相互作用 - みる会図書館


検索対象: 生物と無生物のあいだ
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1. 生物と無生物のあいだ

り出すことがてきる、ということてある。 振動子の別名は、〃時計みてある。事実、周期的な細胞分裂をコントロールするための 生物時計の核心に、タンパク質の合成と分解によるオシレーションが関わっていることが わかってきた。その名もサイクリンと名づけられたタンパク質は正確なタイミングて合成 され分解される。そのタイミングが細胞分裂サイクルをコントロールしている。 それては、「柔らかな」相補性、つまり弱い相互作用を示すタンパク質が、ついたり離 れたりして成立する相補性にはどのような特性があるのだろうか。それは外界 ( 環境 ) の 変化に応答して自らを変えられるという生命の特徴、つまり可変性と柔軟生を担保するメ カニズムとなりうる点にある。 ついたり離れたりして平衡状態を保っている系ては、たとえば何らかの環境変化に伴っ て一方のタンパク質の量が増減した場合の変化を鋭敏に捉えることが可能となる。細胞内 の他の場所て、そのタン。ハク質がより多く動員されたり分解されたりすれば、おのずと明 滅の総量は減少する。逆に、そのタンパク質の需要が減り、細胞内濃度が上昇すれば、明 滅の総量は増加するだろうし、明滅の間隔は短くなるだろう ( タンパク質の供給量が増え るのて、つ いたり離れたりする相互作用にプラスして新しいタンパク質がリクルートされ 183 第 10 章タンパク質のかすかな口づけ

2. 生物と無生物のあいだ

結合する。 、細胞外の部位。てインシュリンを受け インシュリンレセプターは細胞膜を貝通しており とめ、細胞内の部位てその情報を別のタンパク質に伝える。ここてもそのやりとりはかた ちの相補生にもとづく相互作用によって行われる。この情報は、細胞内をカスケード ( 流 れ落ちるたびに分岐する複数段の滝 ) のごとく、次々と相補的結合を通じて複数のタンパク質 に伝えられ、その都度、信号は増蝠される。細胞内に格納されていた。フドウ糖輸送体と呼 ばれる特殊なタンパク質が、細胞の表面に配備される ( この配備のためのシステムもすべ てタンパク質の巨大なネットワークが担っている ) 。 この装置を通じて、血液中のブドウ糖ははじめて細胞内に取り込まれる。その結果、血 糖値が下がり、脂肪細胞に取り込まれた。フドウ糖は脂肪に変換され貯蔵される。私たちの 体重が確実に増加する。 ジグソーピースのように、相補的な相互作用を決定する領域は、ひとつのタンパク質に 複数存在しうる。だからひとつのタンパク質に複数のタンパク質が接近し、結合する。さ 、ズルが二次元上に限られていたのに対して、三次元的に らに、その相補陸は、ジグソーノ 広がる。このようにしてタン。ハク質による相補生は身体のあらゆる場所に張り巡らされる 1 7 7 第 10 章タンハ。ク質のかすかな日づけ

3. 生物と無生物のあいだ

卩にもたらされる。 が完全に存在しないとき以上に大きな影響が生合 ドミナント・、 不ガテイプは、分子生物学の現場づも広く知られるようになってきた生命 という系固有の現象てある。マウスに致命的なアタキシア症状をもたらすことになった、 頭三分の一を失った不完全なプリオンタンパク質。これが引き起こしたことはおそらく次 のようなドミナント・ネガテイプ現象だったのてある。 正常なプリオンタンパク質は、その頭三分の一を使ってタンパク質と相互作用を行っ ている。そして残りの胴体三分の二を使って別のタンパク質と相互作用を果たす。つま プリオンタンパク質の機能は、神経細胞の膜上ぞタンパク質とタンパク質をつな ぎ合わせることにある。このとき神経活動に伴う情報伝達が、↓プリオンタン。ハク質↓ >* と流れる。 情報伝達経路が形成される、発生途上の一時期、もしプリオンタンパク質がまったく存 ートナー 在しないのてあれば、との連鎖が成立しないことになる。タンパク質に。ハ ヾッ が得られない分子的なこの孤立状况は、動的平衡系に対して c00G0 信号として働き、 クアップシステムの援用を求めることになる。そして平衡系は、適応的リアクションとし たとえば、↓ << ↓↓ O ↓といっ てととの間を紡ぎうる何らかのバイバス経路、 た代替的な仕組みを立ち上げることになる。プリオンタン。ハク質ノックアウトマウスはそ 2 6 7 第 15 章時間という名の解けない折り紙

4. 生物と無生物のあいだ

ろが凸部二つ分の空隙は開いたままてある。生命はこのような部分的な操作に気づくのが 得意てないのだ。 分化プロセスが進行する間、ピースの隙間にてきたわすかな空隙はどうなるだろうか 空隙の周囲にあるピースがすこしすつずれて、完全てはないにしろ空隙を最小にすること ま、てき」るかしれた 6 い。 しかし、時はもう遅い。周囲のピースはすてにそれ自体、他のビースとの間に相互作用 を持ち、周りを取り囲まれている。だから、ある空隙を最小化しようとしてピースが不規 則にずれれば、その動きは別の部位に新たな空隙を作り出してしまう。ひすみはさらに隣 へと、時間的な経過が進めば進むほど、より大きな全体へと波及してい ジグソーハ ルはすてに膨大な分子のネットワークを形作ってしまっているのだ。わすかな空隙から始 まったひすみはネットワーク全体に広がり、やがて平衡に回復不能な致命傷をケえうるこ ドミナント・ネガティフ現象 タンパク質分子の部分的な欠落や局所的な改変のほうが、分子全体の欠落よりも、より ドミナント・ネガテイプ 優位に害作用をえる。部分的に改変されたパズルのピースを故意に導入すると、ピース 266

5. 生物と無生物のあいだ

てきたのは、そのような変貌の終盤の頃だったのだ つまりこの場所は、地理的に、東京とその郊外が接する界面てあっただけてなく、時間 ェッジ 的には、戦後がなお戦前と接している界面てもあったのだ。界面とは、二つの異なるもの ェッジ・エフェクト が出会い、相互作用を起こす場所てある。 っ越しが決まった時、私はこの転居に気乗りがしなかった。東京の練馬に暮らしてい たムは、そこが気に入っていた。今から思えば、当時の練馬区は、畑が広がり、ニワトリ を飼っている農家が点在するようなのどかな田舎て、その意味ては松戸と変わるところは ほとんどなかっただろう。が、東武東上線沿いのこの街に私はとても愛着があったのだ しかし界面がもたらす作用の前に、そんな小さな感傷はたちまち消し飛んていくことに なった。次の日から、ここは、私たち少年にとってワンターランドとなった。 私たちはさまざまな場所て、止まったままの時間の断片を発見した。草むらの陰に入り 口を開けた暗い防空壕。おそるおそる階段を下りて中を覗こうとしたが、水がたまった地 下の廊下は真っ暗てその奧行きは見えなかった。 台地と駅をつなぐ細い階段の途中の岸には、分厚いコンクリートて固められた倉庫が埋 びよう め込まれ、鋲を打った堅牢な鉄の扉が三枚ついていた。 手て引くと意外にも扉はゆるりと しつら 開き、内部に棚が設えてあるのが見えた。そこには一抱えもある大きな、青いガラス瓶が 2 7 6

6. 生物と無生物のあいだ

して、その動きが不可逆的てあることを気づかせない 先に述べたこと、すなわち遺伝子をノックアウトしたこと、あるいはノックインしたこ とによって引き起こされるすべてのこともまた時間の関数として起こっている。 ノックアウトされたピースは、完成された全体から引き抜かれたわけてはない。時間 沿って分岐し、そしてまた組み上げられていくそのある瞬間に、 たまたま作り出されなか ったのてある。ノックインされた不完全なピースは、全体が完成されたのち、部分を切り 取られたわけてはない。 これもまた時間軸のある地点て、出現し、その後の相互作用の内 に組み込まれていったものぞある。 遺伝子産物としてのタンパク質が織り成すネットワークは、形の相補性として紡ぎ出さ れるから、それらは枝の分岐というよりは、角々をあわせて折りたたむ折り紙のようなも のとたとえたほうがよいかもしれない。 時間軸のある一点て、作り出されるはすのピースが作り出されず、その結果、形の相補 性が成立しなければ、折り紙はそこて折りたたまれるのを避け、すこしだけずらした線ぞ 折り目をつけて次の形を求めて いく。そしててきたものは予定とは異なるものの、全体と してバランスを保った平衡状態をもたらす。もしある時点て、形の相補性が成立しないこ とに気づかずに、折りたたまれてしまった折り紙があるとすれば、その折り目のゆがみは 2 7 0

7. 生物と無生物のあいだ

鎖の内部てはありとあらゆるせめぎあいが起こる。水に溶けやすいアミノ酸部分はてきる アミノ・酸は オ : タンハク質の外側 ( 細胞内部の水と接する側 ) に出ようとし、水に容けに てきるだけタンパク質の内側に折りたたまれて、外側の水から逃れようとする。プラスの 電荷を持つアミノ酸は、マイナスの電荷を持つアミノ酸とペアリングしようとする。かさ 小さなアミノ酸しかもぐりこめな 高いアミノ酸とかさ高いアミノ酸の間の狭い空間には、 しかしすべてのアミノ酸はまさに数珠玉のように一本の鎖としてつながっているのて、 もはやバラバラになることはてきない。必然的に、鎖はありとあらゆるせめぎあいの結 ハランスのよいかたちとは、その 果、最もバランスのよいかたちに落ち着くことになる。 タンパク質にとって熱力学的に最も安定した構造ということてある。 こうして、あるタンパク質のアミノ酸結合順序が決まれば、タンパク質のかたち、すな わちその構造が一義的に決まる。構造が決まるということは、タンパク質の表面の徴細な 凹凸がすべて定まるということてある。ジグソーピースの誕生てある。 張り巡らされた相補性 あるタンパク質には必すそれと相互作用するタンパク質が存在する。二つのタンパク質 17 5 第 10 章タンパク質のかすかな口づけ

8. 生物と無生物のあいだ

接着剤て閉じることはてきても、そこに息づいていたものを元通りにすることはてきない し」い - フこ」 しったん外気に触れたトカゲの赤ちゃんは、徐々に腐り始め、形が溶けて . し十 / おり この体験は長い間、 苦い思いとともに私の内部に澱となって残った。まぎれもなく、こ れは私にとってのセンス・オプ・ワンダーてあったのだ。それはこうして生物学者になっ た今ても、どこかに宿っている諦観のようなものかもしれない 叩という名の動的な平衡は、それ自体、いずれの瞬間ても危ういまてのバランスをと りつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれている。それが動的な平 衡の謂いてある。それは決して逆戻りのてきない営みてあり、同時に どの瞬間てもすて に完成された仕組みなのてある。 これを乱すような操作的な介入を行えば、動的平衡は取り返しのつかないダメージを受 ける。もし平衡状態が表向き、大きく変化しないように見えても、それはこの動的な仕組 み、こ′しは みが滑らかて、やわらかいがゆえに、品木作を一時的に吸収したからにすぎない 何かが変形され、何かが損なわれている。生命と環境との相互作用が一回限りの折り紙ぞ し学に , 」し」に亦夂、わ、り・は あるという意味からは、介入が、この一回性の運動を異なる岐路へ導、 2 8 4

9. 生物と無生物のあいだ

ときは膜を押しあるときは引き、また別のときは手に手をとってそれを東ね、くびれさ せ、さらにはくつつけ合わせているのてある、と。 てはこのド 日円、に↓リし、第 ~ 夫亠仕ム刪的に / 大口、んるにはど - フ亠 9 れ、はよい・ごろ - フかみ、れはこ - フ てある。 細胞膜の内や外、あるいはその周縁には、徴細なタンパク質が多数存在し、常に細胞莫 と相互作用を起こしている。タンパク質はそれぞれ固有の構造に由来する相補性を有して いる。その相補性によって、あるタンパク質がリング状の環を形成すれば、柔らかな細胞 膜はくびれ取られるだろう。月 、胞体膜に結合したタンハク質 < が、細胞膜に結合したタン ト胞体膜のその部分は、細 ハク質との間に、 鍵と鍵穴に似た特異的な結合を起こせば、 胞膜の特定の部分に引き寄せられるだろう。また別の、膜結合型のタンパク質群が細胞膜 の内側に沿って、その相補的関係に基づくカゴ状のネットワーク構造を形成すれば、細胞 莫は、カゴに要所要所を糸て結ばれてかぶさる薄い布のごとく、あるときは球面に、ある ときはアミーバ様の不定形に、ときには赤血球のような特徴的なくばみを持っ曲面をとる 一 ) し」に」た 6 っ Q ・、」っつ - フ つまり精霊たちが結びあう手とは、すなわちタンパク質の形なのてあり、生命現象が示 す秩序の美は、ここてもまた形の相補性に依拠しているのてある。 209 第 12 章細胞膜のダイナミズム

10. 生物と無生物のあいだ

っことを証明すればよいのてある。たとえば、の含有量カ 7 % 不 、、。 0 0 呈度しかない * 精製 品ては、形質転換作用の効率ー よそれほど高く現れない ( この値は、たとえば、千個の細胞 のうち三十個の形質転換をもたらす、というふうに定量化される ) 。しかし、さらに純化 を進めて、 Z < の含有量を 9 0 こ 9 % ( まて高めた試科を使うと、形質転換効率がそれに応じ て、増強されるということを示すのてある。このとき、 QZ<< の純度と形質転換作用とが 相関的にふるまっていることになる。 もし、試料に混入している物質が、形質転換作用をもたらすなら、 QZ< の純度が上昇 するにつれ、コンタミネーションの程度は低下するから、形質転換作用も低減するはずて ある。つまり、その場合には Z と形質転換作用との間にふるまいの相関匪はない。 研究の質感 残念ながら、エイブリーの時代にはここまて精密な、物質のふるまい方の動的な相関関 係を示す実験は実現てきなかった。ひとつには形質転換作用を示す実験が、ある意味て、 菌の気まぐれによる ( つまり、 たくさんいる菌のごくわずかな菌体がたまたま菌由来 の 2Z< の重要部分を取り込んて、それがうまく作用して初めて、形質転換が生じる。こ のプロセスを定量的に扱うことはなかなか困難てある ) ため、その作用の強弱を数値とし