顔 - みる会図書館


検索対象: 運命の息子
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1. 運命の息子

息をのんだ。なんと、頭のないコ 1 マックの首の根もとから、新しい頭がふたっ、によきによきと生え てきたではないか ! それぞれ、細い首がついている。顔は小さくなったが、まちがいなくコ 1 マック だ。頭が生えおわった。間をおいて、コーマックがゆっくりと四つの目をあけ、ふたつの口からべっと しノてん 血を吐く。目の焦点が、合ってきた。かたほうの顔の目でばくを、もうかたほうの顔の目で・を見 る。そして顔を動かし、自分のすがたをたしかめ、ふたつのロで同時にさけんだ。 「なるほど、首を切ると、こうなるのか ! 前から知りたかったんだー ひめ ・か、悲鳴をあげた。 く、くるっちまった ! 」 「ひ、ひいっ ! 世界がどうかなっちまった ! ・があわを食って向きを変え、コーマックからはなれた。わけのわからないことをまくしたて、 たらたらとよだれをたらしながら、ばくのそばを走りぬける。ゲートに飛びこむ前につまずいたいま なら、楽にしまつできる。でもばくはあえて手を出さす、・がふらふらとゲートのおくに消えるの りさって を見守った。・は、両手をうしなってからすっとまともでなかったが、とうとう、かんぜんに、お かしくなってしまった。昔のおもかげをうしない、あわれとしか言いようのない・を、たおす気に はなれない。 さあ、スティープと対決だ。スティープとガネンは、バンパニーズとバンペットの中にまじっていた。 れいし、 たいけっ ね 12 8

2. 運命の息子

かいだん ばくは、わっと飛びかかった。なにがなんだかわから 少年の「ばくが、階段をのばってくる ずにいる「ばくをひつつかみ、階段から引きずりおろし、いきおいよくドアをあけ、ろうかにつきと ばす。 : た : : : 助けて ! 少年の「ばく」が恐怖のあまり顔を引きつらせ、ひっしにあとすさる。 きず ばくはフ 1 ドをさっとはずし、マスクをむしりとった。傷だらけの灰色の顔を見せつけ、ロをがばっ と大きくあける。さらに顔をぬっとっきだし、「ばくをにらみつけ、つかまえてやるとばかりにうで ひめい を広げた。「ばく」が悲鳴をあげ、あわてて立ちあがり、つんのめるようにして出口に行く。ばくはわ げんかん ざと足音を立て、つめでかべをこすりながら、あとを追った。「ばくは玄関にたどりつくと、外に飛 ころ びだした。階段を転げおち、あわてておきあがると、死にものぐるいで走っていく。 「ばく」を見送った。ふと、顔がほころんでくる。 ばくは玄関前の階段の上に立ちつくし、逃げていく ねん 念のためこのまま見はっていてもいいが、「ばく」はもどってこないだろう。いちもくさんに家に逃げ ねむ かえり、べッドにもぐりこんで、ぶるぶるふるえながら眠るにちがいない。スティーフがバルコニーで なにをしたか知らないから、朝になったらさっそく電話して、スティ 1 プのぶじをたしかめるにちがい りゅう ない。クレプスリーがハンハイアだと知らないから、スティープをこわがる理由がない。スティープに、 264

3. 運命の息子

しろいろな顔がうかんできた。いや、ばくの頭の中にうかんだだけか ? もう、わからな 水の中に、ゝ サム・グレストがいる。ガブナ 1 ・パ 1 レも、エラ・セイルズもいる。ミスター・ト 1 ル、シャン カス、・、クレプスリ 1 。先に死んだ者たちが、ばくをむかえに来てくれたのだ。 ばくに手をふった。そ ばくはみんなに、うでをのばした。でも、手がとどかない。クレプスリーが、 の顔が、悲しげにくもり・ーー・すべてが消えた。ばくは、体の力をぬいた。世界も、水も、なっかしい顔 あっ さむ も、見えなくなった。頭がからっぽになる。うるさいほど静かだ。暗くて、明るい。寒くて、熱い。ゅ つくりと最後のまばたきをした。もう動けない。体が重い。死に神からは、だれものがれられない。 だれもいない暗い水の中で、ばくは、死んだ。 がみ 171 ー第 13 章運命の子どもたち

4. 運命の息子

ノ、けりをつけて / 、れーーー・とい一つことかフ・ さい′」 だが、最後の決戦かとかくごしたそのとき、スティープがふっと体の力をぬいた。顔に、笑みがもど ってくる。スティープはためいきをついて、言った。 「おれはおれなりに、誠意をつくしたんだぜ。みんなにとって、よかれと思ったのによ。でも、聞かね えやつがいるなら、しかたねえ。よーし、わかった。見てろよ」 はいご スティープが指をくわえ、かん高い口笛をふいた。と、首つり台の背後から、ひげもじゃの男があら りさって もとかんきさっせんし われた。元環境戦士の・だ。・は両手に三本しかないフックで、一本のなわを持っていた ( あ とのフックは、ミスター・トールにむしりとられてしまった ) 。・がなわをひつばると、なわの先 じよせい にしばりつけられた女性が、よろよろと出てきた。そう、デビーだ。 よそう 予想していたことなので、ぼくはあわてなかった。・はデビーをひつばりながら二、三歩歩いた が、スティープからかなりはなれた地点ですぐに立ちどまった。顔がさえない。おどおどとして、せわ しなく顔を動かし、目がうつろだ。不安そうにくちびるをかみ、くちびるから血が出ている。ばくがは たたか ねっしんかつどうか しぜん じめて会ったころの・は、どうどうとしていて、自然を守るために戦う、ひたむきで熱心な活動家章 しさっき りさつほう ふくしゅう だった。そのあと・は両方の手をうしない、復讐のためだけに生きる、正気をうしなったけだもの第 かんきさっせんし となってしまった。しかし、いま、目の前にいる・は、環境戦士でもけだものでもない。ただのみ けっせん くちぶえ

5. 運命の息子

アニーが、またばくを見た。ばくをおそれ、うたがうようなまなざしだが、さっきまでの、さげすみは 「スティープなの ? 」 アニーが、うめいた。暗い顔でうなすくばくを見て、顔をこわばらせーーーダリウスに向かって金切り ごえ 声をはりあげた。 「だから言ったじゃないの ! 」 ダリウスをつかみ、くるったようにゆさぶる。 「スティープに近づいちゃだめ ! 見かけたら、すぐに逃げなさい ! だから ! そう一言ったじゃないの ! 」 たみだごえ ダリウスが、涙声でさけびかえした。 「うそだと思ったんだよ , パパに逃げられたから、ママがうらんで、うそをついたと思ったんだ , 0 、 0 、 0 ? 」 だって、だって : オから ! ダリウスはアニーからはなれ、泣きながらゆかにつつぶした。 「パパだから : : : 愛してたんだ : アニーが、泣きしやくるダリウスを見つめた。続いて、ばくに視線をうっす。アニーの目から、涙が しせん きけん ママに言いなさい ! 危険な人 かなき

6. 運命の息子

げきじさっ からのことに思いをはせた。劇場をながめ、むかしに思いをはせることで、悲しみを一時でもわすれよ うとした。 げんすい やがて、バンチャ元帥とアリスが近づいてきた。ふたりがどのくらいの時間話していたのかわからな かおながだ し、カ ばくの前に立ったときは、ふたりとも顔の涙をきれいにぬぐい、気もちを切りかえていた。 ハンチャ元帥が、うなるように言った。 「ダリウスには、おれが聞くか ? おまえが聞くか ? 「どっちでもいいよ」 ばくはためいきをつき、ダリウスを見た。ダリウスは、広い劇場の向こうがわに立っている。そばに は、エバンナしかいない ばくは、バンチャ元帥にあらためて答えた。 「ばくが聞く」 ダリウス、とアリスが声をはりあげた。うなだれていたダリウスが、ばっと顔をあげる。 「こっちに来なさい かんかく ハンパニーズの血が、 ノランス感覚が、かなりいい ダリウスはすなおに板に乗り、わたりだした。ヾ 流れているせいだろう。ダリウスはスティープに血を流しこまれ、半バンパニーズになった。そう思う の いっとき ・ 4

7. 運命の息子

さいこ 第 + 一章最後の決戦 えいえんわか ひざまずいたまま息たえた・の、安らかな顔ーーー。・はようやく、苦しみと永遠に別れるこ あくじ きおく とができた。よかった。もし生きていたら、バンパニーズと組んでおかした悪事の記憶を、一生引きず らなければならない。・にとっては、これでよかったのだろう。 「さあ、おれとおまえ、ふたりきりになったぜ」 スティープの楽しげな声に、ばくははっとして顔をあげた。スティープは・から数メートルはな いしき げんすい ハンチャ元帥はまた息があ れたところで、にやにやしながら立っていた。。 カネンは意識がもどらない。 たたか るが、ぐったりと横たわったままだ。ときどき、ぜいせいとあえいでいる。このようすでは戦うどころ戦 決 の か、身を守るのもむりだ。 後 最 「ああ」 章 けん 第 ばくはスティープにうなすいてみせ、立ちあがり、剣をひろった。さっきひじを切られたせいで、左 さい」 ・ 4 。それでも、最後の決 うでか動かない。体も、ばろばろだ。あと一、二分、体力がもっかどうか み けっせん 第物一

8. 運命の息子

げしく泣きさけび、こぶしをたたきつけてくる。そんなマーラを、バンペットたちが引きはなそうとし たが、スティープに止められた。 「やめろ ! ほっとけ ! おもしろいぜ ! 」 ばくらはもつれあって、バンペットからはなれていった。マーラが、ばくをぐいぐいおしながら、思 あくたい いつくかぎりの悪態をついて、なぐりつけてくる。ばくはなされるがまま、手でふせごうともしなかっ た。地面がばっくりとわれて、ばくを丸ごと飲みこんでくれたら、どれだけいいゝ。 そのときだった。マ 1 ラがばくに馬乗りになり、かみつこうとした。ぐっと顔を近づけてきて、耳も とでささやく。 「デビーは : : : スティープにつかまってる」 マ 1 ラを見つめた。マ 1 ラが悪態をつき、またひそひそとささやく。 ていこ、つ 「あたしたち : : : 抵抗しなかった。こしぬけだと : : : 思われてる。でも、みんな : : : あなたを待ってた。 あなたが来て、指揮をとってくれるって : ーキャットが言ったから」 ひらて マーラがばくの顔を平手うちにし、ひたと見すえ、つぶやいた。 「あなたのせいじゃない」 涙にぬれた目で、かすかにほほえみかけてくる。 うまの 100

9. 運命の息子

しいや、とエバンナがにやりとする。 ノンパニーズが勝つだけの話さ。それにねん 「変わらないよ。さっき言ったように、ヾ と、エバンナが顔をいっそうほころばせた。 「おまえたち、逃げる気なんてないんだろ ? 」 「おう、だれが逃げるもんか , ハンチャ元帥がいせいよく答え、これ見よがしにかべにつばをはきかけて、続けた。 まずは、スタジアムのようすを見よう。スティープのやっ 「だがな、むちやをするほどばかじゃない。 が中にいるようなら、なんとしても中に人って、やつの首をはねる。やつがいないようならほかをさが さい。こ けっせん なかま して、シルク・ド・フリークの仲間には自力で切りぬけてもらうしかない。最後の決戦をひかえたいま、 み 仲間のために命を落とすんじゃ、意味がない。なあ、ダレン ? 」 ハンス・ハンズや、ほ ばくは、シルク・ド・フリークの仲間の顔を思いうかべた。エプラ、マーラ、 ガいにん ーキャットやデビ 1 もいる。みんな、どんな目にあっているのたろ かの芸人たち。スタジアムには、、 いちぞく う ? ふと、べつの仲間のことも頭にうかんできた。バンパイア一族だ。ハンハイアではない仲間のた めに命をすてたら、ハンパイア一族はいったいどうなる ? 「ああ、そうだな」 じりき 8 ろー第 5 章別れ

10. 運命の息子

をつくろうではないか」 あくま 「あんたのような悪魔に : : : ばくがすなおにしたがうと : : : 思うのか ? 」 こと・は というばくの言葉に、エバンナがうなずいた。 くんりん 「そうですよ、父上。ダレンがこのさきどういう運命をたどるか、わかってますよ。この世に君臨し、 き、ろぼう 凶暴にふるまいつづけることは、ねえ。でも、ダレンは父上をにくんでる。そのにくしみは、この先何 百年、つのりこそすれ、やわらぐことはありませんよ。なのになぜ、ダレンが父上と手を組むなどとお 考えになるんですフ 「この子のことは、おまえなんかよりよく知っている。ダレンは、わたしを受けいれる。そういう運命 に、生まれついたのだ」 と、ミスター・タイニーが言いはなち、しやがんでスティ 1 プの目をのぞきこんだ。続いて顔をあげ、 ばくの目を見つめる。その顔は、ばくから五、六センチもはなれていない。 「わたしはいつも、おまえたちを助けてきた。おまえたち、ふたりをな。ダレン、おまえがシルク・ ド・フリ 1 クのチケットを友だちととりあったとき、いまだ、とおまえの耳もとでささやいてチケット をつかませたのは、なにをかくそう、このわたしだぞ」 ばくはぎようてんして、ロをあけた。たしかにあのとき、ばくは「いまだ ! 」という声を聞いた。で いうー第 12 章帝王の座