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検索対象: 子ども主体の明日の学びのために
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1. 子ども主体の明日の学びのために

秋山和雄 ( あきやま・かずお ) 日本福祉大学社会福祉学部卒。武庫川女子大学大学院 ( 臨床教育学専攻 ) ・ 日本福祉大学大学院 ( 心理臨床学専攻 ) 修士 ( 臨床教育学・心理臨床学 ) ・キャ リアコンサルタント 1951 年大阪府生まれ。大阪府庁にて勤労青少年育成、職業カウンセリング、 障碍者就労支援、労働行政事務等の業務に従事。大阪府退職後、ひきこもり親 の会専属カウンセラー、名古屋工業大学学生生活課カウンセラーを経て、現在 東京リーガルマインドにて公務員試験のリアル面接官。専門キャリア教育・ ひきこもり支援・公務員試験研究 研究・著作業績 く研究〉 ・平成 4 年度 ( 1992 年度 ) 、旧労働省外郭団体の日本労働研究機構にて「高校 中退研究」を元明治学院大学教授渡辺三枝子等 4 名で研究する。 ・「若者の職業問題と不就労ー特に不就労概念について」日本社会福祉学会第 40 回全国大会 1992 年 ・「不登校、ひきこもり、不就労」日本生活指導学会第 11 回全国大会 1993 ・「障害者の就労とワークパーソナリティ」日本社会福祉大学第 26 回学内学会 1994 年 ・「ひきこもりにおける各種の関係性の変化とキャリアカウンセリング」日本 キャリア教育学会第 34 回研究大 2012 年 ・「若者雇用情勢の悪化に伴う今日的なひきこもり考察のためのひきこもり定 義について」日本臨床教育学会第 2 回研究大会 2012 年 ・「「親がひきこもり当時者を受け入れる過程」の量的研究法からの考察」日 本臨床教育学会第 3 回研究大会 2013 年 ・「親がひきこもり当時者を受け入れる過程」の質的研究法からの考察ー 2 」 日本キャリア教育学会第 36 回研究大会 2015 年 ・「知識基盤社会のおける教育改革とキャリア教育の在り方」日本キャリア教 育学会第 39 回研究大会 2017 年 220

2. 子ども主体の明日の学びのために

子ども主体の明日の学びのために ように「学業から雇用システムへの移行の不安定化」が進行 ・一 0 第 3 節若者が大人になるシステムの崩壊 雇用の流動化や学業から雇用システムへの移行の不安定化 は、労働や職業生活を巡る問題ばかりではなく、若者の子ど もから大人への移行過程全体を大きく揺るがした。 90 年代 後半まで、日本の場合、日本型 ( 戦後型 ) 青年期モデルある いは「戦後型青年期」と呼ばれる「若者が大人になるシステ ム」が機能していたが、日本型雇用システムの変容により解 体した。 宮本 ( 2012 : 64 ) は「 1960 年代から 70 年代初頭にわたる高 度経済成長期に独特の枠組みをもって出現した青年期を < 日 本型 ( 戦後型 ) 青年期モデル > という。日本型青年期モデル は、日本の雇用制度を前提として成立した。高度経済成長期 に確立した日本の雇用制度は、新規一括採用、終身雇用制、 年功序列賃金体系によって構成されていた。この制度は若年 層にとって、①最終学校卒業前に学校で就職先を斡旋されて 送り出される、②卒業と同時に入社する ( 学校と職場の直結 ) 、 ③社内で職業訓練を受ける、などの特徴をもっていた」とし 0 そして、乾 ( 2000 : 20-21 ) は「『生徒・学生』 ( = 親の保護 のもとにおかれる存在 ) と『社会人』 ( = 親の保護からはず れた存在 ) とを『最終学校卒業 = 就職』を境に明確に峻別す るものだった。そこでは就学期間中は経済的側面を含む生活 全般を基本的に親に依存するとともに、卒業 = 就職は多くの 場合は経済的な側面ばかりでなく家を離れることを含め生活 152

3. 子ども主体の明日の学びのために

子ども主体の明日の学びのために 大きなインパクトを持った。安い賃金の中国人労働者でもで きるような仕事は、賃金の高い日本人にやってもらうわけに はいかなくなったのである。日本人にやってもらうべき仕事 は、高い賃金で雇用してもなおかっ利益が出るような付加価 値の高い、つまりグローバルな市場で高い値段で売れる製品 やサービスということになる。そうした製品やサービスを生 産することでしか、日本国内の生産活動は成り立ちにくくな り、日本はここでも付加価値向上による競争をしなければな らなくなったのである。冷戦崩壊後にはグローバル競争のレ ベルが変わり、それまでとは程度の違う一段と厳しいコスト 競争を強いられる中で、高い付加価値を生産することのでき るような能力を持った人が、優先的に雇用される」とした。 1995 年に日経連 ( 日本経営者団体連盟 ) が発表した報告 書「新時代の日本的経営」と、そこで提唱された雇用モデル は、このような背景があるとも理解できる。 事実、その後労働基準法や労働者派遣法など労働法制の改 正もあって、日本の企業の雇用システムは、ほほこの青写真 のとおり進んでいる。 日経連によると雇用システムを次の「長期蓄積能力活用型」 「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」に分けた ( 表 -1)0 「長期蓄積能力活用型」の対象は、管理職・総合職・技能 部門の基幹職とし、昇給のある終身雇用制とした。 「高度専門能力活用型」の対象は、企画・営業・研究開発 などの専門部門とし、昇格なしの年俸制で有期雇用契約とし 最後に「雇用柔軟型」の対象は、技能部門や販売部門の一 般職とし、昇格のない時間給制の有期雇用制とした。 148

4. 子ども主体の明日の学びのために

産業主義社会から 知識基盤社会へ 日本は、明治維新、戦後に続いて現在第三の教育改革を遂 行している。今の教育改革は、社会主義体制の崩壊・ IT 技 術の進行によるグローバリゼーションの中、ポスト産業主義 社会が求める国民の素養 ( 労働能力等 ) を育成するものでも ある。 明治の初期、西洋諸国に遅れて近代化を推し進めた日本に おいて、封建的な身分制度を打破し、身分や家柄ではなく、 その個人が有する資質にもとづき、努力を重ねて能力を発揮 していく道を切り開いてきた。まさしく、教育を通じて「メ リトクラシー」の社会へと変換させてきたのである。 さらに、戦後は主権在民の思想にもとづき、各種の教育改 革を推し進め 1960 年代の高度経済成長を経て、産業主義社 会を実現したのである。 乾 ( 1990 ) によると、 70 年代後半から、多元的能力主義 が偏差値に代表される一元的能力主義に移行したという ( * 詳細は、第 1 部第 1 章を参照 ) 。 そして、高度経済成長期に確立した日本型雇用システム ( 終 身雇用制、年功序列賃金を柱とする ) は、新卒者を一括採用 しその後企業における OJT と OFF - JT を組み合わせた研修 制度のもと、ジョブローテーションを進めて人材育成を図る こととなった。そのとき、人材採用の指標として、各種の職 136

5. 子ども主体の明日の学びのために

第 2 章教育改革をもたらした要因 つぎつぎと機械に取って代わられた。最後まで人間に求めら れるのは、勘やひらめき、創造性、判断力、共感性、対人能 力など、人間特有の能力である。これらはいずれもアナログ 的な能力、あるいは暗黙知に属する。デジタル化が進めば進 むほど人間にはむしろアナログ的な能力が求められる、とい う逆説がある。そして、アナログ的な能力の源泉として大き な役割を果たしているのは、いわゆる個性である。極論すれ ば、個性がなければ新しい価値は生まれないといってもよい。 工業化社会では排除の対象であった個性が、ポスト工業化社 会 ( * 筆者 . 注 : 知識基盤社会と同義語 ) では価値の源泉へ と変わったのである」 ( 太田 2010 ) 。 この変化に社会や地域が適応できない時、アメリカのラス トベルト地帯を想像するのは私だけであろうか。日本におい ても、産業空洞化により地方が疲弊しはじめたのは、そう遠 くないことである。 1960 ~ 70 年代、アメリカの中産階級の豊かな生活を保障 したのは鉄鋼、電機、自動車産業の隆盛であったが、「 1980 年には、日本からの輸出に大きく競争力を落とすことになり、 それが大きな衝撃を与えることになった。それから 10 数年 後、中国の台頭によって日本の製造業も重要な試練に直面す ることになった。 ( 中略 ) 製造業は、中等教育卒業者が、生 涯をとおして熟練を積み、安定した生活を得られるキャリア の中軸になっている。その規模自体が縮小することはきわめ て大きな影響を与えることになる」 ( 金子 2009 : 42 ) を銘記し なければならない。 145

6. 子ども主体の明日の学びのために

子ども主体の明日の学びのために 能力観の変化を軸に鳥瞰し、そのひきこもり像をどのように 精神医学者は認識していたのか。そして、そのことが、ひき こもり定義をはじめとするひきこもり像にどのように反映さ れ、その評価と支援にどうつながったのかを見てみたい。 第 2 節産業主義社会のひきこもりの様態と要因 乾 ( 1990 ) が指摘したように、日本社会は 1970 年代に多 元的能力主義から偏差値に代表される一元的能力主義に転換 0 それは、高度経済成長期に確立した日本型雇用 ( 具体的に は終身雇用制、年功序列賃金を柱とする ) において、新卒者 を一括採用する際の指標として、偏差値を採用したためであ る。 そのとき偏差値などの学力指標は、柔軟で素直な人材をも 測ると信じられていたのである。事実、 1990 年ごろまでは、 優秀で素直な人材と偏差値などの学力指標とは相関が高かっ たのである。 そして個々人は、学歴・学校歴、資格などによる評価と選 別から、学校教育内部で分岐した各ルートや、学校教育外部 の社会、とくに職業世界の各地位に配分されてゆくのである。 その職業世界では、新規採用者として採用されると終身雇用 制、年功序列賃金もあって、その後の人生を見通せた。まさ しく、「大きな物語 ( メイン・ストリーム ) 」 ( * 1 ) があっ たのである。そのため、人々はより高い教育段階や、より偏 差値の高い学校に入学しようとした。そのことが「いい高校、 いい大学、いい会社、幸せな人生」という大衆規模での学歴 ( 学校歴 ) 信仰を巻き起こした。それにより日本社会は、激 074

7. 子ども主体の明日の学びのために

子ども主体の明日の学びのために C 0 1 u m n 「 N P O 法人『なでしこの会』 月例会に参加して」 070 さいして、朝日新聞東京本社にも送付した。 であった筆者が、平成 21 年 7 月朝日社会福祉賞の廃止に た平成 10 年前後から、朝日社会福祉賞の大阪地区の推薦人 この工ッセイは、「なでしこの会」会報に掲載された。ま 4 回 ) と発表させていただいた。 第 36 回 ) 、日本臨床教育学会研究大会 ( 第 2 回、第 3 回、第 この論文から、日本キャリア教育学会研究大会 ( 第 34 回、 5 千字、引用文献 60 冊を書き上げることができた。 修士論文は、ひきこもりの親の会をテーマとして、約 9 万 大学院であり、様子も解っていたので、本当によく勉強した。 武庫川女子大学 ( 平成 10 年から 12 年 ) に続いて二つ目の 鉄を利用した通学だった。 か拾ってもらった母校に、平成 20 年入学した。新幹線と近 そうだ。試験日を間違えていて、受験できなかった。どうに 関西福祉科学大学は、「合否通知」さえなかった。それも ( 面接 ) で落ちた。 立命館大学は、第 1 次試験 ( 筆記 ) は合格したが、第 2 次 院を受験した。 大学、地元柏原の関西福祉科学大学、日本福祉大学の各大学 大阪府庁を若年退職し、心理系大学院で学びたく、立命館

8. 子ども主体の明日の学びのために

子ども主体の明日の学びのために 多いためではないだろうか。 それに対して、今般の教育改革は学習科学に依拠し子ども の学ぶ力を引き出すものである。そして、「主体的で対話的 で深い学び」から、自己やイ中間との対話を通じて社会格差に 伴う経験や意欲の差を埋めていく。例えば、数人で班に分か れて具体的な問題 ( オーセンティックな課題 ) を解決する学 習の場合、仲間と共に経験を共有することで自己の経験枠を 超えられるし、具体的であるからこそ、どの子にも学ぶ意欲 を培うことができうる。このような学習から「生きる力」を 自分の人生と社会の両方を豊かにするものとして、どの子ど もも学校教育を通じて身に付けるべき力としている。 ところで、ひきこもりを長らく取材しているジャーナリス トのマイケル・ジーレシンガーはひきこもりに同質化の文化 が関係していると言う。それは、「アメリカにおいて人が違っ ていることが当たり前であるように、日本も、人々が異なる 長所も欠点もあるということを受け入れ、それぞれが自分自 身のスキルを活かして成功することや、自分の能力を開花さ せることを認める社会となるべきではないだろうか」 ( マイ ケル 2013 : 23 ) と指摘する。 いま日本社会は、マイケル・ジーレシンガーの言う異質や 多様性を認める社会に行くときの過渡期である。特に、若者 に関しては、 1990 年以降のグローバル化の中、「日本型雇用 システム」や「戦後型青年期」の崩壊により、若者には「メ イン・ストリーム」からの「大きな物語」もなくなった。 そのため、奈須 ( 2014 ) の指摘するように「 ( ポスト産業 主義社会では ) 産業主義社会の『大きな物語』の呪縛から離 脱して、自身の幸せを闊達に追究できる自由を手にする」多 206

9. 子ども主体の明日の学びのために

第 2 章教育改革をもたらした要因 うせい ・松下佳代 2010 く新しい能力 > は教育を変えるのか学力・リ ・コンピテンシーミネルヴァ書房 アフン一 ・成瀬健生 2014 雇用ポートフォリオ提言とこれからの雇用問題 「連合総研レポート』 N0295 2014 年 7 ・ 8 月号合併号 ・成川秀明 2014 日経連『新時代の日本的経営』に対する連合の 対応「連合総研レポート』 N 。 295 2014 年 7 ・ 8 月号合併号 ・宮本みち子 2004 ポスト青年期と親子戦略勁草書房 ・宮本みち子 2012 若者が無縁化する一仕事・福祉・コミュニティ でつなぐちくま新書 ・乾彰夫 2000 「戦後的青年期』の解体ー青年期研究の今日的課 題ー雑誌「教育」 3 月号国土社 ・児美川孝一郎 2007 権利としてのキャリア教育明石書店 ・尾木直樹 2002 「学力低下」をどうみるか NHK ブックス ・苅谷剛彦 2001 日本は階層社会になる一「ゆとり教育」がもた らすインセンテイプ・デバイト『論座 68 号』朝日新聞社 ・金子元久 2006 社会の危機と基礎学力東京大学大学院教育学 研究科基礎学力研究開発センター編「日本の教育と基礎学力ー危 機の構図と改革への展望 21 世紀 CEO プログラム」岩波書店 ・梶田叡一 1985 自己教育のための教育明治図書 161

10. 子ども主体の明日の学びのために

第 2 章教育改革をもたらした要因 全般の親の保護からの離脱を伴っていた。 ( 中略 ) 独身寮な どの住居提供を含む企業の福利厚生と『生活指導』的労務管 理が親・家族にとってかわるかたちで若者を保護 = 管理した。 ( 中略 ) 『戦後的青年期』は、基本的に家族・学校・企業のト ライアングルに枠づけられ」ていたと言う。 宮本が日本型青年期モデル、乾が「戦後型青年期」と命名 したシステムをもう少し詳しく見ておこう。 1990 年代以前の日本では、学業から雇用システムへの移 行は、日本型雇用システムが機能しており雇用の流動化もな く部分就労などを経ないストレートな移行であった。生徒・ 学生と社会人とは明確に峻別され、「労働と非労働の境界の 曖味化」はなく、就職し経済的に自立することが親からの自 立を意味した。地方から就職する者には、独身寮なども整備 されており、離家をも意味することになった。 企業は、新規一括学卒採用にあたり、産業主義社会のパラ ダイムであった答えのある問題を正確に迅速に解くことがで きる必要な知識や技能を備えている人材かを学校歴や偏差値 などの指標を使い選抜した。 選抜された新規学卒者は、 OJT と OFF-JT を組み合わせた 研修のもと、職業生活をスタートさせる。そして、ジョブロー テーションごとに OJT と OFF-JT を繰り返しながら、終身 雇用制の中で昇進・昇格を積みどのような職業人生を歩んで いくことが見えたのである。このような終身雇用制の訓練体 系 (OJT と OFF-JT) のもと企業は若者を育て上げるため、 若者を囲い込むような労務管理もあった。さらに訓練体系 (OJT) から先輩との関係は指導を受けるだけでなく、日常 生活の相談にも乗ってもらえる濃厚かっ身近な存在であり、 153