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検索対象: 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)
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1. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

猫の毛が附着していないかどうか、調べて貰うこと と、十津川もいった。 にした。 「その少女が、黒い子猫を抱いていたとすれば、覚 県警は、最初、ユキの死体と子猫の死骸を、別に えている人は多いと思います」 考えていたらしい。というより、猫の方には、全く と、西本も、いった。 配慮していなかったといってもよかった。 翌日、神奈川県警から電話があった。 早苗の頼みで、調べることにし、子猫の死骸も、 日高ユキの衣服に、黒猫の毛が、何本か附着して 運んで行った。 いたという。早苗は、確信が強まったのを感じた。 早苗と西本は、いったん東京に戻り、十津川に報ただ、目撃者探しの方は、なかなか進展しないと 告した。 い、つことだった。 「県警では、聞き込みもやってくれるそうです。山 山川が犯人とすれば、用心深く、ユキや黒猫を目 川が犯人だとすれば、日高ユキをポルシェに乗せて、撃されることを、避けていたのだろう。 伊勢佐木町の銀行に行き、葉山へ行っているわけ「これで、日高ユキが、黒い子猫と一緒にいたこと ですから、目撃者がいると思われる。その目撃者をだけは、確認されましたわ」 見つけると、いっていますー と、早苗は、十津川にいった。 しった。 と、早苗は、、 「その子猫を、山川が持っていたことが確かめられ 「四十歳の中年男と、十代の少女のカップルは、目れば、日高ユキ殺しについては、捜査が大きく進展 立つだろうからね。期待は、持てるね するわけだが」 114

2. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「楽しみにしていますよ」 三十一日の午後九時から十時の間に、日高ユキは、 「ど、つして、公園に捨てなかったんですか ? 」 首の骨を折られて、殺されていたんだ」 と、十津川が、きいた。 と、三浦が、いった。 「何のことです ? 」 山川は、大げさに、肩をすくめて、 「僕とは、関係ない。黒猫を捨てたのも、葉山より「黒い子猫のことです。あなたは、シャムの子猫と 一緒に、公園で拾ったんでしよう ? 」 すっと、横浜に近かったと思いますよ。あの猫は、 そこから歩いて行って、死んだんじゃありません「そうですが ? 」 「それなら、なせ、元のところに戻しておかなかっ か」 と、 たんですか ? そこには、他の子猫もいたんじゃな いってから、十津川に向って、 いんですか ? 」 「何度もいいますが、僕は、日高ユキなんて少女は、 知りませんよ。今日だって、行方ひろみの件で、呼と、十津川は、いった。 ばれたんだと思っていたんです。彼女の事件は、ど「よく覚えていませんが、僕のマンションは、公園件 の傍ですからね。捨てても、戻って来たら困ると思人 うなったんです ? しつかり捜査して下さいよ」 猫 って、遠くに、捨てに行ったんです」 「捜査していますよ」 良 「あんな子猫なのに、そんな心配をしたんです野 「それで、犯人はわかったんですか ? 」 「間もなく、逮捕できると思っていますー しった。 「僕は、事実をいってるんです。第一、何処へ子猫 と、十津川は、、

3. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

ら困りますから」 に帰って来た。 と、亀井は、いった。 彼女は、まっすぐに十津川の机に進んで行き、抱 「そんなことはやりません」 えてきた写真を、その上にどさりとのせた。 と、西本は、いった。十津川は、その顔をまっす「何だね ? 」 ぐに見た。 と、十津川が、きく 「私は信じているが、北条刑事は、どうしているん 早苗は、緊張した顔で、 だ ? 君と一緒の筈じゃなかったのか ? 二番目の写真は、山川のポルシェの車内から見つ 「彼女は、急用があるというので、新宿で別れましかった二本の猫の毛です。黒猫の毛で、昨日、神奈 川県警に持って行きました。向うで殺された日高ュ 「行先は、知らないのか ? 」 キの衣服に、黒猫の毛が附着していたのが発見され 「プライベートなことだというので、きいていませているので、それと、比べてみたいと思ったのです。 二枚目の写真は、その黒猫の毛です。最後の三枚目 。いった。 西本は、頑固こ、 の写真は、葉山で死んでいた黒猫の毛です。この三 つの毛を比較した結果、同一のものだという結論が 出ました」 「つまり、山川が、日高ユキを殺した可能性が、大 翌日の夜、十一時近くになって、早苗が捜査本部きくなったということか ? ん」 120

4. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「私だ」 「山川の態度は、何か変だわ」 という、十津川の声がして、 と、早苗がいった。 「すぐ、葉山に、急行してくれ。雑木林の中で日高 「無理もないよ。捨て猫を拾ったと思っていたら、 君にいろいろいわれたんで、多分、頭に来たんだろユキと思われる少女の死体が、発見された」 第打こ、つ」 と、西本が、いった。 「それだけじゃないような、気がするわ。シャムの ことは、平気でいたのに、黒のことをきいたら狼狽赤ランプをつけて、パトカーが、走り出した。 したわ。本来なら、反対の筈よ。シャムの方は、殺三浦半島に着き、葉山に近づくと、神奈川県警の ハトカーがいて、向うの刑事が、現場に案内してく された行方ひろみにやったんだから」 れた。 「その黒い子猫がさ、あんまりびいびい鳴くんで、 近くの河原では、学生たちが、キャンプしていた。 殺しちゃったんじゃないのか ? だから、気が咎め が、現場の雑木林の方は、人の気配がなく、うす暗件 て、あんな態度を取ったのかも知れんよ」 、 0 人 と、西本がいう 猫 奥で、県警の鑑識が、現場写真を撮っていた。 「そうかしら ? 」 日高ユキは、仰向けにされている。首が折れてい野 と、早苗が首をかしげた時、西本の携帯電話が鳴 った。 た。すでに、腐臭が、ただよっていた。 早苗が、県警の刑事に、発見された時の様子をき 彼か、耳に当てる。 とカ

5. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

だからである。 わてて捜索願を出したんです」 と、母親が、いった。 「山川武志の動きは、どうなんだ ? 」 「その間、全然、連絡もなしですか ? 」 と、三上部長がきいた。 「ええ。何の連絡もありません」 清水と交代で山川の監視に当っている三田村が、 ( 父親がいった。 と、今度よ、、 その結果を報告した。 十津川の表情が、暗くなった。ひょっとすると、 「山川に、特別な動きは見られません。ポルシェに 日高ユキはすでに殺されているかも知れないと、思乗って、郊外のパチンコ店に行き、閉店までパチン ったからである。 コをしたり、飲みに、これはタクシーで、出かけた 預金を引き出すためだけに、池袋のテレクラで拾りしていますー った女子高生。その役目が終り、秘密を守るために、 「誰かに会うということはなかったのか ? 」 殺してしまったのではないか。 「その場合は、相手の写真を撮ろうと、カメラを持 もちろん、両親には、見つかったらすぐ連絡しまって尾行したのですが、その気配はありません。今 すよと、安心させるようにいってから、十津川と亀は、清水刑事が、監視しています」 井は、捜査本部に戻った。 「誰にも会わすか ? この日の午後開かれた捜査会議では、日高ユキを、「今のところは、です。 何としてでも探し出すことが、決められた。 「飲みに行くのは、どの辺の店だ ? 」 彼女が、行方ひろみ殺しの犯人を、知っている筈「六本木のクラブ桂という店がひいきのようで、一一 104

6. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

韭日のことを思い出して、ヒステリックになることが これは、間違いない 行方ひろみ殺害についての逮捕状がとられ、翌日あるでしよう。あの時が、それだったんですよ。包 の訊問中に、山川は、逮捕された。 帯をしたあとでも、彼女は痛い痛いといっていたん 十津川が、プチの死骸が見つかったこと、爪から、ですが、なぜか、二年前に、僕とケンカしたことを 彼の血痕が検出されたことを話すと、観念したよう思い出し、更に、僕が、他の女と仲良くしたことを に、行方ひろみと、日高ユキを殺したことを、自供思い出して、際限がなくなって、大ゲンカになって した。 しまったんです。それに、僕は、そろそろ彼女にあ 行方ひろみを殺した動機は、簡単なものだった。 きていましたからね。あんまり、彼女がロ汚くのの 「あの夜、ひろみが、遊びに来ていたんです。二人しるものだから、かっとして、首を締めてしまった で、楽しく、飲んでましたよ。そこへ、突然、あのんです」 オス猫がべランダから、飛び込んできて、襲いかか「そのあとで、彼女の死体を、彼女のマンションに ってきたんです。最初に、ひろみの腕を引っかき、運んだんだな ? 」 いった。 続いて、僕にも、飛びかかってきました。僕は、ゴ と、十津川が、確認するように、 山川は、笑って、 ルフのドライバ 1 で、殴りつけました。何度もね。 野良猫は、悲鳴をあげて、べランダから逃げて行き「まさか、僕のマンションに、放っておけないでし ましたよ。ひろみとの間にケンカが始ったのは、そよう ? 」 の直後からです。女って奴は、何かのきっかけから、「日高ユキを使って、行方ひろみの預金を引き出し 130

7. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

十津川は、三枚の写真を見比べながら、早苗に確るが、日高ユキ殺しについては、県警の所管だ。だ から、一応、山川から事情を聞いて、その結果を県 一した。 警と相談したいと思っているんだよ」 早苗は肯いて、 と、十津川は、いった。 「可能性が大きくなったというよりも、私は、山川 その結果、山川には、任意同行で捜査本部に来て が、少女を利用した揚句に殺したと、思っていま その前に、神奈川県警の三浦警部にも来 貰ったが、 す , て貰い、同席して、山川から事情聴取ということに 「カメさんは、ど、つ思、つね ? ・ した。 と、十津川は、亀井の意見をきいた。 さすが 山川に、三枚の写真を見せて質問すると、流石に 「とにかく、山川を連れて来て、訊問しましよう。 任意同行です。拒否したら、令状をとって、逮捕し狼狽の色を見せたが、 「日高ユキなんて女子高生、知りませんよ。殺した たらいいと思いますに 件 なんて、ぬれ衣もいいところだ」 と、亀井は、いった。 事 人 と、開き直った。 西本が、それを聞いて、 「それだけ証拠が見つかったんですから、すぐ、逮「それでは、この黒猫の毛のことは、どう説明しま猫 す ? あなたのポルシェに、黒い子猫が乗っていた野 捕状をとっていいんじゃありませんか ? ことは間違いないんだ。その猫の毛をつけた衣服を と、十津川を見る。 「今回の事件は、神奈川県警と合同捜査になってい着た少女が、葉山で、殺されているんですよ。

8. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

「要するに、黒い子猫の毛を見つけたいんだろれを、山川のポルシェに、ぶつける」 と、西本は、いった。 「ええ」 「ぶつける ? 「そのことで一つ、案があるんだがねー 「接触事故だよ。事故が起きれば、当然、双方の車 と、西本は、ニャッとした。 の損害の程度を調べることになる。車内もね。君は、 「何をするの ? 山川が留守の時を狙って、彼のマ山川のマンションで、黒猫の毛が見つかるよりも、 ンションに忍び込む ? 見つかったら、それで全てポルシェの車内で見つかる方が嬉しいんだろう ? 終りだわ」 ポルシェに、日高ユキと黒猫がいたことが、証明さ 「君は、余分な金を持ってるか ? れるんだから 「いノらぐらい ? 「やりましよう」 「そうだな。一一十万くらい必要かも知れない」 と、早苗は、すぐ応じた。 「そのくらいなら、貯金があるけど」 「しかし、危険な賭けだよ。見つからなければ、当 「足りなければ、僕が出す」 然、山川は、こちらを告訴するだろうからね。まあ、 と、西本は、いった。 何とか、損害を弁償するだけで、すましてしまうよ 「何をするか、教えてほしいわ」 うにするつもりだがね」 と、早苗が、いった。 と、西本は、いった。 「パトカーはますいから、僕の中古車を使おう。そ 二人は、万一を考えて、休暇をとった。 116

9. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

いている 「どうして、ここに死んでるんだろう ? 」 「ちょっと、こっちへ来てくれ」 「きっと、山川が、あの少女を手なずけるのに、黒 と、西本が、呼んだ。 の子猫を使ったのよ。テレクラで呼び出し、金と、 早苗が、傍へ寄って、 子猫でつって、被害者の預金を、伊勢佐木町の銀 「何なの ? 」 行支店で、下すのを手伝わせたんだと思うわ。どう 「向うに、もう一つ、死体が転がっている」 せ、そのあとで、殺すつもりでね , 「も、つ一つ ? 」 「横浜から、葉山まで連れて行って、人気のないこ 「ただし、猫だ」 こで、殺したということなんだろうね と、西本は、いった。 「その間、被害者は、山川に貰った黒の子猫と遊ん 雑草の中に、黒い子猫が、身体を丸めるようにしでいたのかも知れない。今、うちにいる雑種の子猫 て、死んでいるのだ。こちらも、すでに腐敗が、始だって、あんなに可愛いんだから、黒一色の子猫は、 っていた。 もっと、可愛かったと思うわ。その上、お金も貰え たくたくっ 「生後、四ヶ月くらいだ。多分、飢え死にだろう。 るんだから、日高ユキが、ここまで、唯々諾々と従 君の黒じゃないか ? 」 いて来たというのも、わかる気がする」 と、西本が、いう ( しった。 と、早苗よ、、 「かも知れないわ。いえ、私の子猫だわー 「ここで、一緒に死んでいたのは、どう解釈するん しった。 と、早苗は、、 1 12

10. 十津川警部 裏切りの駅 (ノン・ノベル)

くさか 東京、特に中央線沿線のテレクラで、拾ったに違待っていた日下刑事が、二人に、顔写真入りの登 しオし 録カードを見せた。 そこで、その地区のテレクラに行き、問題の写真そこにあった少女の名前は、日高ユキ。 を見せて歩いた。 私立の co 女子高校の三年で、十七歳である。 だが、なかなか、写真の少女は見つからなかった。 こちらの写真は茶髪ではないが、店の経営者によ テレクラはやたらに数が多かったし、店の人間が、ると、最近、染めるようになったという。 秘密にしたがるからだった。 「どうやら、学校にも行かないらしく、いつも店へ 新聞に少女の写真をのせれば、一番の早道かも知来ていましたよ。仕事も、遊び感覚で、やっていた れなかったが、 相手は、未成年である。それに、行ようです」 方ひろみを殺した犯人とも思えない。それを考える「今日も、来ていますか ? 」 と、写真は、発表できなかった。 と、十津川が、きいた。 刑事が増員され、テレクラは、引き続いて、調べ 「それが、ここ四、五日、顔を見ていませんね」 られた。 「七月三十一日は、来ていましたね ? そして、昼 八月五日になって、やっと、期待する結果が出た。すぎに電話があって、彼女は、相手の男と話がつい 池袋にあるテレクラで、店に登録している女子高て、出かけて行った。そうじゃありませんか ? 」 生の一人に、似ているというのである。 「ええ。彼女は、仲間の女子高生に、何でも買って 十津川と亀井が、その店に急行した。 くれそうなおじさんこ会 、こ一丁 / \ といって、出、かけ・ 102