行っ - みる会図書館


検索対象: 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)
231件見つかりました。

1. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

冫いっておくがね」 救援態勢を、とっておくようこ、 「ここから、能登部まで、三キロはあります。この 吹雪だし、雪崩も起きているから、足の弱い人は、 無理ですよ。乗客の中には、子供もいるんです」 「弱ったね」 「能登部には、雪上車がありますか ? 「キャタビラのついた雪上車かね ? 」 「そうですー 「どうかな」 「雪上車がないと、乗客全員を、能登部に、避難さ せられません。何とか、一台、用意しておいて下さ 「わかった。能登部に、電話しておくよ」 「お願いします」 、って、電話を切った。 と、車掌は、し 急に、ジーゼルエンジンが、停止してしまった。 車内が、少しずつ、寒くなってくる。暖房が切れ てしまったのだ。 「重油がなくなったよ し / と、運転士が、車掌に、 日下は、コートを羽織った。他の乗客も、それそ れ、コートを着たり、手袋を、あわてて、はめたり している。 かわ 中村も、革ジャンパーを、羽織って、日下の傍 へ、戻って来た。 「捜査は、どうなったんですか ? まだ、僕を、犯 人だと、思っているんですか ? 「彼女のことを、東京で、調べて貰ったよー と、日下は、展望室の柴田めぐみに、眼をやっ 「それで、彼女は、どんな女なんですか ? 」 と、中村が、きいた。 「 z 工業の O*-Äだったが、現在は、銀座のクラ・フの ホステスをやっている」 「ホステスですか」 「君は、銀座に、飲みに行くことがあるのかね ? 142

2. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

と、亀井も、不安気にきく。 「そこまでわかっていたら、私一人で次の殺人を防 「多分、もう徳島に来ていると思うよ げますよ」 し / と、十津川は、 と、強い調子で、いってしまった。 「残りの二人の男女もですか ? ー 本部長が、当惑した顔で、 「ああ。来ているね」 「われわれの間でケンカをしても、仕方がない。 と、十津Ⅱよ、 にかく、すでに二人の人間が殺されているんだよ。 「その二人は、なぜ、徳島へ来るんでしようか ? 何とかして犯人を捕まえなければ、警察の信用がな 、合、ま止めようじゃな危険だとは、思わないんでしようか ? くなるんだ。詰まらないいししを と、亀井が、きいた。 し力」 「もちろん、危険は知ってるさ。岩崎伸と五十嵐杏 かかわ 子が殺されているんだからね。それにも拘らず、二 「わかりました」 人が来るとすれば、彼らが来なければならない地位 。が、警視庁がやって来て、 と、三崎は、 こちらの捜査を引っかき廻さないでくれという気持とか、仕事についているということだと思うんだ な、藤岡もそれを知っていて、やって来る」 島ちが、その表情に残っていた。 「どんな地位とか仕事でしようか ? 」 のお互いに、連絡を取り合うことだけを約束して、 讐 「断定は出来ないが、例えば、東京で阿波おどりの 十津川は、亀井と、予約しておいた眉山近くのホテ 復 会に入っていて、必ず行くことになっているとか、 とルにチェック・インした。 最近の仕事が、阿波おどりに関係していて、どうし 「藤岡は、本当に、来るんでしようか ? 」 と 103

3. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

「でも、焼死した新婚の息子さん夫婦の仇を討って いるに違いないと、思っているわけでしよう」 「そうだよ」 と、十津川は、肯いた。 かわい 「可哀そうね」 「何が ? 「新婚で亡くなった息子さん夫婦も、藤岡さんも、 殺された二人の方も」 っこ 0 し / と、直子は、 「そうかも知れないが、あと二人いるんだよ。藤岡 さんは、その二人も殺す気でいると思うんだ」 「どこに住んでいる人かもわからないの ? 」 「わかっていれば、何とかなるんだが」 るさく溜息をついた。 島十津川は、、 の「藤岡さんは、知っているのかしら ? 」 讐「恐らく、知っていると思うよ」 と「じゃあ、明日にでも、残りの二人を殺すかも知れ ないのね ? 」 かたき 「いや、それはないと思う」 し / と、十津川は、 「なぜ ? 」 「もし、明日にでも殺せるんなら、わざわざ、猫を 私に預けるようなことはしないだろう。今までどお 、店は臨時休業の札を下げておいて、殺しに行っ てくればいいんだ。そして、何気ない顔をしていれ ば、すむことだ」 と、十津Ⅱよ、 「じゃあ、何があると思うの ? 」 と、直子が、きいた 「わからない。わかっていれば、行動に出られるん だがね。ただ、今もいったように、藤岡さんはすぐ には残りの二人を殺すことが出来ない状況なんだと 思うよ。何日か、或いはもっと後でなければ、殺す ことが出来ない、だが、その間、じっと青蛾書房と 冫をし力ない。どから、 いう本屋を続けているわけこよ、 彼は店を閉め、私たちに猫を預けて、姿を消してし

4. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

「さあ、どうでしようかね。普通だったような、気日香さんですか ? がしますけどね。それほど、嬉しそうではなかった 恵が、きくと、店の主は、少しばかり、困惑した けど、そうかといって、悲しそうでも、なかったで顔になって、 「そういうことに、はっきりと、答えちゃっていい すね。宮川さんと、仲良く手を繋いで、クルーザー のかな ? それに、私が魚を持っていくと、出てき に、乗り込んでいきましたからねー 「丘の上に、宮川さんの別荘があるでしよう ? あ て、それを受け取るのは、たいてい、宮川さん本人 の別荘に、ご主人は、行かれたことがありますですよ。その時、奥に、奥さんがいたのか、それと も、昨日亡くなった矢野明日香さんが、いたのか 西本が、きいた。 は、私には、分かりませんよ」 「ええ、何度か、うかがったことが、ありますよ。 「しかし、昨日は、間違いなく、矢野明日香さんが 宮川さんは、あの別荘に、お友達を呼んだりして、 一緒だったし、奥さんは、東京にいたというんです 自分で、料理を作って、もてなすのが好きなんでけど」 宙一か、し / す。そんな時、ウチに電話があって、よく、今日獲 れたばかりの新鮮な魚を、持ってきて欲しいという 「そうですね。確かに、昨日は、矢野明日香さんが 一緒でした」 行んですよ。それで、私が、あの別荘まで、魚を運ん 「前にも、奥さんではなくて、矢野明日香さんが一 情だことが、何度もあります、 南「そんな時ですが、宮川さんと一緒にいるのは、奥緒だったのを、ご覧になったことがあるんじゃあり さんですか ? それとも、昨日亡くなった、矢野明 ませんか ? 」

5. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

気温は、零度くらいだろうか。石油ストー・フが燃 以上に逃げ場がない。 まわり 男は、もう五十歳を過ぎている。力では、あの若え、その周囲で地元の人たちらしい男や女が、列車 を待ってお喋りをしていた。 い大男にとてもかなわないと思った。拳銃を使えば 男は、時刻表のパネルを見に行った。とにかく、 勝てるだろうが、射ったとたんに逮捕されてしまう 稚内には行かなければならないのだ。 だろう。そうなったら、娘の仇はとれなくなる。 宗谷本線は、一応、本線という名前はついている 三分停車で、「宗谷 1 号ーが名寄を出発する時、 が、この名寄以北になると、極端に列車の本数が少 男は待合室に隠れた。 リサと大男が降りて来ないかと、男はじっと離れなくなる。 「宗谷 1 号」が出てしまったあと、稚内まで行く列 て行く列車を見つめた。 二人は降りて来ず、「宗谷 1 号ーは視界から消え車は、名寄一九時三〇分発の「宗谷 3 号」しかなか 今、午後二時半を過ぎたばかりだから、あと五時 ショルダー・ハッグは列車に置いて来てしまった 間も待たなければならないのだ。急に、ぼっかりと 線が、百万円は盗られてしまっているし、価値はな すきま 隙間があいてしまった形で、男はどうしてその五時 谷 間を過ごしたらいいのか、迷ってしまった。 の急に自由になったような気がして、男は待合室の しばらくは待合室のガラス窓越しに、ホームを見 独中を見回した。隅のキオスクでは、丁度、夕刊が届 たり、駅前の商店街を見たりしていた。 といたところで、中年の売り子が、二人で束を解い その間も、内ポケットに隠している拳銃のこと て、新聞を売りやすいように並べている。 185

6. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

すよ」 と、藤岡は、笑った。 「それなら、安心ですが」 「カゼということで、思い出しましたがーーー」 十津川は、青蛾書房に寄るのをしばらく止めよう かとも思ったが、そうしたらよけい気になること と、藤岡は、カゼについて、有名人たちがいった は、わかっていた。 言葉を、いくつかあげた。 「南国育ちの方は、カゼに弱いですかねえ」 だから十津川は、帰りにまた藤岡に会いに、青蛾 書房に寄った。 と、十津日よ、 ふすま 藤岡の背後の襖を、シャム猫が、手と頭を使っ 二人ほどいた客が、いなくなってから、十津川は て、開けて入って来た。そのまま、藤岡の膝の上に 奥に行き、 のつかって、身体を丸めた。 「カゼは、大丈夫ですか ? 」 「南国育ちって、私のことですか ? と、藤岡に声をかけた。 藤岡は、十津川を座敷に招じ入れてから、 と、藤岡は、猫の頭をなでながら、きき返した。 島「カゼって、何です ? 「前に確か、四国の生まれだと、おっしやった筈で の「前に、夏カゼをひいて、店を休まれたことがあっすが」 「そんなことをいいましたか 復たでしよう」 と「ああ、あれですか。あの時もいいましたが、鬼の と、藤岡は、さく笑って、 「もう、ずいぶん昔のことですよ。確かに、私は四 カクランでしてね。カゼは、めったにひかないんで

7. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

今のところ、リゾート幻は、六両の一編成だけだそのどれが、健一の乗りたがっているリゾート 1 から、時間を合わせて行かないと、乗ることが出来か、わからなかった。 ないのである。 ( な・せ、ちゃんと、書いておいてくれないんだ ? ) 亀井は、前日の夜、時刻表で、調べてみた。 と、亀井は、時刻表に文句をいったが、考えてみ の文字がないのが、当 東京から、伊豆下田へ行くには、普通、国鉄の特ると、時刻表に、リゾート幻 あたみ いと、つ 急「踊り子」号に乗る。東海道線で熱海、伊東線然なのである。 で、伊東と走り、その先は、私鉄の伊豆急行線に乗 息子の健一が、しきりに乗りたがるし、彼の持っ り入れる。 ている雑誌に出ている写真を見ると、斬新な設計の この間は、国鉄と、伊豆急が、相互乗り入れをし車両で、色彩もサイケデリックなので、特別な列車 ているので、リゾート幻も、伊東からではなく、熱と思い込んでいたが、これは、特急でも、急行でも 海駅から、出ている。 なく、普通列車だからである。古い車両と同じよう だが、時刻表を見たのでは、リゾート 幻の発着時に運行されているのだから、リゾート幻だけを、時 はず 刻は、わからなかった。 刻表の上で、特別扱いする筈はないのだ。 体特急「踊り子」号の場合は、発着時刻の横に、 亀井は、そう了解したが、健一が、リゾート幻に た「踊り子 x 号」と記入してあるので、よくわかるの乗りたがっていることに、変わりはない。 亀井は、伊豆急の電話番号を調べて、きいてみ 染だが、伊豆急の場合は、どこを見ても、リゾート幻 の文字は、なかった。 青 熱海発、伊豆急下田行の列車は、何本もあるが、 同じことをきいてくる人がいるとみえて、相手 ぎんしん 221

8. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

その桟橋の反対側には、おそらく、爆発で、炎上 よう ? そのエサを、宮川さんは、持っていかなか したクルーザーが、繋留されていたに、違いな、。 ったと、きいたんですが、それは本当ですか ? 」 海鮮料理の店も、出していたので、二人は、店に 「ええ、そうですよ。時々、クルーザーで海釣り 入って、簡単な海鮮料理を注文し、それから、西本に、行かれることがあるので、昨日も、釣りですか あるじ が主に会って、話を、きくことにした。 とおきぎしたら、いや、今日は、ただ海に、出たい 西本が、警察手帳を見せると、店の主人は、西本だけだからといわれましてね。だから、エサは持た を、神奈川県警の刑事と思ったのか、スラスラと答ずに、海に出ていかれたんですよー えてくれた。 「あのクルーザーで、どこまで、行くことができる 「ウチと宮川さんの関係ですが、宮川さんが、丘の んですか ? 」 上に、別荘を建てた五年前からのつき合いで、その 「そうですね。あの大きさですから、おそらく、伊 時、ウチの桟橋に、クルーザーを繋留させてくれ豆七島の大島辺りまでは、楽に行けるんじゃ、あり と、いわれたんですよ。それで、いいですよと、桟ませんかね。以前、大島まで、行ったというような 橋を、お貸しすることにしたんです」 話を、宮川さんからきいたことが、ありますー 「昨日の話ですが、ここには何時頃、宮川さんと、 「矢野明日香さんのほうは、どんな様子だったんで うれ 連れの矢野明日香さんは、見えたんですか ? 」 すか ? 彼と一緒で、嬉しそうにしていましたか ? 「確か、三時頃でしたよ。あのクルーザーで、海にそれとも、悲しそうにしていましたか ? 出ていかれたんです」 恵が、きいた。 「ここでは、釣り用のエサも、売っているんでし 店の主は、首を傾げて、ちょっと考えていたが、 おおしま

9. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

思い出したからだった。 青蛾書房を出て、自宅に向かって歩いているうち に、それが妻の直子だったと気付いた。 夕食の時に、十津川は、 「君は、今年の一月に、野沢温泉に行ったね ? 」 ひざ と、きいた。直子は、子猫を膝の上で遊ばせなが 「ええ。大学時代のお友だちと四人で。このミーが いるから、これからは長い旅行は出来ないわね」 「この子、平凡だけど、ミー コって名前にしたの 「野沢温泉だけど、クアハウスがあったって、いっ 島てたね ? トレーニングルームがあったり、温泉プー の「ええ。 復ルがあったり、いわば多目的温泉といったところ A 」 ね。名前は確か、クアハウスのざわ、といった筈だ 恋 わ」 ら、 「野沢では、目立っ存在なのかね ? 」 「大きく宣伝していたわー 「そうか。やつばり」 「野沢温泉が、どうかしたんですか ? 」 と、直子が、きいた。 「いや、何でもないんだ」 と、十津川は、あわてていった。 十津川は、。 とう考えたらいいのだろうと、悩んで しまった。 藤岡は、野沢温泉へ行っても、クアハウスの存在 に気がっかなかったのかも知れない。野沢温泉で は、若者に来てもらうためにクアハウスを始めたの だろうし、大きく宣伝もしているのだろう。しか し、だからといって、野沢に行った人が必ずクアハ ウスのざわの存在に気付くとは限らない。行きつけ のホテルか旅館があれば、タクシーでまっすぐそこ へ行ってしまい、クアハウスのざわのことなど関知 しまい

10. 十津川班捜査行 湘南情死行 (ノン・ノベル)

が、阿波おどりの終わる十五日まで来そうもない。 午後七時と九時の二回に、各連が集まって来る。 十津川は、今日こそと思い、亀井と腹ごしらえを演舞場に通じる道路は、彼らに占領されてしまって してから、陽が落ちると、ホテルを出た。 いる。踊り狂いながら、道路を移動し、観客の待っ 昨夜と同じようこ、 冫いくつもの連が、踊り狂いな演舞場に集まって来るのだ。 がら、ねり歩いて来る。 いろいろな連がある。地区の名前をつけた連もあ 公園で、自分たちだけで、踊っているグループもれば、外国人だけの連もある。次から次へと通り過 いる。 ぎて行くのを、十津川と亀井は、必死で見つめた。 「何処へ行きますか ? 」 だが、見つからない。何処もかしこも人、人なの と、亀井が、きく。 だ。この中から藤岡を見つけ出すのは、至難の業だ 「一番、人の集まる演舞場へ行ってみよう 「そこへ、藤岡たちも来ると思いますか ? 」 疲れだけが、たまっていく。時間はどんどん経過 けんそう 「わからないが、例の二人がもし仕事で来ていると していき、人いきれと喧噪が、少しずつ消えてい にぎ したら、一番賑やかな場所へ行くんじゃないかと思 ってね」 踊りつかれた人々は家に帰り始め、観光客はホテ 「じゃあ、行きましよう ル、旅館に帰って行くのだ。 と、亀井が、しった 人影がまばらになったが、十津川と亀井は、ホテ だが、肝心の演舞場の周囲は、人々の波で、なか ルには戻らず、歩き続けた。 なか近づけない。 その時、背後から、けたたましいサイレンの音を 106