詰めてい。 401 (=) ~ の拠出を減らした企業の半分以上は、拠出額を元に戻していなかった。 市場が低迷していた二〇〇九年に企業と従業員が拠出を減らしたことによって、数百社で 401 (=) プランの長期実績が悪化した。 幻の富 ミューチュアルファンド専門の投資顧問会社パンガード・グループ創業者で長年 o O をつとめた ジャック・ポーグルによれば、ミドルクラスの多くを長く苦しめている基本的問題のびとつは、人々 が株式利益に対してまったく非現実的な期待を抱いていることたという。ポーグルがいうには、並は ずれて好調たった一九九〇年代の市場の「ファントムゲイン、〔投資収益が出ていないのに課税対象になるキ ャピタルゲイン ( 売却益 ) 〕のせいたという。「株式市場の幻の富は、 4 01 ( ) の投資が簡単たという あお 考えを煽った」とポーグルは話した。「やがて市場が崩壊した」。 ポーグルのいう「幻の富」とは、経済と企業の実成長を誇張して見せる投機熱によって、株価がっ 罠 り上げられたことを指す。ポーグルはこんなふうに説明した。企業が年に四パーセントの収益を上げ の 六パーセント成長したら、それはじっさい一〇。ハーセントの増加た。しかし、その株価が一七パ セント上がったとすれば、投機熱が幻の富を七パーセント上乗せしたことになる。「一九八〇年代と 一九九〇年代の市場は、二〇年間、毎年毎年、年に一七。ハーセント上がっていた」とポーグルはいっ 章 「いまたかってなかった。これからもないでしよう」。幻の富のバブルがはじけると、二〇〇八年 第の市場下落で投資家たちは八兆ドルを失い、 401 (*) に加入する六〇〇〇万人は大損をした。 147
「二〇年後にどうなっているのか、不安でたまりません」と、ギリンジャーは私にいった。「老後も 働くことになるんじゃないかと心配です : : : 」。 引退への道は遠く その見通しカノ ミ、。、ツト・オニ 1 ルの場合はすでに現実になっていた。ユナイテッド航空の破産で財 政的苦境に陥ったオニールは、引退して三五年ぶりにのんびりするどころか、大急ぎで新しい仕事を 見つけなければならなかった。自分と妻を養い、娘の大学の授業料を払い、シアトル北部に一四万一 〇〇〇ドルで購入した農場のローンも返していた。新しい仕事がどうしても必要たった。 三年のあいたオニールは大型トラックを運転して、シアトル港からオレゴン、ユタ、アイダホ、モ ンタナの各州へ貨物を運搬した。週に六日か七日道路を走り、週給はたった四〇〇ドルたった。年金 減額分のいくらかを埋め合わせたものの、失った老後の蓄えを取り戻すことはできなかった。それに、 何週間もつづけて家を離れるのはつらかった。「もちろん一日一〇〇〇キロ近く走ったーーー一一時間 の運転です」とオニールはいった。「年じゅう妻と離れているのに耐えられなかった」。 三年後、オニ 1 ルはトラック運転手をやめ、妻とともにワシントン州東部の田舎に引っ越した。生 活費は減ったが、仕事を見つけるには厳しい場所たった。四〇社に応募したが、どうやっても仕事が 見つからなかったため、とうとう自分で仕事をはじめた。新しい分譲地のために芝を刈るのた。報酬 はわずかたったが、破産は免れてしナ 、こ。しかし、分譲地のオーナーの親戚に仕事を奪われた。 それでも収入が必要たったオニールは、思い切った手段に出た。地元では無名な上、ウィットマン 130
力な組合は、定額年金方式の契約を結んた。 大企業はおおむね、退職前五年間の給与か、賃金の一・五パーセントもしくは一一。ハーセント相当に 勤続年数を乗じた額の支給を約束した。最後の給与の四五パーセントないし六〇パーセントほどに当 ナる。パット・オニールの最後の年給は五万ドル強たったので、毎年およそ三万六〇〇〇ドル、月々 約三〇〇〇ドルの年金が、生きているあいたずっともらえるはずたった。ユナイテッド航空は、労使 協約と一九七四年の従業員退職所得保障法でそれを確約していた。 破綻した約束 危機は一九九〇年代にはじまった。サウスウエスト航空のような低コストの航空会社が、ユナイテ ッド航空のシェアを食いはじめ、利益率が悪化した。一九九四年にはユナイテッドの財務状態がひど く悪化したため、経営陣は組合と遠大な取引をした。経営陣がユナイテッドの五五パーセントの過半 数所有権を組合に差し出す代わりに、組合は四九億ドルの給与および給付金削減に同意する。組合員 は自社株を購入できるというものた。 ユナイテッド航空を固く信じてしナノ 、こ。、ツト・オニールは、努力して手にした貯金から八万ドルを投 資した。組合が賃金と給付金の既得権を返還し、あらたな資本が注入された結果、ユナイテッド航空 の業績は一九九〇年第二・四半期、劇的に改善した。組合員が二二ドルで購入した株は、九〇ドルに 跳ね上がった。 しかし、それは結局、ユナイテッド航空の収益性をはるかに超える、見せかけの利益たった。好况 218
五分の一が、暮らしを直撃する経済の嵐に苦しんでいた。 前述のピュー・リサーチセンターの調査で判明したように、深刻な困窮を免れたミドルクラス世帯 でも、この二〇年のあいたに経済不安が高まっている。 ウォルマートとコストコの福利厚生 ミドルクラスに不安がびろがっているのには、もっともな理由がある。ニューエコノミー時代の Z< には、金融不安が刷り込まれた。ミドルクラスが繁栄した時代とくらべて、ニューエコノミーは かって多くの平均的アメリカ人の安心を支えていた 不安定で、経済利益の分配が不平等た。さらに、 社会契約が、企業国家アメリカによって書き換えられた。一九四〇年代から一九七〇年代まで企業が 一般従業員に提供していた福祉のセーフティーネットが、その後、大幅に削減され、費用の大部分を 企業ではなく従業員が負担するようになった。 転 たとえば一九八〇年代、従業員一〇〇人以上の企業で働くアメリカ人の七〇。ハーセントは、医療保 移 、こ。しかし、一九八〇年代以降、雇用主は従業員が負担する の険の全額を雇用主に負担してもらってしナ ス医療費の割合を高めるよう要求した。なかには、余裕がないといって、会社負担の医療保険の提供を 完全にやめる雇用主もいた。中小企業の多くは、従業員に医療保険料の全額、あるいは大部分を支払 莫わせた。さまざまな業界で組合加入者が減るにつれ、この流れは勢いを増した。 章 この負担の移転がひろまった結果、一一〇〇〇年代半ばには、雇用主に医療保険を全額負担してもら 第っている労働者はわずか一八パーセントで、一九八〇年の四分の一の割合に減っていた。三七。ハーセ 131
一九七八年、企業側の政治マシーンは攻撃に出て、重大かっ広範な影響を及ばすことになる立法議 案を成立させた。以後二〇年間、それは何千万というミドルクラスの国民の生活水準と、国家の経済 成長で生じた繁栄の公正な分け前を得るという彼らの夢を激変させた。一九七八年に成立した経済法 案はほばすべて、その影響がすぐには現れなかったにせよ、ほとんどが政治的に偏り、ミドルクラス を犠牲にしていた 新手の企業ロビー部隊が真っ先に取り組んたのは、リチャード・ニクソンとその前の歴代大統領が 定めた規制の撤廃たった。一九七八年、企業ロビーは、トラック運送、鉄道、航空業界の規制撤廃法 案を成立させるよう議会に迫った。議会は喜々として従った。マサチューセッツ州選出のエドワー ド・ケネディ上院議員のような民主党のリべラルまでもが、各業界の規制撤廃によって経済を活性化 するという共和党の熱弁に同調した。規制撤廃で企業の収益が増えるという予想は正しかったが、増 えた収益がそれまでのように一般従業員に分配されるたろうという思い込みは間違っていた。それが、 のポーナスを膨大に増やしたり、一九八〇年代と一九九〇年代のニューエコノミー時代に裕福 な投資家たちの株式利益を増やしたりするのに使われるとは、予想もしていなかったのだ。 の攻撃②新倒産法 軍 業 企 もうびとつ、企業と従業員の経済的な力の均衡に大きな実質的影響を及ばした法律がある。あまり 章知られていないが、転機となった一九七八年の第九五回連邦議会で成立した倒産法た。 第四〇年間ではじめて大幅に改正されたこの倒産法によって、破産した企業の再建を旧経営陣が主導
一九八〇ー一一〇〇〇年代ーー金融独占 ・ウイルソン大統領が「金融独占、と呼んたウォール街は、アメリカ史上ほかに かってウッドロー 類を見ないほどに政治的権力と莫大な収益を蓄えてきた。そして、今日のアメリカに深刻な経済的分 裂と富の一極集中をもたらした。 ウォール街はかって「金びか時代」と「狂騒の二〇年代」にも急成長をとげたが、この二〇年間の 金融界発展はアメリカ史上空前の規模たった。 一九八〇年代後半から、金融界はニューエコノミーの中核となった。その成長のペースは他のセク ターを圧倒しており、一九七八年に一兆二〇〇〇億ドルだった資産は、二〇〇七年には一一兆八〇〇 枢〇億ドルへ爆発的に増えた。製造業を追い越して、アメリカ経済最大のセクターとなったのた。収益 街も激増した。一九八〇年にはアメリカの企業収益総額の一七から一八パーセントたったが、二〇〇五 ーセントになった。元ニクソン政権の政治戦略家ケビン・フィリップスが述べたように、 一年には四六パ ウウォール街はその収益によってアメリカ経済を「乗っ取って」、経済的権力の「危険な一極集中、を 界もたらした。 か一、り・代し 央政治権力という点で、ウォール街は敵なした。トム・ウルフが『虚栄の篝火』で傲慢な「世界の支 中 配者」として描いた銀行家たちは、二〇年にわたり、石油や軍産複合体や製薬産業といった他のセク 〇ターの経営者よりもいっそう巧みに政府を動かし、自分たちの主張を認めさせた。たくみに働きかけ * 8 こ。目欠ぐ金融危機で何度 第て、ニュ 1 ディール時代の法律や、実績のある政府の規制を打ち崩してきナ卞冫 ご : つまん 199
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まんえん ができるかどうかを確認しなかった。これが慣行として蔓延していたので、のある上級幹部 は、ローン担当者が借り手をきちんと審査していたら、同社の借り換えローンの三分の一は却下され ていたはずたと認めた。。 へつのいい方をすれば、経験豊富なのローン担当者は、ティーザー 金利の支払い能力のみを基準に審査を通して融資した相手が、かならず債務不履行に陥ることを知っ ていた。それでも、ローン担当者は、ロ 1 ンの出来高と収益を増やしつづけるために、その現実をほ し」庇どュないがしろにしていた 二年後に金利が見直され、ローンの返済が倍かそれ以上になりそうたと気づくと、借り手はたいが い深刻な「支払いショック」に陥る。法外な請求を支払う力がない借り手は、そこでローンを借り換 えるよう説得される。ローンの元金は増え、金利はティーザー金利でまた低くなる。プリ・ヘラーが き日したとおり、これで借り換えのサイクルがはじまった。借り換えのたびに借り手の借金は膨らみ、 いつばう、プローカーと銀行員は、新たな口 1 ンを組むたびにかなりの手数料を懐に入れた。 低所得の借り手の場合、 2 / はしばしば、「ピギーパック・ローン」 住宅価格の八〇 パーセントのロ 1 ンを組んでから、ふつうなら頭金に当たる二〇。ハーセントに第二のローンを組むと いう仕組みーーーと組み合わされた。これが債務不履行のリスクを劇的に高めた。しかし、頭金不要と 盗 いう売り文句には勝てない。しかしこれには、長年のあいたに確立したクレジットの必要条件を打ち 強 宅消してしまうという欠点があった。買い手が頭金を入れれば、住宅とのあいたに金銭的利害関係がで 住 きるし、貸し手である銀行はその分、損失の危険から守られる。しかし二〇〇〇年には、ロング・ビ 三ーチやなどの経営幹部によって、その要件はほとんど消え失せた。 第 で長年クレジットを専門としてきたリー ・ラノワは、住宅価格の一〇〇パーセントを借り
めずらしい事件ではない。やはり知らないうちに融資条件を銀行に変更されたという話を、私は数 人から聞いたし、おなじように銀行にロ 1 ンを切り替えられた、借り手数十人の代理人の弁護士たち とも話をした。ローン申請書を書き換えて審査を通すという不正は、銀行と住宅ローン会社が融資額 と収益を増やすために、住宅プームに沸いていたころにかなり日常的に使っていた手口たった。 ローンが承認されたと聞いて、プリ・ヘラーは銀行と建築業者にはめられたと思った。両者とも取 引の完了に金銭的利害があった。ヘラーは窮地に陥った。それまで住んでいた家は売却していたので、 出ていかなければならなかった。建築業者との契約には署名をすませ、購入の意志がある保証として 二万四〇〇〇ドルの頭金も払っていた。銀行がローンを承認せず、資金調達が不可能になっていたら、 建築業者との契約は無効になり、二万四〇〇〇ドルが戻ったはずたった。「でも、自分で契約を破棄 したら、二万四〇〇〇ドルを失うことになります」とヘラーは説明する。さらに、契約不履行で訴え られるおそれもあった。 そこで、ヘラーはリスクをとった。一一六歳という年齢で、不動産市場ーーーと自分の給与ーー・が回復 する可能性に賭け、取引を進めたのた。「状況が急激に変わっていたのはわかっていましたが、それ が一時的なのかどうか、好転するかどうかはわかりませんでした。と、ヘラーは私にいった。「二〇 盗〇六年一一月末のあのとき、自分たちの業界そのものが破綻するなんてわかりませんでした」。 強 宅 ヘラーが思い描いた筋書きは、ギリシャ悲劇のように非青な結果となった。ヘラーは、最初の家を 住 売って得た金の大半を、二軒目の家の莫大なローンの返済に使った。いっしょに越してきたポーイフ 三レンドの助けを借りながら、数年間は懸命に努力して返済した。しかし、それから何年もがんばりつ 第づけることはできなかった。最後には、避けられない事態に屈することになったーーー一一〇一〇年春、 163
第一ニ章 401 ( k ) の罠 カ州退職基金機関の専務理事アナ・サリバンはいう。職員が運用する制度では、「平均収益率はほぼ 】セントから七パーセントでした」。 たいした差に思えないかもしれないが、じっさいは大違いた。二〇年の複利の結果、この四。ハーセ ントの収益差によって、プロが運用する制度の退職金口座の残高は自己責任の口座の倍になった。さ 、らこ、 引退者が不満を持っていること、すなわち 401 (=) プランでは引退資金が不足するという ことも、調査で確認された。「まったく足りていません」とサリバンはいった。そこで、ネプラスカ 州は 401 (=) プランを廃止し、全職員を州が運営する生涯年金へ切り替えた。 「これは国の問題で、国として解決策を考え出さなければなりません」。公的権利擁護団体ペンショ ン・ライツ・センター副代表のカレン・フリードマンはこう断一言する。 「新しいタイプの退職用貯蓄が必要です」と、アリシア・マネルも同調した。「 401 (*) のやり方 では、まったく不十分たとわかっています。目的を果たせない。廃止すればいいとは思いません。で すが、資産をプ 1 ルして、拠出を義務化し、プロが運用して、退職するまで引き出せないよう資産を 保管する新しい制度が必要です」。 ジャック・ポーグルは、ネプラスカのモデルを全国規模にしたものを提唱する。各自の貯蓄を、 4 (æ) や個人退職年金などの口座から、単一の大規模な新しいアメリカ退職基金の個人退職金口 座に移して、国内最高のプロの資産運用者に運用させる。これらの専門家は、新設の連邦退職評議会 が選んで監督する。ボ 1 グルは、この制度に、現在、雇用主から退職制度を提供されていない五〇。ハ ーセントのアメリカ人を含めるよう説いている。 テレサ・ギラードウッチも似たような考えを示しているが、びとつ重要な提案がある。すべての従 157