減税 - みる会図書館


検索対象: 資本主義が生んだ格差大国
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1. 資本主義が生んだ格差大国

いんべい かりたった。ある学術調査が述べているように、税政策は「隠蔽やごまかしが起きやすい、高度に専 門的な領域」なのた。そして六人組とブッシュ政権は、一般大衆の混乱やたまされやすさにつけ込ん も民主党は、減税分の四 = 一バーセントが、所得最上立一。、 イノーセントの人々へ回ると警告した。いっ ばうホワイトハウスは、平均的納税者への早急な税金還付ーーー独身者に三〇〇ドル、夫婦に六〇〇ド ルーー・を約束すると強調した。しかし、その宣伝文句は、何年ものあいたに減税の最大の分け前が超 富裕層に分捕られるという、もっと大きな真実を覆い隠していた。 六人組による総攻撃でホワイトハウスは勢いづき、二〇〇一年五月、一〇年間で三五〇〇億ドルの 減税を実施するブッシュの法案は、二四〇対一五四で下院を通過した。上院では、共和党が予算の均 衡を持ち出した民主党の議事妨害をかわした。予算成立には歳入が減らないという保証が必要たった が、そういう大減税ではそれは不可能たった。過半数を占める共和党は、その要件も目の前に迫って いる財政赤字も無視して、五八対三三で法案を成立させた。 反対したマケイン アリゾナ州選出のジョン・マケイン共和党議員は、筋金入りの保守派だが、。 フッシュ減税に反対票 を投じた。マケインは「数百万の勤勉なアメリカ人」への減税を訴えていた。そして、ブッシュの一 括法案がミドルクラスに不利なものであると知り、ノーといったのた。「減税をもっとも必要として いるミドルクラスのアメリカ人を食い物にして、恩恵の大半がもっとも裕福な人々へ回るような減税 は、良心に照らして支持できない」とマケインは抗議した。 186

2. 資本主義が生んだ格差大国

ついても、一〇万六八〇〇ドルを超える分は非課税になる。その結果、大金持ちが支払う給与税は勤 労所得の一ないし二パーセントで、ミドルクラスのアメリカ人の七・六五。ハーセントをはるかに下回 っている。 レーガンとブッシュの減税 一九七八年に開始された一連の包括的減税、とりわけロナルド・レーガン大統領が一九八一年に ジョージ・・ブッシュ大統領が二〇〇一年に制定した大規模減税は、超富裕層には宝の山も同然た った。偶然の出来事ではない。一九七〇年代以降、がっちりと組織化された企業ロビー団体と小さな しつよ、つ 政府を要求する減税運動家たちが、富裕層に対する税率引き下げを要求する運動を執拗に展開してい た。そうやって財政の金鉱を手に入れたのた。 レーガンとブッシュの減税によって、アメリカの超富裕層の富に、数兆ドルが上積みされた。レー ガンは、一九八一年を皮切りに、個人所得の最高税率を七〇パ 1 セントから二八パーセントへ、キャ ピタルゲイン税率を二八パーセントから二〇パーセントへ、法人税率を四六 / 。ハーセントから三五。ハ セントへ引き下げた。レーガンはいくつか小規模な増税も実施したが、アメリカのもっとも裕福な一 層 裕 ーセントの人々が彼の減税で得た宝の山は莫大たったーーー一九八〇年代はおよそ一兆ドル、その後 新は一〇年ごとにさらに一兆ドルである。《フォーブズ》の長者番付上位四〇〇人は、レーガンの減税 章でいっそう裕福になり、一九七八年から一九九〇年にかけて純資産を三倍に増やした。 第 二〇〇一年、二〇〇二年、二〇〇三年のブッシュ減税も、富裕層に有利なように、びどくゆがめら 159

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六人組の再登場 しかし、パフェットは、ブッシュ減税の維持を図るダーク・パン・ドンゲンと六人組の力を考えに 入れていなかった。「われわれは、企業連合を維持してあの税率を守ろうとした」と、パン・ドンゲ ンは私にいった。「ブッシュ減税を延長させるために活動を再開した」パン・ドンゲンの減税連合は、 二〇一〇年七月、オパマと議会に対して「過去一〇年に承認された″すべての〃減税について、少な くとも当面の延長を早急に認める、ことを求めた。″すべて〃には、二〇〇一年の大規模な所得税減 税たけではなく、キャビタルゲイン税率の引き下げ、株主配当に対する大幅減税、遺産税の段階的撤 廃、そしてジョン・マケイン上院議員が「これまで見たなかで特別利益団体に影響された最悪のケー ス。と馬鹿にした、企業向けの何百もの減税措置も含まれていた。 六人組はオパマ政権の機先を制した。国会議員たちが選挙資金集めに奔走していた二〇一〇年九月、 六人組は連邦議会へのロビー攻勢を開始した。アメリカ商工会議所は上下両院議員あてに減税を求め る手紙を七万五〇〇〇通出した。。 ヒジネス・ラウンドテープルは八七人の o O を送り込んで議員た ちと面会させた。「いまはどんな増税も控えるべきたというのが、私たちの見解です , と、ラウンド テープルの渉外担当事務局長ジョアンナ・シュナイダーは断言した。 レーム・ダック・セッション 中間選挙で共和党が圧勝したあとの「死に体の会期」「単に日程を消化するにすぎない連邦議会〕中、オ ハマ大統領は議会指導者たちに対して、ミドルクラスの減税を拡大すること、富裕層減税を廃止して 七〇〇〇億ドルの歳入を財政赤字の削減に使うことを求めた。しかし、上院共和党はそれをはねつけ 196

4. 資本主義が生んだ格差大国

れていた。最高所得税率とキャピタルゲイン税率を引き下げて、アメリカの最上位二。ハーセントに対 イハーセントの フッシュ減税から一〇年間で、最上立一。 する遺産税を段階的に撤廃するというものた。。 階層は、合計で一兆ドル以上の恩恵をこうむった。アメリカでもっとも稼ぐ四〇〇人は、ブッシュの 減税に後押しされ、一九九〇年代半ばから二〇一〇年にかけて平均所得が五倍に跳ね上がった。いっ ばう、アメリカの一般的な世帯の所得は減った。 所得規模のもういつばうの側を見ると、低所得世帯に対してブッシュの減税は事実上なにも提供せ ず、中所得世帯にはたいしたことのないチャンスをあたえたたけたった。超党派の連邦議会予算事務 局の推計によると、ミドルクラスの減税額が年間一一八〇ドルであるのに対して、最上位一バー ハーセント ( 年収が三〇〇万ドルを超える人々 ) トの平均減税額は年間五万八〇〇〇ドル、最上位〇・一。 * 鬨 は五二万ドルたった。 金持ちがふんたんに減税されるいつばうで、平均的なアメリカ人は、ソーシャル・セキュリティー とメデイケアの資金源の給与税がほば倍増するという打撃を受けた。ミドルクラスの労働者にもっと も重くのしかかる給与税の従業員負担分は、一九七〇年代の三・四五パーセントから、現在では七・ 六五。ハーセントに増えている。二〇一〇年一二月と二〇一一年一二月、オパマ大統領は議会を説得し てソーシャル・セキュリティー税を一時的に二パーセント引き下げたが、見返りとして議会共和党の 要求をのみ、ミドルクラスへの減税と合わせて富裕層へのブッシュ減税を延長した。 支配的少数者 160

5. 資本主義が生んだ格差大国

のアメリカ企業は、社員を解雇するいつばうで、自社株の買い戻しに合計四四五〇億ドルの現金を割 り当てていた。こうして投資家に利益をもたらすいつばう、失業を増やしていたのた。 減税と成長に直接のつながりがないことを示す証拠物件一号は、ンヨージ・・ブッシュ政権下で 二〇〇一年、二〇〇二年、二〇〇三年に実施された大規模減税のあとの悲惨なアメリカ経済の実績た。 ブッシュ減税後の一〇年は、デービット・レオンハートが《ニューヨーク・タイムズ》に書いたよう 「第二次世界大戦以降、平均年間成長がもっとも鈍かった一〇年たった。驚くべきことに、大不 況を度外視して二〇〇一年から二〇〇七年までたけを見ても、それが当てはまる」。 さらに、スタートアップ企業が雇用を創出して労働力が回復するという約束についても、ブッシュ は間違っていた。じっさいは正反対たった。スタートアップ企業の雇用創出率と労働力率は低下した。 エコノミストのアラン・クルーガーが述べているように、「二〇〇〇年代はこの五〇年間でもっとも 雇用創出が少なかった。二〇〇七年に不況がはじまる前からそうたった」。それとは対照的に、ビ ル・クリントン大統領の時代、クリントンがかなりの増税を断行したにもかかわらず、アメリカ経済 は大きく成長した。さらにさかのばると、所得税率が今日の倍以上たったアイゼンハワーとケネディ の政権下でも大きな成長が見られた。 要するに、富裕層に対する減税の経済的論拠は、まったく間違っている。 オバマの減税廃止案 しかし、二〇一二年一二月、オパマ大統領が景気回復を後押しするため、全納税者の九八パーセン 194

6. 資本主義が生んだ格差大国

エコノミストの計算によれば、ブッシュの減税五二・五。ハーセントはアメリカでもっとも裕福な五 。ハーセントの世帯へ回され、いつばうで二〇一〇年までにアメリカ人の八〇。ハーセントで減税が四分 の一に減ることがわかった。ブッシュは、二〇〇〇年の選挙戦で掲げた「思いやりのある保守主義」 を放棄していた。六人組の後ろ盾を得て、世論に逆行する税法案を押しつけたのた。 「二〇〇一年に承認された減税の規模と構成と配分は、民意を反映するどころか、大多数の意見とは まったく逆たった」と、政治学者ジェイコプ・ ハッカーとポール・ピアソンは指摘する。ブッシュ政 権は代わりに、その政治基盤である「支持層の第一線である党派主義者、活動家、金のある利害関係 者 : : : 」に見返りをあたえていた。 企業と組合の献金バトル ビジネス界が、ブッシュ減税に関する世論と逆行するよう議会を説得できたのは、政治運動に比類 のない影響力があり、税法案を作成する議会のいくつもの委員会に太い。ハイプを持つ、ある政治マシ 争 戦 ーンのおかげたったーーそれは、一九七一年のパウエル・メモ後にはじめて生まれた企業連合をはる 税 のかにしのぐマシーンたった。 代 年 マスコミはいまでも、ワシントンのパワーゲームで企業と組合はほば対等だと見ているが、そのイ ロ ゼメージは四〇年前のものた。金と政治的影響力を結集する力で、企業は労働組合をはるかにしのいで いる。両者の隔たりは、一般大衆が理解しているよりも、あるいは多くの政治記者が考えているより 第も、ずっと大きい

7. 資本主義が生んだ格差大国

アメリカ商工会議所、②ビジネス・ラウンドテープル、③全米製造業者協会、④全米独立企業連盟、 ⑤全米レストラン協会、そしてもちろん、パン・ドンゲン本人が率いる、⑥全米卸売業流通業協会の 六つである。合わせると、これらの団体は《フォーチュン》一〇〇〇社から多数の中小企業に至る一 八〇万社を代表している、とパン・ドンゲンはいう。二〇〇一年には、この六人組が中央政界のロビ ー活動を牛耳っていた。 中央政界では、お金、ことに税金が、つねに最大の政治戦争た。「これはワシントンのインサイダ ー対アメリカ国民の究極の争点です」と、減税を強く主張する右翼団体クラブ・フォー・グロースの スティープン・ムーア理事長は断言すを。「中央政界は権力の大部分を税制から得ているーーー歳入委 ロビイストも法律家たちも」。 員会の議員たけではなく、 ダ】ク・パン・ドンゲンは、税法案で政治的経験を積んでいた。一九八一年と一九八六年には、レ ーガン大統領の減税のために戦い、一九九三年にはクリントン大統領の増税阻止を図った。愛国的な 共和党員で抜け目のない工作員でもあるパン・ドンゲンは、つねに競走で有利な位置にいる。たれに 電話をかけたらよいのか、どう事を運べばよいのかを心得ている。「ダークはいつもいい位置につけ 戦ている : : : 」と、アメリカ商工会議所のある職員は褒めそやした。「彼の政治の触手は深いところま ので届く , 組織力があり、議会に企業側の影響力を駆使するのがうまいと評価する者もいる。 代 年 二〇〇一年の税闘争に向けて、パン・ドンゲンの減税連合は驚異的なすばやさで手はずを整えた。 ゼ企業は所得税減税から直接的な利益はこうむらないが、六人組連合の個々のビジネスリーダーは、最 章高所得税率の五パーセント引き下げや、キャピタルゲイン ( 売却益 ) 税の減税で莫大な恩恵を受ける。 第会社の利益が自分の所得申告と結びついている中小企業経営者たちは、もうひとつべつの恩恵も受け 183

8. 資本主義が生んだ格差大国

税をめぐる勝利 企業側はついに、税金問題でカーター大統領に挑める力がついたと感じた。カーターは一九七六年 の選挙戦で、アメリカの税制を「人類の恥 , とあざ笑った。富裕層と企業が税金を減らしたり免れた りできる抜け穴があまりに多かったためた。そこでカーターは、それら抜け穴の多くをふさいで、富 裕層への優遇措置を撤廃するいつばうで、低所得世帯の税金を引き下げる税制法案を議会に提出した。 いまや強力な企業ロビーに牛耳られている議会は、カーターの法案を受け入れず、それを企業と富 裕層に不利ではなく、有利なものヘ修正しはじめた。 増税の代わりに、法案は一八七億ドルの減税を打ち出した。そこには、投資家に対する最高キャビ タルゲイン税率の四九パーセントから二八パーセントへの大幅な引き下げ、最高法人税率の四八パー セントから四六 / パーセントへの引き下げ、さらに寛大な中小企業への控除などが含まれていた。減税 の規模は比較的小さかったが、それがワシントンの税務・経済政策の分岐点になった。一九七八年の 税制法案は、税制を利用して富裕層と企業の所得を裕福ではない層に再配分するという従来のやり方 をとらず、それとは逆に、その後ロナルド・レーガンとジョージ・・ブッシュによって推進される 進路を定めた。税制による経済的恩恵を受けるのは、主にますます政治権力を行使するようになって いた経済エリートだった。 カーターの税制法案への謀反が成功したことは、企業側にとって政治的転機となった。当時アメリ カ株式取引所の会長をつとめていたアーサー・レビットによれば、それは企業社会に衝撃的な影響を

9. 資本主義が生んだ格差大国

一九八〇年代以降の連邦議会での採決を追跡研究している政治学者たちは、それが日常茶飯事たと いうことを一小す明らかな証拠を固めた。上下院議員は、ことに有力な経済利益団体が関わるときには、 法案採決に際して平均的アメリカ人の意見にはまったく耳を貸さないことが判明した。 プリンストン大学のラリー ーテルズ教授は、一九八〇年代の上院議員が、公民権、最低賃金、 堕胎、財政支出などさまざまな問題に関して、「資力の低い有権者よりも裕福な有権者の求めに応じ る傾向が強い」ことに気づいた。二〇年後の二〇〇五年、もう一人のプリンストン大学教授マーティ ン・ギレンズは、幅広い政策課題について、政策立案者に対する上流階級の影響力が一段と強まって いることに気づいた。「じっさいの政策決定に対する影響力は、所得分布のトップにいる人々にほば 独占されているようた」とギレンズは結論づけた。 他にも二人の学者が、一九九八年から二〇〇七年にかけての一連の世論調査で、大半の人々が富裕 層への増税を望んでいたことをあげ、こう断言した。「政治家がアメリカの一般大衆の願いとまった 一致しない税政策を選んでも、なんの咎めも受けないことは、謎としかいいようがない」。 富裕層への減税は成長をもたらさない ジョージ・・ブッシュ大統領をはじめとする共和党指導者たちは、富裕層を対象とする減税の政 治的・経済的根拠として、富裕層は雇用を創出して国の経済成長を促す投資の主要な財源たと述べて いる。この主張は、一八世紀後半と一九世紀初頭のイギリス人工コノミスト、アダム・スミスとデビ ッド・リカードが提唱した、古典的な経済理論にもとづいている。 191

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が「ブッシュは教育やヘルスケアなど国内問題への支出増を最優先すべき , たと考えているという世 論調査の結果を報じた。ソーシャル・セキュリティーの強化を望む人々が二五。ハ 1 セント。クリント ン政権から引き継いた財政黒字を国の債務削減に当てることを望む人々が一七。ハーセント。減税を望 んたのは、わずか二二パーセントーーー・およそ五人に一人ーー・たった。そして、減税を実施するとして も、五三。ハーセントが大規模ではなく小規模なものを望んでいた。また四七パーセントが、ブッシュ 減税は富裕層に有利となるのではないかと懸念していた。 《ウォールストリート・ジャーナル》の世論調査では、多くの人々が減税を歓迎するいっ ばうで、四一 。ハーセントに対して過半数の五二。ハーセントは、「負債の削減と、教育など優先分野へ の支出増に支障がないよう、減税は中・低所得の納税者に限定。すべきたと答えた。三月八日付の 《ロサンゼルス・タイムズ》の世論調査では、ミドルクラス ( 中間層 ) に対する小規模な減税を支持す る傾向がさらに強かった。基本的に減税を支持している世論調査でも、一般大衆はブッシュ減税の規 模や財源の偏りには賛成していなかった。 「六人組」の政治工作 そこへ登場したダ 1 ク・パン・ドンゲンと彼がいうところの「六人組」 , ーー減税連合の心臓部 は、一般大衆の意見を無視することにした。 ルイス・。ハウエルがビジネス・マニフェスト ( 声明書 ) を書いた一九七一年から三〇年のあいたに、 ハン・ドンゲンの擁する六つの集団は、企業のワシントンにおける政治勢力の中核となっていた。① 181