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検索対象: 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門
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1. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

ブラインドの隙間から光が差し込み、スワーブリックがギラギラ輝き始めた。彼は金のカフスポタ ン、金のネクタイピン、金の時計を身に着けていた。金は、普遍的なステイタスシンポルであり、富 の象徴だ。ここにいるのは、自分の成功を目に見える形で世の中に示さずにはいられない男だった。 遺産相続人はリスクを嫌う 最初に紹介した投資家の分類は、どのように収人を得ているかに基づいていた。スワーブリックと 違って、—企業やカフェの経営者で五〇万ポンドの資金を持っている人たちは、リスクに対して まったく異なる態度を示す。彼らにとって重要なのはリスクの大きさではない。〈どれくらい〉のリ スクがあるかではなく、〈どのような〉リスクなのかが重要なのだ。 第一の分類グループは、資産を相続した人たちゃ、大企業に勤めることで財産を築いた人たちで構 成される。自分で事業を立ち上げるというより、すでに確立された企業で長年働いてきた人たちだ。 大企業の重役や社内弁護士などは、自分の資金を投入してビジネスを起こさなくても、多額の報酬を 得ることができる。 こうした人たちはリスクを嫌う。自分が懸命に働いて稼いだお金を失うと考えただけで、恐怖にか られてしまうのだ。彼らは信頼できるファイナンシャル・アドバイザーとの関係を築くほうを好む。 ごく自然に資産の分散に向かい、未知の領域には足を踏み入れたがらない。 このグループには、有閑階級も含まれる。なかでも最悪なのは、お金の苦労を知らない親に育てら れた子どもたちだ。彼らは相続した財産で何不自由なく暮らし、最後は友人もなく孤独な生活に陥る 273 第十七章頭脳ゲーム

2. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

・・経済 貸し付け 復 回 四日目、午前九時四五分 ニューヨーク、 < >< 銀一何 私は部屋の後方にちらっと視線を向けた。もう一 人遅刻した者が、、、フリーフケースとスポーツバッグ、 それにコーヒーを抱えてこそこそ人ってきた。彼は カールの隣に座り、彼の出口をふさいだ。そろそろ 訓練テクニックの秘策を使う頃合いだ。ティーチン グに非常に効果的であるだけでなく、私にとっては 考えるための貴重な時間ができる。 「みなさん、四人ずつのグループを作ってください。 経済が不況期に人ったときに何が起こるか、ディス カッションをしてもらいます。スケジュールの都合 上、余裕がないので、時間は三分だけです」 私はカールがグループの一つに組み込まれてし まったことに気づくより先に、ドアから外に出た。 急いでエミリーに電話をかける。窓をたたく音がし 327 第二十章ポトムライン

3. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

なかった。′ 欲のために、あの金塊に含まれている不幸が見えなくなっていた。 エミリーが続けた。「ガイは旅に出るたびに、ホームレスや銀行の外で眠っている人たちの姿を目 にしていた。、 カイに良心があったかどうかは疑わしいけれど、彼は金融市場が道徳的に間違っている ということはわかっていた。富の不平等が彼の心にひびを人れたのね。彼は貧しい人たちに一〇〇万 ポンドを渡したかった。それはガイの顧客にとっては小銭みたいなものよ。でも、それだけあれば、 カンポジアでは腎臓病の患者のための透析機器が五十台買える」 「それで彼は何をしたんだい ? 」 「百人の顧客から一万ポンドずつ盗んだの。そして、何カ月かかけて自分の銀行から現金を引き出し た。それから休暇中にカンポジアへ行って、仏教寺院に現金を詰めたスーツケースを置いて帰った。 僧侶たちならお金を自分の懐に人れたりはしないと考えたのねー 「でも、ガイがしたことは間違っている。君はガイのことを現代のロビン・フッドとでも思うかもし れないが、警察から見れば窃盗犯だ。まだ追跡できていない巨額の資金が残っているはずだ」 「たしかにそう。ガイは同僚のディレクターたちに、金融監督機関が調査に入った場合に備えて、古 い書類と顧客記録を処分する必要があると提案したわ。絶対に秘密裡に、それも週末の間にすべて終 わらせなければならないと。ガイは他のディレクターたちがスキー旅行に行っている間に自分がその 仕事を手配すると申し出た。そして、莫大な額の現金を盗みとったというわけ」 二〇〇ドル札で一〇〇万ドルは一〇キロの重さになる。それだけの現金を盗むには大型トラックが 必要だ」 3 7 6

4. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

・おそらく高齢者で、貯蓄に依存している。すでに引退しているので投資からの収入を必要とす る。 ・大きなリスクを負うことはできない。キャピタルゲインを求めて株式投資をするのなら、リス クを引き受ける覚悟が必要だ。将来的な利益を求めるのであれば、値下がりによる損失にも対 処できなければならない。 ・収入を求めて投資している。彼らにとっては、これが現在の唯一の収入源かもしれない。誰 だって自分のお金を失いたくはないが、投資で損失を出せばそれで生活が破綻してしまう人も いる。 ・安定に価値をおく文化的背景で育った。余暇をカジノや競馬場でのギャンプルに費やす起業家 に育てられた人たちかもしれない。あるいは四十年間公務員として同じ職場で働き続けた親の もとで育った人たちかもしれない。育った環境があらゆる選択に大きな影響を与える。 ・誰か別の人のために投資している。高級車を買うために手つ取り早く儲けようとするのと、孫 の教育費を稼ぎだそうとするのとでは大きな違いがある。 列車は二十分も停止したままだった。スイスの鉄道が遅れることはめったにないので、なぜ止まっ fast facts

5. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

あるいは一七三〇年だったかもしれないし、一六九三年だったかもしれない。記録が残っていないの で、誰にも正確なところはわからないの。使う暦も違っていたしね。米農家は収穫時期より前に、米 を寺院の料理人に売っていたの。なぜって ? まず、農家は土地を借りたり、種を買ったり、賃金を 支払ったりするのに現金を必要としたから。早い時期に人る現金なら何でも歓迎されたはずよ。 第二の利点、そしておそらく農家にとって最も重要だったのは、自分の米を決まった価格で買って くれる買い手の存在が保証されることだった。わかるでしよう、それが〈先物〉取引の仕組みよ。買 い手と売り手が今日、価格について合意する。でも、品物は将来の特定の日付に手渡されるというこ 私は身を乗り出して質問した。「なぜ寺院の料理人は、先物を利用したのですか ? 」 「僧侶たちに食べさせる米を確実に手に人れる必要があったからよ。価格がはっきりしていることも 魅力だったはず。もし不作のために米の価格が突然高騰すれば、料理人はもっと多く支払わなければ ならない。だから、先物はつねに安全を意味したの。契約する双方にとって、リスクを避ける一つの 方法だったのよ [ レナは突然、二者間の取引から、主要商品市場が生まれた経緯に話を切り替えた。 「近代的な商品取引市場が生まれたのは、好景気にわいた一八四〇年代のアメリカ中西部よ。大草原 地帯の小麦農家が、東海岸の急速に発展する都市からやってくる買い手と会う場所を必要としたのね。 鉄道の敷設によって、買い手と売り手がシカゴに集まれるようになって、居酒屋やホテルで非公式に 行なわれていた取引が公式化されていったの。人々は〈現金取引市場〉で取引を始め、その場で直接 と 1 5 6

6. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

話ほど、参加者の心をつかまない。 ここには明らかにガ 十九人の参加者は、成功を約東されたも同然だった。そのうちの何人か イ・アバクロンビーも含まれるーーーは、金融業界に確かな足跡を残すことになるだろう。しかし、一 人だけは違っていた。 ハンのごとく攻撃 どのグループにもそうした者が一人はいる。超優秀な人間計算機で、チンギス・ 的だが、人間味と社交性には欠ける。私のクラスでは、それがロビン・べアフィールドだった。コー スの最初の数日間、他の生徒がやたらと親しみやすさを振りまいているときに、ロビンはあまり印象 に残るような行動をとらなかった。グループ活動のときには姿を消し、二人一組の課題では素っ気な い答えしか口にせす、自分からは何一つ質問しようとしない。しかし、ロビンは並外れた数学的スキ ルを持ち、毎日早く来て事例研究に取り組んでいた。 る げ 彼はグッドマン・ロゼルに来る前は、商業銀行で二年ほど働いていた。給料を何に使っていたか、 を ッ ハウスを買いたいと思っている こんなふうに話していた。「ほとんど貯蓄しました。将来トレーラー 両親に貸せるように」 親思いの気前のいい息子なんだな、と私が言うと、彼はこう答えた。 見 「たしかにそうですね。基本金利に上乗せ一 % で貸すつもりですから , 章 ロビンはすぐにクラスメートを苛立たせ始めた。シスーン・ウォードという法学部出身の女性が彼九 のデスクにペンを置き忘れたとき、彼はきつい口調でそれを指摘した。ウリが話すときにはいつも舌第 打ちし、アウグスト・アストウディージョが話す英語の発音の間違いを正した。彼はクラスメートた

7. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

か、アルコールやドラッグの更生施設に送られる。 起業家はリスクを愛する 第二のグルー。フは、自分のカで財を成した人たちで構成される。事業の経営に成功し、おそらくは その会社を高額で売却することにも成功した人たちだ。広告代理店の共同経営者やドアに自身の名前 を掲げたマーケティング専門家らが思い浮かぶ。彼らはリスクを負うことを当たり前と考え、むずか しい決断を下すことができる。 起業家は狭い分野に投資を集中させる傾向があり、自分の判断に自信を持っている。彼らにとって は投資の決定を自分で下していると感じられることが重要だ。徹底したリサーチをして、ファイナン シャル・アドバイザーにあれこれアイディアを押しつけて困惑させる。 医師ほど自説を曲げたがらない職業グループが他にあるだろうか ? ギリシャ系キプロス人ほ ど頑固な人たちが他にいるだろうか ? 投資クラブほど議論好きな集まりが他にあるだろうか ? キプロスのニコシアでの会議に出るのは気が進まなかった。あるファンドマネージャーが そう、ご想像どおり 非常に利益を上げている投資クラブを運営しているギリシャ系キプロス case study 274

8. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

マス・ ーディの『キャスターブリッジの町長』の中では、商品の価格が二人の主要登場人物の運命 に直接関係してくる。 マイケル・ヘンチャードは大物の小麦商人。通常、毎年の小麦の需要は一万ブッシェルほどだった。 ヘンチャードはこの年の収穫が悪くなると確信し、一ブッシェル五シリングで取引されているときに 買うことにする。 需要が増すと価格を押し上げる ヘンチャードが大口購人したために、小麦の総需要は一万から一万五〇〇〇ブッシェルに増した。 しかし、小麦の供給量を一夜にして増やすことはできない。したがって、ヘンチャードが買えば買う ほど、それだけ多く支払わなければならない。他の商人たちはよその町で小麦を買って供給量を増や継 したが、一万五〇〇〇には届かない。ヘンチャードが最後に購人したときの価格は一ブッシェル八シ を 権 山 リングになり、それが新しい市場価格になった。 し 供給が増えると価格は下がる 地 しかし、ヘンチャードの分析、ーー地元の予報屋を訪ねて知恵を授けられた は間違っていた。彼意 章 が八シリングで仕人れるやいなや、太陽が顔を出して黄金の畑を照らし出した。豊かな収穫が供給量 九 第 を大幅に増し、価格は一ブッシェル四シリングにまで下がる。

9. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

景気後退から不況へ スマートにスーツを着こなした先ほどの男性が二度目の質問をした。「不景気の間、政府には何が 起こりますかワ・ 「失業率が上がるため、政府は社会福祉に予算をつぎ込まなければなりません。そして、働く人が少 ないために税収人も落ち込むという典型的なダブルバンチを被ります。法人税収人も同様に減少する でしよう。企業が利益を上げるのがむずかしくなるからです。破綻するところも出てきます。経済の すべての参加者ーーー個人、企業、政府ーーがいよいよ悲観的になるというわけです」 鉛筆のようにやせ細った、ロシア語なまりのある別の女性が手を上げた。「景気後退には正確な定 義というものがありますか ? 」 「景気後退の定義の一つは、四半期のが二度続けて下がることです ( 大ざっぱにいえば、図の ン 点線がということ ) 。全体的な傾向が半年以上、下降していれば、その国は後退期に人ったと ム 考えることができます」 「景気後退と不況の違いは何ですか ? 」。同じ女性が続けてたすねた。 章 十 「不況はの大きな落ち込みに続き、経済停滞が長期におよびます。個人にも国全体にも深刻な 心理的影響を与えることになります。雇用と富に対する一般的な期待が下がり、人々は経済に投資す第 るよりも貯蓄しようと考え始めます。この傾向が実際には不況サイクルを強化するのです ,

10. 悪魔の取引 : ある投資詐欺事件のストーリーで学ぶ金融入門

法だということだ。同時に非常に大きな利益が得られる方法でもあり、見つけるのも証明するのもむ ずかしい。天秤にかけてみろ。高額ポーナスとちっぽけなリスク。そそられるだろう ? 私はその質問には答えず、頭の中で自分なりの結論を引き出した。 一九八九年夏のロンドンで思い出すのは、度重なる地下鉄のストライキだが、ジェリーはストライ キだからといって部下が遅刻するのを許そうとはしなかった。これは、在宅で仕事をすることなどま だ夢物語だった時代のことだ。ジョナサン・スパーリアはウインブルドンのアパートからオフィスま で、一六キロの距離をローラーブレードで通勤していた。しかし、チームに貢献しようとする彼の懸 命な努力は、必ずしも無条件で受け人れられたわけではなかった。ある日、彼は着替えを持ってくる のを忘れて、前の日の服を着たままだった。スウェットに染みついた汗のにおいが、フロア全体に広 っこ。 カ子ー ジョナサンがサイワイをクビにならずにすんでいたことは、ペリンにとって大きな謎だったようだ。 クレティン 「大まぬけのパラドックスみたい」。ある晩、彼女の家で一緒にピザを食べているときに、ペリンはそ う言った。正しくは「クレタ人のパラドックス」〔訳注〕「クレタ人はいつも嘘をつく」とクレタ人が言えば、 その言葉自体も嘘になってしまうという矛盾〔だが、今回は彼女の言葉を訂正する気にはならなかった。 未公開株式 ジェリーは翌日のランチタイムに、ブラックフライアーズに来るようにと私に言った。「未公開株 133 第八章壁の崩壊