二〇〇六年ーー貸付業務違反 住宅危機、そして家を抵当流れ処分で奪われたアメリカ人数百万人のことを考えるとき、プリ・ヘ ラーのように聡明な成功した三〇歳の人物は思い浮かばないはずた。私が会ったとき、ヘラーはフロ リダ州オーランドの自宅が競売処分されたことからまた立ち直れず、膨大な借金を抱えて、銀行に怒 りをたぎらせていた。よくあるような犠牲者とは違う。世慣れていて、数字に明るく、冷静沈着その ものた。ローンの書類について私に知識ありげに説明してくれたようすから、住宅金融を理解してい ることは明らかたった。 それでも、ヘラーはたまされた。返済能力を超える住宅ローンをつかまされた。ローンが承認され たときには、支払う余裕もなく、それを望んでもいなかった。そのため、寝室が四間ある五一万三〇 〇〇ドルの自宅が抵当流れ処分に遭うおそれが出てくると、二〇〇八年一〇月二二日にフロリダ州法 務長官の「詐欺ホットライン、に電子メールを送った。 「私は、二〇〇六年一一月、ワシントン・ミューチュアル・パンク (> ä) によって行われた略奪 しゅリゆっだん めな話てす。こういうローンは、エキゾチックな商品から手榴弾に変わるんです キャスリン・ケラー ( 住宅ローン・プローカー ) 160
[49]Gardner, 、 'American Experiment. ' 第一部ミドルクラス全盛期 第 1 章企業軍団の謀反 [1]Thomas Byrne EdsalI, 7 ' カビルビ w 0 / ⅲいツ・ 加 e 臾〃ゆ (New York: W. W. Norton & Co. , 1984 ) , 113-14. [2]Ibid. , 13. [3]Linda Greenhouse, "Lewis Powell, Crucial Centrist Justice, Dies at 90 , ” T んビ New 物石〃肥、 , August 26 , 1998. [4]PoweII, memorandum, 、 'Attack on American Free Enterprise System," August 23 , 1971 , http:// WW 、 V. aspenlawschool.com/ [5]Ibid. 同 id. [7]Nixon meeting with Henry Ford Ⅱ and Lee lacocca, White House tapes, cited in Tom Wicker, 0 〃 e 可・ U 驪犬たんのツⅣⅸ 0 〃 and 巳 4 川の・た〃 D 尾 4 襯 (New York: Random House, 1991 ) , 515. [8]Jacob S. Hacker and paul Pierson, ル初〃夜・ - ん々← .4 〃 20 / い . ・〃öw 鼎 'a 、ん〃 g 〃んに犬ん 犬 / c んの・一 a' ル閉にイ / な召 c た 0 〃 the M 襯に C ん (New York: Simon & Schuster, 2010 ) , 97. [9]Excerpt ofinterview ofWilliam Ruckelshaus for the ん・ 0 〃〃ⅲビ program 、、 Poisoned 、 Vaters,' September 3 , 2008. [10]Ibid. , July 28 , 2008. [11]David Vogel, Fluctuating Fo ″〃ビ & ・ The 0 / ⅲ - 0 Pow 夜・ツ・召ⅲ s ⅲ .4 襯夜・ / c ロ (New York: Basic Books, 1989 ) , 62-63. [12]Edwin L. Dale, Jr. , "lt's Not perfect, but lt's the Best Yet," 〃肥 New 犬罕″わ / , May 3 , 1969. [13]VogeI, Fluctuating Fo 〃〃い , ch 叩 . 8 , 、、 The Political Resurgence ofBusiness. ' [14]Hedrick Smith, 7 ' / 召 ow Ga 襯巳・〃övv ル朝ⅲ g / 0 〃初・ ks (New York: Random House, 1989 ) , 引 . [15]Leonard SiIk and David Vogel, Ethics at P ド可 : ″ & ・ The C ドなな Oe / 、 C04 d に〃 c ビⅲ〃肥 r / c ロ〃召″ⅵ - 〃い、ゞ (New York: Simon & Schuster, 1976 ) , 65. [16]Edsall, 戸 0 〃行い可加ビ 9 ″〃 121-26. [17]VogeI, Fluctuating Fo ′・ tu 〃い , 193-200 ; Nace, G ロ〃 g 、可・・ 4 川群ゾ c ロコ 37-42. 第 2 章企業軍団の勝利 [1]"The Swarming Lobbyists:Washington's New Billion-DoIlar Game ofWho Can lnfluence Whom, ” Time, August 7 , 1978 , 14. [ 2 に A Potent New Business Lobby," 召〃、ⅲに” 'ee ん May 22 , 1978. 卩 l"The Swarm i ng Lobbyists. '' [4] 、℃ arter Dealt Major Defeat on Consumer Bill, ” CQAlmanac 7978 (Washington, DC: CongressionaI QuarterIy, 円 79 ). [5]Hacker and Pierson, Ⅲⅲ〃夜・ - んた← .4 / / po / ⅲい , 126-27. [6] 、℃ ouncills Formed by NAM for Union-Free Environment, ” The ル、ん加 g 〃 PO , December 2 , 1977. 卩] 、、 House Passes Bill Aiding Union Drives," The New ) の石川ぃ , October 7 , 1977. [8]Ray MarshaII, interview, June 14 , 20 Ⅱ . [9]Jefferson Cowie, “ 'A One-Sided Class War': Rethinking Doug Fraser's 円 78 Resignation from the Labor-Management Group," カロわ 0 ド〃なり , 44 , no. 3 ( 2003 ) : 307-14. い0] 、℃ arter Signs Minimum Wage Bill, Giving Raises 0f45 Percent by ' 81 , " The New ⅸ石川い , November 2 , 1977. [ 11 ] U. S. Department ofLabor, "Federal Minimum 、 Mage Rates Under the Fair Labor Standards Act," http://www.dol.gov/whd/minwage/chart/ pdf; and U. S. Bureau ofLabor Statistics, "B-2: Average Hours and Earnings of Production and Nonsupervisory Workers on Private Nonfarm PayroIIs by Major lndustry Sector, 1964 to Date , ' ' http://www.bls.gov/ces/#tables. [12]"Congress Clears Trucking Deregulation Bill," CQAlmanac / 980 (Washington, DC: CongressionaI Quarterly, 198 り ; 、、 Congress Clears AirIine DereguIation Bill," CQ 」の lac 7978 (Washington, DC: Congressional QuarterIy, 1979 ) ; "House, Senate Advance Bills to Curb FTC," CQ 」 / 川 anac 7979 (Washington, DC: CongressionaI QuarterIy, 198 の . [13]Lynn M. LoPucki and William C. Whitford, 、、 Corporate Governance in the Bankruptcy Reorganization of Large, Publicly HeId Companies, ” U 〃れ可ア夜川リん 4 〃カロ w Review 141 , no. 3 (January 1993 ) : 674-75 , 688-92 , 719 ; Robert Lawless, email, January 6 , 2012. [14]Lawless, email, December 21 , 20 Ⅱ . [ 151"Congress Approves New B ankruptcy System, ” CQ 図 / 襯の lac ノ 978 (Washington, DC: Congressional QuarterIy, 1979 ) , 179-82. [161ElizabethWarren, interview, February 6 , 2006. [17]Hearings on 、、 The President's 1978 Tax Reduction and Reform Proposals," House Ways and Means Committee, March 17 and 20 , and 308
第一ニ章 401 ( k ) の罠 りの平屋に住みつづけていた。ベス・クラブは、地元の不動産屋で働き、多少の収入を得ていた。ク ラブはソーシャル・セキュリティー手当を受け取り、蒸気管工事人組合の契約が適用されている以前 の仕事の生涯年金を月四〇〇ドルもらっていた。ときどきは臨時の仕事で修理やトラックの運転をし た。収入の範囲内でやっていくため、クラブは秘蔵品の銃器を一万二〇〇〇ドルで売り払った。「胸 が張り裂けそうでした」と、クラブは小さな声でいった。 私が訪問していたあいたの大ニュースは、クラブがニューメキシコ州アルバカーキにある半導体工 場の安全管理者として採用されたことたった。そんなわけで、ウインソン・クラブは六八歳にして、 臨時の仕事のために単身でアルバカーキへ行こうとしていた。いつまで ? クラブにはわからなかっ た。クラブ夫妻に長期的計画はなかった。 利回り格差 ギル・チボーとウインソン・クラブの違いがあまりにも際立っているので、たまたまそういう異な る事例にぶつかったのか、それともふたつのエピソードは全体を物語っているのたろうかと、私は思 い迷った。二人はおなじ会社で働き、 401 (=) 制度に加入し、きちんと資金を拠出して、会社か らの割のよい拠出を受けていた。むろん給与額は異なり、それでいつばうの貯蓄が他方の倍になるの はわかる。しかし、差はもっと大きかった、チボーの貯蓄はクラブの二〇倍以上たった。なぜそんな にも違う結果になったのか ? 福利厚生制度について大企業に五〇年助言してきた年金コンサルタント、プルックス・ハミルトン 139
が「ブッシュは教育やヘルスケアなど国内問題への支出増を最優先すべき , たと考えているという世 論調査の結果を報じた。ソーシャル・セキュリティーの強化を望む人々が二五。ハ 1 セント。クリント ン政権から引き継いた財政黒字を国の債務削減に当てることを望む人々が一七。ハーセント。減税を望 んたのは、わずか二二パーセントーーー・およそ五人に一人ーー・たった。そして、減税を実施するとして も、五三。ハーセントが大規模ではなく小規模なものを望んでいた。また四七パーセントが、ブッシュ 減税は富裕層に有利となるのではないかと懸念していた。 《ウォールストリート・ジャーナル》の世論調査では、多くの人々が減税を歓迎するいっ ばうで、四一 。ハーセントに対して過半数の五二。ハーセントは、「負債の削減と、教育など優先分野へ の支出増に支障がないよう、減税は中・低所得の納税者に限定。すべきたと答えた。三月八日付の 《ロサンゼルス・タイムズ》の世論調査では、ミドルクラス ( 中間層 ) に対する小規模な減税を支持す る傾向がさらに強かった。基本的に減税を支持している世論調査でも、一般大衆はブッシュ減税の規 模や財源の偏りには賛成していなかった。 「六人組」の政治工作 そこへ登場したダ 1 ク・パン・ドンゲンと彼がいうところの「六人組」 , ーー減税連合の心臓部 は、一般大衆の意見を無視することにした。 ルイス・。ハウエルがビジネス・マニフェスト ( 声明書 ) を書いた一九七一年から三〇年のあいたに、 ハン・ドンゲンの擁する六つの集団は、企業のワシントンにおける政治勢力の中核となっていた。① 181
の寡頭支配は、総消費者支出におけるシェアをますます高め、特大の購買影響者を抱えているからで それは事実たった。二〇一一年の夏に経済が失速したときでも、マンハッタンでは高級品がよく売 れていた。《ニューヨーク・タイムズ》の記事によると、ノードストローム百貨店では、小売価格九 〇一〇ドルのシャネルのツィードのコートが順番待ちになっていた。メルセデス・べンツによれば、 二〇万ドル以上の高級車「 co クラスセダン」の七月の売り上げが一四。ハーセント近く伸び、七月とし ては過去五年間で最高になった。ティファニーの第一・四半期の売り上げは二〇パーセント増え、七 億六一〇〇万ドルに達した。。 テザイナーズプランドの服と靴の決算も好調たった。値上げすると買い 手は飛びつく、とサックス百貨店の元 0 O アーノルド・アロンソンは助言した。小売業界の大半が 低調ないつばうで、贅沢品は一〇カ月連続で売上増を記録した。 ひどすぎる所得格差 アメリカ人は、欧州とアジアの先進国の人々よりもはるかに、経済的不平等を現代資本主義につき ものの特徴として受け入れ、支持さえしている。アメリカ人は、努力と才能には物質的な報いがある 層 裕と信じている。 富 新 たとえそうたとしても、現在のアメリカの経済的分裂の規模を把握している者はごく少ない。国民 章は O O の給与が高いことは知っていても、どれくらい高いかは想像していない。二〇〇七年のある 八 第全国調査では、多くの人々が、一般的な大企業のの報酬を五〇万ドルと推定していたが、そん 149
「破産の割合を高めている原因は、消費者の信用取引の金額がどんどん増えていることにほかならな い」とローレス教授はいう。一九七〇年代と一九八〇年代に議会が消費者金融を自由化すると、複雑 で利率の高い、危険がひそんた信用取引商品が、市場にあふれた。不用心な消費者は、細かい字で書 かれている手数料や担保権などの条件を説明されずにそれを買わされ、借金地獄にはまり込んた。 もっと金を借りてもらう しかし、民間債務が爆発的に増えた最大の原因は、なんといっても一九七八年にマルケット・ナシ ョナル・パンクの裁判で連邦最高裁判所が下した判決たと、ローレスは指摘する。「あれでほんとう に歯止めがなくなりました」とローレスは私にいった。「あの判決は、人々の生活に、いまたかって ないほどの大きな影響をあたえてきました。クレジットカ 1 ドの利率の規制を撤廃したんです。銀行 側はそれをクレジットの″民主化〃と呼んで歓迎しています。彼らは考えました。よし、これでリス クが高すぎるために以前ならローンが認められなかった連中に、三〇パーセントの金利を請求できる ぞと。銀行にとって、そういう無防備な借り手が、一番儲かる借り手なんです」。 金融業界にとって、金利の高いクレジットカードや、とりわけデビットカードは、信用度が低い人 間に売り込む格好の道具となった。彼らは借金から抜け出せなくなり、最低支払額を支払って銀行に いつまでも利益をもたらすいつばう、金利とカードの手数料によってさらなる借金に引きずり込まれ : そのローンの返済には二〇年近くかかります。 「最低支払額を支払っている場合 ( リポ払いたと ) 141
がすきっかけとなった。反組合で自由市場を唱える保守派のパリー ・ゴールドウォーター上院議員 ( アリゾナ州選出 ) が、一九六四年に大統領選挙に出馬したときから、右派では政治革命がくすぶって ・メモたった。それ以来、ワシントン 0 の政治や、 ( たが、変化のきっかけとなったのはパウエル アメリカのビジネスリーダーたちの考え方と業務のやり方は、長期にわたって広範囲な変革をとげる。 それは、アメリカのミドルクラス ( 中間層 ) 全体を繁栄させてきた「好循環」の哲学と政策を逆転さ せるような変革たった。 あらたに目覚めたビジネスの力は、アメリカを「ニューエコノミー」〔—活用増加により在庫調整が加 速し、従来の経済循環が消滅するという理論〕と政治の「ニュ ハワーゲーム」〔権力闘争の構造変化〕に突入 させ、それが現在の私たちの暮らしをほば左右している。どちらも業界、金融、企業エリートにきわ めて有利な方向を向いている。ミドルクラスが犠牲を払うことで、アメリカの超富裕層の富が何兆ド ルも増え、アメリカの政治と経済の力は不健全な集中を示している。 本書では、その数十年にわたる変化の物語の内幕へ読者を導き、ミドルクラスが繁栄した偉大な時 代ーーー一九五〇年代、六〇年代、七〇年代ーー・を支えていた政治・経済インフラを、私たちがどうし て迂闊にも消滅させてしまったかを検証する。 一。ハーセントと九九。ハーセント グ 現在の最大の難題、私たちの社会のもっとも危険な断層線は、アメリカにおける収入と富の著しい プ格差である。 、つかっ
内部から起きる難題 イギリスの歴史学者ア 1 ノルド・・トインビーは、権威ある大著『歴史の研究』 ( 長谷川松治訳、社 会思想社 ) で、文明世界が難題と対応の力関係によって栄えたり、衰えたりする物語を述べている。 六〇〇〇年におよぶ二一の文明を研究したトインビーは、それぞれの文明の命運は、それがぶつかっ た難題への対応に左右されることを知った。 古代エジプト文明が長期にわたって隆盛たったのは、過酷な気候を高度な農業体系で克服したから たと、トインビーは述べている。南米のマヤ文明とアンデス文明は、おなじような厳しい環境を乗り 越えたものの、自分たちよりも力の強い侵略者に滅ばされた。その他の文明は、内部から崩壊した。 古代ギリシャの都市国家は、貿易をめぐる都市同士の激しい競争から、同胞が殺し合う戦争に陥り、 衰亡していった。古代ローマ帝国は、トインビーが「主体となる社会の分離」や「物事の本質的部分 の分離 , と呼ぶものの餌食になったーーー内部の亀裂が、ローマの均一性を根幹から脅かした。 ヒトラーのナチス・ド 二〇世紀のアメリカは、宿敵のもたらす軍事的難題に出会い、克服した ィッと、ソ連の共産主義という長きにわたった世界的難題を。 現在、私たちはもっと複雑で、もっと大きな危険をはらんでいる難題に直面している。それは、内 部から起きる難題である。トインビーが指摘しているような、主体となる政治や私たちの社会の本質 的部分の分離を蔓延させてしまったら、古代ロ 1 マ帝国とおなじように、それが滅亡のきっかけにな るおそれがある。 まんえん
全体で見ると、この一〇年で、アメリカ全土の五万九〇〇〇以上の工場と生産設備が閉鎖され、二 〇〇一年一月から二〇一一年一二月にかけて、中核的な製造セクタ 1 の雇用は一七一〇万から一一八 〇万に減った”ミドルクラスに安定した給料の高い職を長年提供してきた最優秀セクターたったたけ 過酷な影響があった。ビジネスリーダーたちは、継続的解雇という周到な戦略で賃金を抑えて投 資家の利益を高めるいつばうで、従業員を締めつけていたたけではなく、今後の経済拡張に国が必要 としていたミドルクラスの消費需要もじわじわと抑えこんでしまったのた。 こうした風潮によって、民間セクターが国を不況から引き上げることがきわめて困難になり、政府 の行動で経済を刺激する必要性が高まった。その明白な証拠がある。一九九〇年以降、アメリカ経済 が苦境を脱して不況で失われた雇用を回復するのに要する時間が、不況のたびにどんどん長くなって いるのた。エコノミストは一九九〇年の景気後退後に「雇用なき回復」という新語を考え出したが、 一年九カ月ーーかかったからた。二〇 それは失われた雇用を回復するのに通常よりはるかに長く 〇一年の不況では、その倍びどかった。雇用が戻るまで三年一〇カ月かかった。 モルガン・スタンレーの元チーフェコノミスト、スティープン・ローチは、二〇〇二年から二〇〇 三年にかけてのうんざりするほどのろい回復を「近代史上もっとも弱い雇用サイクル」と呼んた。ロ ーチがとりわけ懸念したのは、雇用が戻っても、給与が下がり、手当が削られて、社会保障が弱まっ 困たことたった。ローチが指摘するとおり、二〇〇二年から二〇〇四年半ばにかけて、経済の最下層に 新対する新規雇用の九七パーセントが、。ハートタイムの仕事たった。かっては潤沢たった賃金のいいフ 章 ルタイムの仕事は、すっかり消えていたーー企業収益を増やすために海外移転されたのた。ミドルク 第ラスにとって失業はもはや、回復が望める周期的な頭痛ではなく、長期にわたる構造的なガンになっ 115
ネプラスカ州の退職制度 この厳しい見方に対し、アリシア・マネルやプルックス・ハミルトンなどの退職専門家は、老後資 金を貯めるのにもっとよい方法があると提言している。自己投資をやめて、プロの財務管理者が運用 する全社的な投資ファンドに、自分の貯蓄と会社拠出分を合わせて投じれば、平均的アメリカ人の多 くはずっと裕福になるというのた。各自が個人口座を持ち、会社のファンドに占める各自のシェアは、 貢献度と年功序列賃金をもとに決める。たたし、おのおののファンドは退職まで換金できず、投資は プロが管理する。 ネプラスカ州は、一一種類の退職制度を使って、この構想をじっさいに試している。一九六四年以降、 ネプラスカ州職員のいつばうのグループは従来のプロが運用する生涯年金制度に加入し、もういつば うのグループは、職員が拠出と運用を行う 401 (=) プランに加入した。どちらの制度も加入を義 / ハーセントという気前のいい一定し 務付け、拠出の基準を定めた。どちらも雇用主である州から、亠 ) た拠出を受けた。 約一〇年前、自己責任の制度に加入していた引退者たちが、引退資金が不十分たと訴えた。州議会 が外部調査を要求し、アメリカ史上、株式投資にとりわけ適していた時期である一九八〇年から二〇 〇四年までの実績が調べられた。その結果、プロが運用した確定拠出型年金のプール金は、 401 ( ) の資金よりもはるかによい業績たったことが明確に示された。資産をまとめてプロが運用した 場合、「過去二〇年あまりの平均収益率は、一〇・五パーセントを上回っていました」と、ネプラス 156