亀井 - みる会図書館


検索対象: 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)
67件見つかりました。

1. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

と、亀井が、きいた。 「僕の口からはいえませんが、いろいろと噂のある 人ですー しった。 と、池島は、、 ヒールがお好きですか ? 「あなたは、 最後に十津川が、きくと、池島は、急に、狼猟の 色を見せ、 「僕は、ビールは嫌いです」 と、 いった。 4 最後の返事は、明らかに、嘘だった。 亀井たちが、調べたところでは、池島が、よく、 ビールを飲んでいたことが、わかっていたからであ る。 う 明らかに、池 , 島は、ビールとい、つ一言葉に、アレル ギーを起こしたのだ。 理由は、一つしか考えられなかった。 彼が、缶ビールに、青酸を混入させて、今西めぐ みに飲ませようとしたが、失敗し、仕方なく、首を 締めて殺したからではないかということだった。 「あの男は、クロですよ」 と、亀井は、帰りの道で、断定した。 「しかし、彼は、一七時一五分水戸発のスー たちに乗ったといっている。問題の列車より、三十 る 五分もおそく出る列車なんだ」 来 「嘘に決っていますよ。五月十日、あの男は、例のて ひたち 124 号に乗ったに決っていますよ。今西め入 ぐみを、同じ列車に呼びつけておいて、殺したんで乗 死 と、亀井が、いった。 「しかし、それを証明するのは、難しいよ、カメさ

2. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「何の匂いだ ? 」 がありませんでした」 「あツ、火事です ! 火事だー 「いいさ。犯人だって、持ち出せなかったんだ」 ーを通して、聞 亀井の大きな声が、トランシー 十津川が、いった。 こえてきた。 眼の前の雑木林は、今や、一つの大きな炎になっ 十津川のところからも、雑木林から、白煙があがて、近くの山林にも、燃え広がろうとしている。 っているのが見えた。 二人の足元の雑草までが、くすぶり始めた。 九月に入ってから、ほとんど雨が降っていないの 二人はあわてて、車に戻った。 で、木も、空気も、乾き切っている。 雑木林は、たちまち、真っ赤な炎に包まれた。 もうもうと、黒煙が、宙に立ち昇っていく。 「カメさんー この火事は、五時間にわたって、燃え続けた。 と、十津川は、トランシー ノーに向って、怒鳴り、 問題の雑木林はもとより、周囲の山林も、焼けて 返事がないと、車から飛びおりた。 しまった。損害額は、十二億にのばるだろうといわ段 か の 雑木林のところまで、駈け寄ったとき、煙の中かれた。 ら、亀井が、よろめきながら、逃げ出して来た。 十津川と、亀井は、まだ、くすぶっている雑木林死 せき 亀井は、激しく咳込みながら、十津川の傍に来た。の中に入って行った。 「とっぜん、火が出ました。一億円を運び出す時間 時々、焼け焦げた枝が、ばらばら落ちてくる。

3. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

まだ、一時には、七、八分、間があった。 二人の刑事は、サングラスをかけた。 君子が、車からおりて、電話ポックスの中に入っ 「犯人は、次にどう出るつもりですかね ? 」 て行く。 亀井が、眼で、前方を走るカローラを追いながら、 「古典的なやり方だな」 十津川にきいた。 助手席で、十津川が、呟いた。 「普通は、あと、一、二回、公衆電話ボックスを利 「は ? 用して、尾行されているかどうか確かめるんだが、 と、亀井が、十津川を見た。 今回はそれはしないようだ」 「犯人の連絡方法がさ。公衆電話ポックスに待たせ「なぜわかりますか ? 」 ておいて、連絡する。よくあるやつだよ」 「電話ポックスを、二つばかり、通り過ぎたよ」 「そうですね」 西に行くにつれて、少しすっ、緑が多くなって来 うなす 亀井が肯いたとき、電話ボックスの中で、ベルが むさしの 鳴ったらしく、君子が、受話器を取るのが見えた。 武蔵野の面影を、まだ、残している地区が眼に入 段 ってくる。 二、三分で、君子は、電話を切ると、電話ポック スを出て来て、車に乗った。 八王子近くまで来て、カローラは、ガソリンスタの ンドル 死 再び、カローラが、走り出す。亀井も、 ンドのところを右に曲った。 はたけ を握って、アクセルを踏んだ。 道路の左右に、畠や、雑木林が広がってくる。 秋の西陽が、真正面から差し込んでくる。 道路も、砂利道になってきて、しきりにバウンド 、」 0

4. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「どうしたら、僕のいうことを、信じてくれるんで と、佐々木が、叫んだ。 「君は、それを嫉妬して、彼女を、ひたち 124 号すか ? と、佐々木は、かすれた声で、きいた。 の中で、殺したんだよ。一七時から、一八時までの 「証拠があれば、信じますよ。やまびこ 124 号に 乗ったという証拠です。車掌と、話をしたとか、車 亀井が、いうと、佐々木は、 「その時間には、僕は仙台から上野へ行く、やまび内で、知人に会ったということですよ」 十津川が、いった。 こ 12 4 号に、乗っていましたよ」 佐々木は、じっと、考え込んでいたが、「駄目だ」 「それを、証明できるのかね ? 「だから、乗ってすぐ、彼女に電話しましたよ。やと、呟いた。 「車掌と話もしなかったし、知っている人間にも、 まびこ 124 号の車内からです」 「また、振り出しだよ。それが、間違っていること会っていません」 は、もう、いったじゃないか。君は、嘘をついてる「それじゃあ、話にならないね」 ( いった。 と、亀井が、突き放すよ、つこ、 んだ。なせ、嘘をつくかといえば、君は、やまびこ 124 号に乗ったんじゃなくて、もっと早い新幹線 に乗ってきて、ひたち 124 号の車内で、今西めぐ みを、殺したんだよー 亀井は、決めつけた。 佐々木は、その日、捜査本部のある上野署に留め -6 191 死が乗り入れて来る

5. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「何がですか ? 」 「やはりそうか。 「しかし、警部。広永さんのところは、長男夫婦と「誕生日を、間違えてることなんだよ。田口医師も、 ースディを 同居しているわけでしよう ? それなら、孤独な死変だといっているが、六月十五日に、バ 祝っているが、本当は、十四日なんだ」 とい、つことは、なかったんじゃありませんか ? 「十五日が、日曜日で、子供たちが集りやすかった と、亀井が、きいた。 ということは、なかったんですかねえ」 「そうだが、 長男夫婦は、別棟に住んでいるんだ。 広い家だからね。それに、あまり交流はなかったら「十五日は、月曜日だよ。むしろ、本当の誕生日の 十四日の方が、集りやすかった筈なんだ」 と、十津川は、いった。 「家が広いというのも、善し悪しですね」 「一日の違いぐらい、どうでもいいようなものです 亀井は、苦笑した。 おもや 「だから、何かなければ、母屋に行かなかったのか 「そうなんだがね。何となく、気になってねえ」 も知れないんだ」 しった。 しった。 と、十津川は、、 と、十津川は、、 「それなら、自殺と考えるより仕方がないと思いま「子供たちと、連れあいは、どういってるんです すねえ」 しった。 と、亀井は、、 「父親が、十五日が、誕生日だから、集ってくれと いうので、ポケて、日にちを間違えたなと思ったが、 「ただねえ、どうも気になることが、あってね」 べつむね

6. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

かも知れないし、売ったんじゃなくて、タダで、プ 三匹野良猫がいたんですけど、そのボス的存在。私 は、単純にプチと呼んでました」 レゼントしたのだというかも知れない。相手が死ん 「仮説としては、山川が、君のメイとそのプチとのでいては、違うという証明は難しい」 間に生れた子猫を見つけて、一番見栄えのするのを、「では、猫のことは忘れて、山川のアリバイ崩しに インチキ血統書を添えて、行方ひろみに売った。そ専念しましよう」 と、亀井は、それが結論のようにいった。 の時、メイのボラロイド写真も撮ったんだと思う。 ただ、君のつけたメイという名前を知らないので、 勝手に、ミイコとつけた。そんなところじゃないか な」 しった。 と、十津川は、、 山川は、事件の夜、本当に大磯の海岸で、星を見 「しかし、サギで山川を逮捕しても、仕方がないでながら寝ていたのか ? しよ、つ」 彼は、それで、押し通そうとしている。 件 と、亀井が、冷静にいった。 梅雨が明けているとはいえ、広い海岸の、人気の人 十津川は、苦笑する。 ない砂浜で寝ていたというのでは、崩すのは難しか猫 「カメさんのいう通りだ。それに、子猫を買った女った。 野 は、死んでしまっている。山川のサギを証明しよう 山川に、その場所を地図で示させ、十津川と亀井 がない。純血じゃないのを承知で買ったんだという は、夜、パトカーを飛ばして行ってみた。

7. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「多分、そうだろう。指紋がっかないようにして、情のもつれから殺した場合も考えられるからね」 ある 被害者に、飲ませようとしたんだろうね。或いは、 「他にも、可能性がありますか ? あとで、指紋を、拭いておいたのか」 「今西めぐみは、だったね ? と、十津川は、いった。 「そうです。佐々木と同じ会社じゃありませんが。 「私は、犯人は男だと思います」 「確か、デパートの広報の仕事をやっていた筈だ 亀井が、いった。 「その点は、賛成だよ。素手で、首を締めて殺して 「そうです。 Z デパートの広報の仕事をやっていま いるし、相手が、ビールを飲むだろうと決めつけたした。美人で、文才もあって、才色兼備というやっ のは、男の考え方だからね」 ですよ」 しった。 と、十聿Ⅱは、、 「とすれば、仕事の上の敵も多かったかも知れない 「殺された今西めぐみには、佐々木の他に、男がい よ。昔、男にとって、職場は、戦場といわれたが、 たとい、つことでしよ、つか ? 」 今は、女にとっても、職場は、戦場だからね。敵も 亀井が、いう 多いんだ」 「その可能性もあるね。恋人同士でも、一年も、仙「その点も、調べてみます」 台と東京に別れて暮らしていれば、一月に二回会っ と、亀井は、いった。 ていても、、いに隙間が出来るんじゃないかな。今西 愛情のもつれにしろ、仕事上のもつれにしろ、そ めぐみに、佐々木以外の男が出来て、その男が、愛の犯人は、今西めぐみの近くにいたことだけは間違 174

8. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

女のマンションで着ていたものだと、いった。 ですー しかし、死体には、外傷もなく、死因がっかめな 「まだ、終ってはいないよ。肝、いの人質が、どこに いるのかわからないんだからね いので、解剖に廻すことになった。 「これで、全て、解決ってわけでしようか ? 」 「もう、死んでいるんじゃありませんか ? なっとく と、亀井が、相変らす、納得がいかないという顔 「かも知れないがーーー」 十津川が、言葉を濁したとき、大山卓造らしい死で、十津川に、話しかけた。 体が、京王多摩川で見つかったという報告が入った。「まだ、解剖の結果が、残っているよ」 「しかし、どうやって殺したのであれ、犯人の井上 十津川と、亀井は、現場に、急行した。 ロープの巻かれた老人の死体が、岸に、 引き揚げ利夫が、大山卓造を誘拐し、すぐ、殺してから、一 られていた。 億円をゆすりとろうとした。しかし、山火事になっ てしまって、身代金の一億円を灰にしてしまっただ 鯉つりに来た男が、引っかけたのだという ナイトガウンの上から、ロープで縛られているのけでなく、自分自身も、灰になってしまった。これ だが、そのロープは、解けかかっていた。釣り人がで、終ったわけでしようか ? 」 見つけなくても、その中に、浮かび上がっていたか「不満かね ? 「理由はわかりませんが、どうも、納得できないん も知れない ですー 息子夫婦が駆けつけて、大山卓造であることが、 しった。 と、亀井は、、 確認された。また、中島君子は、そのガウンが、彼 156

9. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「カメさん」 する。しかも、登り道である。すれ違う車もなくな った。 と十津川は、トランシー 「亀井です」 先行するカローラが止まった。 という声が戻ってきた。 亀井も、離れた樹かげに、車を止めた。 「どんな具合だね ? 君子は、車からおりると、トランクを開けた。ス 卩、、、、支こしてあって、 「雑木林の奥に、白い布の目カ本 ( ーツケースを二つ引き出した。 それを、両手で下げて、雑木林の中に入って行っ中島君子は、その下に、二つのスーツケースを置い て行きました」 「彼女は、今、車に乗って、引き返して行ったよ。 かなり深い雑木林だった。 犯人が出てくる気配があるかね ? すぐ、君子の姿は、見えなくなった。 「今のところ、静かですね。何の物音も聞こえて来 ーを持ち、車からおりて、 亀井が、トランシー ません」 雑木林に、もぐり込んで行った。 「犯人は、どうやって、一億円を取りに来るつもり 十津川は、二人の消えた雑木林を、じっと見守っ ていた。 かね ? 」 やがて、君子が、手ぶらで、雑木林から出てくる「わかりませんが、あッ 「どうしたんだ ? カメさん」 と、カローラに乗って、甲州街道の方へ逆戻りして 「何か、きな臭い匂いがします。 行った。 ーで、呼びかけた。 152

10. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

いう感じにもなってきたからだった。 いなかった。 従って、捜査は、同じ範囲の聞き込みでいいわけ「 z デパ 1 トでは、広報誌を出しているのですが、 である。 今西めぐみは、その雑誌の編集長の仕事をやってい 亀井の他に、西本と日下、それに、清水刑事も、 ました」 この聞き込みに、加わった。 と、亀井は、何冊かの「パインの時代」という雑 当然、今西めぐみという女性の人間像も、その過誌を、十津川の前に、置いた。 程で、少しずつ、はっきりしてきた。 グラビアのページが多く、旅行案内や、料理案内、 捜査が、進展するので、十津川は、嬉しいのだが、それに、芸能界のエピソ 1 ドなどものっていて、一 時には、辛いこともある。被害者の遺族が持ってい見したところ、 Z デパートの広報誌には見えない るイメージを、こわしてしま、つことが、あるからだそこが、現代のなのだろ、つ。 った。 今西めぐみは、編集の仕事と同時に、グラビアに、る て 今西めぐみの場合も、聞き込みが進むと、少しずモデルとしても出ていた。 れ つ、彼女のそんな一面が、見えてきた。 「二十四歳の若さで、彼女は、その雑誌を、委され入 佐々木にいわせると、多少、わがままなところはていたわけです。才能は、認められていましたが、乗 死 あるが、優しく、素敵な女性である。 評判はよくなかったようです」 だが、亀井たちが、聞き込みから戻って来て、報「なぜだい ? 」 告するのを聞いていると、むしろ、逆ではないかと「生意気だからだと、いっていますねー やさ