写真だ に、泊ったことは、聞いて頂ければ、わかります け、撮ったわけじゃないでしよう ? 」 「ええ。九州を廻りながら、撮っています」 と、前原は、つけ加えた。 「それを、見せて貰えませんか。ネガも一緒に」 「次の四日は ? 「いいですよ」 「熊本、佐賀と寄って、福岡のホテルに泊りまし 前原は、気軽く立ち上って、奥から、ネガと、 た。ホテルは、リツツ・博多です」 写真を、持って来た。 熊本と、佐賀で撮った写真も、前原は、見せ 彼のいうように、どれも、シロクロの写真であた。 る。 「次の五月五日に、プルートレインの写真を撮っ 「五月二日。会社の仕事が終ってから、プルート たんですね ? 」 レインの「富士』に乗って、まず、宮崎へ行きま「そうなんです。福岡のホテルで、明日は、五月 した。宮崎へ着いたのは、五月三日の午後です」五日だなと思いましてね。農家の庭先に、鯉のほ 前原は、そういい、三日に写した写真を、別に りが、立っている。その前を、プルートレインが して、十津川たちに、見せた。 通過して行く。そんな写真を、撮りたいと思った 宮崎周辺の観光地の写真が、十二枚、それに、 んですよ。それで、五日の朝、早くホテルを出ま ホテルの写真。 してね。鳥栖と佐賀の間で、「さくら」が来るの 242

2. 中央線に乗っていた男

と、三上は、十津川に、きいた。 「内村かおりこと、水谷あきと、あのマンション 「第一に、 三宅を見つけ出すことです」 で楽しんだことだけは、間違いありません。彼女 「坪井を逮捕することは、出来ないのか ? が、伊東のホテルに泊ったとき、自分の住所を、 「それが出来れば、最高ですが、ロ階しいことあのマンションの 3 01 号室にしていましたか に、坪井が、殺人を命じたという証拠がありませら」 ん」 「なぜ、彼女は、そうしたと思うかね ? しった。 と、十聿Ⅱは、 ) 「多分、坪井に対する脅しでしよう。あのマンシ 「証拠か ? ョンの 301 号室で、あなたに抱かれたことは、 「そうです。証拠ですー 覚えていますよという脅しでしよう。だから、あ 「しかし、世田谷の豪華マンションの本当の所有のマンションで、坪井が彼女と遊んだことは、間 者が、坪井真一郎であることは、間違いないんだ違いないんです。しかし、それも、状況証拠です ろ、つ ? ・ し、名義は、あくまで、三宅になっています」 「間違いありませんー 「じゃあ、今の段階では、坪井真一郎には、手が 「坪井を、連行して、その事実を、突きつけて、 出せないとい、つことか」 白状させることは出来ないかね ? マンションに 三上本部長が、ぶぜんとした顔になった。 女を連れ込んで、遊んでいたことは、間違いない 十津川は、微笑して、 んだろ、つ ? 「しかし、坪井は、明らかに、法えています。警 おび 140

3. 中央線に乗っていた男

「服装も、ばりつとして、車も買って、毎日、出 と、管理人は、いう かけるようになったんです。いいところに、就職「彼女については、ト林は、何かいっていません したのかと思いましたよ でしたか ? 「本人は、そのことで、何かいっていました 「いい女だろうって、自していましたけど、ど 、つい、つ人だ A 」い、つこ A 」は と、十津川は、きいた。 「小林は、ずっと、このマンションにいたわけで 「ちょっとした仕事にありついたと、笑っていますね ? 」 したね。仕事の内容については、話してくれませ「そうですけど、ここ何カ月かは、いつも、留守 んでした」 でしたね。部屋代を払う時だけ、帰ってくるみた いで 「若い女が、訪ねてくることはありませんでした 「どうしていたんだろう ? 」 「二、三度、見かけましたね。きれいな方でした「旅行に行ってるんだ、それが、仕事みたいなも のだと、いってましたよ 「この女性ですか ? 「部屋を見せて下さい」 しった。 十津川は、静岡県警が送ってきた、伊東で死ん と、十聿Ⅱは、、 だ女の似顔絵を、管理人に見せた。 三階の角の狭い部屋だった。 「ええ。よく似ています」 六畳一間に、キッチンと、バス・トイレがつい よ 114

4. 中央線に乗っていた男

っているんだ。だから、見せろと、平気な顔で、 「嘘をついていますか ? 」 いったんだと思う」 「ああ。嘘をついている」 「もし、警部のいう通りなら、あの男は、とんだ 「なぜ、わかります ? 「普通なら、自分の名刺を、おかしなことに使わタヌキですねえ」 「わざわざ、茶室で、われわれに会ったのだっ れたんだ。使った小林や、その女について、知り 月林にて、計算したことかも知れないな。本当は、生臭 たいと思う筈だよ。それなのに、坪井は、、 い人間なのに、枯れた、無欲な人間に見せようと ついて、何も聞こうとしなかった。何処の誰かと いうことも、死んだかどうかということもね。捜する計算だ」 と、十津川は、いった。 査一課の刑事が、来たというのにだ」 亀井が、車をスタートさせた時、十津川の携帯 「そういえば、小林についても、女についても、 電話が、鳴った。 何も質問しませんでしたね」 受信のボタンを押すと、西本刑事の声で、 月林たちについて、よく知っ 「つまり、坪井は、、 ているということを示していると、私は、思った「事件です ! 」 よ。小林たちが、すでに、死んでいることも、知「何があったんだ ? 「配達屋の森和行が、襲われました ! 」 っているんじゃないかと思うね」 ( やはりな ) 「名刺の件については、どう思われました ? 」 「名刺を、われわれが、持っていないことも、知と、十津川は、唇を噛んだ。 120

5. 中央線に乗っていた男

「小林に、恋人がいたことは、ご存じですか ? と思いました ? ・ 十津川は、山下弁護士にも、例の似顔絵を見せ「そうですねえ。美人だと思いましたよ。正直に いって、彼にはもったいないなと思いましたね 「ああ。一度、紹介されたことがありますよ。そ「だが、二人は、仲良さそうに見えたんじゃあり の後も、一回会ったかな」 ませんか ? ことわざ 「彼女も、死にました。われわれは、殺されたと「ええ。そうなんです。あの諺を思い出しました 思っています よ。何といいましたかね たでく 十津川が、いうと、今度は、さすがに、驚いた「蓼喰う虫も好きずき ? 顔になって、 「ああ、それです。今様にいえば、あの二人は、 「どうして、彼女まで ? 」 波長が合っていたんじゃありませんかねー 「わかりません。内村かおりと名乗っていたんで と、山下は、笑った。 すが、どうも、偽名だったような気がするんで 「坪井真一郎という人をご存じですか ? 」 す。小林が、彼女のことを、何と呼んでいたか、 十津川が、話題を変えた。山下は、戸惑いの色 わかりませんか ? を見せて、 「いや、わかりません。確か、友だちだと紹介し「坪井ーーですか ? て、名前は、いわなかったと覚えていますー 「そうです。坪井観光の社長ですー 「彼女のことを、どう思いました ? どんな女だ「ああ、名前は、知っていますが、お会いしたこ 116

6. 中央線に乗っていた男

ことにした。 人間じゃありませんよ 小林が、現像ずみのフィルムを病院に運んでき 「それでも、偶然、ある人間が、あなたの写真の 中に入ってしまったということはあるんじゃあり 「すごい量ですね , ませんかね」 あき と、亀井刑事が、感心したような呆れたような と、亀井刑事は、いう。 声を出した。 「それはないと思うんですがねえ」 、犯人は、盗むことが出来ずに逃げま「一回で、百本から二百本ぐらい撮りますから 「とにかノ \ ね。特に、景色を撮る場合は、一瞬、一瞬、景色 した。それで、石田さんが箱根で撮った写真を、 が変化するので、数が必要です」 見せて欲しいんですがー と、石田は、いった。少しずつ頭の痛みは、う 、別に殺されたわけじゃないんだ 「しかし、僕は すらいでくる感じだった。 から 「また、狙われますよ。次には殺されるかも知れ「しかし、私から見ると、同じ景色が何枚もあり ない。それを防ぎたいんです。箱根で撮って来たますがねえ」 「いや、それは違いますよ。太陽は刻々位置を変 写真を、全部、見せて下さい えているし、雲も風も変化するんです。厳密にい 「わかりました」 、つなず えば、一つとして同じ風景は無いんですよ」 と、石田は、肯いた。 自分では動けないので、小林に取って来て貰う 「それはわかりますが、私たちはそういうように 158

7. 中央線に乗っていた男

とにかく、身元が、わかるものを、見つけよう オ 1 ダーメイド専門の店で、十津川と、亀井 と、警察官たちは、その周辺を、必死で、探し廻が、遠野で撮ってきたカシミャのスーツの写真を った。 見せると、店にいた支配人は、 たか、ハンドバッグとか、運転免許証といった「わかります。ちょっと、お待ち下さい」 と「 ものは、見つからなかった。 いって、奥で、調べ始めた。 それも、当然かも知れない。犯人が、そんなも 五、六分して、出てくると、 のを、捨てていく筈がなかったからである。 「この方のスーツだと思います」 かたやなぎ しかし、カシミャのスーツに、「銀座」とい と、いって、「片柳みや子」という名札を見せ う店の名前がついているのが、わかった。恐らてくれた。 く、その店で、オーダーしたのだろう。 「どういう女性ですか ? 」 十津川と、亀井は、死体の司法解剖などを、岩 と、十津川は、きいた。 木に委せて、その日の中に、東京に戻った。 「この銀座のクラブの方ですー 「ホステスさん ? 「そうです。よく、うちで、スーツを作って下さ っていたんですが、最近、お見えになりません」 銀座三丁目のその店は、小さいが有名なデザイ ーしった。 と支配人よ、、 ナーの・の店だということだった。 夜になってから、教えられたクラプへ行き、マ

8. 中央線に乗っていた男

外に出ると、十津川は、公衆電話で東京の捜査「野口英夫と、風間社長の目撃証言があったよう 本部に、連絡をとった。 ですねー 電話に出た西本に事情を話し、風間興業の社長と、十津川は、中村にいった。 について、特に社長と野口英夫の関係について、 「そうです。それが、決め手になりました」 。いった。 調査するよ、つこ、 「二人の供述調書を見せて貰えませんかー そのあと、車に戻ると、十津川は、 と、十津川は、頼んだ。 「もう一度、小田原署へ行くよ」 中村は眉をひそめたが、 ' それでも、取り出し 。しった。 と、亀井こ、ゝ て、見せてくれた。 「中村警部に、嫌味をいわれるかも知れません 野口の供述調書の問題の部分には、こう記され てあった。 よ。派出所の警官が、報告していたら , 「それでも、彼に、もう一度会わなきゃならない んだ」 〈ーー風間社長を案内して、桃源台から一四時 いった。 と、十津川は、 出発のビクトリア号に乗船しました。中央甲板 に出て湖岸を眺めていたのですが、その時、義 今度は、十国峠は廻らず、箱根新道を抜けて小 田原に向った。 兄が経営しているレストランの屋上から、人が 中村警部は、派出所から報告が来ていないと見突き落とされるのを目撃しました。離れている えて別。 、」こ、嫌味はいわなかった。 ので顔はわかりませんが、体格などから、義兄 182

9. 中央線に乗っていた男

「そうだと思っています。彼は、今のぜいたくな思ったみたいだな ? 生活を守るために、ホテル Z で、小林を殺して、 「間違いないと思います。 死体を、地下駐車場のアメリカ車のトランクに放「しかし、内容は、わからなかったんだろう ? り込み、伊東にいる水谷あきを、毒殺したんで「それでも、坪井の応対を見ていて、だいたいの 想像は、つきました。三宅は、いつまで、逃げ廻 っていたらいいのか、隠れていたらいいのか、電 しった。 と、十聿Ⅱは、ゝ 「そのあとで、唯一の目撃者の森も、殺したの話で、坪井に聞いてきたんだと思います。それに いったん か ? 」 対して、三月一杯は、姿を見せるなと、 「二人殺して、度胸がすわっていたんじゃありまですー せんかね , 「まだ、二月だろう。あと、一カ月は、姿を見せ るなと、いったわけかね」 「しかし、三宅は、今、何処にいるんだ ? 」 死 三上が、きいた。 「そうです。坪井にしてみれば、三宅が、今、姿 「残念ながら、わかりません。坪井が、しばらくを現わしたら、致命傷になりかねませんから、必る 姿を隠しているように、三宅こ、ゝ 。しったんだと思死に、あと一カ月、姿を隠していてくれと頼んだ達 配 んだと思います」 います」 「今日、君と亀井刑事が、会っているとき、坪井「それで、これから、どうしたらいいと、君は、 思っているんだ ? にかかってきた電話だが、君は、三宅からだと、

10. 中央線に乗っていた男

りませんか」 が、わかりました」 十津川は、殺された原田勝之の写真を、署長に 「興業 ? 広田社長の会社ですか ? ー 見せた。 「そうですー 「この男が、何かしたんですか ? 」 「それは、興味がありますね。どうして、興業 と、署長がきく。 を辞めたんですか ? 「東京で殺されました。それに、本籍が、この会 「会社の話では、東京に行って、何かやりたいと 津若松なので、ご存じないかと、思いましてね いうので、惜しい人材だったが、 喜んで、送り出 「ここから、東京に出て行った人間は、多いですしたと、いっていますー からねえ」 「会社を辞めたのは、いっ頃ですか ? と、署長は、 ) : 調べておきましようと、 「去年の九月です」 ってくれた。 「あの火事があった直後ですね , その夜、ホテルにいた十津川に、署長から電話「まあ、そうですが、関係は、ないと思います が入った。 「お預りした、写真の男のことですが」 と、署長は、いった。 と、署長は、いう 十津川と、亀井は、そのあと、ホテルの大浴場 「何かわかりましたか ? に入った。 「あの男は、前 リに、興業で、働いていたこと広い、ゆったりした風呂だった。先客がいた よ ふろ