( しった。 と、池島よ、、 「事実ですよ」 「あなたは、死んだ今西めぐみに、広報誌編集長の池島は、きつばりと、いった。 地位を追われて、ここへ来たわけですね ? 十津川は、「ほう」と声をあげた。 十津川が、いうと、池島は、びくりと、こめかみ「二人の関係を調べたんですか ? を、けいれんさせて、 「もう、そんなことはいいじゃありませんか」 「お調べになったのなら、おわかりでしよう。あん 「彼女は、どんな女性でした ? な女のことは、もう忘れたいんですよ」 と、十津川が、きくと、池島は、ちょっと考えて 「憎んでいましたか ? 」 し学 / 、カ と、亀井が、きいた。 「そうですね。確かに、頭はいいし、美人だから、 「ええ、憎んでいましたよ。才能があって、編集長目立ちましたよ。しかし、ひどいわがままでね。甘 になったのなら、僕だって、甘んじて、編集長を追やかされて育ったのかも知れませんが、自分の主張 われますよ。ところが、そうじゃなかった。力を持 が通らないと、すぐ、腹を立ててました」 っている小田部長に甘えて、僕を、左遷させたんで 「それで、あなたに叱られた時、彼女は部長に取り 入って、あなたを、追い出したというわけです 池島は、明らかに、憎しみを籠めたいい方をした。 「すると、彼女と、小田販売部長とは、関係があっ 「そうです」 たと思われるんですね」 「小田部長というのは、そんなに、女に甘いんです
「二十四歳なら、多少、生意気にもなるんじゃない 突然、飛ばされて、彼女が抜擢されています。この かね ? 」 人事は、販売部長の小田誠二郎が、行ったもので 「それが、どうも、彼女のやり方に、問題があったす」 ようなんです 「飛ばされた元の編集長は、今、どこにいるん 「どんな具合にだね ? 」 「 Z デパ 1 トの広報誌ですから、デパート側の重役「水戸に、 Z デパートの水戸店がありますが、そこ の意向によって、編集長が、交代したり、予算が、 で、在庫係をやっています。完全な左遷だそうで 削られたりします」 「彼女は、その重役に、取り入ったのか ? 」 「水戸ねえ」 つぶや 「 Z デパートは、同族会社で、社長の弟の小田誠二 十津川が、呟くと、亀井が、 郎という五十歳の販売部長が、『パインの時代』の 「そうなんです。今西めぐみが殺されていた『ひた 責任者になっています。今西めぐみは、この小田誠ち』は、水戸を通っています」 二郎に取り入って、編集長にして貰ったと、いわれ「名前は ? 」 ているんです , 「池島弘です。念のために、写真と、経歴を、持っ 「本当なのかね ? て来ました」 「嘘とも思えません。入社して、二年目の去年、そ と、亀井は、い、、 一枚の写真と、経歴のメモを、 れまでの編集長が、これは、三十五歳の男性ですが、見せた。 ばってき 176
「あなたは、そこに、伊東勇という偽名で、 Z デ。 ハ必ず、あなたを見たという目撃者を、見つけ出しま 1 トの小田販売部長と、今西めぐみの関係を、調べすよ。そうなれば、われわれも、意地がありますが、 させましたね。関係があるという証拠をつかんで欲 いいですか ? 」 しいと依頼し、会話のテープに対して百万円を払っ と、十津川が、いうと、池島は、急に、下を向き、 ている」 こめかみを小さくけいれんさせた。 「男の意地だったんですー 「都内のホテルで、二人が、一緒に泊った時の会話と、池島は、下を向いたまま、小さい声でいった。 だそうじゃありませんか。あなたは、それを使って、 「わかりますよ。若い女に、それも、彼女の実力で 彼女を脅した。違いますか ? だから、彼女は、あはなく、別の力によって、左遷されたわけですから なたを、殺そうとした。どうなんですか ? あなたね」 。いった。 は、それに対していわば、自分を守ったことにもな と、十津川は、なぐさめるよ、つこ、 る。正直にいって下されば、われわれも、カになり 「だから、彼女と、小田部長の関係の証拠をつかみ ますよ」 たかったんです , いった。 と、十津川は、 「そして、脅した ? 」 「ええ。お前の恋人に、知らせるぞともいいまし 「あなたが、 あくまで、知らないといえば、われわた」 れは、あの日のひたち 12 4 号を、徹底的に調べ、 「それで、あの日、ひたち 124 号に、彼女が、乗 208
と、十津日は、いった。 と、三上にきかれて、十津川は、 っ 「しかし、佐々木が、犯人じゃないとすると、 「恐らく、池島弘と思います。彼は、水戸に住んで そ たい、誰が、今西めぐみを、殺したことになります いて、事件の日も、ひたち 12 4 号ではないが、 のあとのひたちで、上京したと、 いっています」 と、亀井が、きいた。 「日下刑事は、どう思うね ? 遠慮なく、いってみ 「二人いるよ。今西めぐみと関係があったといわれたまえ」 いった。 る Z デパートの小田販売部長と、彼女のせいで、水と、三上は、日下に、 戸店に左遷された池島弘だ」 「二つ、疑問があります。一つは、缶ビ 1 ルの件で 「なるほど。この二人なら、確かに動機がありますす。同じ広報誌にいたわけですから、池島も、今西 ね。 めぐみがビ 1 ルは飲まないことは、当然、知ってい と、亀井は、肯いた。 た筈です。もう一つは、もし、佐々木が、シロとする 「帰って、検討しよう」 ると、彼のいったことは、嘘ではなく、本当のことて しった。 と、十津川は、、 になります。そうなると、めぐみは、ひたち 124 入 この日、捜査本部は、激論になった。 号に、乗れなくなってしまいますが」 十津川は、佐々木は、犯人ではなく、小田誠二郎「その通りだよ。十津川君の反論を、聞きたいね」死 か、池島弘のどちらかが、犯人だと思うと、いった。 と、三上は、また、十津川に、眼を向けた。 「そのどちらだね ? 」 十津川は、微笑して、
突然、池島が、水戸店に飛ばされ、今西めぐみが、 そうです」 編集長に、抜擢されたというのです」 「それでは、水戸へ行って、池島弘に、会ってみる 「それで、彼女と、小田部長との関係が、噂になっかね ? たというわけだね ? と、十津川は、亀井にいった。 「そうなんです。彼女が、小田部長と、ホテルに入 二人は、常磐線の「ひたち」で、水戸に向った。 るのを見たといった、まことしやかな噂も、当時、 Z デパートの水戸店は、駅前にあったが、池島の 流れたといいます , 働いている在庫係は、そこから遠く離れた郊外にあ 「しかし、部下の編集員から、そんな眼で見られてった。 いたら、今西めぐみは、仕事が、やりにくかったん プレハプ作りの倉庫である。実際に行ってみると、 じゃないのかね ? 反抗する編集員だって、いるだデパートの華やかさはなく、 いかにも、左遷された ろ、つから」 感じがした。 「そのことですが」と、日下刑事が、いった。 池島は、そこで、帳簿をつけていた。雑誌の編集 「彼女が、編集長になった当初は、彼女をバカにし長をやっていた男にしてみれば、つまらない仕事だ たり、反撥したりする編集者が、何人かいたそうでろう。 す。ところが、そうした連中は、突然、部長命令で、池島は、結婚しているが、子供はいない。 地方の支店に飛ばされたといいます。それで、怖く 彼は、十津川たちが来ることを、予想していたら なって、今西めぐみのいうことを聞くようになったしく、 178
「動機ですか ? 」 「そうだよ。君は、池島弘と、考えているんだろ 十津川は、亀井と、再度、水戸を訪ねた。 「そうです。小田と、池島のどちらかですが、池島 は、水戸に住み、特急ひたちに乗って、上京して来池島に会うためだが、動機が不明ということで、 まだ、逮捕状は、出ていなかった。 るからですー 十津川たちは、池島を、昼休みに、倉庫近くの川 「それで、動機だが、池島は広報誌の編集長の座を、 今西めぐみのために、追われて、水戸に左遷された。原に、呼び出した。 だから、彼女を恨んでいる。池島が、彼女を、最初池島は、顔をしかめて、 から殺したのなら、これが、立派な動機になるのは「話すことは、何もありませんよ」 る と、いった。 わかる。しかし、彼女が、池島を殺す動機にはなら 来 「列車に、突然、今西めぐみが乗って来た時は、びて んだろう。恨まれている方が、恨んでいる人間を、 つくりしたんじゃありませんか。 殺す理由は、ないからねー 十津川が、いきなり、切り出すと、池島は、虚を乗 しった。 と、三上は、、 死 突かれたみたいに、眼をしばたたいた。 「何のことですか ? 」 「あの日、あなたは、ひたち 124 号に乗って、上
られた。 「問題がないわけでは、ないんです」 そうしておいて、捜査会議が、開かれた。 十津川が、慎重ないい方をした。 佐々木を、殺人容疑で、逮捕するかどうかを決め「どんな問題だね ? 」 るためのものだった。 と、三上部長が、きく。 「今西めぐみと、 Z デパートの小田部長との関係と「第一は、佐々木が犯人だとすると、なぜ、常磐線 いうのは、本当に、あったのかね ? 」 のひたち 124 号を、殺人の舞台にしたのかという と、会議の席で、三上部長が、きいた。 疑問がわいてきますー 「雑誌『パインの時代』の連中は、全員が、二人の と、十津川が、いった。 間に関係があったと、 いっていますから、まず、間「その点、佐々木を嘘つきだと決めつけた日下刑事 違いないと思います」 は、どう考えるんだ ? 」 十津川が、いった。 三上は若い日下刑事を、見た。 「すると、動機は、嫉妬かね ? 」 「佐々木は、仙台に住んでいて、東北新幹線で上京 「そう思います」 して来ます。他の列車で、殺すとすると、同じ方向 「動機があり、また、嘘をついていることが、はっ に走っている列車を、使うしかありません。とする きりしているのなら、佐々木を、殺人容疑で、逮捕と、東北本線か、常磐線ということになるんじゃあ して、 しいんじゃないのかね ? 」 りませんか」 しった。 と、三上は、、 しった。 A 」、日一トは、、 192
「日下刑事の疑問は、二つとも、当然だと、思います , す。缶ビールの件は、正直にいって、わかりません。「どんな方法でかね ? 」 佐々木がシロなら、当然、彼の証言も正しいと、考「まだ、わかりません」 えざるを得ません。シロの佐々木が、嘘をつく必要「それに、缶ビールの謎も不明では、小田誠二郎に しろ、池島弘にしろ、逮捕は、出来ないだろう ? 」 は、ありませんから 「しかし、十津川君。佐々木のいっていることが、 と、三上部長は、顔をしかめて、いった。 す・ヘ 本当なら、今西めぐみは、ひたち 124 号に、乗れ「もちろん、全てを解明してから、逮捕状を、請求 なくなるんじゃないのかね ? 」 するつもりです」 「そ、つですー 「その間、佐々木は、どうするのかね ? 「しかし、現実には、彼女は、ひたち 124 号の車「釈放して下さい。今のままでは、彼を、起訴する 内で、殺されているんだよ」 ことも出来ませんから」 しった。 「わかっていますー と、十津川は、、 「それを、どう解釈するのかね ? 」 「二つの解釈の方法があります。佐々木が、電話し た時間について、思い違いをしているのか、或いは、 物理的に不可能に見えながら、何らかの方法を使え佐々木を釈放するに当って、十津川は、もう一度、 ば、ひたち 124 号に乗るのが可能だということで証言を求めた。 196
と、池島は、いった。が、十聿川は、信じなかっ 十津川がいうと、池島は視線をそらせて、 ししがかりですよ」 「それは、 と、いった。 「一つ考えたことが、あるんですがね」 と、十津川は、軽く、いった。 十津川は、池島への質問を、亀井に引きついで貰 っておいて、公衆電話ポックスへ行き、東京の西本 池島は、じっと、十津川を睨むよ、つに、見た と刑事に、電話をかけた。二一 調べさせておいたことの答 「あなたは、もともと、暴力を振う方じゃない すると、復讐も、知能的なものだった筈だ。それで、を聞くためだった。 十津川は、その答を得て、元の場所に戻った。 考えたんですが、小田部長と、今西めぐみの関係を、 池島は、十津川の顔を見ると、 徹底的に、調べたんじゃありませんか ? 二人が、 「もういいでしよう ? 昼休みが終って、仕事に、 関係している証拠をつかむことに、全力をあげた。 る 写真にとったのか、二人の会話を録音したのか、と戻らなければならないんですよ」 来 おど て と、文句を、いった。 にかく、証拠をつかんで、それで、今西めぐみを脅 れ したんじゃないのかね。彼女には、佐々木という恋 十津川は、強い眼で、池島を見た。 人がいるから、この脅しは 、リいたと田 5 いますね 「東京の中野駅近くに、前田探偵事務所というのが だから、彼女は、あなたのロを封じてしまおうと考あるんですが、ご存じですね ? あなたが、東京に死 え、アリバイトリックを作り、ひたち 124 号の車いた頃、マンションの傍にあった探偵社ですよ」 十津川が、いうと、池島の顔色が変った。 内で、あなたを毒殺しようとしたんです」 ふる
「そうだと思います」 回とも、その店に行っていますー 「優雅なものだね。仕事もしないで、パチンコを楽 と、三田村は、い、つ しみ、六本木で飲み、かー 「そこに、なじみのホステスがいるのかね ? しった。 と、三上は、、 「ナオミとい、つホステスを、ひいきにしているよ、つ このあと、十津川が、北条早苗に猫のことを聞い です」 「高い店なのかね ? 」 「今のところ、殺人には関係なさそうだが、念のた 「かなり高い店です。私みたいな安月給では、めつ めに、報告したまえ」 こに行けません」 「私が預っている子猫たちは、みんな、元気にして 「すると、山川は、金に不自由していないというこ います」 とカ ? ・ 「君は、オスの野良猫を、相変らず探しているよう 「二回とも、現金で、きちんと払っていますー 件 「経営コンサルタントとしての仕事は、どうなんだが」 事 人 と、十津川が、きいた。 「監視を始めてから、一度も、それらしい仕事はし「どうしても気になるので、時間の余裕があると、猫 野 公園周辺を探しています。 ていません」 ( しった。 「見つからないのか ? と、三田村よ、、 「はい。私のメイや、弱い子猫が見つかったのに、 「やはり、自称だけの経営コンサルタントか ,