外交 - みる会図書館


検索対象: 戦争にチャンスを与えよ
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1. 戦争にチャンスを与えよ

である。 そもそも、中国外交には、組織的欠陥がある。 たとえは、外交部が報告するのは、国家運営委員会だが、実際に物事を決定するのは、 中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会だ。そして国家運営委員会と 常務委員会が十分に連携していないので、政策を実質的に決定する部門が、国外の理解や 自国が置かれている情勢についての認識を欠いてしまうのである。そのため、対外政策に おいて、不安定さと無能さを露呈してしまうのだ。 日本を理解しない中国 このことは、日本にとって、明確で重大な意味を持つ。中国が理解できていないのは、 ベトナムだけでない。 日本やその他の国も含むからだ。 もちろん大国にとって、「外国のことを知らない」というのは、普通のことだ。 大国とは、自国から遠いところで活動することが多い。たとえば、アメリカがそうであ る。イラクを完全に見誤ったり、アフガニスタンの状況を誤認したりする。アメリカのよ うな大国にとって、自国から遠く離れた国の情勢を見誤ることは、仕方のない面もある。

2. 戦争にチャンスを与えよ

中国外交の特異な構造ーー通常の外交ルートが機能しない 中国と対する際に、何より重要なのは、中国政府の外交の特異な構造をよく理解してお くことだ。 中国の外交部 ( 外務省に相当 ) は、私が知る他のどの国の外務省とも異なる性質を持っ 外交部か集めた情報は、決して「中央」には到達しない。 各国で集められた情報は、北 京の外交部には届くが、そのボスである習近平には届いていないのだ。 習近平は常務委員には定期的に会っているが、そもそも外交部の人間は、中国共産党の 最高意思決定機関である常務委員会に参加していない。 だから、日本にいる中国大使を呼び出して「こうして欲しい」などと囁いても、習近平 には、何の効果もない。 通常の外交ルートを使っても、まったく意味がないのだ。 そのことを踏まえた上での私の個人的かっ具体的な提案は、サンゴ・漁業保護部隊のよ うな組織を結成して、その隊員を尖閣に駐在させるというものだ。 彼らには、そのような部隊が本来持つべき軽い武器などを携帯させ、制服は明るい青色 のものを着用させ、日ごろからシュノーケリングやスキューバダイビングをさせる。こう ささや

3. 戦争にチャンスを与えよ

外部の介入が戦争を長引かせた これが、ユーゴスラビアにおける長期にわたる悲劇的な内戦のきっかけとなった。最悪 なのは、この戦争が互いの疲弊によってもたらされる自然な合意によって終わったわけで はよい、という点だ。アメリカの介人によって終わらされたのだ。これが、一九九五年の デイトン合意である。 この合意を主導したのは、リチャード・ホルプルックという非常に活動的なアメリカの 外交官である。彼は最近死んだが、その彼を殺したのは私である、と言っても過言ではな 、 0 われわれは、トルコの当時の外務大臣であった「邪悪な小人」との異名を持っダウトオ ール主催の歓迎会に参加していたのだが、私がダウトオールと話していたところ、とても 背の高いホルプルックが、私のことを無理やり押しのけた。まだ会話の途中だったので、 失礼なホルプルックに、私はかなり強烈な肘鉄を食らわせたのだが、その三日後に彼は死 んでしまった。 その場にいた私の妻は、「あなたが食らわせた肘鉄が彼の大動脈を刺激して致命傷にな ったのよ」と解説したが、私はこれが真実であれはよい、と考えている。 ひじてつ

4. 戦争にチャンスを与えよ

をするだろうか。「国内の政治体制が整うまで大統領の権限は大きく制限される」という 論 略 ことの自覚をまず大統領に促すだろう。 国もちろん、大統領であれは、秘密外交を行うことができる。その前例は、リチャード・ 帝 ン ニクソンゞ」。 テ ニクソン大統領は、非常に不人気な大統領であり、連邦議会の抵抗に直面したが、それ ン でも秘密外交によって、いくつかの偉業を成し遂げることができた。 ところが、彼はあまりにも不人気であったため、ベトナム戦争においては、南ベトナム 政府への支援が不可能となった。資金も、武器も、兵士も、支援できなかったのである。 サイゴンが陥落したのは、次のフォード政権の時であったが、きっかけはニクソン政権 顧にあった。 大当時、連邦議会は、民主党が多数派を占め、ニクソン大統領と対立していた。行政府 米 ( ホワイトハウス ) と立法府 ( 連邦議会 ) が分裂状態にあり、ニクソン大統領は、正攻法の 外交を実行できす、秘密外交に頼らざるを得なかったのである。 し 、も そして次のトランプ政権でも、これと似たような状態、つまりホワイトハウスと連邦議 会の分裂状態が続くはすだ。 199

5. 戦争にチャンスを与えよ

日本の「あいまいさ」が中国の誤解を生む 日本は、ここからいかなる教訓を引き出すべきだろうか。 前章でも述べたように、ます日本がすべきなのは、中国に対して、「あいまいな態度」 を極力排除することだ。 国際関係における「あいまいさ」は、相手に余計な選択肢を考えさせることにつながる。 つまり、「あいまいさ」を排除するとは、相手に余計なスキを与えない、ということだ。 中国に対して「あいまいさ」を残せは、それは、中国側のさらなる誤解につながる。 たとえば、二〇一四年の海底油田をめぐる事件で、中国がベトナムを誤解したきっかけ の一つは、実はその直前に、中国共産党の外交担当の要人がベトナムを訪問したことにあ っ一」 0 ご存知かと思うが、中国の共産党は、国とは別に独自に外交組織を持っている。かって は、海外の共産党政権との付き合いがあり、ポーランド、東ドイツ、チェコスロパキアな どとの外交を担当していたのも、彼らだ。現在は、キュー ハとベトナムだけであり、北朝 鮓とは共産党間の付き合いはよい。 8

6. 戦争にチャンスを与えよ

だからこそ、外交が重要となるのであり、これは戦時においても変わらない。 略第 , ハの教訓は、「常に狙うべきは『調略 (subversion) 』である」ということだ。 の ここで目指すのは、政治面で敵の内部に浸透し、敵の内部に自国のために戦わないよう 国 ンな勢力、自国を支持しない勢力をつくりだすことである。 テ この「調略」は、宗教過激派と対峙する場合でも有効である。たとえ裕福な過激派でも、 ン 買収できる可能性は常にあるからだ。 家康が関ヶ原の戦いで勝利できたのも、彼が「調略」を狙ったからである。敵を寝返ら 、ら せたのだ。 外交で狙うべきは、中立の勢力を味方につけ、同盟国にもさらなる協力を求め、敵の勢 贐力を分裂状態に追い込むことだ。そのために使うべきなのが、「見返り」と「反撃」であ 大る。 珠ここに言う「反撃」とは、敵の敵を買収するなどして、背後から目の前の敵を襲わせる 私ことである。これに成功すれは、敵は、こちらの行動を察知し、「どうすれば、これを止 めてくれるのか ? 」と尋ねてくるはずだ。 第七の教訓は、調略と外交では十分でなければ、戦争が不可避となるが、そこで行うべ 二ロ ー 9 )

7. 戦争にチャンスを与えよ

戦略は上手だが、経済運営が下手なロシア シベリア開発の過去と現在 ロシアの長期戦略 ヨーロッパの消滅は不可避 戦争とヨーロッ ハの多元性 イスラエルの「戦士の文化」 9 もし私が米国大統領顧問だったら ビザンティン帝国の戦略論 一般労働者の利益を代弁しない民主党と共和党 国内政治の混乱とアメリカ外交の麻痺 ビザンティン帝国と徳川日本ーー長期持続の秘訣 ビザンティン帝国の七つの教訓 「戦略」から見た掃討とシリア内戦 ナイープなオバマ外交 もし私が米国大統領顧問だったら

8. 戦争にチャンスを与えよ

2 論文「戦争にチャンスを与えよ 戦争も大きな役割を果たしている 「無関心で安易な介人」が戦争を長期化させる 紛争への介人をビジネスにする国際組織 ほとんど機能しない平和維持軍 コソボへの Z 0 介人の実態 難民支援が難民を永続化させる 難民支援が紛争を永続化させる 国連より害悪のある ZCO の介人 「戦争が平和をもたらす」という逆説 3 尖閣に武装人員を常駐させろーーー中国論 尖閣をめぐる状況は変わりつつある 中国のローコストでメリットのある作戦ーー「漁民」の上陸 が機能しない 中国外交の特異な構造ーーー通常の外交ルート リスクの高い奪還作戦

9. 戦争にチャンスを与えよ

港でギリシャ当局は、モサドのものらしき飛行機にはすぐに給油し、アラブ諸国の飛行機 は待機させたのである。同盟や友好関係は、名目ではなく、実質で考えなくてはならない。材 大戦略のレベルでは、名目だけの同盟は、まったく意味をなさないのだ。 これに関するもう一つの例は、イスラエルとインドの関係だ。インドは、表立ってイス ところが、イスラエルと実にさまざ ラエルとの協力関係を表明することはほとんどない。 まな分野で協力している。そしてこれが、戦略のレベルで実際に効果を発揮するのだ。 大戦略と外交カ 大戦略レベルの同盟関係の重要性は、外交を担当する外務省と、軍を管理する国防省と の関係とも深く関わっている。 私はしばしば次のような質問を受ける。 「あなたは、戦略の理論について講義したり、本を書いているが、実際には、どういうア ドバイスにつながるのか ? 」 それに対する私の答えの一つは、「国防省と外務省との間に存在する全体的なバランス の偏りを修正しなければならない」というものだ。

10. 戦争にチャンスを与えよ

戦略レベルで劣勢に立てば、戦争に勝利できない、と。 その典型例が、戦前のドイツ、今日の中国だ。軍事レベルでいくら強大な軍事力を持っ ていても、同盟関係はほとんど構築できていない。それは、例えて一一一口えば、インターネッ トに接続されていないスー ー・コンピューターのような存在であり、 ワーは小さくと も、「同盟関係」というネットに接続されているスマホの方が「強い」、ということだ。 『中国 4 ・ 0 』では、「海軍カ〈海洋力」という対比で、このことを指摘しているが、本 書では、「武田信玄〈徳川家康」という例を用いて、「外交 ( 同盟 ) は軍事に勝る」という ことをより明確に論じている。 優れた軍事戦略で、いくら相手にサプライズ ( 奇襲 ) を喰らわせても、外交や同盟関係 で負けていれば、最終的には絶対に勝てない。 ここにこそ、「大戦略論」の観点から論じ るルトワック氏の戦略論の真骨頂がある。 第三は、戦略において、「相手がどう感じているか、どう受け止めているか」がいかに 重要であるかを指摘していることである。 戦略において「相手の反応」が重要であることはすでに述べたが、さらにルトワック氏 218