持分売却は減価される 交渉が難航したらどうなるか。 < 子さんは速やかに売却して現金化したい意向でした。ですから共有者の権限を利用し、 自分の持分を第三者に売ったり、共有物分割請求訴訟を起こすことも考えられます。 しかし、いずれも子さんの希望する額では現金化できないかもしれません。 なぜなら、持分の売却というのは全体売却時に比べて減価されるのが一般的です。おお よそ時価よりも 3 割程度目減りします。立地によっては購入希望者が出てこない可能性も あります。 訴訟を起こした場合は競売になることが考えられますが、これも時価よりは安くなるの が相場です。おまけに手間や費用も相当かかることでしよう。 こういった点を < 子さんに過不足なく説明することで、 < 子さんの理解を求めました。 「生まれた家だから、何としても持っておきたい」という相談者さんは時価相当額でも 持分を買い取りたいと言っています。これはいわば「お得」な買い取り額なので、 < 子さ んは相談者さんに売却することがべターといえるでしよう。 結果として、相談者さんが < 子さんの持分を買い取ることで着地しました。 1 2 5 第 3 章親から相続した住まいでモメています
今のうちに持分を手放すことはできないでしようか」 この事例では相続の際、「誰が管理するか」を話し合ってはいるものの、家賃分配に関 しては具体的な取り決めをしなかったことが災いしました。 修繕費などの出費も含め、アパートに関わる実務は全てお姉さんが担当していますが、 損益や収支に関する決算報告書は相談者さんに一切共有されていないという状況です。 「いくら収入があって」「いくらの出費があって」「いくら手元に残っているのか」を共 有者に開示しないのは不信感を募らせてしまいます。 まして共有不動産でありながら、共有者に家賃収入を一切分配しないのは不法行為に当 たります。 このトラブル、解決への筋道はあらかた決まっています。相談者さんの願いは持分を手 放すことですから、まずは他の共有者に持分を買い取る意思があるかどうかを確認します。 その結果、お姉さんには買い取りの意思がないことが分かりました。 では次の段階です。どのよ、つな解決法があるでしよ、つか 168
そこで、相談者さんとお姉さんでまず話し合いの場を持っことになりました。 その結果、お姉さんには相談者さんの持分を買い取れるだけの余裕資金がないことが分 かり、当初の予定であった持分移転による共有関係解消は不可となりました。 さらにお姉さんには、このままでは相談者さんの持分だけ売却となることに加え、第三 者の持分となることで賃料の請求や持分売買の交渉が発生するかもしれない点など、共有ル 関係を続けることで生じる可能性を説明しました。 お姉さんとしても面倒なことになるのを避けたい様子で、最終的に姉妹の希望を 1 つに 地 し、空き家全体を売却することに合意となりました。 空 や その後、高値で買い取ってくださる方を見つけました。裁判による売却よりも手元に多 家 空 くお金を残すことができ、 2 人とも一安心といった様子でした。 の ま 空き家の共有関係を 2 人の代で解消できたことは価値ある判断であったと思います。も ま し次の代、そしてさらに次の代へと受け継がれてしまっていたら、もはや手遅れの状態と し 置 なり、簡単には手放すことができなかったことでしよう。 章 にイしたいから」という理由だけで空き家を所有しておくことは、共有者にとっ 第 て損を招く要因になりますし、不動産の価値を使いこなせていない点で「非常にもったい ない」といえます。誰かが定住するなり手放すなり、早期に決着をつけてしまいましよう。
安く買いたたかれることも 不動産だけでなく、本でも車でもプランドのバッグでも、売ろうと決めたらできるだけ 高く買い取ってくれるところを探したいですよね。信頼性も高い買取業者ならなおよしで 1 レよ、つ しかし、中には「高価買取」をうたいながらも、できるだけ安く買いたたこうともくろ む業者がいることは、どこの業界でも同じです。 「不動産全体ではなく、持分だけを買い取ってくれるところなんてあるのだろうか ? 」 そう感じる方が多いようですが、実際に持分を買い取ってくれる業者はいくつもありま す。 ただし最初に紹介した通り、買取業者ですから、できるだけ安く買おうとする傾向にあ ることは違いありません。 では、買取業者はどのように選べばいいのか。そもそも業者が持分を買い取ることのメ リットは何なのかを事例を通して考えていきましよ、つ。 怪しい業者にご注意 1 3 1 第 3 章親から相続した住まいでモメています
また、共有者が住んでいたり、もしくは空き家であったとしても、他の共有者の持分を 買い取る交渉などをして、共有名義を単独名義に変更、収益化したり他者へ売却し、利益 を得ることを目指します。 このような運用をする投資家や業者は増えていて、不動産の共有持分に対するニーズが 着実に高まっているのを現場で感じています。 注意したいのは、誰に買い取られるかによって、他の共有者に与える影響に差が出てく ることです。買い取ってくれる相手は廩重に選ぶべきでしよう。このことは、第 3 章で紹 介する事例の中で詳しく紹介します。 過半数は、共有者数ではなく持分比率 管理行為や賃貸契約は過半数の同意によって行えるとありますが、この過半数というの は単純な共有者の人数のことではなく、持分比率を意味しています。 例えば、次のような持分比率の共有名義不動産があるとしましよう。 「母が 2 分の 1 、子ども 3 人それぞれが 6 分の 1 ずつの持分比率の不動産」
います。何かいい案はありませんでしようか」 事例の空き家は老朽化が著しく、端的に言ってしまえば、使用も収益化も期待できない ポロ家でした。 こうなると建物は「マイナスの財産」となり、土地の価値を大きく下げてしまっている 面も強くあります。かといって解体する余裕資金もごきようだいにはない状態でした。 空き家を持て余してしまっている事例の代表格ともいえるでしよう。 さてこの不動産、どういった決着のつけ方があるのでしようか ボロ家の買取条件 一見して買い取る側にとっては魅力を感じない物件ですが、投資家ネットワークに配信 したところ、時間はかかりましたが買い主が現れました。 その投資家さんはある「条件」と引き換えに、弟さんの持分を買い取るというのです。 その条件とはとても意外なものでした。 「こちらの資金で空き家をリノベーションし、収益物件として運用したい」 つまりこういうことです。まずこの投資家さんが弟さんの持分を両者納得の額で買い取 1 5 7 第 4 章放置したままの空き家や空き地、どうにかしたい
3 持分を移転する 共有者間で持分の売買を行い、単独所有によって共有関係を解消する方法です。 自分 1 人の名義とするために他の共有者たちの持分を買い取ったり、もしくは他の共有 者 1 人の名義にするため自分たちの持分を買い取ってもらう、ということです。 この方法は買い取る資金がないとまず成立しません。また双方が納得できる金額にしな お て いといけません。 え 「知った仲だから」と安い価格で売買するのはご法度です。税務署に贈与と見なされ、 め 買い受けた側が贈与税を負担することになってしまうかもしれないのです。取引金額の設 の 定には気を付けましよう。 回 珍しいケースとして、売買ではなく交換による持分移転もあります。ただこれにも条件 プ があり、持分を有する財産が複数ないと成立しません。 章 4 持分を放棄する 持分を放棄し他の共有者に譲る方法です。 3 人で共有していた共有名義不動産が、 1 人第 放棄して 2 人の共有になる、といったかたちです。
たまに使いたい空き家 事例「姉がなかなか買い取ってくれない」 共有者間で意見がまとまっていながら、なかなか計画が進まないパ し 解決が望ましいでしようか。次の事例を参考にしてみましよう。 い」 「亡き父母が遺した大阪市内の物件を私と姉の 2 人で相続しています。遺産分割協議書 地 を作成し、持分は 2 分の 1 ずつで登記しています。 空 や 誰も住んでいない空き家なので『母の三回忌が済んだら売却しよう』と姉と話をつけて 家 いました。 空 の ま ところが事情が変わり、姉の方から私の共有持分を買い取りたいという申し出がありま ま した。姉は愛媛在住で、たまに大阪へ出てきたときに滞在地として利用したいようなので し 置 す。 私としては持分を売却することに変わりなかったので反対はしませんでしたが、買い取章 第 る話についてはそれつきりで、実際に姉が行動に移そうとする気配がありません。 4 調停や裁判を起こすことも検討していますが、姉との今後の関係にひびが入りそうです ターンはどのよ、つな
1 物件に住んでいる共有者に持分相当の賃料を請求する 2 他の共有者にも買取交渉し、単独所有を狙、つ 3 他の共有者に買い取ってもらうよう交渉する 持分を持っているのですから、共有名義不動産に住むこともできますが、そのケースは まずないと思っていいでしよ、つ。 そこで「 1 にあるように家賃を請求する可能性は十分にあり得ることです。もし請求て え に対して住んでいる共有者が「払えません」と拒んだ場合、共有物分割請求訴訟を起こす覚 め ものと予想されます。 「 2 」は単独所有とした後に売却するというパタ 1 ンです。持分ごと別々で買った金額避 回 よりも、一括で売却した金額の方が高くなるので、その差額で利益を出す計画であり、正 当な資産運用の方法です。 続 「 3 」も同様に利益が出るよう、自分が買い取った時よりも高値で買い取ってもらえる 章 よ、つ働きかけてくるでしよ、つ。 第 と他の 「 2 」にしろ「 3 」にしろ、「相続した家を売る気はない」「資金に余裕がない。 共有者が交渉を拒んだら、やはり結局は共有物分割請求訴訟になります。
「きようだい 3 人で共有している家屋があり、次男の私と三男が住んでいます。 ところが先日、兄から『自分の持分を第三者に売った』という連絡が入りました。今後 私と三男はどうなるのでしようか。兄の持分を買い取った第三者から『出て行け』と言わ れたら従わないといけないのでしようか」 まず、お兄さんの取った行動について考えてみます。 お兄さんは投資家に自分の持分だけを売っています。自己の持分を売ることは単独でも できることはすでに紹介しました。 しかし、きようだい間の共有関係を考えれば、事前の連絡なしに売却したことはまずい とい、んるでしよ、つ。 持分を買い取った第三者のその後の行動はいくつか考えられます。 します。 しかし、ここに第三者が絡んでくると : : : 大きくこじれることになります。 1 っ代表的な事例を紹介しましよう。