個人的な見解だが、日本は、長年にわたって誤った国連対策をとり続けている。 これまでの日本の国連対策は、おおよそ次のようなものだった。ドイツがヨーロッパの 支援を受け、プラジルがラテンアメリカ諸国の支援を受け、アフリカからは二国ーーたと えはナイジェリアと南アフリカーーが人り、インドも人る。そうなれは、日本も常任理事 国人りできるという、いわば「チームの一員として常任理事国人りする」というものだ。 常任理事国の一つの席を得るために、他の五カ国とチームを結成する、という戦略である。 ところが、アメリカは、自国と同じ資格を持っ常任理事国が六カ国も増えることを望ん ナイジェリア でいないし、どの国も、アフリカに二つも席を与えたいとは田 5 っていない。 にしても、南アフリカにしても、自国さえ満足に統治できていないからだ。 ラテンアメリカ諸国も、プラジルには投票したくないだろう。スペイン語圏の諸国は、 ツ。、には、ドイツを支持する国 プラジルに代表してもらいたくないからだ。また、ヨーロ 要するに、日本は、常任理事国人りの戦略として、「誰も欲しないプラン」を追求して きたのである。 208
対プーチン交渉の戦略 ウクライナ問題より中国問題 日本が国連常任理事国になる方法 強いアメリカを望む日本の特殊な立場 不安定な米中と安定したロシア 日本の「常任理事国人り」戦略の誤り インドとの共同管理を狙え 訳者解説 2 03
10 日本が国連常任理事国になる方法 だった。着ている服も、宝石も、数百万円レベルの豪華さだ。 その女性たちと一夜を共に過ごす値段は、南アフリカの国連大使、いや大統領を買収で きる値段よりも ~ 局いくらいご。 日本が、本気で常任理事国の席を欲するのであれば、私が提案した方法で狙えるはずだ。 もし成功したら、伊東の、私の大好きなあの温泉旅館の庭に、私の銅像を建てて欲しい。 2 ー 1
管理」を狙うべきだ。安倍首相とモデイ首相の特別な関係も、大いに活用できるだろう。 そうすれば、日本は常任理事国人りできるはすだ。 他方、プラジル、アフリカの二カ国、ドイツは、常任理事国人りを諦めるべきだろう。 この四カ国の常任理事国人りは、そもそも誰も支持しないからだ。 私の提案は、これまでの外務省のアプローチよりも、はるかに現実的で効果的なはすだ。 これこそ本物の戦略だからだ。日本は、長年にわたって、そもそも実現不可能なプランを 追求してきたのだが、これでようやく問題を解決できるだろう。 イタリアやスペインは、ドイツに投票するくらいならザンジバルに投票する。アルゼン チンやチリは、プラジルに投票するくらいならザンビアに投票する。そして、安全保障問 題をナイジェリアと南アフリカに委ねる、という考えには、アフリカ中の諸国が恐怖に慄 くだろう。 完全に無責任な国の代表たちは、モンテカルロの夜の女性たちよりも、はるかに安い値 段で買収できる。 私は、昨年の春、モンテカルロのあるパーティーに呼ばれたが、そこにいた女性たちは 本当に豪華であった。キム・カーダシアンとは比べものにならないほど美しい女性はかり 2 10
加日本が国連常任理事国になる方法
インドとの共同管理を狙え ただし唯一の例外は、インド、こ。 たインドは、日本と同様に、他国から支援を受けられる 数少ない国の一つだからだ。 したがって、日本は、これまでの政策を劇的に転換させなければならない。 日本政府に 私が提案したいのは、以下のような戦略である。安保理の場で次のように表明するのだ。 「六席もいりません。プラジルやドイツは関係ありません。われわれが欲しているのは、 たった一席です。これをインドと共同で得ることです。二、三年ごとに交代で日本とイン 方 ドで席を分け合うのです」 る こうなれは、インドは、ロシアから強い支持を得るだろう。日本も、アメリカから強い 国 事支持を受けるはすだ。日本に対する唯一の反対派は中国であろうが、こうなると、中国は 任孤立することになる。イランとの核交渉でも、中国は孤立したくなかったほどだ。 常 耳インドと日本が常任理事国人りしたいと考えるのであれは、両国が一席を共有すべきだ。 こうなると、全常任理事国は賛成せざるを得ない。しかもこの二国は、それ以外の諸国、 つまり OQ< 受益国などからも支持を得ることができる。 日本は、これまでのような「チームによるアプローチ」を転換して、「インドとの共同 209
て は い と っ と も っ 日 、本理 い特国 と 指 で き る の は 国 連 の 安 全 保 障 理 事 の 任 理 事 国 10 日本が国連常任理事国になる方法 で実 な因習政 で得 、は 、だ い弱 は首 、過 0 : 本 っ体 相現 で化 の事 彼カ は歴 極失 殊入 、史 め脚 性り て略 状性 摘誤 、渉 プを 関渉 、あ な統 か大 唯権 定弱 殊建 日 本 の 常 任 の り 相 え手 るな の あ る そ し て っ し た 日 路 の 係 の あ り は 歴 史 初 め て の 特 な 状 況 と も な 地 位 て お り だ が 安 定 的 に 父 で き る 相 方手か で る ら だ 極 め て 設 的 な 向 の 渉 で な い も れ な い が チ ン だ け 世 界 の 国 の リ タ。 と し て 父定な 渉的方 際 安 倍 は プ チ ン と 父 糸売 け て い る そ れ は ワ シ ン ト ン が 望 む よ っ た と ろ が 在 本 の 国 益 ( こ も ム 致 す る の で あ る も ち ろ ん 去 の お い て ロ シ ア の 安 定 は 日 本 と て む し ろ 大 き な 第題 っ と る カゝ ら 要 か 日 は て 奇 妙 な 況 置 か れ る と 安 た 大 国 か ロ ア 近 ら平カ す る 可 目こ が り ア メ カ の カ も る の の 行 の す る と い つ と だ 207
は、「こちらの動きが、相手に戦略的なメッセージとして明確に伝わっているか」という 点がいかに重要であるかを論じている。 たとえば、尖閣問題に関して、日本政府は、「尖閣諸島を守る」という明確なメッセー ジを中国政府に伝えるべきだ、と提言している。中国の「戦略文化」は、大国の常として 極めて内向きで、隣国でさえ理解が不十分である。さらに今日では国内に問題が山積して いる。そうした内向きの中国に、日本は「あいまいなメッセージ」を与えるべきではない、 というのである。 日本が実効支配しているうちに尖閣諸島に人員を常駐させなければ、何が起こるか分か らない。習近平にとって、尖閣に対する武装人民 ( 漁民 ) を上陸させることなど朝飯前ナ からだ。日本は、中国にとって「便利な敵」である。国内の不満を逸らすために、いっ対 外的な冒険主義に出るか分からない。その前に、明確に「尖閣は日本のものだ」というこ とを実際の態度で示すべきだ、というのが、ルトワック氏のアドバイスである。 説本書で提示された日本への数々のアドバイス ( 「北朝鮮のミサイル問題への対処法」や 者「国連常任理事国人りのための秘策 ! 」 ) は、いすれも示唆に富むものだろう。提言の実現 訳 可能性や分析に対する賛否は別にしても、独自の戦略論で読者に知的挑戦を提供するとこ 219
とい , っことになるのだ。 この世界では、矛盾するものこそ正しく、線的なものが間違っていることになる。 これこそが、「戦略の世界」の土台を構成する二つの要素だ 第一に、成果の積み重ねができない、ということであり、第二に、「線的なロジック」 論が通用しない、ということだ。だからこそ、人類の歴史は、犯罪や過ちゃ狂気に満ち、教 訓が生かされない歴史となっている。 人類の歴史がそうである理由は、何も多くの人々の頭が悪くて、誰かの頭が良いからで 何 はユよ、よ、 0 われわれ全員が、それぞれの「家族」の中で育てられ、そこでは「戦略ーを使う と クようには教育されないからだ。 ジ 妻に黙っ われわれは、家の中で「両親や妻に対して戦略を使え」とは教わっていない。 ロ ろうば、 て奇襲をかけて、驚かせたり狼狽させることは、普通はしないものだ。 シところが、「戦略の世界」では、まさにこのようなことが奨励される。常に奇襲が狙わ れるのだ。奇襲を受けた側は、まったく準備ができていない状態で寝首をかかれることに ノなる いったん奇襲が成功すれば、仕事がやりやすくなる。後は、組織管理的な問題しか残っ 129
である。 そもそも、中国外交には、組織的欠陥がある。 たとえは、外交部が報告するのは、国家運営委員会だが、実際に物事を決定するのは、 中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会だ。そして国家運営委員会と 常務委員会が十分に連携していないので、政策を実質的に決定する部門が、国外の理解や 自国が置かれている情勢についての認識を欠いてしまうのである。そのため、対外政策に おいて、不安定さと無能さを露呈してしまうのだ。 日本を理解しない中国 このことは、日本にとって、明確で重大な意味を持つ。中国が理解できていないのは、 ベトナムだけでない。 日本やその他の国も含むからだ。 もちろん大国にとって、「外国のことを知らない」というのは、普通のことだ。 大国とは、自国から遠いところで活動することが多い。たとえば、アメリカがそうであ る。イラクを完全に見誤ったり、アフガニスタンの状況を誤認したりする。アメリカのよ うな大国にとって、自国から遠く離れた国の情勢を見誤ることは、仕方のない面もある。