「スタジアムって、なに ? 」 かる アニーはダリウスにつきっきりだが、ばくらの話が聞こえたらしい ( ダリウスは、軽くいびきをかい て眠っている ) 。 せつめい 。くか、説明した。 「シルク・ド・フリ 1 クは、古いサッカースタジアムに泊まってるんだ。おまえとダリウスを町から逃 がしたら、ばくらはそこにもどるんだよ。でも、バンチャ元帥にも言ったんだけど : アニーが、とちゅうでさえぎった。 。今夜のニュース、見てないの ? 」 「古いサッカ 1 スタジアムって、たしかニュースで : 「見てないよー アニーが、不安そうにばくを見つめた。 「お兄ちゃんが来たとき、あたし、ニュ 1 スを見てたのよ。お兄ちゃんがそこへもどるなんて知らなか断 の かんけい ったから、まさか関係があるとは : ア 「関係があるって、どういうことだ ? 章 しあい けいさつほうい 「あのスタジアム、警察に包囲されたわ。サッカ 1 の試合のあとでトム・ジョーンズをおそった犯人の第 いちみ 一味が、たてこもってるんですって。ああ、もっと早く気づけばよかった。お兄ちゃんがトミーの話を ねむ はんにん
彳くから、な」 アニーが、かん高い声でわめいた。 「スティープにやられたら、終わりじゃないの ! 」 こと・は そう言われたら、かえす言葉がない。 アニーかたたみかけてきた。 くんれんひつよう 「ダリウスは、どうなるの ? 訓練が必要だって、言ったじゃない。お兄ちゃんがいないと、あの子、 どうしたらいいの ? 」 けいたいでんわ 携帯電話の番号を教えてくれ、とばくはアニーに言った。 しさつぐん れんらく 「スタジアムに向かう前に、アリスに、ヾ ノンピライツとバンパイア将軍たちに連絡させる。ばくらに万 てはい か一のことがあっても、だれかと会えるように手配するよ。バンパイアと、落ちあえるようにする。そ あんない のバンパイアにダリウスの訓練をまかせてもいいし、そのままバンパイア・マウンテンに案内させて、 1 やバネズにダリウスを訓練してもらってもいし ハネズ ? だれなの、それフ ばくの昔からの友だちさ、とばくはアニーにほほえみかけた。 「あのふたりなら、バンパイアとして知っておくべきことを、ダリウスにすべて教えてくれるさ」
「ダリウスを、バンパイアにする」 ぜっく まさか アニ 1 が絶句して、ばくを見つめた。 ばくはあわてて、つけたした。 わる 「そう悪いことばかりじゃない。たしかに、年をとるのはおそくなる。でもそれは、なれればいいだけ の し、よく のことだ。まあ、人間の血を飲まなきゃならないけど、血を飲みほすようなまねはしなくなる。食欲を ほ、フほ、つ おさえる方法を、ばくたちがちゃんと教えるから」 それでも、アニーはなっとくしなかった。 「じようだんじゃないわ。ほかの方法が、あるはすよ」 げんすい ハンチャ元帥が、とうとうおこってどなった。 ほ、つほ , フ かくじっ あんぜん 「そんなもの、ない , この方法だって、確実じゃないんだ。安全でもない」 せつめい 方法について、ばくが説明した。 こうかん 「ダリウスの血とばくの血を、交換する。ばくの中のバンパイアの細胞をダリウスの体に流しこんで、 ダリウスのバンパニーズの細胞をばくが引きうける。バンパイアとバンパニーズの細胞を、戦わせるん だ。うまくいけば、ダリウスは半バンパイアになる。ばくは、ゝ しままでどおりだ」 しつばい 「でも、もし失敗したら ? ダリウスはそのままで、お兄ちゃんが半バンパニーズになるっていうの ? 0 さい・ほ , フ たたか -6
りまノて いすにすわっていた。ホットココアを入れなおし、カップを両手でつつみこんでいる。ば タリウスは、テレビのそば くは部屋の向こうがわからいすを持ってきて、アニーの向かいにすわった。。 しき に立っている。テレビは、アニーがたおれた直後にダリウスが消した。アニーは意識をとりもどしてか ら、ほとんど口をきいていなし ) 。いすにふかくすわりなおし、ばくをひたと見すえた。恐布と喜びが、 心の中でせめぎあっているようた。そして、ばそりと言った。 へ 家 「どうなってるの ? 」 章 ばくは落ちついて、手早く、これまでのことをアニーにうちあけた。クレプスリーとマダム・オクタ第 せつめい のことを説明し、スティープの命を救うためにクレプスリーと取り引きをして半バンパイアになったこ らな。でも、ママやパパにはひとことも : : : 」 「お兄ちゃん : : : ダレンなの ? アニーが、声をしばりだした。うろたえて、目に涙をうかべている。 「やあ、アニー。ひさしぶりだな」 しろめ ビーきゅうえいが アニーはがくぜんとして目を見ひらき、級映画でしかおこりそうのないことをしたーーーー白目をむ き、ふらついて、きぜっしてしまった ! すく
けいさっ みんなで、しばらく雑談をした。アリスは警察での仕事を、バンチャ元帥はバンパイア元帥としての そだ ひけっ 仕事を、アニーに語った。エバンナはカエルの育てかたの秘訣を教えた ( アニーには、どうでもいし とだが ! ) 。やがて、ダリウスがあくびをした。バンチャ元帥が、うながすようにばくを見る。そろそ ろ、切りださねばならない。 ばくは、アニーにおずおずと声をかけた。 なかま 「なあアニー、ダリウスがバンパニーズの仲間になったことは、さっき話したよな。でも、それがどう いうことか、まだぜんぶ話してないんだ : : : 」 ロごもったばくを、アニ 1 かうながした。 「それで ? 」 ばくは、続けた。 「スティープが、ダリウスの体に自分の血を流しこんだんだ。バンパニーズの血を、ダリウスに : ダリウスの中のバンパニ 1 ズの血は、まだそんなに濃くない。でも、いずれ濃くなる。バンパニーズの ま さいぼう 最 細胞がふえて、人間の細胞を負かしてしまう」 章 ち 第 アニーの顔から、血の気が引いた 「ダリウスがお兄ちゃんみたいになるっていうの ? 年をとるのがおくれるってこと ? 人間の血を飲 ぎつだん はな こ 0 の 一三ロ
さいあく 第三章最悪の話 アニーが泣きゃんだあと、ばくらはそれぞれ腰をおろした。アニーは、とりあえずショックから立ち げんすい あっ なおり、ココアを入れてくれた。三人で、熱いココアをすすった。ばくはまだ、外のバンチャ元帥たち さいあくじさっきさっ タリウスがおかれた最悪の状況を知らせる前に、アニーとゆっくり話をしたい。 に声をかけなかった。。 ひとびと ′、にん、に : くがたすねた国々や、会った人々、 アニーにせがまれて、ばくはいままでのことをくわしく語った。ま たいけん しし言たけおもしろお めすらしい体験の話を、アニ 1 は聞きたがった。そこで暗い話ははぶき、かっこゝ かしく聞かせた。アニーは、ばくの話に目をかがやかせた。お兄ちゃんがほんとうに目の前にいるのか、 えら とたしかめるように、なんどもばくにさわる。バンパイア元帥に選ばれた話をしたら、アニーはうれし わら そうに声をあげて笑った。 「あら、じゃああたしは、元帥の妹としてあがめられるのかしら ? 」 「それはどうかな」 ばくは、くすくす笑いながら答えてやった。
じゃあく やりかけたことはとことんやりぬく意志の強さがある。こうと決めたら、て えられないほど邪悪だが、 こでも動かない。タリウスもそうだ。 ばくはいすにすわったダリウスの前に腰をおろし、ダリウスの指の先につめをつきたてようとした。 そのとき、アニーがためいきをついてなげいた。 「信じられないわ。ついさっきまで、明日なにを買おうとか、ダリウスが学校から帰るまでにもどらな 。とっぜん、死んだはずのお兄ちゃんがもどって くちゃとか、そんなことしか考えてなかったのに : きて、しかもバンパイアだなんて言いだした。やっとなっとくできたと思ったら、すぐにまた死ぬかも むすこ しれないなんて。息子まで、死んでしまうかもしれないなんて : : : 」 いまにも、やめて、と言いだしそうだ。アリスが背後から歩みより、アニーにそっとっげた。 さつじんき それとも、父親とおなし殺人鬼として死なせるほう 「息子さんを、人間のまま死なせるほうがいいフ 力いいのかしら ? 」 ぎんこく こと・は 残酷な言葉だ。でもそのおかげでアニーは、ダリウスがどうなってしまうか考えて、あきらめがつい たらしい。体をはげしくふるわせ、声を出さずに泣きながらはなれていき、ようすを見守った。 りさって ばくはなにも言わず、ダリウスと両手の指先を合わせ、ダリウスのやわらかい指の先に、つめをぜん第 ひめい タリウスが悲鳴をあげ、すわったままのけぞった。血の出る指をくわえよう ぶ、いっきにつきたてた。。 こし