侵略戦争 - みる会図書館


検索対象: 戦争と平和
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1. 戦争と平和

仮に将来、日本が中国に匹敵するくらいの軍備を持って互角に戦えたとしても、そん 2 な戦いをして日本に何か得るものがあるのでしようか。先程書いたように、経済はガタ幻 ガタになるだけでしよう。そもそも中国に侵攻する目的がわかりません。空気も水も著 しく汚染されている国を占領しても利益はありません。それとも大量の中国人を奴隷に して、日本に連れ帰って、強制労働させるとでも一一一一口うのでしようか。とにかく、中国に 侵略戦争を仕掛けるプランはほとんど有り得ないということがわかっていただけたかと 思います・。 次に、フィリピンや東南アジア諸国に侵略戦争を仕掛けるというのはどうでしよう。 たしかに戦力的には、日本はそれらの国よりもまさっています。しかし、もし日本がそ れらの国に侵略戦争を仕掛けたら、どうなると思いますか。それこそ、世界の国が黙っ ていないでしよう。東南アジア諸国と同盟を結んでいる国は、日本を攻撃するはずです。 仮に日本に直接攻撃がなくても、あらゆる貿易がストップします。すると、石油も鉄も ゴムも食料も日本に入ってきません。ある護憲派の人にそう一一一口うと、彼は、「いや、日 本はインドネシアを占領して石汕などの物資を奪うから大丈夫だと思っているはすだ」 と一一一口いました。

2. 戦争と平和

衆を虐殺することが稀有だったことに起因しているのではないかと考えています。 日本史にはさまざまな戦がでてきます。江戸時代以前、戦国時代には日本中で戦が起 こっていたように思っている方もいらっしやることでしよ、つ。たしかに、日本全国で大 名たちが争っていたのは事実です。しかし、実は戦死者はとても少ないのです。単一民 族同士の戦いだから、ということもその理由のひとっかもしれません。 ーセントを失えば勝負は決しました。武田信玄と上杉謙 戦国時代の戦では、軍の一ヾ 信が戦った有名な川中島の戦いでは、濃霧の中の遭遇戦になった第四次の戦い以外では、 ほとんど戦死者が出ていません。 明治以前で最も大きな戦といえば、関ヶ原の戦いです。東西合わせて二〇万人近い兵 ン マ隊が激突した戦ですが、半日ほどで終結し、戦死者も , ハ〇〇〇 5 八〇〇〇人と言われて グ います ( 全体の数パーセント ) 。この戦死者数については諸説あるようですが、敗けた 西軍が皆殺しにされたりはしていません。 ロ ゼ 世界の戦争の歴史を見れば、敗軍の将はもちろん兵士も皆殺しとなることのほうが多 一いのです。前述のハンニバルはロ 1 マ軍を何度も包囲殲滅し、何十万人と殺しています。 また戦争では一般市民も虐殺されるケースが珍しくないというか、むしろ普通のことで

3. 戦争と平和

第三章護憲派に告ぐ 護憲派の人たちだけが、「九条を失くせば、日本は戦争をする ! 」と思い込んでいる のです。 しかし護憲派の人たちが言う「改憲派の人たちは戦争をしたがっているーという言葉 は、一部に正しいところがあります。それは私たち改憲派が「もし他国の侵略を受けた 時、武力でもって抵抗できる国にしたい」と考えているからです。ただ、これは「戦争 をしたがっている」のではなく、「自衛戦争ができる国にしたい」と思っているのです。 そして、これはまことに奇妙なことなのですが、護憲派の人たちも改憲派の人たちも、 実は同じ目的を持っているのです。それは「日本が平和な国でありたい」というもので す。改憲派と護憲派の目的が共通しているとは不思議でしよう。 問題は、同じ目的を持ちながら、なぜ、まるで違う考えになるのか、です。それは 「リアリスト」であるか「ロマンチスト」であるかということなのです。 ここに異なった憲法を持っ二つの国があったとしましよう。その一つはこういう憲法 「私たちは決して侵略戦争をしない。しかしもし他国から侵略されたら徹底して戦う」 幻 5

4. 戦争と平和

別的自衛権のみでやっていく国になっていることは想像ができません。よってこのプラ ンも実現可能性はゼロに近いです。 では個別的自衛権で頑張っている北朝鮮に侵略戦争を仕掛けるというのはどうでしょ う。陸海空軍の戦いでは勝てるかもしれません。しかし北朝鮮は核を持っています。も し侵略戦争を仕掛けたら、たちどころに核ミサイルを日本に撃ち込む可能性が極めて高 いのです。東京と大阪に二発の核が落ちただけで、日本のダメージははかりしれません。 それだけの犠牲を払って北朝鮮を侵略するメリットがどこにあるのか全然わかりません。 しかも、これも中国とロシアが黙って見ているとは考えられません。したがってこのプ ランもまるで駄目です。 台湾を侵略するとい、つのはど、つでしよ、つ。これもアメリカが黙っていないでしよ、つし、 仮にアメリカが手を出さない場合は、中国 ( 中華人民共和国 ) が台湾防衛を口実に日本 に宣戦布告してくるでしよう。 こうして具体的に考えていくと、「日本が侵略戦争をするーというのは、どれもこれ もまるで実現不可能なことで、空想以前のものであるのがわかります。実は改憲派の人 たちは皆それを知っています。 幻 4

5. 戦争と平和

れは正しくはありません。 大東亜戦争は侵略戦争ではなく、自衛戦争でした。これはマッカ 1 サー自身が戦後、 アメリカの上院で言っていることです。また国際法学会の議長を務めたこともあるラ ダ・ビノード ・パール判事は、東京裁判の意見書の中で、日本がアメリカに突き付けら れたハル・ノートについて、「これと同じ通牒を受け取った場合には、モナコ公国か、 ルクセンプルク大公国のような小国でさえも、アメリカに対して武器を手にして立ち上 がったであろう」と言っています。 大東亜戦争が日本の自衛戦争であったか侵略戦争であったかの話は、論じると本一冊 では足りなくなるので、ここではひとます擱きます。 ただ、国を守る力のない国家は、どんな運命を辿ったのか、アジアやアフリカの歴史 が証明しています。多くの国がヨーロッパの列強に、国土を奪われ、虐殺され、奴隷に されたのです。南北アメリカ大陸でもインディアンたちは大量に虐殺され、同じ目に遭 いました。また現在でも、チベットやウイグルは国土と主権を奪われ、多数の民衆が虐 殺されています。 彼らはなぜそんな目に遭わなければならなかったのでしようか。様々な理由があるの 788

6. 戦争と平和

まだ長いのではないかと思っているほどです。 私の理想は、憲法など文章にすべきでないと思っています。つまりイギリスのように 「不文憲法」こそが究極の姿であると考えています。なぜなら、国民の常識だからです。 そしてその常識は時代とともに変わるので、イギリスなどは憲法改正する必要もないの です。 本来、侵略戦争などしないのは当たり前です。また侵略されたら戦うのが当たり前で す。それを明記していないからといって、「憲法に書かれていないから、侵略してもい い」とか、あるいは「侵略されても戦うとは書いていないから抵抗できないはずだ」な どと言うのは、実は愚かで成熟していない国家なのです。しかしそう書かねばならない のが法律です。 ただ、私の九条私案に対して、「そんな憲法を作れば、徴兵制が敷かれる ! 」と反論 する人もいます。これは現実的ではありません。日本の防衛戦は空と海で行なわれます。 、こ舌用さ つまり戦闘機と護衛艦と潜水艦が主力です。あとはレーダーとミサイルも大し ( ~ 三れます。いずれも超ハイテク兵器で、何年も訓練を重ねた専門家でなければ使いこなせ ません。つまり一般人を徴兵しても実戦には役に立たないどころか、そういう兵士を護 209

7. 戦争と平和

私はそれを聞いて、思わず笑ってしまいました。それはかって七十数年前、日本がや ったことと同じだったからです。本当に戦争をしたがっているのは護憲派の人ではない かと思ったくらいです。 そんなことをやれば、かってと同じように、日本は世界を相手に戦うことになるでし よう。アメリカを中心とする国連軍が、日本を叩きつぶしに来るでしよう。そうなれば 日本はひとたまりもありません。したがって、このプランもまるで実現性がありません。 では、お隣の韓国に侵略戦争を仕掛けるというのはどうでしよう。これが一番現実的 かもしれませんが、ここにも大きな壁があります。それは、韓国はアメリカと軍事同盟 を結んでいるということです。つまり韓国に対して侵略戦争をすれば、アメリカを敵に 回すということになります。 なら、韓国とアメリカが同盟関係を解消した後なら、攻めることができるではないか という意見があります。ところが韓国がアメリカとの同盟を破棄したということは、中 国と同盟を結んでいる可能性が極めて高いのです。いや、そうでなければ韓国はアメリ 三カとの同盟を破棄しません。韓国がアメリカと同盟を結んでいるのは、北朝鮮と中国の 圧力に対抗するためだからです。いずれにしても韓国一国が集団的自衛権を放棄し、個 幻 3

8. 戦争と平和

戦争を回避できるのはリアリスト 一一一一口うまでもありませんが、私は憲法改正派です。 改正すべきは憲法の「前文」と「九条ーだと考えています。 ます前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保 持しようと決意した」の部分はすべて削除です。私たちの命を「諸国民の公正と信義を 信頼して」委ねるわナこよ、、 しし ( し力ないからです。自分たちの命は自分たちで守るという決 意の文章が必要です。もちろん平和を愛する諸国民と協調していくことは大切です。し かし無条件の信頼は有り得ません。 そして、九条はこう変えます。 一、日本国民は、侵略戦争は永久に放棄する。 二、日本国民は、日本が他国からの侵略を受けた場合、徹底してこれと戦う。 どうですか。単純でしよう。 私は憲法の文章は出来る限り単純であるべきと思っています。実は、右の文章でさえ 208

9. 戦争と平和

時の海軍航空隊の中にあって、「何としてもこの戦いを生き延びて、妻と娘のもとに戻 るーという信念を持ち、それを公言していた男であったからです。おそらくこの気持ち は当時の多くの搭乗員がひそかに思っていることでした。ただ、それを口に出して言う 空気は当時の軍隊にはありませんでした。 しかし宮部のその夢は叶えられませんでした。戦争があと数日で終わるという時に、 彼は神風特攻隊として散華します。残された宮部の未亡人は戦後、ある男性と結婚し、 平和な生活を送り、約五〇年後に亡くなります。彼女の二人の孫は、その時初めて、自 分がずっと祖父だと思っていた人は本当の祖父ではなく、血のつながった祖父は宮部久 蔵という名前の男で、戦死した軍人であったと知ります。 のちに二人は、自分たちの実の祖父はどんな人であったかを知りたいと考え、戦争中 に宮部とともに戦った元兵隊を訪ねて、「宮部久蔵という人はどんな人だったのか」と 訊きます。「海軍一の臆病者」と罵る者もいれば、「自分が生きているのは宮部さんのお 陰だ」と感謝を述べる者もいて、その人物像はまさしく毀誉褒貶です。 ただ、どの戦友も「宮部ほど命を大切にする搭乗員はいなかった」と言います。なの 。聞けば聞くほど、謎が深まっていきま に、なぜ特攻隊員として死地に赴いたのか 720

10. 戦争と平和

もう一つの国の憲法はこうです。 「私たちは決して侵略戦争はしない。他国から侵略されても抵抗しない」 さて、どちらの国がより戦争を回避できる可能性が高いでしようか。答えは言うまで もないと思います。私が九条を改正したいと考えているのは、つまりはそういうことな のです。 「戦争は嫌だから、戦争はしない」と主張するだけで戦争が起こらないなら、こんな楽 な話はありません。世界の国からとっくの昔に戦争はなくなっているでしよう。 リアリストの典型的な国はスイスです。「永世中立」を宣言し、二〇〇年も戦争をし ていないにもかかわらす、今も国民皆兵で強大な軍事力を持ち続けているのは、万が一 の有事に備えてのことなのです。その対極のロマンチストの典型は、かってのルクセン プルクです。しかし二〇世紀に起こった二度の大戦争で国土を蹂躙されたルクセンプル クは、今やリアリストになりました。国を守るために必死で核開発をしている北朝鮮も またリアリストの国家です。 日米安保で日本は守られるか 幻 6