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検索対象: 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號
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1. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

( 301 ) 死の前に むすめ けいきん かんぜん 1 クへやって来て、彼の娘として彼と一緒に住むように話をつけたののない計算だと思っておるが、完全なものではあるまい。彼は、ミス いどころ ・マーフィが彼の娘というのが誰で、どうかして居所を見付けたのだ 「ゆっくりいってくんな」と、フェビアンがいった。 ろうが、どうして見付けたかは、わしにはいわなかった。もっとも彼 「馬鹿なこといっちゃいかん、フェビアン君。警察にはそれはすっか女が知っとるということは、彼には分っておったに相ないのだ。と でき すいそく り分っておる。取りきめが出来て、ミス・マーフィはニュ 1 ヨークへ にかく、推測して見て、わしには分っておるのだ」 とくべっ やって来て、ミス・バイオレット・ペリットとなった。ところが幾ら ウルフは、特別に息をつく中やめてから、話しつづけた。「もう一つ よ・フきゅ・ ) むすめ とくべつかんしん も経たん中に、約東を破って、彼女は大金を要求しはじめて、ごんご 。・・ナベリット氏が、どんなことでも娘さんに関係したことは、特別に関心 きんがく おびやか ん金額をふやして行き、払わなければ、ばらすといって脅すようになを持っていたのだが、わしにはさなかったことがある。それはミス かれ った。彼は払った。ところが、土曜の晩、一昨晩だが、彼女は五万ド ・マーフィが西部で若い男を思って、それとも彼が彼女の方を思って がまん こんわく ルを寄越せといい出した。我慢するよりもすっかり困惑して、助けておったのか、両方ともだったか、思っておったのだね。そして彼はニ じき くれといって彼はわしのところへやって来たのだ。彼はわしに教えた 、く ューヨークへやって来たーーー時期はわしには分らんのだが、多分、 よう、ゆ・フ わしとグッドウイン君とに どれだけ渡したか、正しい間違い ス・マーフィがペリット氏に金を要求しはじめたころかーーー、多分それ よりも少し前かと思われるのだーーーそして彼とミス・マーフィとは彼 ス 1 ッと心臟が喉の所へ飛び上った。私は倒れ相になる身体 ゅうじようふた を、危く支えて日覆から逃れ出た。そして男に見つからない様 ナミス・マーフイから、彼はペリット氏 等のーーー友情を再びはじめこ。 おそ けっしん に群集から離れた。ふり返えると群集の後に巡査が立って、 = ・昼 くス・マーフ の娘さんの身許を知って、自分で襲う決心をしたのだ。 コニコ笑いながら男の演説をきいていた。「貴方は職務の手前〕白 むすめ それでいいのですか、駻だと思うならあの日覆の中に這入 イに分らんようにして、娘さんと会う工夫をし、かの女と友情を求め、 しようだく ってごらんなさい」無神経な警官にこう告げ様と思 自分と結婚しようとかの女にせがんで、承諾させようとした。彼は充 ったが、私にはそれだけの気力がなかった。 ほうかがくせも 私は暈を感じてヒョロ / 、歩き出した。 分に教育もあり、法科学生として装うだけの厚かましさも持っていた。 さいげん べつめい 実際、その厚かましさは際限のないものだった。彼は別名なんという ュの・ル 2 リい やっかい 0 ものは厄介で考えもしなかった。初めには、二つの世界は関係をつけ はなす るには、とても離れ過ぎていると考えていたものだろうと、わしは思 うのだ。そして後になって、しまったと思ったとすれば、もうその時 おそす には遅過ぎて変えられなかったのだ。とに角、彼はペリット氏の娘さ 4 あっ の

2. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

れんそう じゅんばく ウンの後妻のジャスミン、それに六十近くになるジャスミンの母親の事な、一点の非の打ちどころもない、純白の、乙女の肌を連想させる きず かぞく すばら ような、素晴しい光沢を持ちーー羽の毛で突いた程の疵もなかった。 ド 1 ラー。以上の五人が、プラウン家の家族である。 ところが、だん′、に配っていくうちに、一頭の真紅の天馬が翼を 次に、招待された側は、ジャスミンの幼な友達の、三十三になるダ 形や大きさは ニイ・アルバートと、プラウンの勤めている会社の社員で、二十八に拡げて飛翔している絵のある皿が一枚混っていた。 ともだち のなるシュルワール・ヘミング、それに、フリツツの遊び友達の、近所他の皿と寸分違わないのである。 じゅんばく こども そして、その代りに、純白のス 1 プ皿は、九枚しかなかった。 の子供が三人、ーー計五人である。 一枚消え去り、代りに天馬の皿があったというわけである。 ・ : 人々は、大きな円卓の周りに腰を下した。 たんじゅん さいこうちょう 子供というものは単純なもので、もの珍しさから、フリツッとトミ 天 ~ パ 1 ティは、六時半頃からはじまり、七時過ぎには最高潮に達し、 パーティであることも忘れーーー酒の酔イはその天馬の絵の焼きつけられた皿を共に欲しがった。 大人達は、子供のバースディ・ 、よう の それを見た母親のジャスミンが、 も廻って、子供をそっち除けにして自分達の話しに打ち興じてい はしらどけい さて、柱時計が八時を報じ、 , ーー子供中心の催しなので、そろそろ「おかしいわね、いっ紛れ込んだのでしよう ? : : : まあ、 ーティが終ってからよく調べるからーー」 バーティは終りに近づいナ にいこうぶつ で最後に「ケルム・ホテル」自慢のーーー又長男のフリツツの大好物と呟やき、 「今夜は、フリツツのためのパーティですから、フリツツにそのお皿 であったーーー蟹スープが出ることになった。 ゆず ひぞう めった スープ皿は、プラウン秘蔵の皿で、滅多に人前に供さないものだつを譲りなさい」 と、弟のトミイの方をなだめて、その皿をフリツツに渡させた。 た。彼は、久方振りでそれを披露するために、わざわざ家から持って わか 来たのである。 なぜ、その時、そういう行動を執ったのか、今だに誰も解らな ちょっと らなまぐさ 冖うそまこと か真か判らぬが、支那渡りの、何とかいう一寸した血腥い因縁いのだがー・ー大人達は、この一寸した事件を、したたかに酔っていた みすご とうやしゆっせき がついているといわれるその皿は、全部で十枚あり、当夜出席した人ので、さして気にもかけず、看過してしまった。 まぎ しまわ ブラウンも、 いつどこから、その天馬の皿が紛れ込んだか : 数とビッタリ同じで、ビロード張りの木製の箱に大切に蔵れていナ とりだ ホテルの給仕が、その箱から、皿を取出し、皆んなの前へ一枚ずつ ? という疑問が心の中に生じたことは生じたのだが、酔ってはいる ので、そのまま、忘れるともなく忘れてしまった。 置いていった。 じつらよく なみなみかに なる程、プラウンが自慢するだけあって、そのスープ皿は、実に見皿を各人の前に配り終った実直そうな給仕は、満々と蟹スープを充 しようたい かに テープル しなわた じまん ひろう じまん かいしゃ きよう つぶ ひしよう ぎもん は、おや や よ

3. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

それまでおとなしく耳を傾けていたキャメラマンの宇部が 「そうなんですよ。そこでさわぎになったのですーーー』 こ・こ へんこう 例の飾らないむき出しの言葉を挿んだ。 「こんども、大阪の方では到着駅の変更を忘れてしまったの ですか ? 』 助役は、宇部の方へ、笑った眼差を向けて、 「それはそうなんですがね』と云って、「そうなんですが、ト 「いいえ、こんどはよく承知していました。駅の貨物係もそ つみこみご の積りでしたし、日通側も、秋葉原からのクドいような電話キの車扱は積込後木箱の上にかけたシートの結び目に封印を こ、ろま しまして、この封印は、荷受人立会いで切ります。積込む時 もあったし、心待ちに待っていたのです。しかし、どうした よぶん の数え間違い、又気附かずに余分に人れる、ということも間 ことか、やはり渡して了ったのですね』 ふういん はっそラでんびよう あることですし、封印を切ったあと、積降ろしをする時に 『その日通側の発行した発送伝票と申しますか、何か荷物を につつうがわ しようめいしょ いちいち数えるなどは、荷受人側のすることで、日通側の人 受取るときの荷受人側の証明書のようなものはあるのでしょ 夫ではそんな、きちょうなことは先ずしません。竹越宗」は 『えゝありますとも ! それにはちゃんと貨車の種別、車号数えていて、四個少なかったことを知ったかも知れませんが 番号も書人れて、わたしてあります通知書甲片とか云うので何とも云っておらないのです。そして、トラックに積換える と、直ぐに駅から立去って了いました : ・ すがね。受取る方は、それを示して、記載事頂が間違いない・ しょやく という上でなければ、渡して貰えません。それなのに、竹越 助役は、これで話は終ったというように口を結んだ : たけこし 『なる程、すると坂上は、その竹越に一杯食わされたのです 宗一は、坂上良一の受取るべきであったリンゴ箱七三六個を 受取って了ったのですーーー』 ね』 1 ー加瀬はちょいと間をおいて、肯いてから云った。 『そうです。それで、これは国鉄側に、日通に、明かに手落 貨『それはしかし、車号が違っていたし、個数も違っていたの でしよう ? 』 ちがあるというので、目下坂上良一氏から全額とその利子の そんがいばいしようていそ え『その筈です。日通側は、あとで、竹越宗一が渡した甲片を損害賠償の提訴が出ています。恐らく示談になり、よく話合 そんがい いが出来たとして、三者が三分の一宛損害を分担することに 消、示して、間違いがなかったから渡した、と云っております。 こうへん きまこ その甲片には、トキ一三八八七号車、リンゴ四貫八百匁木箱なるでしようね。坂上氏の手元には、及そ五十万二千円が行 七四〇個としてありました』 くことになるでしよう』 「おや、じゃ矢ッ張り、四個の違いがあるじゃねえかーーこ 「しかし、そりや竹越が詐取したのだから : : : 」と宇部が、 まらが につつうがわ しょ・つら きさいしこう にもっ まちが おわ さしゅ かたむ はさ つみお つみか

4. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

( 7 ) 死の前 ! に ろこっ 動家だといおうとしていたところなんでした。露骨に申しますと、彼も好いよ、かの女なら。適当にきめろよ」 さいしよきか、 私は決してエレベーターをうるさがりはしなかった。しかしとに角 等は、その撮んだ最初の機に、あなたとあなたの助手とを殺すでし そっちよく ようよ。しつかり警戒なさるようにし上げたかったんです。卒直に一度に三段すっ飛んで上る方がすっと速かった。自分の部屋まで上っ さいわ・よう じかん りえきかんけい 申し上げたように私の個人的な利益も関係がありますので、最良の方て、ドアをしめて、椅子に楽々と身を置くまで、時間はそんなに掛ら でんわ なかったが、私は電話を手にして、それに話しかけた。「待たしてすみ しん たず ませんでした。しかし人がいたもんですから、上へ来たんです。こ心 「フェビアン氏は、何か私に訊ねたいというんですよ」 かおいろ 配はなんです ? 」 「そりやしかし、とんでもない ! 」シュワルツは青い顔色をしていた。 ばん 「彼は一番名うてな男でーー彼をよび寄せるーーー入らせるというのは『あんたは、自分の名はスティヴンスだといったわね ! 」 なまえ 「やあ。五万と世界にはいろんなことがあるんですから、私の名前な ばんと 「もし彼が実際にけんのんな男で』と、ウルフは強気にいった。「もしんか、今はその中で一番取るに足らんもんの一つですよ。私の名前は はっきりしないんで、スティヴンスかグッドウインか、はっきりしな 彼が、あんたが怖れている推定のようなもつを下すのなら、彼に会う じむしょ には、わしの事務所がただ一つの安全な場所ですな。この取引は、成いんです」 じゅうたい るべく早く片附けなきゃならんーーこ 「あたしには重大なのよ」 でんわ でんわ 電話がまた鳴った。私はその方へ手を伸ばして、話しかけた。「ネロ 「どうも有りがとう。それをいうために電話を掛けたんですか ? 」 おも じむしょ 、えね、そうじゃないの。あたし、知りたいと思ったの、殺され ・ウルフの事務所です。、アーチー・グッドウインです』そして、台所「いも おおごえ にいても聞えるような大声でいっているいらいらしている風な声が、 た人のことだの、それから、どうしてあんたがーーー」 なまえ ギョッとさせるように耳へ飛び込んで来た。「あんたは、自分の名前を「ちょっと待って下さい。落着いて、初めからいって下さい。あんた ハロルド・スティヴンスだといったわね ! 」 が、何を見たのか、聞いたのか、なすったのかということを ? 」 するど しやしん 私は、鋭くいった。「ちょっと待って、そのままで」そしてウルフの 「あたし、ガゼット紙で今、写真を見たのよ。その人は、ディジイ・ ちょうし 2 」・つ人 4 ~ くせ じっさい 方を向いて、うんざりした調子でいった。「あの法科学生の友達なんでペリットという人なの。あたし、知ってるの、彼をー 1 ー実際には良く す。・一時間ほど続くと思うんですけど、二階へ行って、話しても好い知らないんだけど、あるわけがあって知ってるの。そして彼は殺され りゅう ですか ? 」 たのね。そしてある理由で、それはあたしには悪いニュースなの。も しやしん 「ああ。すっかり話してしまった方が良いかもしれないね。いっ来てう一つの写真はあなたの写真なの。とても良く似てるわ。そして書い と・つか じっさい つよき ふう しやしん せ力い てきとう おちっ わる ころ ころ

5. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

、ゆうしおそ 、かくらゆう 十月初めの闇の中へ家から出た時、待ち伏せだの急死が襲って来る のですから、それで、われわれのしておりますこと、計画中のことを じようだん お話したいと思うんです。そう長くお手間は取らないとお約東いたしなどと本当に予期したわけではなかったが、冗談だとも思っていなか しんけい , 、 ます。多分、直ぐお目に掛りに飛んで行けると思うんですが、二十分った。それに私の神経系統には、絶対に悪いところは何もないのだが ほろがた 私が直ぐ近くのギャレージへ行き、幌型に乗り込んで、山の手へ向っ もすれば、そちらまで参れると思うんです」 とくかんしん 「あたしは、そんなー・、」と、間を置いて、「保健事業には、特に関心て行くと、物事が異常に見え、感じられた。 は持っていますの」 「ようく、その点は存じております」と、私は心からいった。 けっこん 一点だけ、彼の娘についてペリットは誤った印象を私に与えた。私 、ようかしょ ほけんじ 「牧師さんのことをお話した訳はね、あたし結婚するつもりなんです の。いま電話が鳴る前に、あたし達、結婚することにきめたとこなんは、彼がかの女に渡してやった金がみんな実際に、教科書とか保健事 ぎよう 業のような、価値のあることに分けて使われているのだという考えを ですの」 「そうですか ! そりや大変織構ですね ! 二十分で、そちら ~ 伺え抱いていたが、百二十番通りのかの女のアパートメントは、つましい こせに シティ もち・つん 小銭で飾り付けたものではないということがはっきりしていた。大き ます。勿論、おせつかいするつもりはないんですが、市にいられない な部屋ーーそこにはべッドのようなものは何もなかったということは ものですから、そうーーー」 あん へや その部屋だけではないということだったがーーーその部屋は、慰安にな 「いいですわ。お出で下さいな。どうぞ、お出で下さいまし」 よう、 もの たいへんあ るような、そんな風な物がそっくり用意してあった。一番大きな物は 「どうも大変有りがとう」 もらものしよせきるい ますか 私は、電話を押しやって、ウルフに話した。「酔ってるんだ。酔っぱ二つの窓の間の透し細工の机だった。かの女の持物の書籍類について もんだいがい 問題外だった。 らってやしないけど、酔ってるのさ」 でんわ むちゅう 前 ~ その他は、ペリットのいう通りだった。かの女の電話の話振りでは 彼は、フリツツが持って来たビールを注ぐのに夢中になっていて、 ちちおや 小声で呻り声を漏らしただけで、私が、そのまま私の机の上に載っかディジイは目をくらまされている、もう一人の父親ではないかという ぎねん 0 ていたビストルのところ〈戻って行 0 て、上衣の脇ポケ ' ト〈入れ、疑念を私に与えたが、かの女を一目よく見て、すっかり気にい 0 た。 死一引き出しから取り出した。もう一つの小さいのを、私が自分で考案しかの女は、酒場の若い牝牛ではなかった。かの女の父親ではない私に げんぶつ のた脇の下の革のビストル入れに入れるのを見ても、何もいわなかつは、ちょっと背が低くて太り過ぎている現物のかの女が、まっこうか ら見られたが、何も彼も一一十一の歳の者が備えていなければならない 」 0 ぞん よ ほけんじぎよう かち むすめ いじよう かん ぜったい じっさい いんしよう はなしぶ

6. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

間違いです。ペリット氏はわしを信じておられたのだから、氏は、すおうと前にいった、しやがれ声の男だったが、彼はまだ咳払いをして きたい まんぞく つかりあなたが満足の行くようにお教えするようにと、わしに期待し啖を切る時間が見付からないらしかった 1 今度はウルフに出てくれと・ むすめ いった。ウルフは、私が送話口を押えて前の電話のことを話すと、電 ておられるのだろう。娘さんは死んではおらんのです。それ以外は、 ペリット氏はわしにそれを任されたのだから、あなたもそうして下さ話に出た。私は、いつもどいてろといわれない時にするように、私も はなし 聞いていたが、ただこちらの話だけを書くことにしておこう。 前るでしようね」 なまえ 「ネロ・ウルフですーーあんたの名前は、どうぞ ? : : : すまんがね、 「分りました」シュワツはまばたきをした。「私は、もっと他の細い なまえ はなし の なまえ ねが したいのですが。と申しますのは、五万君、わしは名前のない人には決して話はせんのです、是非君の名前を ことを申し上げてもお許し願、 死・ドルといいますと私には齧しい巨額になりますので、あなたからそきかなくちゃ : : : フーエービーアーン ? : : : 有りがとう、ちょっと待 とうてし れをいただけないことになりますと、到底私には手に入れられないかってくれ給え、どうぞ』 りえき こじんて、・ ウルフは、シュワルツに訊ねた。「フェビアンという男のことを聞い もしれませんので、私の個人的な利益を気にしておりますのです。私 じよしゅ ミス・べたことがおありですか ? 』 ここにおられるこの士が は、あなたの助手の方が びたいしわ ころ あわ 「はあ」シュワルツは額に皺をよせ、十本の指は折鞄の端をつかんで リットが殺された時に居合せておられたということを、それからまた ペリット氏と仲間が殺された時にも居合しておられ、そして彼が、あ じよしゅむきず なたの助手が無傷だったということを聞き及んでおります。私は、考「私も聞いていますよ』と、私は力をいれていった。 なん じかく けつか : なるほど、わしは、自宅以 えられる推定と、当然予期出来る結果とを、あなたが充分に自覚して『はあ、フェビアンさん、何ですか ? : じっさい ゆいごん もいや、いや実際だ、本当 おいでになるのかどうか存じませんが、この遣言がーーー」と、彼は遺外で会う約東は決してせんのですがね : けんしよう ぜんぜん 【」んじよう ようせい ゅび に全然おどろいたりはしとらん : ・・ : そう、そりや分っとる。だ。 ) 、 ' ) 「法律の要請で検証さ 言状をしまってしまった折鞄を指で叩いて すいりひじよう れて、一般に知れ渡るようになりますと、こういう推理が非常に強くまには出ることもある : : : ふん、どうだね、こうしたら。どうしてわ じむしょ なりますでしような。百万ドル以上があなたの手に委託されて、あなしの事務所へやって来ないのだね、どうだね、今日の二時では ? : ところ とうぜん せきにん : よろしい」 : その通り、所は分っとるね ? : たは誰にも責任がないということでね。ペリット氏の提携者達は当然よろしい つよ でんわ そういう推理を下しますでしような。彼等にそれははっきり分ります彼は電話を切った。・私も強く音を立てて、同じように切った。 ちょうし かれら シュワルツは、彼のこれまでのどんな調子とも違った声で・いった。 でしようから、そして彼等はーーー」 なカま でんわ 電話が鳴ったので、私はそれを取上げた。それは七十一クラブで会「ちょうど電話が掛って来た時、私はペリット氏の仲間とい 5 のが盾 でんわ すい まか こまか じかん そうわぐら でんわ おりかばんはし

7. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

ルから来た仲間の学生に教わったとタ食の時にいった歌だったのだ 決律家の畜生。「そうさ」と、私はいった。「自分で自分の免状は持っ ひょうし ゅび ろう。そしてウルフは拍子を合わせるために指を動かし一 5 月らかにてあ たら 「それじゃ、君はく達にお祝いをしたいといってたんだから、どう 鼻で歌っていた。彼にとっては、それこそ酔っにらっての大騒ぎつ しょ たら た。・そして心配さえなければ、私もただ坐って一緒に楽しんでいたのだろうねえ ? 君がばく達をメリイランドまで運転して乗せて行って けっこん たちば だろう。ところが、もう十時を過ぎていて、、立場は彼等を家まで、車四時間しか掛りやしないよ、そしてばく達が結婚するってのは ! 」彼 ′、、ヂて , っ . い、つ聿 で私に送って行けといってもるし、私と「・ては、十一時三十分前にやは、彼により掛っていたべ分ラの万 ~ 向いた。「どうすも って来て、ビストルを射つかもしれないバイオレットを見落したくなえは ? 」 ごらよう すばや かの女は、素早く、語調を強めていった。「いやよ」 かった。それで、私は立ったまま「、いた。 モルトンがどうしても出掛けを。うとしていたので、二人をつれ出す - 「何が ? 」彼はびつくりした。「何故 ? 」 やす のはむすかしいことではなかった。ウルフは、お休みをいうのに、自「だって、いやよ。あたしは、お父さんやお母きんや、伯母さんも伯 まえ 1 なか ふるま 分の椅子から離れたりして、絳士のように振舞った。私は、モルトン父さんもいとこだってもないかもしれないけど、真にメリイラン ドまで、夫をつくってもらうのに、こっそり出掛けなくならない が、どうしてもしたくてうすうすしていたのは、酒も歌も眼に見える ししよう べんきよう ほど利き目がなかったので、家〈帰って勉強をしたがっているんだとってことはないわ。あたしは、お花だの白い衣装をつけたりセて、う てん 腹の中で思っていたが、どうやら私の間違いだったらしい。歩道〈出まく行ったらお天とうさんの光もなくちゃいけないと思う〈の。とにか しけん、、 べんきよう あ ほろがた あんた勉強しなくちゃいけないと思うわ。」はどうなの ? 」 て、幌型のドア」を私が開けると、突然、私の肩にーーー一年も経たない べんきよう こ一中に、そんなととが出来るようになるなどと思っていないほど、とて「ようし。ばくは勉強しなくちゃいけない , をだぞ」 こんい 「そして未来の最高裁所の判事としてあんたの身分が、どうなる も懇意そうにーーー手をかけて、話しかけた。 ーお 前 「ねえ、君は立派な男だね、スティヴンス、君の考えは、しゃれてるかしらというので、みなし児をつれ【一い通りを走ってるのが見られると じぶん いう時なら、あたしも自分で一考えをきめるわ」べウラは、せき立てる の ~ よ。ところで、ばくも考えついたんだけど、酔っぱらったのは、酒の うちカえ ちかてつ せいじゃないと思うんだ。それともまあそうかな、でも、何たろう ? ように、「あんた、発下に乗れるわ。早いとこ家〈帰って仕事が出来 だれ 死 誰の車だい、これは ? 」 るわ。そし、てニ一ティヴンスさんとあたしは、どこ〈行ってお話をする わたしうで 、どこかへ行ってダンスするわ」かの女は私の腕に手を掛けて、 「ウルフさんのだ。ばくに使わしてくれてるんだ」 うんてんしゅめんじよう 「あたし、悪いことをしたと思ってるの、スティヴンスさん、だって 「だけど、勿論、運転手の免状は持ってるんだろう、君は ? 」 なかま りつば みおと かか かか みぶん めんじよう しごと

8. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

いんたがね、どうぞ ? 」 「正義じゃないよ」シェインは、しつかりといった。「正しくだよ」 彼は、そんな風をしていた。彼は、私ぐらいの背の高さで、立派な え ( ろぶらめがねおく かお 強い顎に力強い顔をし、太い黒縁の眼鏡の奥には、絵を丸くふくらし かた たような、黒味を帯びた直視するような眼が光っていた。彼は、家〈我々が直すことになっていた、肩をがくんと落して坐っていて、そ 帰って、直ぐやって来るむすかしい試の準備の下調べをしようと思れから身をゆすってしゃんと立ち上るべウラの癖を、最初に確かめた しよくたく うんだといった。かの女は、彼の腕をまだしつかり撼りながら、二人のは、夕食の食卓で、フリツツが鳥の焼いたのと、蒸し焼きのスイー とくべっ ばん こんやく ト , ポテトを出してからだった。私には、特別に目に立つほどではな の婚約した晩になんか、そんなことするもんじゃないといった。そし もちろん でんわ おわ づね いようだったが、勿論、それに対して、ディジイ・ペリットと同じよ て、こういうことが営に終るような風に終ったところで、私は電話を こんやく でんわ うな原因が、私にはなかったのだ。かの女が自分から婚約したばかり 使わして貰いたいがと許しを得て、電話のところへ足を運んだ。 じた ( ・つた でなければ、そのことでかの女をからかうのは雑作もないことだと私 プリツツの声が伝わって来た。「ウルプ氏の自宅ですが」 びつよう おも は思った。自分の男を捕まえたばかりの娘が、何か直す必要のあるこ いや、ウルフ こちらはハロルド・スティヴンス : 「フリツン ) 、。 、やく とで、心易すそうに説き付けられたりするのは気持ちが良いことでは さんのお客の、ハロルド・スティヴンスだよ。ウルフさんに話がした あるまい 演説者は青いくすんだ色のモルに、黄色 しんつうくびも かの女の男は、私の考えでは、ひどい心痛を首に持っている男だっ の角帯をキチンと締めた。風莱のよい、教 こんせ第 おもに けっこん 養もあ・りそうな四十男であった。の様に た。彼はもう結婚していて、山ほどの重荷を背負っているような痕跡 もの 崎麗に光らせた頭髪の下に、中高の瘠形青 を残しているような気がした。食べ物は、フリツツの名前にかけても ぎめた顔、細い眼、立派な口髭で隈どった 真赤な唇その唇が不作法につばきを飛ばし、ー・・ 1 ーーーー・ーーー。 決してそんなことはないように、悪いところはなにもないのだが、肉 ちょぞう フィン ・「俺はどん 前、てパク / 、動いているのだ : ではなかったかもしれない。そして酒はウルフの貯蔵の酒の中では最 なに女房を愛したか」男は無量の感概をこ の ~ めて、見物の頭を見まわしていった「殺す 上の物だったのだが、彼は一度もくつろがなかった。法科の学生とい おも 程愛していた」「 : : : 悲しいかな、 うものは、気にかかることが一杯あると思っているのかもしれない。 あの女は浮気者だった」ドッと見物 一の間に笑い声が起ったので、その次・ だが、どうだ。これは幸福に対する彼の約東のお祝いだったのじゃな きようどう . ). の「いっ余所の男とくつつくかも知夢 いか。私は、会話がしかつめらしくなれば、べウラが、デイトン共同 6 れなかった」という言葉をきき洩す しようさ ほけん 所だった。 保健センターの活動だの計画の、詳細の説明を聞きたがるたろう、そ 1 4 なお おとこ つか こうふく 【て・フ 40

9. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

さいじよう 「そうなんですよ」 が好きなんだ今わしの必要なもんに、わしは最上のもんとして、あ こうりや とさつにん 「そいつは悪過ぎらア。わしは屠殺人でもないし、小売屋でもないんんたを選んだんだ。わしは、して貰うもんには払うさ」ペリットは、 むれ かんけい ゴム でな。つまり、まるつきり、わしア肉とは関係がない。だが、まてよ胸のポケットから、手の切れそうな小さな札束の、折ってない と バンドでとめたのを取り出して、ウルフの机へほり投げた。「百ドル札 」彼は、不意に口を噤んで、まるで私が執事ででもあるかのよう 前に、私の方に眼を向けて、「りンコルンの六十三の二三二へ、朝の七時で五十枚。五千ドルだ。そいつア着手金としてだぜ。わしはゆすられ しこと でんわ なまえ から十時の間に電話して、わしの名前を使って、トムって男に頼みてるんだ。あんたの仕事は、そいつをやめさすことなんだ」 の 私は眼を丸くして彼を見た。ディジイ・ペリットが、ゆすりに悩ま かいしゅう スティックキャンデ 死一「有りがとう、あなた」ウルフは、まるで棒状氷砂糖のように甘い調されているという話は、ビリイ・サンディが彼を改宗させようとして せつ、ようし ようけん 子だった。「全く感謝しますよ。さて今度はあなたの用件ですが、今朝いる説教師に悩まされているのと、まあ同じようだった。 かか でんわ グッドウイン君が、私がとても忙しくてお目に掛れないって電話で申「しかし申し上げたでしよう、べリットさん , 、・ーー」 むすめ 「わしは、自分の娘にゆすられとるんだ。それが一つーー・世界中で、 し上げたそうだが、もち論、そいつはたわごとでしてな。彼の考えた おとこ たんていしようばい しよくぎようて、 わりあい ことは、探偵商売では職業的な危険というものが、割合に高いところわしの他には、それに今は、あんたと、このあんたのとこの男の他に しようばい かん へもって来て、あなたの商売ではーーまあいって見えば、あなたが関は誰も知っとらん。もう一つあるんだ。そしてこいつは、もっと変っ じっしってき 係しておられるどんな活動でもーー・、危険が実質的にはすっと高い、そとるんだ。とても変っとる。お袋にさえ話さんだろうな、もしまだ生 むすめ れで二人が組むのは不得策だということなんですな。遺憾ながら、私きてたって。だが、助けが必要なんだ。わしの娘というのがーーー」 も彼と同じ意見だといわんわけにはいかんのですな。あなたにして「よく考えてーーこ やすやす ひみつ ディジイ・ペリットは、そう易々とやめそうにもなかったが、私は も、いわれても私がお引き受け出来んのに、秘密を私にお打ち明けに あらかし なるのも馬鹿馬鹿しいでしよう。ですから予め申し上げているんです。結構進んでやめられるようにした。私は椅子から離れて彼の前に立っ た。「あなたに警告したいんですがね」私は、彼の眼に話しかけた。「ウ お気の毒ですと」 がんこ ルフさんという人はね、あなたと同じように完全に頑固なんです。こ 「わしは助けが必要なんだよ」と、ペリットはいった。 かか りや関り合ってるみんなに、恐ろしく危険なことですよ。彼は聞きた 「たしかにそうでしよう。でなけりや、あなたがーーー」 「度々、助けがいるというわけじゃないんだ。わしがやる時には、あ くないと、あなたにいってるんですし、私もそうなんですよ ! 」私は、 なにわる るものの中で一番最上のものをむんだ。わしは、何でも最上のものあらあらしくウルフの万ヘ向き直って、「やれやれ、何か悪かったんで ばかばか わるす ん ~ っ」・つ けっこうすす み ふ ( ろ は す わたし や

10. 探偵倶楽部 昭和32年2・3月合併號

、 ( 303 ) 死 . の . 前に れんらく ャえ ビアンが第一発を当てぞこなったので、彼のビストルを取り出し、引 が帰ってから、わしはパンザー君と連絡をとって色々な手配をした。 ながい かべ その中の一つは、 ( 連検察局 ) とその指絞調査票を通じて、金さえも引いたが、彼が射「たのは壁だけだった。それから彼は長椅 シ = イン君の素性と、前科について、われわれの知識に結果をもたら子にのけぞって、もう一度引金を引いた。その時には、ミ 1 カーも射 むすめす てはい っていた。私には訳がどうしても分らなかったのだが、前には決して した。もう一つの手配は、パンザ 1 君が、ペリット氏の娘が住んでい るビルディングの表で、昨シイン君をつかまえて、彼の尾行をつ見られなくて、また確かに二度と決して現れないような何かだったの だーーーフェビアンとミーカーとは同じ的にほんほん弾丸を射っていた どうさ づけてーーー」 ながいす モルトンはまだ厚かましさを失わなかった。彼の手は、をとろうのだ。モルトンは長椅子から床〈滑り落ちた。それが彼の最後の動作 とする蛙のように、彼の腰をさぐるように動いて行った。彼は、フェだった。 水戸光圀公の生いたちから諸国漫遊にいた区 1 社 底ぬけの面白さ るまでをかいて興味満点 新版水戸黄 代町 この一冊の本が》 雲黐五人男人情味豊かな名奉行の後世にまで名を残し千崎栄 刊大岡政談獄門彦兵衛た、大岡越前守の名裁判の数々 都三 貴方の家庭を 京田共 供客講談の代表的傑作。元締タ立勘五郎が 明るくします 新版タ立勘五良いきいきと描きだされ、明朗、義簽快東神 義士伝の面白さは、自分の信念に従って、命をかけて 丈孝》赤穂義士銘々伝実行。 ~ 」処」あゑ言時代。 = , さ忠岺、信す。円 所命を捨てる、その感激が不朽なのだ。 貞中新 斎野売 民俗伝説は、その民族の夢だ・いかに荒唐無稽の物語 巻 一佐今怪奇 各 咼島ス土田伝であ「ても、狐狸妖怪 0 物語 0 娯しさは、そこ」我 ~ 祖 先の幻怪な夢が生きているからだ。 評判《騷動 かえる