口 - みる会図書館


検索対象: 運命の息子
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1. 運命の息子

どれい い奴隷にくわえるつもりなら : : : 」 そのつもりはない、 とミスター・タイニ 1 がとちゅうでさえぎった。 す 「この先数百年、おまえを好きなだけこきっかうという案は、たしかにすてがたい。だがエバンナがか ふ なり細かい点まで約束にもりこんだので、どうしようもない。おまえはロをきけなくなるが、ほかに不 じゅう 自由な点はない」 「なんでロをきけなくするんです ? と、聞きかえしたら、ミスター・タイニーにどなられた。 リトル・ピ 1 プレは、ロを 「おまえのにくまれロは、もううんざりだからだ ! 口をきく必要もない。 きけない者ばかりだぞ。口かきけなくても、リトル・ピープルはこまらん。おまえもそうだ」 「わかりましたよ」 もうふ 口をきけなくなるのはいやだが、もんくを言ってもむだのようだ。ばくは池のほとりに立ち、毛布を せいれい挙、つみ はらいのけた。精霊の湖を出てすぐに、リトル・ピープルがはおらせてくれた毛布た。そして、緑色の かげ・ 水をじっと見つめた。影がうつらない 「この池 : ・ しつもん ばくは質間しようとしたが、 やくそく ぐち あん ひつよう 2 ろ 8

2. 運命の息子

「前にどこかでお会いしたかしら ? ま 。くがだれだかわからず、アニーが顔をしかめる。 「まあ、いちおうね」 ばくは、うわずった声で笑った。 「ママ、あのね : : : 」 せつめい と、ダリウスが説明しかけたが、ばくは止めた。 「しい。たしかめてもらおう。なにも一一一一口うな」 「一一一口うなって、なにを ? けいかい アニーが、声をとがらせた。目を細め、ばくを警戒して見つめる。 「アニー、よく見てくれないか ぼくはささやくよ一つに一一一口ゝ し、部屋を横ぎって、アニ 1 から一メートルほどのところに立った。 か 「ばくの目を、見てくれ。すがたかたちは変わっても、目たけは変わらないって言うだろ 「あなたの声 : ・ どこかで聞いたおばえが : アニ 1 がつぶやいて、立ちあがり、ばくの目をのぞきこんだ。い んどいっしょだ。ばくは、アニーにほほえみかけた。 わら まのアニーは、ばくと背たけがほと せ

3. 運命の息子

ばくはエバンナに問いかけようとした。でも、声か出ない 「おまえさんは話せないんだよ。舌がないのさ」 そうだったーーーエバンナに言われて、思いだした。 灰色の太いうでを一本、のろのろとあげ、指で頭をさした。大きな緑の目でエバンナを見つめ、心の しつもんねん 中で質問を念じる。 「テレバシーで話ができるかどうか、知りたいんだねえ」 ことば というエバンナの言葉に、ばくはうなすいた 「できないよ。おまえさんは、その力をあたえられてないからねえ」 エバンナの一一一一口葉を聞きつけて、ミスター・タイニーが口をはさんだ。 きほん ながも 「おまえは基本モデルだ。長持ちさせる必要はないから、あれこれつけくわえてもしかたない。考える 力と動く力さえあれば、じゅうぶんだ」 そのあと数分かけて、ばくは新しい体をいろいろ調べてみた。そばに鏡はないが、すがたをうっせそ ねー エバンナがばくをつかまえ、落ちつくまでささえてくれた。 「いいかい、ゆっくり、一度にひとっすっ、おやりよ。すぐに置れる。ものの五分か十分で慣れるから、 した ひつよう 246

4. 運命の息子

うな大きな銀色の盆がある。ばくは足を引きするようにしてその前に行き、体を盆にうっして、すみす は しんちさっ みまで目を走らせた。身長は百四十センチぐらい、体のは九十センチぐらいか。ひふの縫い目はハー ぎつ 1 キャットと キャットより雑だ。左右の目の高さが、びみようにすれている。でもそれをのぞけば、、 ゝ。ばくはゆっくりとふりかえり、エ、ハン たいしてちがわない。口をあけてみた。舌もないが、歯もなし ナを見て、歯ぐきにあたる部分を指さした。 エバンナが、ばくの言いたいことをくんで答えた。 「おまえさんは、食べる必要がないからねえ」 うむ、とミスター・タイニーがうなずく。 「食事をするほど、長くは生きないからな」 むね ばくは、胸が苦しくなった。だまされた ! やはり、わなだった ! そのわなに、 長くは生きない もし口がきけたなら、なんてばかなのだと自分を口ぎたなくの まんまとひっかかってしまったのだ ! 血 のしっただろう。 の み ぶき なにか身を守る武器はないかとさがしていたら、エバンナがはげますように笑いかけてきた。 章 「いいかい、ダレン、なんであたしたちがこんなことをしたのか、わすれるんじゃないよ。おまえさん第 の魂を、自由にときはなっためさ。リトル・ピープルとして新しい人生を送らせてもよかったんだけど、 ぼん わら ぬ

5. 運命の息子

み ちを信じて、父上に身をゆだねるかい ? 」 「信じるよ、あんたのことなら」 ばくはエバンナに答え、ミスター・タイニーをうたがわしげに見た。 むすこ 「ああ、わが息子よ、なんと悲しいことを一一一口うのだ」 ミスター・タイニーが、わざとつらそうな顔をした。と、ふいに声をあげて笑い、ばくとエバンナに っげた。 「ぐずぐずするな。やるのか、やらないのか ? エバンナよ、これだけは言っておく。わたしは、ダレ やくそく ンにリトル・ピープルになるよう持ちかけた。これで、おまえとの約束は守ったぞ。ダレンがおまえの ちゅうこく 忠告にしたがわないなら、それまでだ。おまえには、きちんと約束を守ってもらう」 エバンナが、どうする、と言いたげにばくをのぞきこんだ。飛びこめと、ばくに命じるつもりはない いた らしい。ばくは、じっくりと考えてみた。リトル・ピープルになるのはいやだ。痛みがこわいというよ り、ミスター・タイニーの手下になるのがいやなのた。それに、エバンナがうそをついていたらどうす りゅう る ? エバンナを信じると答えはしたが、よく考えると、エバンナを信用する理由などこれつばっちも よゝ。 これまでエバンナは、父親であるミスター・タイニ 1 を一度もうらぎったことがなし ゝ。ほかのだ かたい れかに肩入れしたこともないなのになぜとっぜん、ばくのため、などと一一一一口うのか ? ばくをわなにか わら 2 ろ 6

6. 運命の息子

ひら ペンダーに左右の親指をひっかけて、ものうげに口を開いた。 せいれいみつみ ぎせい 「ほーう。そこにいるのは、みすからの命を犠牲にした青年ではないか。精霊の湖で、だれかおもしろ い知人にでも会ったかね ? 「聞きながすんだよ、ダレンー エバンナが、くちびるを動かさずに言う。 ミスター・タイニーが体をゆするようにして近づいてきて、ばくの数メートル手前で止まった。そば ほのおも で見ると、目が異様にぎらついている。まるで瞳の中で炎が燃えているかのようだ。 「あんなまねをするとわかっていたら、おまえなど最初から作らなかった 「手おくれですね」 ばくは、いやみを言ってやった。 とミスター・タイニ 1 が一一一一口った。 いや、手おくれではない、 かこ 「過去にさかのばって、おまえを消してやる。おまえなど、この世に生まれなかったことにするのだ。 さいねんしさっ げんすい へつの者が最年少のバンパイア元帥に そうすれば、天がおまえに代わるべつの者をつれてくるはずだ。、 そんざい なり、バンパニーズ大王を追い、おまえとおなじ道をたどる。そしておまえは存在を消される。おまえ そんざい はかい の魂は、破壊されるだけではすまされん。最初から存在しなかったことになるのだ」 いよう さいしょ 2 ろ 2

7. 運命の息子

ゅめ みらいえいごう 。その者の子をつうじて、わたしは何千年も世界を支配できる。未来永劫に支配するのも、夢では ないぞ」 ばくは、たまらなくなってさけんだ。 。あんたとなんか、手を 「あんた、どうかしてる。あんたに助けられたかどうかなんて、どうでもいし 組まない。あんたの言いなりには、ならない。あんたのゆがんだ夢に、まきこまれるのはごめんだ。ス ティープだってそうさ。勝っていたって、あんたの言いなりになど、なるものか たカ、ミスター・タイニーは引かなカた 「いや、おまえはかならずわたしと手を組む。スティープも、勝っていればそうするはず。いやでも、 そうなるのだ。そう生まれついたのだからな。血は水よりも濃いと一一一口うではないか むね いどむよ一つに一一一口いはなった。 ここでミスター・タイニーはひといき入れ、胸をはり、 むすこ みかた 「息子は、父の味方になるものだ」 「ま、まさか エバンナが、さけんだ。ばくより早く、わかったらしい ミスター・タイニーが、 ばくをひたと見すえて、つげた。 いでんし 「わたしは、わたしほど魔力の強くない子どもがほしかった。わたしの遺伝子を引きつぎ、わたしの欲 し そ こ く い 9 ー第 12 章帝王の座

8. 運命の息子

しき きず ものりき とや、バンパニーズ、傷ある者の戦、バンパニーズ大王をたおす旅など、その後のばくの人生について、輛 いちそく ざっと語った。ただし、スティープが大王で、バンパニ 1 ズ一族をひきいていることは、言わないでお じじつあ いた。その事実を明かす前に、まずはアニーがばくの話をどう受けとめるか、見ておきたい。 かんじさっ アニーの目には、なんの感情もうかばなかった。なにを考えているのか、わからない。ばくがダリウ むすこ しせん スの話を始めたら、アニーはばくから息子へと視線をうっした。わずかに身を乗りだし、ダリウスがだ せつめい まされてバンパニ 1 ズの手助けをさせられた、というばくの説明に聞きいった。このときもばくは、意 げきじ」ノ 識してスティープの名前を出さなかった。町にある古い劇場でシャンカスがころされ、バンパニーズ大 ことば 王の言葉でダリウスがおいっ子だと知った と話を続け、ばくはこうしめくくった。 「ダリウスは事実を知って、ふるえあがった。でも、ばくは言ったんだ。自分を責めるなって。ダリウ スより年上のしつかりした人だって、さんざんバンパニーズ大王にだまされてきたんだから」 ひら ぼくはいったん口をつぐみ、アニーの出かたを待った。アニーは、すぐに口を開いた。 「あなた、どうかしてるわ。あなたが兄のダレンだと百パーセント信じたわけじゃないけど、もしほん あに せいち」ら とうに兄だとしたら、成長をおくらせる病気とやらに、頭までやられてしまったようね。バンパイア ? さつじんしゃなかま ス ? うちの息子が、殺人者の仲間 ? ふん、ばかも休み休み言ってちょうだい こと・は アニーのつめたい言葉に、ダリウスがさけんだ。 あに たび

9. 運命の息子

けいかんたい 「警官隊に、スタジアムを包囲されてるんでしよ。あたしたち三人じゃ、どうしようもない。スティー じりき ゅうせん プをたおすことを優先するべきよ。スタジアムにいる人たちには、自力で切りぬけてもらうしかないわ ばくは、そこまでわりきれなかった。 「でも、仲間なんだぞ。見すてるなんて、あんまりだー だが、アリスはゆずらなかった。 ばあい 「見すてるしかないのよ。あんまりだなんて、言ってる場合じゃない。 ) ようもないんだから。あたしたちまで、死ぬわけにはいかないでしよ」 ーキャットが : : : デビーも : 「でも、エプラが : わかってる、とうなずくアリスの目は、悲しげだが、きびしかった。 「でも、しかたないのよ。つらいけど。見すてるしかないわー そうかな、とばくはつぶやいた。 「なんとなくだけど : : : 」 思っていることを口にしていいかどうか 「なんだ ? 言えよ げんすい と、バンチャ元帥にうながされた。 ほ、つ 。ためらって口ごもったら、 しまのあたしたちには、どうし 0

10. 運命の息子

ふとあることを思って、ばくはロをつぐんだ。シャンカスは、人の気もちや考えかたや、ほかにもい ろいろなことを、もう学べない ひら しばらくして、ダリウスが口を開いた。 「ばく、どうすればいいのかな ? ばくは、ためいきまじりに答えた。 「家に帰れ。ぜんぶ、わすれろ。なかったことにしろ」 「ええつ、じゃあ、バンパニーズはどうなるのさ ? パパは、まだ逃げてるんだよ。ばく、 つかまえたい」 ばくは、ダリウスをつめたく見すえた。 「おまえ、本気か ? あいつをしとめる手伝いをしたいのか ? ばくらを、あいつのもとにつれてい しんぞう っていうのか ? あいつのくさった心臓をつかみだすのを、その目でたしかめたいのか ? ダリウスが、きまり悪そうにもぞもぞしながら、つぶやいた。 「パパは、悪いやつだろ」 「ああ、そうさ。でも、おまえの父親であることにちがいはない。ダリウス、おまえは手を引け」 「じゃあ、ママは ? ママには、なんて言えばいい ? っしょに