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検索対象: 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選
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1. 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選

( 29 ) 花火の夜の殺人 6 第、一い 知っていた。マックに直かにあやまること ろうじん は一層問題にならない。彼は親切な老人だが ビンはねのよテな行為を蛇蝎の如く嫌う性質 だ。マックがエリシーア・コルク商会との間 1 リい、や ~ 、 に五千ポンドの契約を結ぶことに成功しなが ら、相手がコンミッションを請求したといっ むか - ばら て、向っ腹を立て、契約を破棄してしまった お、ばかもの ことは事務所で知らぬものはない。大馬鹿者 のマツ・クめー だがマック・はあれでいいのだ 彼は総支配人だから。先生の収人は八百ポン しゅうきゅう ドだ。ハリソンは週給・ーー、確か六ポンド以上 八ポンド以下だと思った。モリスはハリソン ねら の地位を狙っていた。それは必ずしも無理な こ 0 、リ . ソン 24 、・ - フ一午、・ 希望とは云えなかっナノ かつどうてー ひのうりってき 取って非能率的だし、モリスほ若くて活動的 だだから、こんどの忌々しい事件さえなか へんじ ハリソンの身に変事が起き ったら ! 糞 ! 、ゆうびよう ないものか。それも明日 ! 急病 ? そいづ は駄目だ。ったら出て来るじゃないか。明 日の朝、出勤の途中、ストランド街で自動車 に轢き殺きれてくれたら助かるんだがな。ま まあ、夢みたいなことを考える のは止そう。 ひ そうしまいにん ころ

2. 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選

( 303 ) アリ . えん 3 い 殺人課のビークー・ローレンが、スビック・トレリーが殺 がいなかろうがねえ、例えば自分の部屋で宴会を開いてい でんれ されたことを電話で報らされたのは、八時ちょっと前だった。 て、そこに居合わす四十人もの人間が、彼は一週間も家から まちかどたばこてん しゅんかん しようげん スビック親分が、街角の煙草店から立ち去ろうとした瞬間に 出ないでぎつゞけているなんて証言するかも知れないよ。 けんじゅう こうどう 五発の拳銃の弾で倒された。見行の行われたのは七時四十五何しろ、俺が奴の行動をいち / 、見軈っていることを知って かがいしゃ も ( げきしゃ 分、加害者は黒色の箱自動車に乗って逃走したことは目撃者るから、決して、ヘマな真似はしないだろう。しかし、スピ によって確かめられていると云うことであった。 ックを消そうとしている奴は他に見当らないのだし、奴のア はこじど -1 しゃ たばこてん 「フン、又しても黒色の箱自動車か」 バートは、あの煙草店から三丁と離れていないのだから、例 えんかいさわ と、つぶやきながら、部下のマックを従えて署をとび出しえ宴会騒ぎをしていた所でコッソリ脱け出して殺つつける じーかん たが、歩道に出ると、 時間は充分ある。その上、あのアパートにはエレベーターポ したい しん げんかんばん 三「死体なんか見たってしょ . うがないさ、それより、タッグ・ ーイもいないし、玄関番もいないから、誰れにも見つかる心 つかい ノレイに会いに行こう。奴は多分、うちにいるだろうが、君 配がない。 これは却々厄介な事件だよ」 今何時か、ハ ッキリ覚えていてくれ給え」 「成程ーーー」マックは心配そ一つに、「で、誰かゞ、タッグは うでどけい しようげん 「オーケー」とマックは腕時計をのぞきながら、「でも、 - ど 外出しなかったと証言したら ! 」 うちゃぶ うしてタッグなんぞに会いに行くんだ」 「もちろん、そのアリバイを打破るのさ」 けんんん 「奴とスビックとは君も知っての通り大猿の仲だ、今に必す 二人がタッグのアバ 1 トの前に来た時、ビーターがマック スビックを殺つつけて見せると豪語していたことは、奴等の に再び時計を見るように云った 仲間で知らぬ奴はないくらいのものさ。勿論、クッグだって 「よし、八時二分前だね。」それからニ人は大に階段をのば やるからには、チャンと現場不在証明を用意しているにはちって四階に達すると、目あての部屋のドアをノックした。 ほどう と・ 1 そ・ ) したが ころ

3. 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選

ゞ、、さ 0 ( 。た職ル ) さか、第学 「解か。何でもやるカ ~ おっ れもなかなか乙なもんだ」 け人か 、つ、いてん 彼か云い終らないうちに、モリスが、まるで喧嘩でもする 喫茶店のテープルを囲んで、一一一人の男が熱心に話していた。 もん・ ( 」い ように、文を睨みつけてガミガ ~ まくし立て出した。 よほど重大な問題について相談しているのだ。出たり入っ , , やまん 「乙なもんだと来たね、痩我はよせ、オルドロイド、就職 へ卩こくよってしまった の ~ りする客には目もくれず、コーヒーカ冫・ / 運動というものがどんなものか俺が知らないとでも思ってる いつまでも話し続けているところを見るとー のも無視して、 のか。 ー失礼でごぎいますが、ディリイ・エキスプレス 大】一。間違いない、ハリソンはちゃんと知っている 、ゆ・つしんこ 5 こ ( 上の求人広告を見て参りましたものですがー」ー馬鹿臭い そう云ったのはモリソンという男だった : れく′り 」しみいんサいり 「うん、俺もそう思う。らよっと意味ありげに人員整理と云俺は何百回やったか知れん。君は、俺と較べて、どのくらい びとれ・ 0 ん しようこ ったろう。あれが、われわれの一件を押さえている証拠だよ」運がいいかわからないんだ。君は独身だが、俺には女房と 鬼が二人もいる。まあそれはいいや、とにかくせっせと探し ォルドロイドという男にった。 て、やっとに事にありついたとするか。すると新しい会社の 「ううん、そうか、そんなことを云ったかなうつかりしてい でんわ しょむ、 ~ - つよう 庶務課長が、早速、電話をかけらあな、もちろん今の会社に たらしい。俺は聞き漏らした、 、いんむしょた、 もしもし、おたくに勤めていたモリス君の勤務状態、性 モリスはるように一うと、バッと煙草の灰をはた、さ落し て、大きな上半身を、テープルの上にぐっと突、さ出すように格などの点についてうかかしたいのですか。そうです、同君 さ・ルこう は、こんど我社に入社されましたので、参考のために、ーふ した。彼は密生した粗い硬い髪の毛を持っており、それをポ へんじ ん君たらは、あのマックの老いぼれがどんな返事をすると思 マードでコテコテに固めていた。 しよくぎようあんていしょ う、こ ってる ! 「要するに、われわれ三人を解雇する、ということなんでし 糞 ! まあ後二週間もしたら、職業安定所の前 おれ ふる ぎようれつ よう」 の寒さに慄えている行列の中に、間違いなく、君も俺もいる もう一人のレディというのが云った。その言葉にモリスと だろうよ。まあ見てみな、あの老いばれマックが、明日にで ォルドロイドは、ぎよっとしたように息を詰めてレディを視もグラスゴーから帰って来たらどんなことになるか。マック かんばっ が社長室に入る ~ 間髪を人れずハリソンが後から入って行く 詰めた彼は三人のうちで一番年若で、末経驗でもあった。 しっちょうしつ 五分以内に社長室のブザ、ーが隝って、おれたら三人はマック 一ややあって、オルドロイドが半ば自棄みたいな調子で、 おれ ゴナだ。あ

4. 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選

じゃねん あら - ′、 ねがえ モリスは大、きく自 ( をして、邪念を払うように荒々しく寝返りを打っ臟部はアームチェアもディクタホーンも、絨毯も敷いてないまことに かんが きつじん きっうけい た。しかし彼がこの時以後取った行動から考えると、殺人の最初の一殺風景な心臟部だ。室の大部分は幾つかの頑固な木製の机で占められ しゅんん 一歩は、この間に音もなく踏み出されたものと見られるようだ。殺人その机はどれもインキの汚点だらけで、新机切抜き、原槁、ファイ なまあた、 しんしつ 殺の不吉な芽は、生暖かい空気の漂う暗い寝室でそっと頭を出した。 ルなどが雑然と積み重ねられてある。しかし注意してみると、これら つまや や ! ん の〕何かがせいせいしたような気分で、彼は手を突き出して、妻の搜サの野な六つのれが、整然と、ある種の約東に従って据えられている ねむ びら ん、 ぎすな体に触れた。妻半ば眠りながら、、夫に寄り溢うようにして薄ことがわかる一窓に面して真、〉中にデ、一と据わ「ているのが、ひょろ げいじ準つか 火】い唇を半分ほど開いこ。 長い足をした陰気な「芸術家」クラレンス氏だ。氏は窓からの光線に ゅうせんけん げんめい 対して何人よりも優先権を持 ? 氏自身の言明によれば、氏のスケッ チはゴヤにいささか劣るかも知れないが、ペン字は断じてイングレス えいじしよか ストランド街ジ = ームス通のユニバーサル広告代理事務所は外観の ( 有名な英字書家 ) に負けないのだそうである。グ一フレンス氏は毎日 せん . りよう 栄えない古い建物の一階全部を占領している。入ったところが広い客ゴヤとイングレスの両先輩」挑戦しながら、満足して窓際の机に坐り しつ ちょうど かんそ 室だ。客室はロンドン一流の調度が、最も簡素に配置されている。客「モリシ = 会社製ママレド」どか「安眠を誘うマ・・ツトレス」などと とッらへだ せつ そうし・はいにん 室と重い扉を隔てて接しているのが、すなわちマックこと総支配人キ意匠を凝らしてペンを揮う。 ャンベル氏の私室だ。マックの室は客室以上の威厳と贅沢と、さらに クラレンス氏の右の机に、すで、にわれわれも近づきであるオルド・ロ かぎ 、やくしつ すわ 高尚な暖かみを以って飾られている。たい ていのお客は、先の客室だ」イド氏が坐っている。そして左の机にあのレディ君がいる。この三人 とうぶんにら けで追っ払われ、マックの堂に入ることを許されるのは、どう踏んの皆を等分に睨み分けるような位地に、大きな机とやや小さい机が並 でも一万ポンド以上の客と鑑定されたものだけに限られている。広いんでいて、・大きい方がわれわれの主人公モリス氏の机、小さいのがシ のうりつ しょツがいがかり 客間でロンドン一流の広告代理業者の冷たい能率に接した客は、このエバードという渉外係の少年の机だ。シェ。ハードは、社にいない時の ーの紀 奥の部屋では圧倒され、かっ和められ、気持よく財布の紐を解く、こ、方が多いから、彼の机はよく他の社員の物置き用に使用される。 かんかく ういう仕掛けになっているわけだ。 さてモリスの机の後方にある間をてて、この部屋じうで大の いげんイいたく あんち ところで以上の威厳と賛沢と暖みは、ここで突然打ち切られ、第三 - ・机と子が低く平面的な壇の上に安置され、自ら部屋全体に君臨する のうりつ せいい ハよッ の室は能率と混雑の世界に一変する。すなわちマックに云わせると、 が如、さ威容を示している。すなわらハリソン氏の席である。一般的に しんぞうぶ プリー・ランサー 「事務所の心臓部」ということになる。製作部の室だ。しかしこの心広告代理業者と呼ばれる抜け目のない紳士たらがハリソン氏と相対し 人て、 な : 、い物 ~ ・ル

5. 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選

笑いをしながら下目使いにマローリー を通せるだろうと思ったのさ」 を見て、手の出るのを待った・ 「もし / 、 : : : そうです : : : コステロです。マックがあれている外は 「見当はすれの騒動だったかも知れないな」 しず おやゅび はな コステロは静かに云うと、眼をつむって、親指の爪で鼻をこすった 皆んなうまく運んでます。マックはいやにからみついてね : : : 出て行 わか 「こう云う事は、時によっちゃ仲々むつかしいもんなんだ」 かないんでさあ。まだ判りませんがね。 この町の男じゃないらし いです。判りました」 マクドナルドのかすれ声が、閉じこもった部屋いつばいに響いた。 マクドナルドが身動きした。「待て : : : 」 「抜目のない男がそんな間違いをするもんかね。頭で考えてやがるん びしよう おちっ だからな」 だが、コステロは微笑して、落着いて電話をもどした。マクドナル みどり ほのお つば コステロは眼を開くと、肩越しに赤毛の男に視線を投げた。赤毛のドの眼には罧の焔が燃えている。彼は壁と椅子の間の隅に唾をはい みぎて 男は椅子の上で、身を廻した。半ば閉じたその両もゝに右手を置いてた。 ばんごう いる。コステロは今一方に振り返ると、マクドナルドをまともに見詰 「インチキだ。そいつはインチキだぞ。こゝから番号を廻しただけで ちょう、より でんわ めた。 長距離電話扱いになるモントローズに電話が通じるものかい」 「出て行け ! 」彼は冷く云い放った。「すぐ出て行け。お前は酔っ払っ コステロの両手が何となく動く。赤毛の男が立ち上がると、くわえ たばこ ているんだ。お前と問答なぞしたくない」 た煙草から立ち上る煙をよけるように頭をちょっと後にそらせ、テー マクドナルドは暖炉に肩をよりかゝらせ、コートの脇のポケットにプルから離れた所に身を崩して突っ立った。 ふんゼん こうちょう 手を人れていた。大きな四角な頭にあみだにかむった帽子は、形が崩マクドナルドは憤然と足を踏み鳴らした。顔が紅潮し、顎の所だけ しわくちゃ とおざ ムか ず ~ れて皺苦茶である。灰色の髪の刑事のジムはちょっと彼から遠去かっ がくつきりと白く残った。眼が深く烈しくきらゆく。 た ~ て、ロをもぐ / \ させながら、緊張して彼を見詰めている。 「こいつに物を云わせた方が良さそうだな」ポケットから何気なく取 けんじゅう ー親方を呼びな」マクドナルドは怒鳴った。 り出した手の中の、空色の警察用拳銃がビッタリと物なれた様子で弧 者 ~ 「おれに命令なんかするな。おれに命分するとは手前は嫌な野郎だを描いた。 しせん コステロは赤毛の男に視線を投げた。「奴をかたづけな、アンディ」 らゆうちょ らかよ わる ( らびる 脅 ~ コステロは躊躇してから、部屋を横切って電話に近寄った。の高赤毛の男は体をこわばらせ色の悪い唇から爐草をブッと吹き出す でんわ い或る一点を見詰めていた彼は、電話をはずして、マクドナルドに背と、閃光のように素速く上衣の中に突っ込もうとした。 なか ばんごッ かべ マロ 1 リー 中を向けたまゝ、番号を廻し始めた。それから璧によりかゝって、 が口を人れた。「手遅れだぜ。こいつを見な」 す そうど・つ かれ だんろ かみ かたご あたま んらよう どな しせん よ うす すばや もの

6. 探偵倶楽部 昭和31年 夏の臨時増刊 海外探偵小説傑作選

そ ) し 事との会見は想像したよりずっと危だった。しかしとにかく切しぶ自分自分のデスクに戻りかけた時 ( ふいに ( リソン氏の机の総支 はいにんしつ じしん 配人室からのブザーが低い音を立てて鳴った。当然のように、をリス り抜けることが出来た。彼は自分の演技に自信を持った 作部室では、クラレンスや、シ = バードたちが依然、一団になっは踊るような格好で出て行った。 けいさっ・ いた。ォルド・ロイドとレディは皆から「オルドロイ ~ ドに来るよデに。警察の方が聴きたいと云っておられる 殺一て事俸のことをしゃべり合って じようたい 、た。 . この状態は、仕事に関すから」 の一れて、二人きりでひそひそ話をして ( しの キャンベル氏が云った。 るはつ、さりした命令がないせいもあった。モード嬢あたりを通じて示 ・しれいむし ! た 0 しかしショ ' ッ モリスは、むろん、こう来るだろうと予期しても 火 ~ されたキャンベル氏の指令が無視されても仕方がないかも知れない。 だがモリスの油断のない眼は、そこに一つの機会が落っこっているこクはやはり大きかった。ォルド 0 イドは粉砕されるかも知れない。 とを見すようなことはなかった。彼は主のいないリソン氏の机にや、やつは頑張るだろう。しかしやつの次ばレディの番だ。あの坊や に無事切り抜けられるかどうか ? 怪しいものだな。あの真っ青な顔 歩み寄って、卓上メモに書き込んである予定をしらべた。 せんりつ 「シ = パード。ス「 , トランド新聞から云って来た広告意匠の見本とを見ろ。モリスは目前に迫る危に初めて心からの戦慄を感じた。急 に周囲を黒い雲が取巻いたような気がして彼は焦点を失い、総支配 いうものは、もう送ったのかね」 せいきくしつ 「いやまだです」渉外係の若い男は、ズいにもリスから訊かれて慌て人室から製作室 ~ 帰る道さえわからなくなったようであった。しかし ぜったい 、ようふ とりみだ 恐怖を示したりすることは絶対に禁物だった ここで取乱したり、 たような声を出した。 かた 「それじゃ、すぐ送るにテにしなくらやまずいぜ。あ、そうだ。レデれは死を意味する。モ屮スはガッシリした双の肩を、うんと一つ張っ ゅうき やじゅう そろ こ。彼の野獣にひとしい本来の勇気が戻って来た。で彼は愉快そうな イ、君ひとっ揃えてやってくれよ。あのママレレドの下絵なんかい ( だろう。十二時の発送に間に合わせないと、マックの御機嫌が斜めだ調子で云った。 こうこくげいじゅっしゃ ーぜ。それから、クラレ・ン . ス、アデルフィ広告芸術社の使いが午後来る「オルドロイド、刑事さんが君を訊問したいってさ」 、よペどん こ , ず ォルドロイドは、のろのろと椅子から立ったが、その顔は極度の緊 ことになっているから、構図が渡せるように早いとこたのむ」 れんじ・ 0 - つよう ひょうじよう し 0 ん 。が彼は外光を背負っていた ( ので、他の連中 一瞬、皆は妙な表情でモリスの方を視た。しかし仕事は結局しなけ張のために蒼褪めてい せんばいしゃいん ればならなかったし、びとつには、もリスの発言には、先輩社員としの注意を惹かずにすんだ ごきげん けんい 「之あしかし、俺たち・は運がよかったよ」モリスは全知力を傾けてし、 ての多少の権載がないわけでもなかった。特にマックの御機嫌につい いっしょ ゅうべ て云ったモリスの言葉は皆の痛いところを突いた。それで一同がしぶやべり続けた。「昨夜、われわれ三人一緒にいたろうおかげで立派〈 , えんぎ よてい かっこう じんもん あや ふんさい

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「しかしーーー」 だ ? どこにもいないじゃないか。ハリソンは俺たちの件については誰 しようめ、 「いい加減にしないか、オルドロイド。しかし。しかしって何十遍云にも云っていないって自分の口から証明している。だったら何を恐れ かんしやくばくはっ けいさつじむしょ うつもりだ ! 」モリスは癇耀を爆発させた。「うん、しかし 1 ーだが、 ることがあると云うんだ。警察は事務所のわれわれを調べ、マックに 人 ~ にようばう しゃべ 0 、こり、ハリソンの女房に聴いたりするだろう。ハリソンは喋らな 殺しかしーー。馬鹿は止めろ ! おい、君は、 ' ほんの十分か十五分前にハ聴し わす じむしょ の リソンが何と云ったが忘れもしまい。私が君たちだったら、一日も早いん汜から、事務所の者で、。われわれ三人を疑問に思うものなど一人 によう : う 夜 ( く職を探すねーー俺はこの耳ではっきり聴いたぜ。ねえ、今は十一月もいやしない。マックはむろん知らないし、女房はなおさらのことだ の一 ムゅこ ばかもの 火だよ。これから冬を越して春になるまでにや五カ月あらあ。その間、あの馬鹿者のクーバーだって、自分が漏らした一言が原因でハ・リソン 花一職がなくてどうして過ごす ? 君は前に失業の袤があるそうだからが殺されたなんて、そんな突拍子もないことは考えまい。論として むりようとしよかん けいさっ はつけん よくわかってるはずだ。空腹と寒さ ! 一日中、無料図書館のスチー警察は何も発見できないということだ。やつらはとどのつまり、この へいかんじかん まが ムにへばりついて、閉館時間が来ると、さっさと追い出される ! と事件は、きっと誰かが間違いをやらかしたんだ。しかし当局は捜査は ぞくこ - っ - と にかく君が俺にビストルを一時間か一時間半貸してくれさえすれば、 続行する。そういって一件書類をファイルに閉じられで、それつきり そんな目に決して会わないですむんだ。何も君は、俺が何のためにビ忘れてしまうのさ」 ひつよう ストルを欲しがるかなんて、そんな思鹿げた質間を繰り返す必要はど「それはそうなるかも知れないな」 みと こにも無いんだ。万一、俺が警察につかまるようなことがあっても、 ォルドロイドはしぶしぶ認めた。 あんぜん 君は安全そのものなのだ。う ん、誓ってもいい」 「もちろんそうなるさ。そこでオルドロイド、君はそうなることによ まちが しつぎよう 「君は間違いなくつかまるよ。きっと絞首刑になる ! 」 って、どれほどのプラスになるか考えてみるんだ、まず君は失業しな こうしゆけ す 「たとえ絞首刑になるにしても、俺がなるので君がなるんじゃない。 。あるいはハリソンの椅子が降って来ないとも限らない一面これ ぜったい しかしそんなことにはならないだろうよ。ォルドロイド、君だって知によって何か失うことがあるか ? 何もないー 絶対にナッシングだ はんにん きつじんじけん ってるじゃないか、・犯人の知れない殺人事件はこの頃ずいぶん多いじ君だってハリソンは嫌いだろう ? 」 あたま ゃないか。何かに統計が出ていたようだ。まあすこし頭を働かして考「ああ嫌いだ」 はなし ちょうさ けいきっ 「よし、それで話が決まった えてみたまえ。もし警察がこの事件の調査に乗り出すとして、一体、 ほんのうて やつらはどこに原因というものを見出すことが出来るか ? どこにハ 廊下の方で足音がし、女の話し声が聞こえた。三人は本能的にバッ りゅう かくじ リソンを殺さなくてはならない理由を持っている人間がいるというんと別れて、各自の机に戻った。モリスだけがすぐ机から離れて入り口 しよく しつもん きみ げんいん

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うからやづて来たということに外ならなかったからである。この男は「と仰しやるのは、あなたがこの一一、三日、あたしを遊ばせておいて どうりよう 同僚としてあまり危険すぎた。例えば、容易に決定できないような間やったということ ? ハリゾンきん」 ぜんいんしようしゅう 題があると、マックは製作室の全員を招集して、自分とハリソン氏と「まあまあ、モードさん、どっちにしたところが、私は、キャンベル きいこうかいぎ れっせ、 殺 ( の最高会議に列席させ意見を云わせることがある。そういう時にマツ、さんほどあなたに仕事を出しませんでしたよ、ははは。、それはともか しよう - さん しせん けっ . こう の ~ クが賞讃するような視線をモリスに向けることが一再ならずあったこく最後の日だ。今日は四時半にお帰りになって結構です」 わす とをハリソン氏は忘れるわけにはいかない。そんな場合、モリスはすまあ、四時半に ? 」 すいせん 火でにハリソン氏が反対を表明した案を、平気で推薦し、それをマック「モードさん、忘れたかね。今日はガイ・ホ 1 クスのお祭りですよ。 かんしん はなび じっえん 花 ~ が感心して受け入れる、というような恐るべき場面を平然として実演花火が始まるのは六時半からでしたね。」 ・はなび ムあん したりする。その度に、ハリソン氏は自分の地位がゆさぶられる不安「花火ですって ! 」モード嬢はくすくす笑った。「あたしはもう大人で びとし はなび じしん 。ハリソンさん、あなたはなさいますの、花火を ? 」 を人知れず感じた。モリスは自分の才能に、あまりにも自信を持ちすすわ やしんかしよう はなでんしゃ 「やりますよ。ちゃんとロケ・ツトや花電車なんか買って用していま ぎている。さらに - エネルギーと野心が過剰だ。要するに彼はハリソン 、よう、 氏の地位に対する大きな脅威であった。ハリソン氏の心の中にはモリす。それからボン・ファイア ( 篝火 ) もね」 じひしんみじん スに対する慈悲心は微塵もなかった。もしキャンベル氏が社員に対す「まあ」 にんめいけん おどろ - る任命権をハリソン氏に与えていたら、、モリスはすでに前日、馘首さ「と驚いていただくこともないのです。実は子供たちにせがまれて仕 やっこ . れには。す , 1 」 0 方泣くなくと云うわけなんですよ。奴さんたちはもう一週間も前から そうしはいにんず まきっ おこ 総支配人付きのタイビスト、 - モード嬢カノ 1 、 ・ ) 、、 ) ノン氏が頼んだ手紙庭に薪を積んでポン・プアイアの用意、おさおさ怠りなしです。私の こ。ハリソン氏は、おかげで室内楽しみはお茶とケーキというわけですな」 を打ち了えて、手に持づて入って来「 , - あ - たま ハリソン氏は、頭のテッペンの薄くなったところに並べてある毛、を の憂欝な空気から逃れることが出来たような気がしてほっとした。 、よう 、ゆうか しごくじようきげん はなつず 「ードさん、今日で休暇は終りだね」 片手で大切そうに撫でながら、至極上気嫌で、モード嬢と話し続けた きゅうか 「あら、何の休暇ですの ? 」キ 1 ド嬢は、ちょっと眼を視張るように後から考えると、この時ハリソン氏は、自分を死刑にする万法を、自 してみせた。 分で選択していたようなものであった。 かえ しごと せなか モ屮スは岩のような背中を、そちらに向けて仕事をしているような T キ・ヤンベルさんが帰って来たら、この二、三日みたようなわけには のが ことば ゆかないんじゃないかね」 風をしながら、・全身を耳にして、ハリソン氏の言葉を一語も逃さす聴 けってい かくしゅ てがみ たの おっ あそ まっ おとな

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たばこ 「たゞらよっと気にかゝったんでね」 ついた天井に煙草の煙をまっすぐに吹き上げた。 たれ ぎやくてル 調長は断固として云った。「気にかけるな。そして誰か . ゞその事につ 「一昨日の夜の事は ? 話に聞くと、ルーレットの機械が逆転して火 かげんすいそ ( いて訊いたって、自分の良い加減な推測をしゃべるんじゃないぞ を出し、地階のガレージに火のついた葉巻が投げ込まれたりして、客達 しら 例えばバルドウイン・ヒルの事件だ。我々の調べたところによると、 が騒いだそうだが ? 」 け、ぶ まや《みつばい . りようにほ 撃マクドナルドはスリッビイ・モルガンと云う名の麻薬密売業者を逮捕警部は汗をかいた両類をちょっと拭くと、とてつもなく大きなハン しようげん しやさっ しようと任務遂行中射殺されたのだ。スリッビイの女房さんの証言もケチを取可り出して鼻をかんだ。 者 まやくはうめん 迫訊いたが、・その女の云う事は信用出来ないと思う。マックは麻薬方面「あゝ、その事か」彼はだらしなく云 ? た。「ありゃあ何でもない事 ひばん 、んばっ 脅の事は詳しくは知らなかった。だが、彼は非番の日だった、それにも だ・あのヘンリイをアンソンとか何とか云う金髪の男の過失たそうだ 、やくたち ようじんにう かかわらずこつど、と仕事をやっていたりつばな男だ。マックは自分奴はマードンネの用心棒だが、別に拳銃戦のために、客達を追っ払ゐ かしつ の仕事を愛していたのさ」 うとしてやったわけじゃない。だからその過失についてはやつも罪が くちょう びしょ ) マローリーはちょっと徹笑して、ていねいな口調で云った。「そう云あるわけで ( そのらやんとしたその話は奴からすぐ訊き出されるさ」 を見詰めた・ うわけですか」 警部はらよっと口を切ってから、鋭い眼でマローリー らようし みようぐう あいはう 「そうだ。もう一つの殺しの方は、マードンネの相棒と云う奇妙な偶マローリーはにや / v- 笑っている。警部は冷い調子で話を続けた。 ん かんり 然の一致の、有名な賭博師のランドレイが、東地区の上り金を管理し「もちろんこの話が気に入らないと云うなら : ・ : ・」 げ人、ん 「まだ聞いていないが、きっと良い話だろう」 た。ジム・ラルスト ているコステロなる男の所へ、現金を集めに行っ やわら けいさっ ンと云う警察の男が奴と同行した。そんな事をすべきではなかったの「そうかい」彼は柔かく話を進めて云った。 おやぶん ひじよう たが、ランドレイと非常に良く知り合っていたのだ。だがそこで金の「アンソンの云うところでは、奴は君と親分のいるところに、ブザー さわ すなぶくろ 事でちょっとした騒ぎが起こった。ジムは砂袋でぶん殴られ、ランドで呼び込まれて行ったそうだ。君は何か階下のルーレットがインチキ だとか何とか云う事で争っていた。デスクの上に金があった所を見る レイと一人のチンビラとが同志打いをした。このもう一人の男は身元 じんもん くちどめりよう 不明だ。コステロを訊問したが、奴は何も云わない、こちらもそんなと「どうもそれは口止料らしいとアンソンは云っている。君はアンソ けんまく ごめん しりったんてい 事で、奴をいためつけるのは御免こうむりたい。たゞ砂袋携行の罪でソにひどい見幕で喰ってか、り、君が私立探偵と知らない奴はカッと こうそ なって拳銃を抜いて撃った。君の撃った弾はねらいがはすれたが、向 罰せられる事になる。もちろん控訴する事とは思うが」 し 0 んかん ばがやろう マローリーは首が子の背の先に触れるまで体をすり落し、染みのうの馬鹿野郎の弾は君に命中はした。その次の瞬間、君も相手の肩に たと だんこ かしつ 、や ( た

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誌上探偵教室 ( 18 ) コックのいない台所 ロロロ いるのは小鳥ばかり