けるよ - フにした・ 手首に力を人れず物馴れた手付きで持っている・ きさまたち 「コステロは良い男だよな」彼は故にしみじみした調子で云った 「何で貴様達はこんなつまらない事をしたんだ ? 」 ゅうかい マクドナルドが顔をしかめて云った。「お前の事から話しなよ。おれ「女の子を誘拐するような真似はしないものな。そうだろ、コステロ ゆすり てあら ? ちょいとした強請はするかも知れないが、手粗な事は何にもしな はお前に機会を与えてやったんだから」 マローリーはうなすいた。「いゝとも : : : そっちにも理があるからな いからな。そうだな、コステロ ? 」 しょゅう : おれはロンダ・ファルの所有であるべき或る手紙を見付けるため 杲然とした眼のコステロは、陲を嚥み込むと、をくいしばって云 やと やろう に雇われた男さ」 った。「そんな事知った事か。面日くねえ野郎だ」 けっこう 「それだけ聞けばおれは結構だ。初めつからお前のやっていた事は何「だん / 、面白くなるせ。お前には判らないかも知れないがな」 けんじゅう かの罠だと思ったんだ。それでおれは、お前さんに機会をやったのさ彼はルーガー拳銃を取り上げると、コステロの大きなの一方の見 じゅうこう きず に銃口を強く押しつけた。銃が離れると白い痕が残り、やがて赤い痣 もうおれはこの事件から手を引きたいだけだ。云う事はそれだけさ」 とうわく となって行っ た。コステロは些か当惑した様子だった。 彼は部屋の中のすべてを指すように、グルリと手を振った。 マロ 1 リーはグラスを取り上げて、中がからか、どうか見ると、そ マクドナルドはオーヴァコートのポケットに、スコッチのまだいっ の中にスコッチを少し注ぎ人れた。そして最るようにしてそれを飲むばい入っている壜をつゝこみ終ると云った。 しまっ と、ロの中で舌を丸めた。 「さあ、こいったちを始末して : さゆう たれ マローリーは悲し気に首を左右に振って、コステロを見詰めた・ 「誘拐事件について話してくれ。コステロが電話してたのは誰だ ? 」 ごろっき たてもの ウッドのたいした弁「大きなビストルの音が聞こえ過ぎるせ。こう云う建物がどんなエ合 ず ~ 「アトキンソン。無頼漢たちを使っている、ハリ になっているか知ってるだろうに。逢、 、のはアトキンソンって云 護士だ。ファルの阿魔っ子の弁護士でもある。抜目のないタマさ」 じようどう かしら う男だ。頭の男に逢うのが常道だ : : : もしお前が奴の所に手引きして 「そいつが誘拐をやらせたのか ? 」 くれたらな」 者マクドナルドは笑った。「そう云う訳だ」 かた 迫 ~ マローリーは肩をすくめた。「ひどい企みじゃないか : : : 何て云う弁 ジムが眼を開いて、床に手をついて立ち上がろうとした。マクドナ むぞうさ 護士だ」 ルドが大きな脚をあげて、灰色の髪の男の顔を無造作に踏みつけた・ かべ あか 7 彼はマクドナルドの前を通って、コステロの立っている壁に歩み寄ジムの顔がどす赤くなる・ しつく、 こうとうぶ じゅうこう った。銑ロでコステロの顎をつきあげて、後頭部を粗い漆喰に押しつ 、マローリーは赤毛の男に視線を投げて、電話のある所に歩み寄った 1 ごし ゅうかいじけん ゅうかい ものな っ とお てがみ の ほうせん ゆかて しゼん の でんわ やっ
たんちょうむひょ当じよう ちゅういぶ 黒色のケースから煙草を一本取り出すと、金の一フィターで注意深くむきになるなよ、マック」単調な無表情の声である。 しようせい こし マクドナルドは怒って拳を固めた。それから笑声をあげると、ⅲに 1 火を点けた。 ほれと コステロはマローリ 1 の足を踏み潰した。 の前に立っと、長く骨太の指の関節を鳴らし飛び出してマロ 1 リー ちくしよう 「畜生 ! 」 撃「お前、何処から来たのだ ? 」 マローリーは長椅子の上に腰を落した。 ばくぜん 、。たゞ一方の壁にあるだけの幾つかの窓にも マローリ 1 は彼を漠然と見ながら、ロに煙草をはさんだ。「マックネ部屋の空気は息苦しし ちょ・ ) し んぶ 重たいカ 1 テンが全部に引かれてあった。マローリーはハンカチを取 遉イル・アイランドからだ」何か喜んでゞもいるような調子である。 ( らびる り出し、額を拭き、唇を軽くたゝいた。 . 「いっからだ ? 」 たんらよう 「お前とジムは帰れよ」 「十日前さ」 コス , テロが相変らすの単調な声で云った。 まゆ マクドナルドは頭を低め、眉の間からジッと彼を見詰めた。は汗 「何の仕事をしていたんだ ? 」 しわ ぶんしよぎぞう 「文書偽造さ」 に光っている。みすばらしい皺の寄ったコートをひっかけたまゝであ だんろ 「前にもこゝに来た事があるのか ? 」 る。コステロは顔を向けようともしなかった。マクドナルドは暖炉に らんぼ - フ 「おれはこゝで生まれたんだぜ。知らないのかい ? 」 乱暴に戻って行くと、肘でジムを押しのけて、スコッチの四角い壜を コステロの声は優しくなめらかだった。「あゝ、知らなかったね。そっかんだ。 ・ : 十日前に ? 」 れで何のためにこゝに来たんだ : 「親分を呼びな、コステロ」彼は肩越しに怒鳴った。「お前にはこの掛 マクドナルドがまた部屋を橫切って来ると、太い腕を振り上げた。 引をやれるだけの頭はねえんだ。話すだけでカタがつく事じゃないん れいしょ・ 1 ゅび 彼はコステロの肩によりかゝるようにして、再びマロ 1 リ 1 のロをひ だぜ ! 」彼はちょっと身をよじって、ジムの背を指で突いて冷笑した ん : っゞよこ ) こ 0 顔に赤い痣を浮かべたマロ 1 リ 1 は、頭を前後に振った。 「もう一杯どうだい 9 眼に鈍く怒りの火が燃えている。 コステロは再びマローリーに訊ねた。「何でこゝに来たんだよ ? 」 をつくしよう くっ かお 「こん畜生。コステロ、こいつはマックネイ山から来たんじゃないぜ「顔を通そうと思ってさ」マロ 1 リーは屈たくのない様子で彼を見詰 いん お前をなめてるんだぞ。こういう奴は、ぐうたら警官のうよ / 、、してめた彼の眼から怒りの火は消えていた。 し みよう 「それにしちゃあ、妙な事をやったもんだな」 いる、プルックリンあたりからやって来たチンビラのペテン師だぜ」 れんらの , かた そうどうお しず かたて マローリーは肩をすくめた。「一騒動起こしたら、目当ての連中に顔 コステロは片手を上げて、静かにマクドナルドの肩を押した。「そう 」 0 っ うで かんせつ ながいす かべ かえ
もよう 彼は居間にもどると、もう一つ電気を点けた。コステロが安楽椅子のダイヤモンド模様の中に、ねらいをつけて落した。 の中でもがいている。マロ 1 リーはポケット・ナイフを取り出すと、 をコステロはじれったそうな身振りをした。 あゆ ひも 男の後に歩み寄って、手首をしばってある紐を切り取った。コ・ステロ 「おれは持っていないぜ」彼は云い張った。「本当だ。見た事もないん あぎ はうなり声をあげて手をバッと開くと、こすれた手首の背の紐の痕を あしくび マローリー 撃こすり始めた。それからかゞみ込んで足首の紐をほどくと云 . った。 の灰色の眼はおそろしく冷く、その声は今にも爆発せん よくよう そうどう 「ひどいぜ。おれはロでしか息の出来ない男なんだ」その声は抑揚のばかりだった。「自分達のおっ始めた騒動が何かも知らないとは気の毒 たんらよう なもんだな : : : おれはもう我慢ならないぜ、コステロ。つべこべ云い 遺無い、単調でだらけた物だった。 だんごばな どうたい 彼は立ち上がり、グラスにライを二インチあまり注ぎ込んで、グイ合っているのは嫌になって来た。銃の胴体でもってお前の団子鼻を とあおると、また椅子に坐って、頭を後にもたせかけた。蹶気が顔に方にひっ潰してやったら面白い顔になるせ」 むひょうしよう はんそうこう のほり、無表情な眼が輝いて来た。 コステロは骨ばった手をあげて、ロのまわりの、絆創膏に赤くすり しせん 一・何があったのだい ? 」彼は云った。 むかれた肌をこすると、視線を部屋の向こうに投げた。奥のドアにひ かす マローリーは氷のすっかり溶け切ってしまった椀をひっかきまわし かれた厚ばったいカーテンの向こうで、微かな動きがしたのだ。まる じゅうたん て、いまくしそうに眉をしかめると、ストレイトでウイスキ 1 を少でそよ風のいたすらのようであった。マローリ 1 は下の絣翫を見詰め ゅびさき しばかり飲んだ。彼は指先で頭の左側を軽くこすると、まだ残ってい した ようす たば る痛みにちょっとビクッとした様子だった。それから腰をおろして煙 コステロがゆっくり椅子から立ち上がって云った。 草に火を点けると云った。 「金庫に蔵ってある。行って開けるよ」 が《ぶら ・二つ三つの事があった。ロンダ・ファルは家に帰った。マクドナル 彼は外のドア側の壁の方に部屋を横切って歩み寄ると、額縁をはす けんじゅう 、んこ ドとスリッビイ・モルガンは拳銃にやられて死んだだが、そんな事はしておろし、はめこみの金庫のダイアルを廻し始めた。そして小さな きんこ どうでも良い。おれはおまえがロンダ・ファルに売りつけようとして丸いドアを開くと、金庫の中に手を突っ込んだ てがみ いた手紙を追っかけてるんだ。きあ、出しな」 「そのまゝでいるんだ、コステロ」 コステロは頭をあげて繭みついて来た。「おれは手紙なんか持ってな マローリーは云うと、部屋を落着いて横断し、左手をコステロの腕 しんじゅ の下から金庫に突っ込んだ。そしてその手は真珠をはめこんだ小さな じゅうたん 一手紙を出しな、コステロ。今すぐだ」彼は新草の灰を絨氈の緑と黄自動拳銃を懿って出て来た。そして唇の間で烈しく息を吸う音をたて す かゞや と てがみ あんら , いす 0 す がまん ほんとう ばくはっ
笑いをしながら下目使いにマローリー を通せるだろうと思ったのさ」 を見て、手の出るのを待った・ 「もし / 、 : : : そうです : : : コステロです。マックがあれている外は 「見当はすれの騒動だったかも知れないな」 しず おやゅび はな コステロは静かに云うと、眼をつむって、親指の爪で鼻をこすった 皆んなうまく運んでます。マックはいやにからみついてね : : : 出て行 わか 「こう云う事は、時によっちゃ仲々むつかしいもんなんだ」 かないんでさあ。まだ判りませんがね。 この町の男じゃないらし いです。判りました」 マクドナルドのかすれ声が、閉じこもった部屋いつばいに響いた。 マクドナルドが身動きした。「待て : : : 」 「抜目のない男がそんな間違いをするもんかね。頭で考えてやがるん びしよう おちっ だからな」 だが、コステロは微笑して、落着いて電話をもどした。マクドナル みどり ほのお つば コステロは眼を開くと、肩越しに赤毛の男に視線を投げた。赤毛のドの眼には罧の焔が燃えている。彼は壁と椅子の間の隅に唾をはい みぎて 男は椅子の上で、身を廻した。半ば閉じたその両もゝに右手を置いてた。 ばんごう いる。コステロは今一方に振り返ると、マクドナルドをまともに見詰 「インチキだ。そいつはインチキだぞ。こゝから番号を廻しただけで ちょう、より でんわ めた。 長距離電話扱いになるモントローズに電話が通じるものかい」 「出て行け ! 」彼は冷く云い放った。「すぐ出て行け。お前は酔っ払っ コステロの両手が何となく動く。赤毛の男が立ち上がると、くわえ たばこ ているんだ。お前と問答なぞしたくない」 た煙草から立ち上る煙をよけるように頭をちょっと後にそらせ、テー マクドナルドは暖炉に肩をよりかゝらせ、コートの脇のポケットにプルから離れた所に身を崩して突っ立った。 ふんゼん こうちょう 手を人れていた。大きな四角な頭にあみだにかむった帽子は、形が崩マクドナルドは憤然と足を踏み鳴らした。顔が紅潮し、顎の所だけ しわくちゃ とおざ ムか ず ~ れて皺苦茶である。灰色の髪の刑事のジムはちょっと彼から遠去かっ がくつきりと白く残った。眼が深く烈しくきらゆく。 た ~ て、ロをもぐ / \ させながら、緊張して彼を見詰めている。 「こいつに物を云わせた方が良さそうだな」ポケットから何気なく取 けんじゅう ー親方を呼びな」マクドナルドは怒鳴った。 り出した手の中の、空色の警察用拳銃がビッタリと物なれた様子で弧 者 ~ 「おれに命令なんかするな。おれに命分するとは手前は嫌な野郎だを描いた。 しせん コステロは赤毛の男に視線を投げた。「奴をかたづけな、アンディ」 らゆうちょ らかよ わる ( らびる 脅 ~ コステロは躊躇してから、部屋を横切って電話に近寄った。の高赤毛の男は体をこわばらせ色の悪い唇から爐草をブッと吹き出す でんわ い或る一点を見詰めていた彼は、電話をはずして、マクドナルドに背と、閃光のように素速く上衣の中に突っ込もうとした。 なか ばんごッ かべ マロ 1 リー 中を向けたまゝ、番号を廻し始めた。それから璧によりかゝって、 が口を人れた。「手遅れだぜ。こいつを見な」 す そうど・つ かれ だんろ かみ かたご あたま んらよう どな しせん よ うす すばや もの
「十分くらい時間をくれ。それから上って来れば、ドアはちゃんとし鼻が吐く息にいびきのような音をたてた。 あで ばんそうこう ておくから」 マローリーはコステロのロの絆創膏をびつばがすと、片手の顰に置 むね どうろかわ くち 、こ 0 マローリーは△ロ アバートの道路側の入口には錠がおろされてしナ いて、ロを大きく開かせた。コステロのビク / \ 動く胸が止まって、 みうご かおいろ 鍵でそれを開くと、錠はぶらさげたま、にしておいた。ロビーは廊下緋の顔色が青くなって行った。身動きした彼はうめき声をあげた。 の電燈一つと、受付の笠を通して来る頭上の光とで、ほんのりと明か マローリーは暖爐の上から開けていないライの壜を持って来ると、 しら きんぞくせい た。コステロの頭 るかった。皺くちゃな白髪の小男が、受付の横の椅子で、ロを開け、 でキャップについている金属製の封を喰い切っ い、 0 ・つ . か 苦痛にうめく動物のような、長く悲しい息使いのいびきをたてゝ眠りをグンと後に持って行って、開いたロの中にその酒を流し込むと、顔 けいれんてき こけている。 を強くびつばたいた。コステロはむせてから、痙攣的にそれを飲み込 マローリ 1 は絨氈のしかれた階段を上ばり始めた。そして二階で自んだ。酒の幾らかが彼の鼻から流れ出て来た。それから眼を開いて、 あわ しようてん 動エレベータのボタンを押した。ゴロ / \ と鳴りながら上からおりてゆっくりと眼の焦点を合わせ始めた彼は、慌てゝ何かもぐ / \ 云っ 来たエレベーターに乗った彼は、「 7 」と印されたボタンを押した。あ くびをする。疲れに眼がどんよりとして来る。 マローリーは部屋の奥の扉口にかゝっている厚ばったいカーテンを しず ろうか しんしつ エレベーターがガタンと止まり、マローリーは明かるく静かな廊下抜けて小さなホールに出た。その次のドアは二つのべッドのある寝室 すきま しば でんとう に歩み出る。それから緑色の木のドアの前で立ち止まると、その間に通じている。電燈がともり、それぞれのべッドに男が縛られて横た まわ あいかぎ に耳を当てた。それからゆっくりと合鍵をさしこみ、ゆっくりと廻しわっていた。 2 いい . っ 灰色の髪の刑事のジムは眠っているのか気を失っているのか判らな ず「一インチ、二インチと押して行った。また耳を澄まし中に入る。 あんらくいす かたかわ 安楽椅子の側に立っている赤い笠のスタンドに燈がついている。一 。頭の片側には固まった血がこびりついている。顔の肌は濁った灰 ′」 0 人の男が椅子の中に大きくのびて、顔に光をいつばいに受けていた。 にんそうこう ばんそうこう あかげ 者手首と足首を紐と大、さな絆創膏で縛られている。口にも絆創膏がいっ赤毛の男の眼は大きく見開いて、怒りにダイヤモンドのように光っ ばんそうこう 迫】まいに貼られている。 ていた。そのロは貼られた絆創膏をはすそうともがいている。彼は片 ころ マローリーはドアを閉めて留め錠をおろした。部屋を音もなく素速側に転がると、下にほとんど落ちんばかりになった。マロ 1 リ 1 は彼 おうたん い足取りで横断する。椅子の中の男はコステロだった。唇を閉じつけ真ん中に押し戻して云った。 ばんそうこう られた白い絆創膏の上の顔は緋色である。胸がビクリと動き、大きな「済まんな、あんちゃん。これはみんな仕事なんでな」 てくび でんとう じゅうたん みどりいろ じよう すばや しごと あっ に : わか
すそ まるで身動きしたと思えないほど、すばやくあっさりした身のこなりと膝をついて落ち込みながら、マクドナルドの上衣のにもがくよ ′力いす うに爪をたてた。マクドナルドは身をかゞめると、砂袋で同じ所をひ Ⅱしだった。長椅子から身をちょっと乗り出した彼の手の中には、長い つよた、 けんしゅう 黒色のルーガー拳銃が、赤毛の男の腹をビッタリとまっすぐにねらつどく強く くず ず ジムは幗子をはすし、ロを開いて横倒しに床の上に崩れ落ちた。マ えり てきにな から あせ 撃赤毛の男の手は空のまゝ、ゆっくりから下へ重れ下っていた。部クドナルドは砂袋をゆっくりとぶら / 、させていた。汗の玉が一滴鼻 しず 屋はひどく静かだった。コステロはマクドナルドをひどくあきれたよの脇を走り落ちる。 く・つ、よびしよう てのひら 者 うに一瞥すると、前に垂らした手を掌を見せて上にあげ、空虚な微笑コステロは云った。「むごい男だな、えゝ、マック ? 」出来事に少 、ようみ しの興味も持たないような、ばんやりとした低い声だった。 脅で彼等を見詰めた。 まわ ゅうかい あかげ マクドナルドはゆっくりと、しかし鋭く云った。「あの誘拐なんて云 マローリーは赤毛の男に歩みよると、後に廻って云った。 やくめ一めん う事はおれにはもうたくさんだ。もう、お役目御免な。このバチンコ「手をあげな」 赤毛の男が云われた通りにすると、マローリーは空いている手で、 が物を云うぜ。この抜目のない男に味方してもらうようにしたんだ」 けんじゅう あかげ 相手の肩から上衣の中を採り、肩吊りから拳銃を引っ張り出して、後 マロ 1 リーは立ち上がると、赤毛の男の方に向かって横に動いた。 たゝ 彼が半ばまで動いたその時、灰色の髪の警官ジムが首をしめられるよの床に落した。それから今一方の側を採り、ポケットを叩いてから後 けんしゅう うな叫び声を上げ、ポケットをひつつかんで、マクドナルドに飛びつ退すると、コステロの方に廻って行った。コステロは拳銃を持ってい いた。マクドナルドはハッと驚いたように彼を見た。彼は大きな左手なかった。 りようえり はんたいがわ ぜんぶ マローリーはマクドナルドの反対側に行くと、部屋の全部の者が前 でジムのオーヴァコートの両襟をひつつかんでグイと引っ張り上げた ジムは両方の拳をガク / 、、振って、相手の顔を二度ひつばたいた。マに見える位置に立った くちびる やつら クドナルドは脣を閉じて歯を守ると、マローリーに叫んだ。「奴等を「誰が誘拐されたんだ ? 」 じゅう だんろ けんしゅう マクドナルドは銃とウイスキーのグラスを取り上げた。「ファルの 見ていてくれ」彼はひどく落着いて暖炉の上に拳銃を置くと、ジムの もみかわすなぶくろ ゅうかい 上衣のポケットに手を突っ込んで、鞣皮の砂袋を取り出した。 魔っ子だ。家に帰る途中で誘拐したんだろう。ボリヴァーでお前と送 やくそ・、 ようじんばう けいかく 「お前はだらしないぜ、ジム。、 ( つもそうなんだからな」 う約東を、女の用心棒の男から聞いて、奴等はそれを計画したんだ 彼は別に怨む色もなく、ちょっと考え込むように云った。そして砂何処で女をつかまえたかは判らないが」 ぶくろ はいいろいみ 袋を振り上げると、灰色の髪の男の側面をぶん殴った。ジムはゆっく マローリーは足を大きく開いて、鼻にを寄せた。ルーガ拳銃を、 みうご おらっ おどろ するど ーしカん あいで まわ はなしわ よこたお と けんじ心う
コステ、ロは何も答えない・ ゝ、その小さな拳銃をポケットにおさめた・ あたまかす 「そうはいかないせ、えゝ、コステロ ? 」 頭を微かに動かせたマローリーは、答がひどく乾くのをおばえた・ がまん んちょう すばや 彼は我慢ならぬと云う声たった。 宝ルノの眼を緊張して見詰める。それから非常に素速く云った・ こ 0 マローリ - コステロは肩をすくめ、部屋を横切ってもどって行っナ 「おまえは裏切られたんだせ。だが、おれでない男にな」 なかみ あたま ーは金庫に手を突っ込み、床の上に中味をかき出すと、そこにかゞみ エルノのにやりとした笑いは大きなり声となり、頭をそり返らは かんせつ 込んだ。幾つかの長く白い封筒、クリップでとめられた紙片の一東、 た。引金にかけた第一関節の指が、しつかり握ったカに白くなってい そなが こぎってらよう 細長く厚い小切手帳、小さな写真アルバム、幾枚かのバラ / 、になる・その時、外で烈しい音がして、ドアが開いた。 すうじ みつもりしよなど った書類、数字の書き込まれた銀行の見積書等である。マローリーは ランドプーンが入って来たのだ。彼は肩でドアを突いて閉めると、芝 、ようみ むぞうさ うすこ 余り興味もないように、無造作に長い封筒の中味を下に開いた。 居っ気たつぶりにそこによりかゝった。両手は薄い濃い色のオーヴァ こわ するま 奥のドアのカーテンがまた動いた。コステロが硬ばったように暖鑪コートの両ポケットに突っ込んだまゝである。黒い幗子の下の眼は鋭 けんじゅラ ようす、 の前に突っ立っている。ビタリと小さな手に握られた拳銃がカーテンく輝いていた・愉快そうな様子である。無造作に首に巻き付けた、日 ほそなが するど みずぎわた あで の間から出て来たのである。手に続いて細長い体、それから鋭い眼のい絹のイヴニング・スカーフの中でを動かす。その水際立った顔は ようじんぼう ぞう、け - ほ 光をした白い顔が出て来た。ロンダ・ファルの用心棒のエルノだっ象牙彫りの何かのようである・ けんじゅう エルノは拳銃を少し動かして、相手の出方を待つ。ランドレイが陽 気に口を開いた。 マローリーは立ち上がると、空の両手を胸高く上げた。 「おれの方がおまえを最初に床の上に撃ち殺すのに賭けても良いせ」 ず〕「もっと高く上げろ。もっと高くだ ! 」エルノはがなりたてた・ 《ちひげ くらびを けんしゅう たい 土ルノの唇が光った小さな口髭の下で歪んだ。一一つの拳銃が同時 マローリーは手を今少し高く上げた。その額には烈しい当惑の皺が 撃 寄せられていた。 みルノは前から部屋にいたのだ。エルノの顔はぎらに音をたてた。ランドレイは一陣の風にあおられる木のようにゆらぎ けんじゅッ 、みわる 者〕つき、油を塗った髪の一塊が肩になれかゝっている。彼は気味悪くに四十五型拳銃が、彼の体の近くの服のポケットの中でちょっと籠もっ くはっ た音で、猛然と再び爆発した やりと歯を見せて笑った。 ながいす 脅】 マローリ 1 は長椅子の後に転がり込むと、ルーガー拳銃を素速く前 「こいつでおまえを殺らすには、こゝが絶好らしいな、ニ股膏薬君」 そうは ( ことば きんせい その問いかけるような言葉の抑揚は、コステロの賛成を待っ調子だに引き抜いていた。だが、エルノの顔はすでに蒼白となっていた。 おもみ エルノは右手の銃の重味に、、その軽い体を引きおろされて行くよう - 一 0 けんじゅう ・ 4 ・フ A.J ・つ から またこうやくくん だんろ しわ かる まうし すはや
ちよくぜん しどう、 ) に、ゆっくりと落ち込んで行く。倒れる直前に両をつき、それから ーの車の運転手はもう始動機足をかけていた。マローリーは息を切 どせ 1 前のめりに床に滑り倒れる。そして一度背を弓なりにしてから、ガッ らせて彼の横に飛び込むや、車のドアをバタリと閉めた。 クリとなってしまった。 「猛スビードでやるんだ ! 」彼はせい / 、やりながら云った。「大通り ず ランドレイはコートのポケットから左手を取り出すと、こびりつい をはすれて行け。おまわりが五分とたゝぬうちに来るんだ ! 」 ゅび じゅうせい うんてんしゅ 撃 . た何かを指の間から落すように手を開く。これから今一方のポケット運転手は彼を見て云った。「ランドリイは何処です : : : 。銃声を聴 ・じどうけんじゅ・フ から、ゆっくりと苦しそうに大きな自動拳銃が出て来ると、一インチ「ましたが : : : 」 者 / 、と上にあがった。そして踵をめぐらすと、コステロの硬わばった マローリーはルーガー拳銃をあげると、素速くしかし冷く云った・ 迫 . ひ、がね かべ 脅 ~ 姿に身を振り向けるや、引金を再び強く引いた。コステロの肩の壁の 「行くんだ、運ちゃん ! 」 よこめ 漆喰が飛び散る。 ギャが入ると、キャデラックはガクンと飛び出した。運転手は横眼 ちくしよう めくらめつばう ランドレイはばんやりと微笑すると「畜生 ! 」と静かな声で云うとで銃を見ながら、盲滅法に或る角を曲った。 むかんかく じゅう が口を開いた。「ランドレイはもうお前に口をきく事はな 上眼使いになるや、無感覚になった指の間から拳銃をずり落して、絨マローリー たん けんじゅう 氈の上ではねかえらせた。ランドレイは見事なくらいの滑らかさでグ いせ。冷くなってしまったんだ」彼はルーガド拳銃を上げて、運転手 はなさき ン , ・イ、、体を折り曲げて行くと、それから膝をつき、ちょっとゆらいでの鼻先に銃口を持って行った。「だが、おれの銃でゝはないぞ。匂いを から、片側の床にまったく音もなく溶けるように崩れ倒れてしまっ嗅いでみな ! 撃ってないんだから ! 」 うんてんしゅ 「本当だ ! 」運転手はガッカリとした声で云うと、思わす大ぎな車を らんばう よこすべ コステロに視線を投げたマローリーは緊張し怒った声で云った 乱暴に一インチばかり横滑りさせた。 あ 「おい、お前は何て運の良い奴だ ! 」 夜が明けっゝあった。 じゅうせい しつよう 声を聞いたアパー下の住人の押すブザーが執拗に鳴っていた。赤 かいへいきばん しわくちゃしら い小さな灯が三つ受付の開閉機板の上に点いている。皺苦茶の白髪の 小男が口を閉じて、ねばけたように立ち上がりながらよろめいた。 ロンダ・ファルは云った。「それが世間に知られる事よ。あなた。 にんたいかわ ちょうどその時、マローリーは顔を反対側に向けてロビイを矢のよたゞ世間に知られる事が恐ろしいの。どんな事よりもそれが恐ろしい だいりせき うに突っ切り、アパートの出口のドアを飛び出し、大理石の階段を一ニわ。会社と再契約が出来るかどうか確かでないだけに、あたしはその はどうよこぎ てがみ 段駈け降りると、歩道を横切って車道にたどりついていた。ランドリ 手紙がほしいわ」 ア」 0 っ しせん すべ びしよう かゝと 、、んらよう びざ くず こば よ と けんじゅう すばや お、とお にお
たばこ 「たゞらよっと気にかゝったんでね」 ついた天井に煙草の煙をまっすぐに吹き上げた。 たれ ぎやくてル 調長は断固として云った。「気にかけるな。そして誰か . ゞその事につ 「一昨日の夜の事は ? 話に聞くと、ルーレットの機械が逆転して火 かげんすいそ ( いて訊いたって、自分の良い加減な推測をしゃべるんじゃないぞ を出し、地階のガレージに火のついた葉巻が投げ込まれたりして、客達 しら 例えばバルドウイン・ヒルの事件だ。我々の調べたところによると、 が騒いだそうだが ? 」 け、ぶ まや《みつばい . りようにほ 撃マクドナルドはスリッビイ・モルガンと云う名の麻薬密売業者を逮捕警部は汗をかいた両類をちょっと拭くと、とてつもなく大きなハン しようげん しやさっ しようと任務遂行中射殺されたのだ。スリッビイの女房さんの証言もケチを取可り出して鼻をかんだ。 者 まやくはうめん 迫訊いたが、・その女の云う事は信用出来ないと思う。マックは麻薬方面「あゝ、その事か」彼はだらしなく云 ? た。「ありゃあ何でもない事 ひばん 、んばっ 脅の事は詳しくは知らなかった。だが、彼は非番の日だった、それにも だ・あのヘンリイをアンソンとか何とか云う金髪の男の過失たそうだ 、やくたち ようじんにう かかわらずこつど、と仕事をやっていたりつばな男だ。マックは自分奴はマードンネの用心棒だが、別に拳銃戦のために、客達を追っ払ゐ かしつ の仕事を愛していたのさ」 うとしてやったわけじゃない。だからその過失についてはやつも罪が くちょう びしょ ) マローリーはちょっと徹笑して、ていねいな口調で云った。「そう云あるわけで ( そのらやんとしたその話は奴からすぐ訊き出されるさ」 を見詰めた・ うわけですか」 警部はらよっと口を切ってから、鋭い眼でマローリー らようし みようぐう あいはう 「そうだ。もう一つの殺しの方は、マードンネの相棒と云う奇妙な偶マローリーはにや / v- 笑っている。警部は冷い調子で話を続けた。 ん かんり 然の一致の、有名な賭博師のランドレイが、東地区の上り金を管理し「もちろんこの話が気に入らないと云うなら : ・ : ・」 げ人、ん 「まだ聞いていないが、きっと良い話だろう」 た。ジム・ラルスト ているコステロなる男の所へ、現金を集めに行っ やわら けいさっ ンと云う警察の男が奴と同行した。そんな事をすべきではなかったの「そうかい」彼は柔かく話を進めて云った。 おやぶん ひじよう たが、ランドレイと非常に良く知り合っていたのだ。だがそこで金の「アンソンの云うところでは、奴は君と親分のいるところに、ブザー さわ すなぶくろ 事でちょっとした騒ぎが起こった。ジムは砂袋でぶん殴られ、ランドで呼び込まれて行ったそうだ。君は何か階下のルーレットがインチキ だとか何とか云う事で争っていた。デスクの上に金があった所を見る レイと一人のチンビラとが同志打いをした。このもう一人の男は身元 じんもん くちどめりよう 不明だ。コステロを訊問したが、奴は何も云わない、こちらもそんなと「どうもそれは口止料らしいとアンソンは云っている。君はアンソ けんまく ごめん しりったんてい 事で、奴をいためつけるのは御免こうむりたい。たゞ砂袋携行の罪でソにひどい見幕で喰ってか、り、君が私立探偵と知らない奴はカッと こうそ なって拳銃を抜いて撃った。君の撃った弾はねらいがはすれたが、向 罰せられる事になる。もちろん控訴する事とは思うが」 し 0 んかん ばがやろう マローリーは首が子の背の先に触れるまで体をすり落し、染みのうの馬鹿野郎の弾は君に命中はした。その次の瞬間、君も相手の肩に たと だんこ かしつ 、や ( た
こなってるんでね」 話さない事 ( せんか」 りゅう 彼女は頭をグイと引くと、ポカンと我を忘れた顔付きをした。その「訊ぐ理由があるんです。或る別の人が一ての同じ手紙を、あたしに売 す・ 1 びよう 眼はいまや叫び声をあげんばかケの様子だったが、それはほんの数秒りつけようとしているんです。あなたもあたしを脅かして、値段を上 げようとしている一味なんでしよう ? 」 の間の事だった 「いや、こちらはこちらの事ですぜ」 だがほとんどすぐに彼女は我に返っていた。眼から色がひいて、マ うなすいて口を開いた彼女の声は、聴きとれぬほどの囁やき声だっ ロ 1 リ、ー同様の灰色に近い感じにさえなっていた。大袈裟な程注意深 しかばん ・よ′って た。「あたしの手紙の私家版を作ったと云うわけね。写真か何かにとっ 、黒いシガレット・ホルダーを下に置くと、両手の指をしつかりと ・亠しふし て : : : それならお金は払いません。どうって云う事はないんですか 組み合わせた。指の節々が白くなる。 ようはくしゃ しようだんふせいりつ 「あなたはランドレイを良く知っているのですか ? 」彼女は鋭く云っら。商談不成立よ、脅迫者さん。あたしの知った事ではないんですか ら、闇夜にその手紙といっしょに、海の中に飛び込んだら良いわ ! 」 はなしわ ぐうぜんはっん マロー屮ーは深く考え込む様子で鼻に皺を寄せ、眼をすばめて下に 「何となくほっつき歩いているうちに、この手紙の事を偶然発見した と云ったら信じますか : ・ : ・そんな事より、取引成立ですか、それともやった。 けんかわか 「おっしゃいましたね、ファルさん。だがそうは行きませんよ」 お互いに喧嘩別れと行きますか ? 」 すると 「でも、あたしには何の意味もない事です 「どこからその手紙を手に人れたんです ? 」彼女の声はやはり鋭く荒彼女はゆっくりと云った。 ありがた もの。放っておいてもらった方が有難いわ。もしあたしが小さな女持 々しかった。 てがみ けんじゅう しようば、 . ず ~ マローリ 1 は肩をすばめた。「商売にあたって、我々はそんな事はの拳銃でも持ってたら、それでひつばたいて、手紙といっしょにさっ ロンダの昔の恋人。 ジム・ラルストン ) 悪徳警官 マクドナルド ( マック ) 登場人物 アトキンソン : : : 悪徳弁護士。ロンダの顧問一 スリッピイ・モルガン 弁護士でもある。 主人公。 迫一マローリー コステロ ギャ ' ング : ランドレイの相棒。 マードンネ : 脅一口ンダ・ファル映画女優。昔書いた手紙でアンディ 脅迫されている女。 ランドレイ睹奕打ちでもあり強請でもヘンリイ・アンソン・ : マ 1 ドンネの子分。 ・ : 捜査課長。 ある名の知れたギャング。キャッチカート : ロンダ・ファルの用心棒。 一エルノ てがみ われ するど ふか