結末にはなり得ないことは確かです。 家賃はどうなる ? 出て行く必要はないとして、住み続けるためには他の共有者へ持分比率に応じた家賃を 払わないといけないのでしようか 結論から一言えば、これもノー。家賃は発生しません。 こちらも実際の判決 ( 最高裁・ 1996 〈平成 8 〉年月片日 ) があります。 「共同相続人の 1 人が相続開始前から被相続人の許諾を得て、遺産である建物において 被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との 間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が 最終的に確定するまでの間は、 引き続き右同居の相続人にこれを無償で使用させる旨の合 意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なく とも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人などが貸主となり、 右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものという べきである」 事例に置き換えれば、お父さんの死後も相談者さんは無償で使用することを許されてい 1 02
相続人たちが混乱しないために 遺一言書を作成する際は、混乱を招くことのないよう、あいまいな記述を避け、遺留分も 視野に入れておけるとべターです。 遺言書は非常に効力の高い存在です。より確実性の高いものを作るなら、専門の弁護士 などに協力を仰ぐのが賢明といえるでしよう。 す : これって違法 ? 退去してほしいけど : て モ で 事例「甥っ子との使用貸借契約を解除したい」 前に紹介した、親の介護をしていた相談者さんが他の共有者から「出て行け」と迫られに ている事例では、被相続人である親が亡くなった後も、遺産分割協議が完了するまで使用し 相 貸借契約は存続しているという見方がなされました。 ら では、次のような事例では、使用貸借契約は存続されるのでしようか。 3 きようだいの 親 章 真ん中に当たる方からのご相談です。 第 「父が遺した住まいを、子どもである私たちきようだい 3 人が相続しました。持分は 3
かもしれません。 共有名義不動産は、相続した瞬間、実は誰もが関係してくるのです。すでに自分が共有 名義不動産を持っていながら、気付かないまま放置している可能性もあります。 そして共有名義不動産を持ち続けた先に待っているものは : : : 家族を巻き込んだ壮絶な 争い劇かもしれません。 私が代表を務める株式会社中央プロバティ 1 では、共有名義不動産を所有している方か らの相談を日々受けています。その内容は、次のような、あいまいに相続手続をすごして しまったことが原因で起こったトラブルです。 「売りたいのに、持ち主が死んだ父のままになっている」 「全員で相続したはずなのに、独占している身内がいる」 「税金だけ払っているのがもったいないから手放したいが、 いったい何人で共有してい るのか分からない」 「相続した土地を売りたいと思っているのだが、相続人たちの間で意見が割れている」 「行方知れずの相続人がいても、売ることはできるのか」 その相談件数は、年間で件を優に超えています。しかも年々増えている傾向です
「親から相続した建物と土地があります。相続したのは私と弟で、建物には私が住み、 土地の一部は空き地の状態で使用していませんでした。 相続時に登記は行っていません。 先日、知り合いの方から『空いている土地を購入したい』という申し出を受けました。 私としても土地を遊ばせているのはもったいないと感じていましたし、相続した家がだい ぶ古くなり、大規模な修繕費が必要だったこともあり、二つ返事で承諾しました。 近辺の相場から換算した土地の価値は万円。交渉を何回か重ねた結果、知り合 いで何かとお世話になった経緯もあり、 Q-OOC 万円で売却することになりました。 その後しばらくして弟と会った際に、土地を売却した旨を伝えました。すると弟から、 『売るなんて聞いていない』 『自分にも相続権があるのだから、売却金を受け取る権利がある』 『相場は万円なのだから、半分の万円は欲しい』 相談なく勝手に売ったことに弟は貭既していて、『 L-occ 万円でないと納得しない』と かたくなに言い張り、揚げ句には『よこさないと訴える』とまで言われてしまい、大変弱 っています。 売却金はすでに家の修繕費としてほとんど使ってしまい、弟に万円を払う余裕は
「被相続人は万円の財産を遺し、妻と長男と次男が相続する。長男は被相続人 また被相続人の店を手伝った」 の看病を行い、 まず、寄与分を考慮しない場合の各人の相続額を算出してみましよう。 被相続人の妻が半分の万円。さらに残りを子どもで分け合うので、長男と次男 は 2250 万円を相続することになります。 続いて寄与分を考慮しましよう。長男は被相続人を看病し、なおかつ事業を手伝ってい ます。 協議したにしろ裁判所を介したにしろ、結果的に万円の寄与分が認められたと したら、各人の相続額はどうなるでしようか。 まず相続財産万円から寄与分万円が控除されます。 そして残りの oooco 万円で、先ほどと同じ計算が行われることになるのです。 すなわち、妻が万円で、次男は万円です。 そして寄与分が認められた長男は、相続の万円にプラスして寄与分の 万円、合計万円を取得することができます。 1 05 第 3 章親から相続した住まいでモメています
このような不公平感をなくすために「寄与分」というルールが民法で定められています。 寄与分が認められた相続人は、他の相続人よりも多めに財産を受け継ぐことができます。 例えば次のような場合、寄与分は認められます。 ・被相続人の事業を手伝い利益に貢献していた ・被相続人の看病や介護に尽力していた ・被相続人の生活に必要な資金を工面していた これらは一例であり、寄与分として認められるケースは他にもありますが、要するに被 相続人の生活に欠かせない役割を担ったり、利益を出すことに協力していたことがポイン トになります。 寄与分の額は、原則として相続人全員による協議で決められます。もし話し合ってもま とまらなかった場合は裁判所にて審議を行って最終決定になります。 そして決まった寄与分の額を控除した残りを相続財産とし、相続人たちで分配すること になります。 寄与分が認められたケース 分かりやすいシンプルな事例を紹介しましよう。 104
なるケ 1 スも起こり得ます。 被相続人の望まないかたちとなってしまうのです。そしてこれが後々のトラブルの引き 金となってしま、つこともあります。 この遺留分で確保されている割合ですが、民法によって次のように定められています。 1 直系尊属 ( 父母や祖父母など上の世代 ) だけが相続人の場合は、相続財産の 3 分の 1 2 それ以外の場合は、相続財産の 2 分の 1 また遺留分権利者が複数人いる場合には、これらの割合に相続人の本来の相続分割合を 掛けることになります。 父母の遺留分 ややこしい遺留分の計算について、例を挙げて説明しましよう。 「被相続人の遺した財産が万円。本人に子どもはなく、 父母が健在」
特別受益は、共有関係を解消する際だけでなく 、相続時の遺産分割協議でも大きな争点 となる項目の 1 つです。難しい言葉のように思えますが、質問の真意は至ってシンプルで す。被相続人から「特別扱い」されたことがないかを尋ねています。 例えば相続とは別に、被相続人から財産を譲り受けていたり、婚姻や生計の資本として 贈与を受けていると、特別受益と見なされることがあります。 る もし相続人の中に特別受益を得ている人がいたら、法定相続分のまま遺産を受け継ぐと す 理 不公平が生じてしまいます。 処 、つ そこで民法では特別受益に関する次のようなルールを設けています。 産 まず、相続時に有している財産の評価額に、特別受益と見なされた贈与の価額を加え、 動 不 この全体を相続財産とし、法定相続通りに分けます。 益 そして特別受益を受けていた人は、法定相続分から特別受益分を控除したものが最終的る て な取得分となるのです。あくまで遺一一一一口書がない場合の、法律にのっとった分配です。 し 有 計算がやや複雑にも感じられるので、実際の事例を通して解説していきましよう。 共 章 第 事例「姉は資金援助を受けていた」 「父が亡くなり、時価万円の土地を姉と弟の私が相続することになりました。
まず法定相続分としては、妻が 2 分の 1 で、残りを子どもたちが分け合うので、子ども たちは 6 分の 1 ずつになります。そして遺留分は紹介した民法の 2 つめにある 2 分の 1 が 適用されます。 よって妻と子どもたちの遺留分額は次のように算出できます。 妻 6 万円 x 2 分の 1 ( 法定相続分 ) x 2 分の 1 ( 遺留分 ) Ⅱ 15 万円 子ども万円分の 1 ( 法定相続分 ) ><N 分の 1 ( 遺留分 ) Ⅱ万円 たとえ被相続人が「全財産を長男に継がせる」と遺言を残しても、妻は万円、 2 人の子どもは万円の遺留分を主張できるということです。 「被相続人の遺した財産が万円。妻と、子どもが 3 人いる」
法です。相続が発生したときに率先して動き、相続を円満に完了させてくれる存在を任命 するということです。 遺言執行者は、未成年や破産者でなければ、家族や知人、誰でもよいことになっていま す。複数人でもかまいません。 丿ーズナプルといえるでしよう。莫大な財産を築いてい この方法がオーソドックスかっ 1 る人でない限り、この方法を採ることになります。 事例「子どもが親に遺言を書かせている」 相続時のトラブルを回避するための遺言ですが、時に遺言そのものがトラブルの火種と なることもあります。 次のような事例を紹介します。 「被相続人の遺言を子どもが強制的に書かせています。これは遺一言として認められるの でしようか」 論からいえば、他者によって「書かされた」遺言はその効力を発揮できません。おま 55 第 2 章相続トラブル回避のために覚えておきたいこと