の損金を知人に保証させ、謝礼を日産に肩代わりさせたということだ。それは会社法 96 0 条 1 項にある、 「自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く 行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えた」 という特別背任罪に当てはまる。また年川月にジュファリ氏から約億円が提供され た件は、四年 5 月に特捜部による訴因変更請求により明らかになった。この約億円はリ ーマン・ショックで巨額の損失を出したゴーン氏への資金援助だったことが報じられてい る。訴因変更請求は行われたものの、それ以外のストーリーに変更が加えられていないこ とから、約億 5000 万円の評価損を巡るやりとりと、この約億円の資金援助は別な ものと考えるべきだろう。 そこで注目しなければならないポイントは、 ①金融派生商品の損金を日産に付け替えたこと ②ジュファリ氏が追加担保として»-a / o を使ったこと の 2 点となる。私には、これらが異常なことだとしか思えない。 個人負債を日産に付け替える異常性
( 強制決済 ) をしなかったのだから、「怖くてうるさい」借人先ではないことは明らかだ。 ゴーン氏の巨額借り人れの時期が重なっていることと合わせれば、「投資の焦げ付き」は まだ他にあったと考えなければ説明がっかない。 「国選弁護人」こそ最適解た 今年 1 月には、ゴーン氏がオランダにある「日産一二菱」を通じて、年に他の取締 彳が知らない 7 0 0 万ューロ ( 約 9 億円 ) の支払いを受けたと、フランス経済紙『レゼコ ー』 ( 電子版 ) が報じている。特捜部は「オマーン・ルート 」の流れとは無関係な国、スイ スに捜査共助を依頼したが、このことから「ダッチ・コネクション」を疑っている可能性 は十分にある。そうなれば新たな「債務」が明らかになるだろう。 4 月 5 日には、「オマーン・ル 1 ト」でも名前の挙がったゴーン氏の妻、キャロル氏が 特捜部の聴取要求に応じずフランスに出国したものの、 3 日後には「戻る」ことを本人が ラジオで明かしている。公判での心証を稼ぐのであれば、そもそも出国はしないはずだ。 ゴーン家にとって、すでにヨーロツ。ハも居心地のよい場所でなくなったのでは、と私は考 えている。 また、経営者としての資質という意味では、特捜部の捜査に対するゴーン氏のリスクマ
こじ開けられたオマーン・ルート 四年 4 月 4 日、保釈中だったゴーン氏は「オマーン」を舞台にした新たな特別背任容疑 で再逮捕される。これで 4 回目の逮捕となった。 まずは、現時点での報道を元に今回の容疑内容を時系列で整理しよう。 ・四年 1 月、ゴーン氏はオマーンの日産車販売代理店「スノイノ ノワン自動車」 ( < ) のオーナー、スノイノ ノワン氏から約億円を私的に借り人れる ・この直後からゴーン氏は中東日産にからの代金支払いの長期間猶予と、猶予中の 金利を大幅にディスカウントすることなどを指示した。の特別優遇により、日産の 逸失利益は川年間で約億円に上る ・年から年にかけて、ゴーン氏の指示により中東日産からに毎年 5 0 0 万ドル ( 年のみ 700 万ドル ) 、総計 3200 万ドル ( 約肪億円 ) が、「報奨金ーの名目で振り込ま れた。使われたのはゴーン氏が決裁権を持つ「リザーブ」だった 年、の経理担当幹部がレバノンに「投資会社」を名目にした、ペ ーカンパ ニー「グッド・フェイス・インベストメンツ」 (e —) を設立。—はゴーン氏が実質 4 ・
雑なスキームを作って行う。事件についての情報がアップデートされていったが、報道さ れた事実を使って、その一つ一つをひも解いてみよう。 注目しなければならないニつのポイント まずは特捜部の発表とその後の報道によって、特別背任容疑の内容を整理しよう。 ・ゴーン氏は新生銀行との間で、金融派生商品 ( 通貨取引のスワップ取引 ) で個人資産を運 用していた。しかし 2 0 0 8 年 9 月日のリーマン・ショックの影響で、約億 5 0 0 0 万円の評価損の損失を出す。このことで、新生銀行側はゴーン氏側に追加担保を求めた ・そこでゴーン氏は「取締役会で契約の移転を決議する」という「虚偽の約束」を新生銀 , イ仰とす , る ・同年川月、ゴーン氏は評価損を抱えた金融派生商品を日産に移転させる。ほぼ同時期に リド・ジュファリ氏から 2 0 0 0 万ドル ( 当時のレート 知人で、サウジアラビアの実業家ハ で約億円 ) を提供される ・証券取引等監視委員会が移転の違法性を指摘。これを受けて四年 2 月、ゴーン氏が自身 に再移転させるが、その際に新生銀行が追加担保を求める
グループ社長に届けられていた。 形成されたヤミ金グループは、全国で最大約 1000 の店舗数を持っ巨大な組織となっ た。捜査によって一店舗あたりの年間平均売り上げは 3 億円と判明。グループ全体で約 1 400 億円も稼いだとされているが、被害総額ははっきりしていない。組織が枝分かれし ていたこと、相互に顧客に金を貸していたこと、また顧客が元々多重債務者だったことか ら、被害者本人が門月系列のグループから借りたのか、他のヤミ金業者から借りたのかが わからなかったことが原因だ。 肥年川月に、それまで五代目山口組系の三次団体だった「陣内組」が、「五菱会」とな マ ク り直参となる。五代目体制下では異例とも言える昇格だ。その「五菱会」は「五代目山口 組の「五」と山口組の代紋「山菱」を合わせて、渡邉芳則組長自ら「五菱会」と命名し 出たとされる。 脱 を 押収した資料からは門川グループの莫大な利益の実に 7S8 割が、グループ責任者を通 島 ちょうあい じて旧五菱会へと上納されたことが明らかになった。「五菱会」の昇格と、寵愛の理由は 閉 融ここにあるのではと報じられた。 章 第 177
陸との相互不干渉を宣言した。アメリカ大陸にヨーロッパはロを出すな、我々もヨーロッ ハにはロを出さないとしたのが「モンロー主義ーだ。「『イエス』か『はい』」の返事しか 許さないバイ・ラテラルによってアメリカが目指すのは、自国を中心とした「新・モンロ ー主義」の構築だ。アメリカの中間選挙が生んだのは「ねじれ」という「分断」ではな い。「世界のためのアメリカではなく、アメリカのための世界」に向けて与野党が一枚岩 になったということだと私は考えている。 イギリスの ( 欧州連合 ) 離脱、「ブレグジット」については現在も混乱が続いている が、この原因もアメリカだ。首相 ( 当時 ) のテリーザ・メイ氏は元々ソフト・ブレグジッ ト推進派だった。しかし、年 7 月トランプ氏は、「英国がとの結び付きを維持する なら、我々は英国ではなくと取引する。 ( 穏健な離脱方針は ) 両国の取引を殺すだろう」 と、英紙のインタビューに答えたその足で訪英。閣僚が辞任してもソフト路線を譲らなか ったメイ氏が、あっさりハ ード路線へと転向した。この時のトランプⅡメイ会談は、 離脱後、米英が交渉を推進することで合意する。 そこで考えなければならないのが、アメリカとフランスの関係だ。 この直前の 4 月にはフランス大統領、エマニュエル・マクロン氏が訪米したのだが、そ の際もトランプ氏は離脱と、米仏を提案した。マクロン氏はこれに興味も示さ
第 1 章元経済ヤクザが明かすゴーン事件の最深層 ①金融派生商品で約 18 億 5000 万円の評価損 ・ジュファリ氏が約億円の「 ( 信用状、後述 ) を外資系銀行から新生銀行へ 送り、ゴーン氏の追加担保にした ・この時、ジュファリ氏側に日産から億円の融資が計画されたが、社内承認が得られず 中止になった ( この指示はゴーン氏によるものだっ 一丁れたこと たことが報じられている ) 。 ⑤約億円の / o 工を差し入れ 生 ・しかし四年 6 月—年 3 月の間に、ゴーン氏 は自らの判断で使うことのできる「 O 予備 費」から「販売促進費」の名目で、ジュファリ 氏が経営する会社に 1470 万ドル ( 約億円 ) を振り込んだ ・ジュファリ氏の会社で「販売促進」が行われ たかは確認されておらず、追加担保への謝礼と 目されている これらを図 1 にまとめたが、要約すれば、会 長という立場を利用して、焦げ付いた個人投資 ゴーン氏 、、、、⑥ 30 億円の追加融資 、、、を計画するも失敗 ③評価損を付 け替える ⑦ CEO 予備費 、 / ユ 中東日産 ⑧「販売促進費」名目で計 1470 万ドル ( 約 16 億円 )
資金移動といえばだが、は秘匿性と安全性を維持するために専用 回線の設置を必要としている。しかし、このプロックチェーン技術を ()n —システム に転用すれば、すでに世界のいたるところに整備されているインターネット回線を利用す ることができる。専用回線の維持費のための高額な手数料はこれによって格段に安くなる ことから、国際送金に大きな変革をもたらすことが期待されている。 私がビットコインを保有していた時、 3 ビットコインを台湾の知人の元へ送金してみ た。「ビットコインを送るから」と電話をして、所定の手続きをしたわずか 5 分後、先方 から「届いた」という連絡が来たほどスムーズに資金移転は実行された。当時の 1 ビット 界コインの値段が約 10 0 万円 ( 約 9 3 5 0 ドル ) だったことから、 3 ビットコイン分の送金 新額は約 300 万円 ( 約 2 万 8000 ドル ) 。私に悪意があれば、手のひらの中で瞬時にマネー みロンダリングができたことになる。 生 「資金調達」「インサイダー」「資金移転」と、黒い経済界にとって「走・攻・守」揃った ク た名プレイヤーの仮想通貨は、当然のことながら国際社会で規制を求められた。 ン 年 3 月の財務相・中央銀行総裁会議で、仮想通貨の在り方が初めて議論される。 フ そして同年Ⅱ—月にアルゼンチンで行われた (-) 首脳会議では、仮想通貨を用いたマネ 章 ーロンダリングなどの規制を「 ( 金融活動作業部会 ) に則ったやり方で進める」と 第
担当者と共に香港に渡った門川は、年 2 月Ⅱ日にクレディ・スイス香港に自分名義の 口座を作る。口座番号は「 10150 」。その 1 週間後の幻日には、スイスのチューリッ ヒにあるクレディ・スイス本店に本人名義と無記名口座を作り準備を整えた。 こうして 3 月 5 、 6 日の 2 日間でスタンダードチャータード銀行は、クレディ・スイス 香港による合計約 4 万枚の送金指示書に従って送金を行う。しかし、指示書に門川も含め た個人の名前は一切記載されておらず、「 10150 」という、 尸川の口座番号だけが記 載されていた。 香港の口座には門川の別の預金約 5 億円が人金され、計約億円となった。またグルー プ幹部などの関係者もクレディ・スイス香港に個人名で口座を作り、 尸川と同様の手法で 計約億円を入金した。 門川ルート、幹部ルートを合わせてヤミ金グループは計約億円もの現金を香港にプー ルしたということだ。また、前述したマネーロンダリングの三段階でまとめれば、犯罪収 益は割引金融債にプレイスメントされ、証券代行業者でレイヤーリングされ、換金によっ てインテグレーション。その後香港の金融機関にプレイスメントされたということにな る。 香港にプールされた現金のうち 、門川ルートによる計約億円は回に分けてスイスに
丨の直下には、 尸月のイニシ ヤミ金グループはビラミッド型の組織構造を形成した。門月 ャルをもじった「 ( Ⅱホールディングス ) という組織が作られた。 「 co 」に所属する各幹部は「 O 」「 O 」「」「オフィス」などと名付け られたグループを持ち、グループの数は最大でにも上った。多重債務者リストを入手し て、全国の多重債務者にダイレクトメールなどを送り、無担保での融資を勧誘する手口 、、こ 0 日」 オ尸川は、当時ヤミ金業者間で「門川七人衆」と呼ばれた幹部を競わせる形で莫大な収 益を上げていた。 逮捕された「」グループ社長の供述によれば、グループの構成は以下のようになっ マ ている。 「 0 」グループでは社長の下に副グループ長を 1 人、その下に計 4 人のプロック長を配 出置していた。各プロック長は「ドカントサポート」「三都信販」などと名付けられた店舗 脱 をを数カ所ずっ取りまとめながら、債務者の返済期日や貸付額を集中して管理する「センタ ー」と呼ぶ事務所の運営を行っていた。 閉 融 元々多重債務者だった顧客の多くが返済能力に乏しいのは当然で、返済日が近づくとセ 金 ンターから連絡を受けた別のグループが借金を持ちかけ、顧客の債務を膨らませていっ 章 た。こうして借金を膨れ上がらせる手法は門川の考案によるもので、後に「システム金 175