同盟関係 - みる会図書館


検索対象: 戦争にチャンスを与えよ
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1. 戦争にチャンスを与えよ

「反中同盟」の構成メンバー 『自滅する中国』 ( 芙蓉書房出版 ) で描いた、いわゆる「反中同盟」についても、改めて 述べておきたい。 「反中同盟」は、日本、インド、ベトナム、オーストラリア、アメリカによって構成され る。 ますインドネシアは、反中同盟に気乗りしない面があり、それには合理的な理由もある。 ジ アそれでも、周辺海域での中国漁船の違法操業に対しては、断固拒否する姿勢を見せており、 日本からの船舶の提供も受ける予定だ 方 マ マレーシアに関しては、中国に対して、それほど断固とした態度をとってはいない。 レーシアの現政府は、トラブル続きで、国際関係への関心も限定的で、外交能力も限られ の 網ている。 囲 包ここでの大問題は、フィリピンだ。この国は、対中国という意味では、最前線にいる国 対であり、南シナ海の紛争に深く巻き込まれている。日本とベトナムは、断固とした対応を 見せたおかげで領土を失わなかったが、フィリピンはそうしなかったので、領土を失って

2. 戦争にチャンスを与えよ

港でギリシャ当局は、モサドのものらしき飛行機にはすぐに給油し、アラブ諸国の飛行機 は待機させたのである。同盟や友好関係は、名目ではなく、実質で考えなくてはならない。材 大戦略のレベルでは、名目だけの同盟は、まったく意味をなさないのだ。 これに関するもう一つの例は、イスラエルとインドの関係だ。インドは、表立ってイス ところが、イスラエルと実にさまざ ラエルとの協力関係を表明することはほとんどない。 まな分野で協力している。そしてこれが、戦略のレベルで実際に効果を発揮するのだ。 大戦略と外交カ 大戦略レベルの同盟関係の重要性は、外交を担当する外務省と、軍を管理する国防省と の関係とも深く関わっている。 私はしばしば次のような質問を受ける。 「あなたは、戦略の理論について講義したり、本を書いているが、実際には、どういうア ドバイスにつながるのか ? 」 それに対する私の答えの一つは、「国防省と外務省との間に存在する全体的なバランス の偏りを修正しなければならない」というものだ。

3. 戦争にチャンスを与えよ

この点、日本の徳川家康も、似たような「戦略」の成功者だ。 略家康は、「戦略」にとって重要なことをすべて体現していた。それは、武田信玄の「風 国林火山」という一一一一口葉で示されるものとは、すべて正反対のものである。 帝 ン たとえば、林のように静かにしてはならない。外交によって「同盟」を築くためには、 テすべての人々と話をする必要があるからだ。「同盟」を形成するには常に語る必要がある し、時間がかかるのである。 関ヶ原の戦いがその典型だ。家康は、敵の同盟国を引き離し、自分側の「同盟」に引き 人れたのである。さらに幕府体制をつくったわけだが、これは、国内を徹底して安定させ るシステムであった。参勤交代、諜報体制の構築、手形や関所を活用した警備体制など、 顧戦国時代という内乱状態を安定化させるための体制だ。さらには、海外との関係も制限し、 大思想的な面でも安定化をはかったのである。 米このような体制を考案するには、戦略思考が不可欠なのである。 し ビザンティン帝国の七つの教訓 ビザンティン帝国に話を戻そう。二〇年に及ぶ研究の結果、私は、この帝国の戦略を七 二ロ 189

4. 戦争にチャンスを与えよ

戦略レベルで劣勢に立てば、戦争に勝利できない、と。 その典型例が、戦前のドイツ、今日の中国だ。軍事レベルでいくら強大な軍事力を持っ ていても、同盟関係はほとんど構築できていない。それは、例えて一一一口えば、インターネッ トに接続されていないスー ー・コンピューターのような存在であり、 ワーは小さくと も、「同盟関係」というネットに接続されているスマホの方が「強い」、ということだ。 『中国 4 ・ 0 』では、「海軍カ〈海洋力」という対比で、このことを指摘しているが、本 書では、「武田信玄〈徳川家康」という例を用いて、「外交 ( 同盟 ) は軍事に勝る」という ことをより明確に論じている。 優れた軍事戦略で、いくら相手にサプライズ ( 奇襲 ) を喰らわせても、外交や同盟関係 で負けていれば、最終的には絶対に勝てない。 ここにこそ、「大戦略論」の観点から論じ るルトワック氏の戦略論の真骨頂がある。 第三は、戦略において、「相手がどう感じているか、どう受け止めているか」がいかに 重要であるかを指摘していることである。 戦略において「相手の反応」が重要であることはすでに述べたが、さらにルトワック氏 218

5. 戦争にチャンスを与えよ

くつも発明したのだが、それでも、ドイツは勝てなかった。 それは、ドイツが、三つの世界的な帝国を敵に回したからである。すべての戦闘、すべ ての戦域で勝利しても、グアノや石油といった物資や食糧の輸人が海上封鎖で不可能とな れは、戦争には勝てない。 仮にアメリカが途中で参戦せすとも、仮にドイツがすべての戦 論場で勝利しても、結果は、ドイツの敗北で終わっただろう。ドイツには食糧がなかったか らである。 何 名目だけの同盟と実質を伴う友好関係 と ではなせイギリスは、最終的に勝利できたのだろうか。それは、彼らが「戦略」を冷酷 ジ ロな視点で捉えることができたからである。 要するに、同盟関係は、自国の軍事力より重要なのだ。もちろん、自国軍のカで戦闘に カ シ勝利することは、同盟関係を獲得する範囲や可能性を広げるものである。 ディシプリン 私の言う「大戦略のレベル」とは、資源の豊富さ、社会の結東カ、忍耐力、人口規模な ラ どに左右される領域である。 なかでも、とりわけ重要なのが、同盟を獲得する「外交力」だ。大戦略レベルの外交カ 5 9

6. 戦争にチャンスを与えよ

対プーチン交渉の戦略 もし私が米国大統領顧問だったら、彼に何を提言するだろうか。 その一つは、「プーチンを侮辱するのを止めて交渉をする」ということだ。ビザンティ ン帝国的な戦略の観点に立って、プーチン大統領に対処するのである。 そのためには、ます Z < ( 北大西洋条約機構 ) を「統一した勢力」として扱うのを 止める必要がある。加盟国の足並みを揃えて統一政策を実施するには、無理があ るからだ。 ロシアに対して同盟国全体で「反ロシア決議」などを行っても、ほば無意味だ。ロシア との関係は各国に温度差があり、ロシアに対して最も弱い立場の同盟国の賛同まで待てな いからである。 アメリカの外交は、 z < O 、、 O 0 といった多元的な制度機関を通じて行う べきではない。単独で「調略」による「寝返りエ作」を行うべきで、各国の反ロシア勢力、 反プーチン勢力に働きかけ、さらにはロシア国内の反プーチン勢力にもアプローチし、そ れらの結東を図るのだ。 200

7. 戦争にチャンスを与えよ

日本の自衛隊に本当に重要なのは、自由意志を持った敵との対峙だ。加えて、日本は、 国土の隅々まで国民によって使われているので、国内で大規模な詭動を学べない。さら に言えば、残念ながら自衛隊の規模は、日本のような大きな島国を守るには小さすぎる。 それらを克服するためには、「改革」が必要である。 「中国封じ込め同盟」への貢献 自衛隊や日本の安全保障の問題を考えるうえで、アメリカとの関係は避けて通れない。 二〇一六年一一月一八日、ニューヨークで行われた安倍首相とトランプ次期大統領の会談 は、大きな意義があった。これで多くの問題が解消できる、と私は考える。トランプ氏が、 全世界のリーダーのうちで最も早く安倍首相と会ったことで、「安倍首相が決断力のある 丿ーダーだ」と世界に喧伝したからだ。大国アメリカの次期トップが、「安倍首相は一緒 に解決法を模索できる人物だ」と判断したことを明確に示したのだ。 今後も日米関係は、トップ同士が率直にさまざまな問題について解決の糸口を話し合う ことになるだろう。個人的に言えば、中曽根康弘首相とロナルド・レーガン大統領の時代 の友好関係以上のものになりうる可能性を二人に感じている。トランプ氏の「安倍首相と

8. 戦争にチャンスを与えよ

高次の戦略が存在する。それが「同盟」だ。私の見るところ、戦国日本でこのことを最も 理解していたのは、徳川家康だった。 そもそも、国の運命を左右するような大戦略レベルにおいて重要なのは、ます人口と経 済力、そして国民の団結力である。いくら人口や経済力などで国家の規模が大きくても、 それをカにつなげる団結力、言い換えれば、「士気」が伴わなけれは、何の意味もなさな 、 0 その次に重要なのが「外交」である。その国が他の国々とどういう関係を持っているか。 これが実は、大戦略レベルにおいて、軍事面での活動以上に決定的な要因となる。この 「同盟」こそ、戦略のパラドックスを克服するための、より高度なやり方なのだ。「同盟」 によって、敵対的な他者を減らし、消滅させるのである。つまり、適切な同盟相手を選び、 戦術レベルでの敗北に耐え続ければ、一〇〇回戦闘に敗れても、戦争に勝っことができる。 。、いかに戦術面でのみ優れていても、有効な外交関係を築けていなければ、 逆に言えは 一〇〇勝しようとも、最終的には敗者となってしまう。その典型が、第一次、第二次世界 大戦でのドイツだが、第二次大戦での日本にも、それが当てはまる。 たとえば、日本の真珠湾攻撃は、軍事的には大成功を収めたが、大戦略のレベルで見れ 巧 6

9. 戦争にチャンスを与えよ

とである。しかし、フィリピンの脱落は、「反中同盟」にとって必ずしもネガテイプなこ とを意味しない。 というのも、日本、インド、ベトナム、それにインドネシアやマレーシ アの部分的な参加による「反中同盟」は、フィリピンを含めた「反中同盟」よりも、はる かに強力だからだ。フィリピンが同盟に含まれれば、フィリピンを守るために他国が負担 するコストも大きくなる。フィリピン抜きなら、その分、軽費で効率のよい同盟ができる のだ。 訓練の行き届いた二〇万の軍勢は、途中で戦うサイドをスイッチしかねない一〇万の信 頼できない部隊を抱える合計三〇万の軍隊よりも強い、ということである。 現在のフィリピンには、二つの選択肢がある。 一つは、「反中同盟」に参加し、中国に抵抗し、アメリカ、日本、インドからさまざま な支援を受ける、という選択肢だ もう一つは、中国側に擦り寄っていく、という選択肢だ。こうすれは、中国に対抗する ための国防面での準備や資金が不要になる。 フィリビンとの同盟関係は困難 102

10. 戦争にチャンスを与えよ

「制裁」は効果なし ハラドキシカル・ロジックとは何かーー・戦略論 パラドキシカル・ロジックとは ? ・ 一般常識が通用しない「戦略の世界」 「戦略のロジック」と主著について 勝利が敗北につながり、敗北が勝利につながる イスラエルが勝利できた理由 ドイツの間違い ディシプリン イギリスの「忍耐力」 名目だけの同盟と実質を伴う友好関係 大戦略と外交カ 「戦略」に不可欠な「規律 イギリスの同盟工作 イギリスの強み 7 「同盟がすべてを制すーー戦国武将論 ディシプリン ー 23