「きちんとした契約書を作らなかったせいで痛い目を見た」 そんな後悔をするくらいなら、まずは専門家へ相談です。 「専門家に依頼するⅡ費用がかかる」というイメージはあるでしよう。もちろん依頼し た分の報酬は払わないといけませんが、それは一時的なマイナスであって、結果的に金銭 的にも時間的にもプラスになるのは明らかです。 ですから、困ったことがあったらまずはプロへ、というのが、共有名義不動産の相続ト ラブルに関わってきた側としての心からの本音でありアドバイスになります。 専門家の上手な探し方 「専門性の高い専門家」を探す 専門的な分野は専門家に任せるとして、注意したいことが一点あります。 例えば、相売に伴い相続税や贈与税といった税金の負担が発生し、詳細を計算をするた め税理士に相談するとします。 しいだろう」と当てずつほうに会 このとき、「税金のことなんだから税理士なら誰でも ) 計事務所に問い合わせると、思わぬ損を被る可能性があるのです。 2 1 0
任せつきりも危険 プロに任せれば余計な労力を割かずに済みますが、だからといって「専門家に任せたか ら後は大丈夫」と安心しきってもいけません。 全ての専門家が「お客さまのため」という精神で責任と誇りを持ち、全身全霊で業務に 当たっているかといえば、残念ながら必ずしもそ、つとは限りません。 中には私欲に走りお金を稼ぐことだけを考えている専門家もいることは否定できないの です。これはさまざまな専門家たちと強いネットワークを持っ弊社が長く現場に携わって きて実感していることです。 「実際に業務を遂行したところ、予想以上の手続きと時間を要しました」という言葉と ともに、前相談もなく報酬を上乗せ請求してくるところもあるよ、つです。 こんな寝耳に水の事態にならぬよう、事前に「報酬が上がりそうなときは連絡を」とい った予防線を張っておく必要があります。 よく聞く悪例があります。 当事者たちの話し合いで解決できるささいなトラブルであっても、すぐに「では裁判に しましよう」と提案してくる弁護士です。 21 3 第 7 章いざというときのために知っておきたい大切なこと
困ったらプロに聞く ですから、たくさんの共有トラブルに関わり、解決までをサポートしてきた立場として 提案したいことはただ 1 つです。 「少しでも共有関係によるトラブルが発生したら、大ごとになる前に、然るべき専門家 に目火秋しましよ、つ」 当たり前といえば当たり前かもしれませんが、これに尽きると思います。 税金などお金のことでモメそうだったら税理士、不動産の評価額を知りたいなら不動産 鑑定士、取り交わしを正式な書面で残したいなら司法書士、そして法律の力が必要になっ たら弁護士といった具合です。 第三者の視点から、客観的に状況を見渡し、専門的な知識を持って正当な判断を提示し てくれる彼らの力を借りるべきです。 専門家の意見を聞き、専門的な手続きを依頼することで、トラブルに伴う労力を最も低 く抑、んられることでしよ、つ。 「正しい方法を知らなかったために、余計な税金を負担することになってしまった」 「評価額より安値で共有者に不動産を売却してしまった」 209 第 7 章いざというときのために知っておきたい大切なこと
一口に税理士といっても、所得税に詳しい税理士や、法人税に詳しい税理士、相売税に 詳しい税理士など、得意分野はさまざまです。 本続が不得意な事務所に任せたばかりに、 かえって税金を多めに払うことになってしま ったら身もふたもありません。 ですから、何を得意としている専門家なのかは前もって必ずチェックしておきましよう。 特に相続に関しては専門性がより高く、苦手としている専門家が多い傾向にあります。 反対に、他との差別化のため、相続に関してはどこよりも強いとアピールするところも 増えています。事務所名の前後に「相続」を標榜しているところであれば、相続税に関す る知識 と経験に期待が持てます。 課税のシミュレーションと分析を細かく具体的に行い、 こちらの疑問に対してごまかす ことなく丁寧に答えてくれるところが理想です。 税理士だけでなく司法書士や弁護士でも同じです。遺言書を作成したいなら遺一言書に強 い司法書士、遺産相続でモメているなら遺産相続に強い弁護士へ依頼するのがベストであ ることを覚えておいてください。
続人に当たります。信託財産から得られる利益を受け取る人たちになり、これも委託者が 指名することになります。 委託者の役割をより詳しく説明します。 例えば受託者の判断によって、委託者から管理を任された信託財産を売却したとします。 と 売却金は当然受託者のものではありません。受益者たちに分配されるのです。分配方法 は受託者が決めることになりますが、不公平があれば受益者たちが異議を唱えることもで お きます。このように受益者には受託者を監査する権限があります。 て え 信託契約自体は委託者と受託者との間で契約書を交わせば成立となるので、基本は費用覚 のかかるものではありません。ただし登記では形式上、委託者から受託者に名義を移転す の ることになるので、その際の費用はかかるでしよう。また信託に伴う税金発生の可能性も 避 回 ル 考えられます。 プ 他にも留意点はいくつかあるので、家族信託を利用する際は、司法書士や弁護士や税理防 続 士といった専門家と連携しながら進めていくのかいいでしよう。家族信託に強い専門家を 相 章 探すことがポイントです。 ワ」 第 9 一
や「遺言書」についてこれ以上の具体的な内容を述べることは避けます。基礎知識として 押さえておいてください。 これら生前の対策は、共有関係をつくらないために必須、いわば最強の予防策なので、 専門家に相談したり専門書を読んで、いざというときのために準備を始めておくようにし 亠ましよ、つ。 お て 「家族信託」で丸ごと解決 え 覚 め いま最も注目される相続トラブル回避術 の ま注目を集め始めている 共有にしないための方法として生前対策を紹介しましたが、い 回 レ 新しい解決方法があります。 プ それは「家族信託」です。名前の通り、家族に信託することで、財産を「共有」ではな 相 く「信託」という状態にするのがこの方法の核になります。 章 自分 ( 被相続人 ) が将来認知症になってしまったり、病気や怪我によって、財産運用の 判断を下すことが困難になってしまうときに備え、指名した家族の誰かに自身の財産管理第 を任せます。任された家族は財産を継承し、財産に関わる人全てが不利益や不満を持っこ
相続前の対策なら「生前贈与 , と「遺言書」 終活のススメ そもそも本書で挙げているトラブルの大筋は、相続された不動産が「共有関係になって いる」ことに端を発しています。 それを踏まえると、最善のトラブル回避策は、被相続人 ( 将来相続される財産を有する人 ) が「共有関係をつくらない」よう事前に手を打っておくことでしよう。 そこで活用したいのが「生前贈与」と「遺一言書」です。「終活」がはやっている最近で は、これら 2 つの生前対策も一般的によく耳にするようになりました。 」こ目売人へ贈与するという手続きです。生前贈 まず生前贈与ですが、その名の通り生前し本糸 与しておけば、 いざ相続が発生したとき、贈与された不動産は相続財産に含まれす、トラ プルの種にはならずに済みます。 ただし生前贈与には贈与税が絡んでくることを忘れてはいけません。贈与税をできるだ け抑えながら贈与するテクニックもありますが、専門的知識あるいは専門家の力が必要に なります。 5 3 第 2 章相続トラブル回避のために覚えておきたいこと
最終手段は裁判所へ 第 7 章いざというときのために知っておきたい大切なこと 最も低コストで解決するには 専門家の上手な探し方 遺産分割協議書の作り方 相続登記の必要性 行方不明者がいる場合の手続き おわりに 201
してくれるかどうかも選ぶ基準になります。 さらに契約書の内容に関して気になる点があったら専門家に確認できる流れになってい ることが理想です。契約を急かすような業者は疑うべきでしよう。 後々、言った言わないでモメないためにも、不明点を消化してから契約に判を押すこと が肝要です。 仲立ちを担う弊社の場合はもちろん、説明を過不足なく行った上で、司法書士や弁護士 立ち会いの下、彼らの事務所で契約を結ぶことにしています。 1 3 6
・著者プロフィール 松原昌洙 ( まつばら・まさあき ) 株式会社中央プロバティー代表取締役 住宅ローンアドバイザー ( 社団法人全日本不動産協会認定 ) 相続アドバイザー (NPO 法人相続アドバイサー協議会認定 ) 1970 年生まれ。 2011 年に、業界で唯一共有名義不動産の仲介を扱う 株式会社中央プロバティーを創業。弁護士、司法書士、 不動産鑑定士などの専門家とともに問題解決に取り組 む体制を確立。 現在までに 2000 件以上のトラブル解決をサポート。そ の実績から、共有名義不動産間題の第一人者として知 られる。 著書に『あぶない ! ! 共有名義不動産』 ( 幻冬舎メディアコ ンサルティング ) がある。